時代劇の風景   ロケ地探訪

梅宮大社

鳥居 扁額 楼門 本殿 舞殿
 梅宮大社は四条通をずんずん西に行き、松尾橋で桂川を渡る手前にある。上代に橘氏の氏神として井手町に祀られていたのを嵯峨帝の壇林皇后(橘氏)が梅津の地に移された経緯をもつ。大山祗と木花咲耶姫を祀り、古くから酒の神さんであり子授けに霊験あらたかとされる。楼門には奉納の酒樽が掲げられ、岩田帯を授かりに来る人、赤ちゃんを連れてお宮参りに訪れる人が目立つ。
神苑入口の門(神苑内から) 入口付近の水辺
 梅宮大社が時代劇の背景に使われるのは圧倒的に神苑である。梅や桜も見事だが、なんと言っても五月から六月にかけて水際を彩る杜若・花菖蒲を映す例が多い。神苑東側の咲耶池には中島があり池中亭と称する萱葺きの茶室が風情をいや増す。
 入口の門をくぐってすぐの池畔には少し広いスペースがあり、ここは鬼平犯科帳6「男の毒」で、数奇な運命を辿るお清が何人目かの亭主・宗七の身を気遣い三七二十一の願を掛けたと様子を見にやってきた祖父に語るシーンで使われた。
咲耶池東側から本殿付近を見る 池中亭へ渡る橋
 百人一首に入っている大納言経信の「夕されば門田の稲葉訪れて芦のまろやに秋風ぞ吹く」に詠われた田舎家は往時の梅津の風情を詠んだもので、池中亭はそのころこの地に多く造られた貴族の山荘の風情を伝えるものである。剣客商売で佐々木三冬の住む根岸の寮として使われたのも頷ける。
 また、雲霧仁左衛門「松屋襲撃」では雲霧のターゲットとなった名古屋の豪商・松屋の庭として使われ、松屋の女房におさまった引き込みの七化けのお千代が池中亭付近で花を切っているところへ治平が山猫の三次の動静を伝えに来るシーンが撮られた。ツナギの途中、亭主の松屋に声をかけられ七化けから千代姫に鮮やかに変化するのが見事な場面である。
咲耶池南側から入口付近を見る 中島へ渡る石橋
 ここは鬼平犯科帳ED「インスピレイション」の「初夏」のカバー映像にも使われている。御室桜が映り八幡堀をゆく猪牙船が映ったあとにくる菖蒲越しに汀をゆく江戸の市民、という画で、上写真左が同アングルのもの。
中島へ渡る石橋 中島へ渡る石橋
 御家人斬九郎「乱調麻佐女」では麻佐女さまが招かれる豪商・高田屋(麻佐女の鼓を婚礼の席に所望)の庭として使われた。その後笛方をつとめる庄三郎とデートを重ねる庭となる。このさまをやきもきしながら盗み見ている息子の残九郎のコミカルな演技が楽しい。
劇場版「必殺!主水死す」では江戸城の庭として使われ、大奥に招かれた捨蔵が逍遥するシーンが撮られた。中島へ渡る石橋に佇む捨蔵、水中から狙う刺客を主水が制する、という場面だった。
鬼平犯科帳「むかしの男」では長谷川平蔵の妻・久栄が結婚前にいきさつのあった男に呼び出される音羽・護国寺の庭として使われ、豊臣秀吉 天下を獲る![1995TX]では秀吉が信長に茶の湯の許可を貰う場面で、炎の奉行 大岡越前守[1997TX]では秋月数馬が赤穂浪士の遺児を大石内蔵助の妻・りくに託すため会う大阪の某所として(神苑の庭に「大阪」とテロップが)使われた。
池中亭への橋 咲き初めた菖蒲
京都市右京区梅津フケノ川町

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