時代劇の風景 ロケ地探訪  広沢池 東岸

 東岸は汀にヨシの群落があり、堤に桜並木が続く。枝が池に張り出しているところもある。
この立地を生かして、主に水辺のシーンに用いられる。擬えられるのは、海浜や大きな川の末流である。池としての使用ももちろんあるが、諏訪湖に擬えた無茶な例もある。
シチュエーションで多いのは渡し場、船着き、漁師小屋のある海浜、大川端などである。あまり水辺を映さず、街道筋に使うこともある。
東岸汀から北望 東岸堤から南望

 東岸に立ち北を見ると山、南を見れば道路と宅地。これでは海辺には不適当な気もするが、アングル次第で変幻自在。夜間撮影も多いが、周囲にはびかびかした照明をぎらつかせる施設は少ないのでよい画が撮れる。この風景は、京都撮りの時代劇を二三見ているとほぼ映っている。ここをレギュラーのロケ地としたドラマもある。
必殺商売人では正八のねぐらが東岸で、高灯台をあしらって根津の浜を表現している。十手無用 九丁堀事件帖では、東岸の草むらに願いの筋を訴える稲荷が据えられた。

東岸汀 ボートから 北東岸汀 ボートから
 ヨシの群落は北へ行くほど密になる。ヨシ原から汀が見えるところでは立ち回りが行われ、ヨシの群落が旺盛に茂るところには抜け荷の船が潜んでいたりする。ここは池の水がいちばん停滞する部分で、水はアオコのせいで緑色。顔を近づけてみると、とろんと濁った水には緑の粒子が見えるし、臭う。
なのにここは、広沢池ロケでもっとも水に入ることの多い場所なのである。殺陣が勢いあまって水に入ったり、船着きで紛争があり水に落ちたりと、衣装を濡らしての見せ場がいくつも撮られた。女優さんも怖じることなくざんぶと水に入ってゆく。必殺仕事人V「加代、五千両の金塊を拾う」では、加代が金を隠した弁天像が二十年に一度の奇祭で池に沈められてしまうというくだりで、弁天さまを必死に追う加代はざぶざぶと水に入ってゆき胸まで浸かっている(設定は田舎の池)
東岸堤 北望 東岸 西望
 桜並木の沿う堤もよく使われる。増村保造監督の映画刺青では、大川端をゆくお艶の姿が堤道に見られる。
テレビ時代劇でも多用され、暴れん坊将軍が走ってきたり、長七郎ぎみが釣りをしていたり、河内山宗俊がのし歩き、銭形平次が考え込み、遊び人の金さんが死体を見にきたり、圧政に泣く娘の話を聞く縮緬問屋の御隠居がいたりする。
北東岸 夏 北東岸 冬

 池の北東には団体所有の民家がある。民家でのロケは無いが、遠景に拝借しているケースがある。
雲霧仁左衛門(山崎努版)では水の無い池越しに、鬼平犯科帳では根岸の風景としてドラマを彩っている。篠田正浩監督の映画梟の城では、堺の豪商・今井宗久屋敷のイメージ。

ボートから北西岸を望む
 船着きが東岸にセットされ、船出してゆくシーンも多く撮られる。
渡し場だったり、御赦免船の着く霊岸島だったりとさまざま。
広沢池の西方には農地が広がり、建物が少ないので大海も表現できる。
子連れ狼(北大路版)では、潮来への渡し舟に乗る拝父子の姿がここで撮られている。大五郎が船端から笹舟を流す印象的な場面がある。

☆広沢池ロケ使用例一覧 ・1979年以前 ・1980年代 ・1990年代 ・2000年以降

広沢池表紙   広沢池西岸

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