時代劇の風景  ロケ地探訪

菩提の滝

 10mほどの小さな滝は北山杉の植林地帯の奥にひっそりと落ちている。
清滝三尾のまだ奥、中川の里から東海自然歩道となっている林道を沢ノ池のほうへゆくと、道脇にお不動さんが祀られている。その下に菩提の滝が落ちている。道からも滝上が見えている。
この滝の壺に溜まるきめの細かい砂は名産の北山杉の丸太磨きに使用される。

 続続・三匹が斬る!「謎の邪馬台国!王冠を守る霊感美女」では肥前・吉野村の山中の滝として使われ、タイトル通りの卑弥呼の金冠と怪しの石棺が滝裏に隠されているという設定で滝周辺が使われた。金冠を献上して勘定奉行に成り上がろうとする代官の手先と三匹がラス立ちを滝下で繰り広げる。
同「花嫁の首恋しや妖怪鬼八」では千石に暗示をかけて村人を襲わせ人心を騒がせる怪しの行者・幽海上人が潜む「鬼の滝」として使われた。設定は日向・高千穂村である。鬼の滝は鬼八伝説を持つ鬼首山(おにこべやま)にあるとされるが、横溝正史作品のパロディと思われる。
 そのほか、東映がヤクザ路線を突っ走っていた頃撮られたエログロ時代劇の尼寺(秘)物語(マルヒ物語)でも使われたという。必殺!ブラウン館の怪物たちで死闘の場となる洋館を見下ろす滝上に立つ政のシーンもここと思われるがちらっと部分しか映らない上に夜間なので判りにくい。萬屋錦之助最後の出演作となった鬼麿斬人剣で冒頭ヨロキン演じる刀鍛冶・清麿が自刃し身を躍らせるのはここだと思ったのだが、滝のスケールが違うような気もする。
北大路版子連れ狼でも使われ、大五郎が汀にいる。


 夜間の撮影も行われるが、昼間でも鬱蒼と繁った木々に覆われ滝壺あたりは真っ暗。滝上に焦点を当てて撮ると上の通り。でもこうやると上の道のガードレールが丸見えになってしまうのだった。ライトを思いっきり当てれば見えなくなるかもしれない。


 滝へ下りる道も、滝壺周辺の河原も水気立ち込め濡れ濡れと滑りやすい。こんなところで大人数を入れて立ち回りを撮るなど、スタッフの苦労さぞやと思われる。だいいち上の道は狭い林道で、駐車スペースすら満足に無い。ましてやロケバスであそこを走るなんて、考えただけでもぞっとする。ふだん何の気なしに見ているが、ワンカットの裏に尽くされた人事を思うことしきりである。

京都市北区鷹峯菩提

 →菩提滝ロケ使用例一覧


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