時代劇の風景 ロケ地探訪 普済寺

総門 平安期の創始とも、足利尊氏が夢窓国師の弟子であった妹・千種姫をして開基せしめたともいう古刹。
一時荒廃し、寛永年間に亀山城主が禅師を招いて復興、曹洞宗の寺となり現在に至る。
本堂と道を隔ててある仏殿は南北朝のものと伝わる重文。ぴんと反った軒、珍しい様態の花頭窓が美しい。
右写真は総門
参道と門
 斬り捨て御免!は中村吉右衛門が豪快な鬼番所頭取として八面六臂の活躍を見せる痛快作。たいていは江戸の町でのお話だが、事あらば遠征もする。
「狼の仮面を斬れ!」はそうした一話で、舞台は上州。血気にはやる若侍たちが討つべしと狙う城代家老が実は…というパターン。若侍の一団が城代の娘をさらいに来るくだり、娘が出てくる寺の門が上写真と同じアングルで参道を前に撮られている。ほんのワンカットであるが、苔の緑が印象的で鮮烈な印象を与える。劇中では楼門の両翼が木の塀であるが、現在は漆喰も真新しいきれいな塀となっている。楼には鐘が据えられているが、画面では判りづらい。
写真の楼門は道路と反対側になり田んぼに面していて、苔道の参道からの訪問者はあまりいない。厚いカーペット状で、緑が目に染みるとても美しい一件である。
門(内側)
 あばれ八州御用旅の第四期「妻恋街道 流れ旅」では、凶盗にさらわれ売り飛ばされた女房を探して三年も旅にあった江戸の岡っ引が、幸せそうに赤子を抱いて夫と参詣の女房を見るくだりで使われた。数奇な運命を経て今は幸せと寺僧に聞いた元岡っ引は、落胆するものの男らしくあきらめ何もせず立ち去る。後段には、女房と同名の女郎を身請けしてやったエピソードも用意されている。使われたのは本堂前と門に参道。岡っ引は門のところで顔を伏せ、女房だった女が通り過ぎるのを黙って見ている。設定は鳴沢宿・妙泉寺。
加藤剛が異様に強い医者を演じた刺客街道では、道中師の女の口車に乗ってすっからかんになり、刀も衣もとられてクシャミしながらくぐる賭場開帳の寺の門。
盤嶽の一生最終話「二人ばんがく」では、にせ盤嶽とバレたあともいい加減なことを言う浪人に、胡散臭そうにしながらも妹の身請けのための金を渡してやる盤嶽の姿が門に見られる。大仰に有難がる浪人に手を振りつつ、盤嶽は参道を去ってゆく。
伊丹万作監督の傑作サイレント映画をリメイクした、中井貴一主演のコミカルな映画国士無双では、騙りのネタを探している食い詰め浪人たちが「木枯し紋次郎」そっくりの渡世人を見かける閻魔堂として使われた。道中合羽を翻し参道をやってきた男は、長い楊枝をぷっと門柱に吹き刺し、黙って立ち去る。
門から見た参道
 西郷輝彦演じる影の八州が悪を斬る、痛快ロード時代劇あばれ八州御用旅の第三期「風が泣いた宿場の女」では、門と萱葺のお堂が使われた。悪代官が、情婦である宿場の女将と組んで阿漕な稼ぎをはたらき民を苦しめる話で、二人の密会場所の寺がここ。夜さり代官に会いにやってくる女将の駕籠が門前につけらけれる。梯子のシルエットが面白い効果。左写真の萱葺のお堂は手下の放火犯が匿われている山荘として使われている。設定は、日光例幣使道の木崎宿。この作では、斬り捨て御免と違い現在と同じ漆喰壁。
仏殿 仏殿前から門を見返る

 同じくあばれ八州御用旅の三期「てるてる坊主が泣いている」では、仏殿の前で大立ち回りが行われている。
お話は、女の親の薬代のためやばいヤマを踏んで土地を離れた男と、男を待ち続けた女が、ワルに陥れられ悲劇をみる哀話。男が「待っていて受け入れてくれるなら軒先にてるてる坊主を」と女に文を書く、幸福の黄色いハンカチみたいなエピソードがある。三年前の殺しの真実がバレては困るワルどもは女を拉致して男を呼び出し始末しようとする、その場が仏殿前。門から御堂に、脇の祠も使って大人数の立ち回りが繰り広げられる。設定は上州駒留宿。

京都府南丹市園部町若森

・ロケ地探訪目次 ・ロケ地探訪テキスト目次 ・ロケ地資料 ・時代劇拝見日記
・時代劇の風景トップ ・サイトトップ