時代劇の風景  ロケ地探訪

彦根城

 彦根の風景の特徴はお城に尽きる。三層の天守が緑の中から顔を出すさまが町のそこここから眺められる、絵に描いたような城下町である。
廃藩置県により各地の城が毀たれたなか奇跡的に残った戦国の城のひとつで、一帯が特別史跡指定を受けている。琵琶湖八景の月明の古城としても知られる。時代劇には姫路城と並び多用される。天守はじめ城内各所が使用されるほか、付帯する大名庭園・玄宮園も使われる。
天守 天守 天守
 天守は三層の優美なつくりで、上二層の花頭窓を大きな特徴とする。屋根も複雑に諸様式を組み合わせたもので、独特の調和を見せる。
 天守は、主に江戸城として使われる姫路城と異なり、地方大名のお城として使われることも多い。使用されるアングルはさまざまで、樹木のなかから天守がちょこんと頭を出す遠景などもなかなかキマっている。
大手橋 天秤櫓 西の丸三重櫓
佐和口多門櫓 佐和口多門櫓 彦根城博物館
 内濠に架かる大手橋と天守入口となる天秤櫓は、そのまま大名行列がゆく通路として使われるほか、早馬が走ったり訴状を持った民が取り押さえられたり荒くれ武者が開門を呼ばわったり、時には大立ち回りの舞台にも使われる。ことに天秤櫓はさまざまなアングルで使われ、高い視覚効果を上げる。忍者ものなどにはうってつけの素材である。
 西の丸三重櫓はよく御金蔵として設定される。金蔵に用事があるのは主に盗っ人であるから、夜間のシーンも多い。小谷城天守を移築したと伝えられる重厚さが江戸城の御金蔵としてぴったりである。
 佐和口多門櫓は登城シーンによく使われる。濠わきの桜や老松がよい縁取りとなる。濠と石垣と櫓が調和のとれた画を作り出す。
 彦根城博物館は表御殿を復元して作られた新しいもので、近寄って見ると戸はサッシだったりするが、ドラマのひとこまに使われるととてもそんなふうには見えない。
暴れん坊将軍4「大奥の女」では大奥の御殿として設定され、上写真の濠外からのアングルのほか土手上も使われ、建物に寄っての画もある。
玄宮園 臨池亭 玄宮園 魚躍沼と龍臥橋
玄宮園 鳳翔台越しに臨池亭 玄宮園 龍臥橋
 玄宮園は四代彦根藩主の時に造られた大名庭園で、広々とした池泉を特徴とする。池に張り出した臨池亭越しに天守を望む風景は絶景と言える。臨池亭では懐石料理をいただけるほか、宿泊も可能である。
近江八景を模してデザインされた庭には築島あり芝地あり木橋あり茶亭ありと趣向が凝らされているが、広さゆえ息苦しさは些かも無く明るい。
 ここは将軍や大名が逍遥するお城の庭としてよく使われる。
暴れん坊将軍では、池畔でじいと戯れていたり、橋上で鯉に餌をやっている吉宗の日常が描かれる。京からお公家さんが来た折には鳳翔台で接待のシーンなども見られる。お公家さんはあまり良い話を持って来ないので、上様は縁先で仏頂面して池を眺める、などという画も多い。この際には千代田のお城ではなく、御浜御殿という設定のこともある。
平成版大奥でも使われた。家定将軍が正室・篤子に己を手水鉢の亀と自嘲まじりに語る橋は、龍臥橋である。
北大路欣也版子連れ狼では「魔性の姫君と世継ぎの陰謀」において、鳥羽藩の隠居・静山公とその愛妾に迫る拝一刀の姿が池畔に見られる。ここでは隠居所という設定。
 洛中の枳殻邸とよく似ているが、橋のつくりと規模が異なるのと、天守が見える点が識別ポイントである。

彦根城ロケ使用例一覧

滋賀県彦根市金亀町


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