時代劇の風景 ロケ地探訪 石座神社

鳥居 石座(いわくら)神社は、その名の通り磐座を祀った古いやしろ。今は奥に二基の祠があるが、元は現在の山住神社の場所にあり、ここの拝所の奥には巨岩が残っている。岩は、都の守りとなる北の磐座といわれる。
岩倉具視が隠棲した屋敷などが残り、療養所も多い静かな里の鎮守では、十月に火祭りが行われる。

 鳥居の前は生活道路だが、もうここから使用例がある。吉宗評判記 暴れん坊将軍「春遠し凶賊の母」では、め組の面々と愛宕下に娘手踊りを見物にゆく新さんの姿が鳥居前にある。この帰途寄った団子屋で、密かに綱吉の遺児を育てている苦労人の女と出会う設定。

 実相院前のバス停を北にゆくと宅地を縫って参道があり、神社へ続いている。
鳥居をくぐると石段がまっすぐ舞殿へ続き、二段になっている。踊り場の左右には長屋がある。
上写真の、石段の奥に舞殿を見上げる構図はよく使われる。

 吉宗評判記 暴れん坊将軍「寿限無寿限無のニセ小判」は、贋金作りの罪で遠島となり赦されて帰還したかざり職人が再びワルの一味に引きずり込まれかけるお話。男は飴細工の行商をしており、孤児院を創設する夢を抱いている。子らを寄せるその姿が、石段の中ほどに見られる。設定は大鳥神社のお酉さま。よく喋るこの飴売りを、笑福亭仁鶴が演じている。
 源九郎旅日記 葵の暴れん坊「「孤剣に賭けた越後の女」は、新潟奉行所で不正と闘う剣友の危機を「お控様」松平源九郎が救うお話。腐敗した奉行所の内情を源九郎に話すくだりで、二人が座っているのがここの石段。背後には舞殿がきれいに映り込んでいる。もちろんここでは江戸でなく新潟の宮。
長屋
 石座神社が使われるシチュエーションはほぼ江戸の神社で、たいていの場合縁日で賑やか。参道脇に露店などがセットされるが、この際踊り場の両脇にある長屋が高い効果をもたらす。

 吉宗評判記 暴れん坊将軍「お庭番非情!」では、上様直属の女お庭番・おそのの厳父が出府した折り、め組の喧嘩に介入しならず者を捻り上げる姿がこの境内に見られる。この際には踊り場に露店が出ていて、ここで喧嘩が起こる。その背景に長屋が映り込み、わざわざしつらえたような格好になっている。同シリーズ「初春や昼行燈も浮かれ出し」では、不正を働く奉行に怒った若侍たちが決起し気勢を上げる愛宕神社として使われた。この作品では鳥居から石段、舞殿に拝殿まで各所が使われるが、長屋の前で若侍の一人が密殺されるシーンがあり印象的。この際は露店はなく、ひとけの無い鎮守といった態。

 石段から鳥居を見返る構図もよい眺め。このアングルでは境外の民家が映ってしまうのだが、工夫して使われる。

 吉宗評判記 暴れん坊将軍「俺は天下の鼻つまみ」は、町の無頼漢が上様と知り合うユーモラスな一話。定職に就かず強請りたかりで日銭を稼ぐ無頼・車坂の権九郎は、縁日で金を持っていそうな侍に目をつけ強請りにかかる。これが上様で、気の毒がって小判を出したりする。この場面が上写真の鳥居を見下ろすアングルで、新さんが鳥居をくぐってやって来る姿が無頼の目にとまってしまうのだった。このあと権九郎たちは吉原の牛太郎に囲まれ大喧嘩となるが、このくだりは長屋前の踊り場で撮られている。殴られる権九郎は志賀勝、殴る牛太郎の一人に福本清三と何やら豪華な場面だったりする。
本殿 本殿前の石段 一言主摂社
 本殿他の施設も使われる。祠は左右対になった珍しいもので、ちんまりと小さく可愛い。本殿前には石段があり、一段高い場所に玉垣を巡らせる。脇には蔵や、一言主を祀った摂社もある。
暴れん坊将軍 II「五郎左を寝取るか、詐欺女!?」は、「じい」加納さまが年寄り専門の詐欺師に目をつけられるお話。加納さまはお参りに出かけた際その女と出会う、その神社がここ。拝礼のじいの姿が拝殿前にある。このほか、踊り場の長屋前に茶店がセットされている。同シリーズ「恋の宴はせつのうおじゃる」は、珍しく上様と相愛になる公家娘の哀話。徳田新之助として姫とデートの上様の姿が境内にある。新さんを待つ姫の前にお面をつけておどけて現れる新さんの背後に、一言主摂社の石鳥居が映り込んでいる(ドラマでは手すり無し)。このときは石段に派手に祭礼の幟が立てられ、舞殿の前に靡いている。
京都市左京区岩倉上蔵町

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