翔べ!必殺うらごろし

1978-1979ABC/松竹

キャスト
先生/中村敦夫 おばさん/市原悦子 若/和田アキ子
正十/火野正平 おねむ/鮎川いずみ

大内辻堂 話の起こりには必ず超常現象がある、オカルト風味の時代劇。評価が割れ、必殺シリーズを終了一歩手前に追い込んだとの説も囁かれた異色作。
 主人公の「先生」は太陽を拝む修行中の行者で、死人の声を聞くなどの特殊能力を持つ。草木を食し襤褸をまとい超然とした先生は当然社会にうとく、正十に「修行不足だ」などとからかわれたりする。弱き者の怨嗟を聞きワルを仕置する殺し屋でもあるが、タイプは何に属するか弁別し難い。武器には常に携行している旗竿を用いて串刺しにすることが多い。
「おばさん」は記憶を失ったプロの殺し屋で、いつの日か我が子に巡り合うのことを望み先生に付き従う。その殺したるや、ターゲットに世間話を仕掛けながら近づき匕首でずぶりとやるという手口で、毎回の台詞が出色のユニークさを持ち見所となっている。
「若」は大柄の容姿にコンプレックスを持つ女性で、殺し屋としてのカテゴリーは怪力系に属する。サンドバッグたこ殴りや印玄ふう階段落としなど技は多彩。正義感の強い情にもろい面を持つ。
「正十」は諜報担当の走り役で直接の殺しはしない。一行の世話役で、欲が強い割にいつもピーピー。正体は初回おばさんに「この人は江戸で殺し屋していた人」と言われたとおりの正八と思われる。
「おねむ」は熊野権現の札売りを生業とする歩き巫女。いつも眠そうにしている彼女もたまに囮役などで仕置に関わってくる。決まり台詞は「熊野権現の護符、いらんかねー」。


第1話「仏像の目から血の涙が出た」1978.12.8

 チームが集まる「起こり」の一話。求心力となる怪異現象は、表題の通りの昔川に流された巡礼の子の呪いとされる村はずれの祠の仏像。

ロケ地
・先生がおばさんの過去を探る河原、大堰川河川敷。巡礼の子を流す川も同所か。
・村人が血の涙の仏の件で集まる庄屋屋敷、民家門
・先生が泊まる荒れ寺、丹波国分寺。門前にはさ木あり、葉をつけている。境内の乳銀杏(気根もしっかり映っている)から葉っぱをとる先生、これで青汁製作。
・成敗のボタ山、砕石場だが通常の撮影より奥まで入ってのものか。普通はもう作業を終えて植林をはじめた所が使われる。危なっかしい足場の悪い所ゆえ映像は迫力満点。
*おばさん殺し文句/「ちょいと落としたよ、こっち来てごらん」「これから落とすんだよ(ここで刺す)おまえさんの命だよ」


第2話「突如奥方と芸者の人格が入れ替わった」1978.12.15

 表題通りの怪異、代官の奥方に起きた異変から悪事が暴きだされる。

ロケ地
・人格交替の謎を解きに上州漆ケ原へ向う一行、山中の風景は酵素
・漆ヶ原代官所、大覚寺明智門
・一行の泊まる熊の湯、落合橋下手左岸の旅館
・先生と若、代官所に忍び込む際伝う堀、御殿川有栖川
・代官の奥方を伴い朝日を拝む巌頭、保津峡落合落下岩
・昇進し江戸に向う代官を襲ううら殺チーム、谷山林道
・おばさんの殺しは大内付近の田畔か(刺しながら薄をかきわけ)
・先生が馬上の代官を待ち受ける道、大内辻堂亀岡道
・おねむ居残りの道端のお堂、大内辻堂
*おばさん殺し文句/「この道をずうっと行くと(ここで刺す)地獄へ行くのさ(ここで抜く)」


第3話「突如肌に母の顔が浮かび出た」1978.12.22

 怪異に隠されていたのは過去の真実。哀しい母子のドラマ。

ロケ地
・一行が泊まる荒れ寺、丹波国分寺。ボロボロの室内はセット。最初に門脇の塀が映るが現在は無い。後段、母に会いにゆく真之介を見送る若のくだりは門。畑で泥棒の正十と若は国分寺付近と思われる。
・行商中のおばさんが若侍・真之介が倒れているのに出くわす、下鴨神社泉川
・真之介の悪夢に出てくる母拉致シーン、相国寺大光明寺南塀際。
・真之介の母・志乃と正十・若が話す川原、大堰川河川敷。
・志乃と真之介が弁覚に斬られる林、下鴨神社・糺の森河合社付近。
・修験者一行の仕置、酵素(小川、木、河川敷)
・先生が朝日を浴びて走り出すのは谷山林道
・おねむが祈る川原の墓標、大堰川河川敷。
*おばさん殺し文句/「お坊さんお坊さん芋よく焼けてるよ。物識りのお坊さん、いろは数え歌教えとくれ、いろはのいの字は何てぇの」「違うよお坊さん、いろはのいの字は(刺す)命頂きますの「い」ですよ(抜く)」


