時代劇の風景 ロケ地探訪 鷺森神社


西鳥居
桜並木が沿う
スサノヲ命神号
「鬚咫天王」

 鷺森神社は比叡の裾に鎮座する修学院一帯の産土神で、素盞嗚尊(スサノヲノミコト)を祀る。
修学院離宮造営時に座所を遷したが、現在も赤山禅院との関わりは深く、五月に行われる奇祭「サンヨレ祭」には禅院への参詣が行われ、童子による神輿の列が練り歩く。

 境内は鬱蒼とした樹木に覆われ、森厳たる佇まいを見せる。涸れがれではあるが一乗寺川の谷が南を境し、小径は曼珠院へと続いている。
秋には紅葉が境内を染め、春には西参道の桜が華やかである。

本殿 本殿と石段
舞殿 本殿下の手水場

 ここは京極夏彦「怪」の「福神ながし」において陰陽師・洲斎の武蔵晴明社として設定され、本殿が使われている。
強力な陰陽師の本拠として使われた理由には、ここが元々牛頭天王を祀り素盞嗚尊を祀ることによる雰囲気もあるのだろうか。
武蔵晴明社のビジュアルは凝っていて、ここと日吉大社や木島神社が併せて使われ奥行きをつけている。
 鬼平犯科帳「あいびき」では盗賊の手先の神官のいる夢森稲荷として使われた。この神官は二枚目の優男で、棟梁の女房をたらしこみ富商の絵図面を入手する役目をつとめる。この作ではたっぷりと境内各所が使われる。神官が棟梁の女房と逢引に出かける際出てくる社務所にまんまここの社務所が使われているし、市中へ赴く際渡る橋は一乗寺川の石橋である。また、女との密会をネタにチンピラに強請られるくだりでは舞殿が使われている。盗賊一味のアジトは社近くにあるという設定なので、火盗改の人数が囲む薄明のシーンも境内各所を用いている。
同じく鬼平「うんぷてんぷ」では、「本所の銕」が義母を殺めようと思い詰めた際、諭してくれた同門の弟分との永訣の場に使われた。二十年の月日を経て盗賊の用心棒と成り果てている弟分は、平蔵の腕の中で息絶えるのだが、その橋は下写真右の一乗寺川の小橋である。設定は芝の鷺森神社。

社務所(工事中) 曼珠院への道 橋下は一乗寺川
 剣客商売[藤田・渡部版]「いのちの畳針」でもここが使われた。病を得て療養中の秋山小兵衛の弟子・植村友之助がスケッチをしている大塚・本伝寺門前界隈という設定である。大治郎が通りかかり話しかけるシーンでは下写真のアングルが使われ、植村は石段に腰掛けている。このあと為七が旗本の若侍に因縁をつけられ斬られかかるシーンは、本殿西の林間で撮られた。為七の危難を救うため植村の放った畳針が若様の目に刺さる緊迫した場面が続く。江戸の内ではあるがむしろ郊外、と原作にある大塚の情景描写には適したロケーションと言える。
境内

京都市左京区修学院宮ノ脇町


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