時代劇の風景  ロケ地探訪

石清水八幡宮/いわしみずはちまんぐう

 京・大阪の境で、宇治・木津・桂の三大河川が合流し淀川となる。川は両に山が迫った狭隘部を流れてゆく。西に天王山、東に男山が川を挟んで対峙する。
その男山の山上に古来より篤い信仰を集める石清水八幡宮が鎮座する。
創建は古く、貞観元年(859)で、宇佐から勧請した応神帝・神功皇后・比淘蜷_を祀り武家の鎮守として源氏の帰依が深かった。立地が交通と軍事の要衝となるので、鎮護国家の意味合いも濃かったと思われる。社名の石清水は今なお山腹に湧く名水・石清水からきている。帝の御幸も頻繁にあり、男山眼下の木津川・宇治川に架かる橋は御幸橋という。明治期には男山八幡宮の名でも呼ばれた。
現在は厄除けの神様として善男善女の集う、賑やかで華やかな信仰の場である。

楼門 本殿
本殿裏手

 丹塗りの楼門をくぐると檜皮葺きの本殿が見える。現在の社殿は徳川家光の寄進になるもので、前後二棟から成る「八幡造り」様式である。回廊が本殿をぐるっと巡り、外には小祠がびっしり建っている。そのひとつひとつにお礼参りをして歩く人の姿が絶えない。

 鬼平犯科帳7「木の実鳥の宗八」では、富岡八幡宮にうさ忠連れで詣でる長谷川平蔵のシーンがここで撮られている。そこで侍が掏られた財布に、怪しげな大店の間取り図が入っていたことから事件が展開してゆく。スリが中味を抜いた財布を捨てるシーンは本殿裏手の祠付近で、瓦を練りこんだ塀も映っている。
鬼平犯科帳8「穴」では引退した盗賊・平野屋が詣でる川崎大師として使われている。
神谷玄次郎捕物控「闇の穴」では盗賊・音止の松五郎が富商・松葉屋を活け込みにかけるくだりで、富岡八幡宮として使われている。
暴れん坊将軍では、久能山東照宮や烏山藩領の神社として、本殿やその裏手が使われている。

 石清水八幡宮は池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」および「仕掛人・藤枝梅安」においても登場する。鬼平は京都奉行所与力の勧めで奈良へ行く際にここで宿泊し、梅安は彦次郎とお伊勢参りのついでに入洛した際に詣でている。鬼平第一シリーズ兇剣では石清水参詣のシーンがあり、本物のここが使われてなかなか贅沢。

安居橋

 山裾をめぐる川には、太鼓橋が架かっている。西には山、東には蔵が見える。
暴れん坊将軍 II 「美女三千!呪われた大奥」では、謀殺された姉の仇をとりに大奥へ潜り込む娘が実はお局さまの娘という設定があり、上様がそのお局を説得するシーンが安居橋で撮られた。欄干と蔵を背景に使ってあり、まわりにいっぱいある「映ってはいけないもの」は巧みに避けられている。

頓宮

 頓宮はよそでいう行在所や御旅所のこと。頓宮の称は、このやしろの格を示す。
水戸黄門33「将軍を狙った男」では、久能山東照宮として使われた。タイトルの通り、将軍暗殺の企みがなされるが、スコープつきの銃で綱吉を狙う男は、サイトに妹の姿を見て発射できずに終わる。この作品では、頓宮の広々とした白州を効果的に使ってある。
2005年の国盗り物語では、油神人とのトラブルで掛け合いに来ている「奈良屋庄九郎」のくだりで使われた。設定は、その油神人が戴く「石清水八幡宮」である。庄九郎はこのあと詭弁を用いて油屋を再興するお墨付きを貰い、奈良屋を山崎屋に変えて事実上乗っ取ってしまうという、狡猾にして痛快なお話が展開される。

京都府八幡市八幡

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