第4話「生きてる娘が死んだ自分を見た」1978.12.29

 殺される自分を幻視する労咳病みの娘、その超常現象で毒を盛られていたことも父の死の真実も知るが、抗う気力は残っていなかった。

ロケ地
・百舌屋の娘・うめが女中に外出を咎められる神社、今宮神社境内。
・宿場に向かう一行が転地先へ向かう途中咳き込んだうめを見る道、北嵯峨農地竹林際。
・転地先の女中の実家、不明(萱葺き民家)
・一行が夜営する林、下鴨神社糺の森河合社裏手。
・当地を去る一行、北嵯峨農地田畔か。
*おばさん殺し文句/「(刺して)声が大きいよ、静かに地獄へ行きな(抜く)」
*先生、娘の「薬」を呑んでみて苦しみのた打ち回り、でも寝てれば治ると構って貰えない。毒を盛っていた医者にはキツいお仕置、足首つかんでブン回し・崩れ人間風車も披露。


第5話「母を呼んで寺の鐘は泣いた」1979.1.5

 娘の呼び声を聞き女郎屋を脱け出す母、足を痛め動けぬ山中で鐘の音を聞く。その、寺へ納められた新造の梵鐘は、誰も撞かないのにひとりでに鳴り出すのだった。

ロケ地
・宿場女郎のお袖が娘を探し回る水辺、大覚寺大沢池(対岸の堤・水門際を鐘を積んだ大八がゆく)。捕えに来た男衆から身を隠すのは護摩堂裏。
・鐘を積んだ大八がゆく道、谷山林道頂上付近(お袖はそこから見える向かいの山の崖道に。付近の木は一面伐採されている)北嵯峨農地田畔。
・鐘が納められる寺、西壽寺(おねむが気のないふうに座り込んで護符売りの声を上げるのは山門前、式にやって来た村人は無視して門をくぐってゆく。「鐘」にはもちろん鐘楼が使われ、石段から見上げの本堂の画では石塔が映り込んでいる)
・先生が鐘の音を聞く野原、北嵯峨農地、お袖を支えて歩くおばさんは竹林脇。
・鐘の行く先を追う先生、山道は御室霊場か。
・鐘の怪異の訳を知った先生が走る道、大覚寺放生池堤。おばさんらと落ち合いお袖の死を聞かされるのは護摩堂前。
・お袖の死体を見る先生たち、広沢池北西岸(水無)
・太陽パワーを充填する先生、桂川松尾橋上手右岸汀(このあと川中を走りだす)
・当地を発つ一行、大覚寺大沢池堤(水門は木製)
*怪事の起こる鐘の描写は更にエグくなり、布でぐるぐる巻きにされても鳴り響いたり。寺で鳴る鐘にパニくる人々に一儲け思いつく正十の煽り文句は「悪い祟りは元から断たなきゃダメ」、当時やっていた消臭剤「シャット」のCMパロ、元は確か「臭いぞ臭いトイレは臭い、臭いにおいは元から断たなきゃダメ!」で、黴菌のアニメだった。
*おばさん殺し文句/「火入れといたよ、ほら御覧あんまり熱いんで汗びっしょりだよ(刺す)言われなくたって出ていきますよ(再度深く刺して抜く)炉に入れられちゃかなわないよ」…これに先立って鋳物屋の若旦那を「誘惑」する血も凍るくだりもある。


第6話「男にかけた情念で少女は女郎に変身した」1979.1.12

 女郎に岡惚れした宿屋の若旦那が騙され、女ともども殺されてしまう事件。怪異は若旦那を慕っていた少女に起きる憑依現象、殺された女郎が少女に乗り移り真実を見せる。

ロケ地
・夷の縁日で縁起物の笹を売るおねむ、今宮神社高倉前。おばさんが先生を売り込むのは高倉脇坂下。後段、若旦那と女郎の死体が心中に擬され置かれるのは坂中ほど、おぶわれて駆けつける宿屋の主は楼門。
・若旦那と女郎が駆け落ちの途中殺される河原、桂川松尾橋上手・中州流れ込み際汀
・先生の霊視で見える、若旦那と少女が遊ぶ林、下鴨神社糺の森
・当地を発つ一行、広沢池東岸(水無)、池底に群れ羽繕いのコサギ越しに東望。
*おばさん殺し文句/女郎屋の前でおねむの口真似し手先を誘い出し「違わないよ、あげるよタダで。要らないのは(刺す)あんたの命だよ(抜く)」「婆さんなんて言われちゃたまらないよ」


第7話「赤い雪を降らせる怨みの泣き声」1979.1.19

 窯場跡に降る赤い雪、脅える幼女。その出自は皆殺しとなった陶工一族の裔、積もりつもった過去の怨嗟を先生は聞く。

ロケ地
・山籠りの先生と若、砕石場か。
・諸大名の使いが押しかける陶夢斎邸、大覚寺明智門
・欲をかいて窯場跡へおねむを誘う正十、五社明神か。
・先生と正十が連行される晒し場、砕石場か。
・窯場跡の御狩場、酵素河川敷に幔幕張りめぐらせ。
・当地を発つメンバーに陶器を売った金を分配する正十、谷山林道か。
*幔幕の中に漂う香ばしい匂い、おばさんが肉焼く煙。誰何する役人に「見ればわかるだろう、御狩場焼きだよ、旨いよ、どうだいおあがりよ(焼鳥差出す、食い乍ら鳥の出所を聞く役人に)そうだよ(刺す。念入りにずぶずぶ刺す)、こうやってね(抜く)簡単だよ」


第8話「足の文字は生まれた時からあった」1979.1.26

 足裏に過去の因縁を印す娘は、過去世でも現世でも同じ役人に虐げられる。凄惨な顛末を知った先生は、郡代のもとに走る。

ロケ地
・鳥追い女に足裏に文字のある娘の所在を訊かれる先生、流れ橋。里人にも同様に尋ねる女、民家前畑。
・役人に追われ逃げる途中崖から落ちるおさき、保津峡落合(役人が走るのは河口、おさきらが追い詰められ落ちるのは落下岩、崖下で先生が足裏に「ふみ」の字浮かび上がるのを目撃)
・郡代の役宅、大覚寺明智門。おさきの解き放ちを門前で待ち連れゆく先生、参道石橋
・正十がおたみを探しに走る道、大覚寺放生池堤護摩堂前で見つけ引っ張ってゆく。
・先生がおさきを幻視する巌、保津峡落合巌頭。
・巡検使が来るに当って郡代は牢の百姓を始末、死体を運び出すのを見ている正十は大沢池木戸越し。
・先生が村はずれの野で太陽パワー充填、日の出と同時に走る道、木津堤。正十も後をついて走る走る、けっこう健脚。同刻、郡代一味も馬で堤を走る。郡代の部下に飛び掛り落馬させ殴り倒す若、背後に木津川河川敷茶畑。郡代が河原へ逃れ巧みな馬術で流れ橋の上から狙う先生をかわす。カメラ、橋の上で左右にせわしなく振る。最後は橋桁にぶら下がった先生に蹴られ落馬、馬を先生に奪われ旗竿で串刺し。流れ橋ロケでも珍しい部類のアクション。
・当地を発つ一行がゆく道、桂川松尾橋下手右岸堤の並木。おねむが寝ていて祠をあしらい。
*徒歩で追いきれず堤下に転び通りかかったおばさんに水をせがむ郡代の手下・長次、おばさんの持つ桶は空。「今汲みに行くところだよ、すぐそこだ。おいで」例の水車小屋へ誘い出す。「とびきり旨い水だよ(刺す)末期の水さ」抵抗され手こずり揉みあい再度刺す、抜いたあと長次が転げ落ちるのはおさきと幸吉が殺された穴、「串刺しにされたらたまらないよ(穴に蓋する)」


第9話「家具が暴れる恐怖の一夜」1979.2.2

 激しいポルターガイスト現象が起こる一軒家で繰り広げられる密室劇、籠められた中で殺人も起きるが、先生の幻視で因縁は明らかとなる。

ロケ地
・冒頭追われる女が渡る川、桂川か。
・おねむと正十がゆく林、下鴨神社糺の森林間〜池跡。野中の一軒家(ポルターガイストの家)を見つけ何か食わせてもらおうと近付く正十、不明(萱葺き民家、他作品でも使用例あり)
・ラスト、バンクフィルムの大内辻堂とボタ山。
*男連中が始末されたあと逃げる「瞽女」は小屋の裏に潜んでいたおばさんに刺される。「悪い親を持ったねぇ(抜く)今度はまともに生まれておいでよ、いいね」


第10話「女は子供を他人の腹に移して死んだ」1979.2.9

 子を思う母の心が起こす奇跡、女が殺される直前接触したおねむの腹に赤子が「移動」。女が孕み、殺されるに至る裏には手前勝手な甲府勤番支配がいた。

ロケ地
・侍に追われるお京が渡る川、桂川か。彼女が辿り着くおねむが居眠り中のお堂、御室霊場お堂(開けた頂上付近)
・正十が町で引っ掛けた「お客」を先生のところへ連れてゆく、金戒光明寺三門
・神田榎坂の旗本・坂崎(元甲府勤番支配)邸、相国寺大光明寺(周囲の描写に大通院南西角の路地や鐘楼、門前で悪企みを喋るのを聞く正十は方丈塀から頭を出している)
・赤猫のあと出頭場所に指定の浅草寺、粟生光明寺門、石段。
・おばさんが牢に火を放った同心を刺す橋、大覚寺勅使門橋
・坂崎が参る先祖の墓、黒谷墓地(若と先生の仕置、超高速で石段を駆け上がる先生や、若の階段丸めてくるくる落しなど)
・ナレーションに被せバンクフィルムの大内辻堂とボタ山。
*おばさん殺し文句「ちょいとお役人さん(用無いと言われ)待って(刺す)用があるのはあたしだよ、夜鷹はいいけど、打ち首にされちゃたまらないよぅ」(注:おばさんは今回夜鷹狩りに遭い入牢)
*事後、先生はおねむの腹を行者パワーで…どうしたのか具体的には語られずラストのガレ場シーンにスイッチ。


第11話「人形が泣いて愛する人を呼んだ」1979/2/16

 等身大の人形を愛でる武士、姿は身請け予定の女郎を写したもの。その目から涙の怪異、次いで口から血。恋人を案じ江戸へ向かう武士だが、彼には上司の企みが向けられていた。

ロケ地
・人形を愛でる菅谷の脳裏の白梅(恋人の女郎)イメージ、大覚寺大沢池畔。
・菅谷と共に江戸へ向かうという先生がゆく道、有栖川畔。
・菅谷に濡れ衣の企みを知らせに走る正十、酵素河川敷(藩の追っ手を追い越す表現に、河川敷を走る正十のうしろにダートをゆく藩士を配する)
・白梅が心中した相手の情婦が入水未遂、罧原堤下汀
・おばさんの殺し、湯豆腐嵯峨野塀際を来て朝鮮石人像前でぶっすり。
・ワルを誘き出し走ってくる正十、大覚寺放生池堤
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*今回おばさんは国許の菅谷家に残り母親の面倒見ているので先生がお日様パワーで仕置相手を伝達。おばさん、菅谷家に息子の処断を報告に来た上役を追いかけ「忘れもんだよぅ(手紙を渡し読むところを刺す)あんたの罪を人が被るんじゃたまらないよ」*今回は先生が刃物で仕留める趣向。


第12話「木が人を引き寄せて昔を語る」1979.2.23

 旗竿がひとりでに動き切株のところで止まる不思議を探る先生、赤子を奪われ殺された若い夫婦が浮上。その木で能面を作ろうとすると更なる怪異が立ち現れ、藩主の奥方と家老の非道が露わとなる。

ロケ地
・正十が村人に聞き込みの道、川堤か(石垣の上に屋根がのぞく)
・面打師が潔斎する白蛇の滝、柊野堰堤(左岸に「作業場」の小屋あしらい)
・田川藩主の奥方が家老と密会する寺、西壽寺(石段、本堂、鐘楼)
・田川藩城イメージ、彦根城か。
・仕置に走る先生、木津堤か。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*若のくるくる石段落しは西壽寺参道石段で。因みに仕置屋稼業での印玄の同技もここで撮られた。
*おばさん/奥方が茶室に逃げ込むところをぶっすり刺す「子供の前でこんなことしたくないよ(刺したあと赤子に掛けてあった覆い布をとって)帰ろな、帰ろな」殺しの帰り、連れていた捨て子の母が見つかり、怒り笑いながら手渡す。


第13話「手が動く!画家でないのに絵を描いた」1979.3.2

 絵師親子が街角で弾き語り絵で解くのは政商の告発、絵師は捕えられ入牢、手鎖の刑に。このあと同心の手が絵を自動筆記し始め、吉野屋の悪行を知った昼行灯は事を糺そうと思い立つも、悪党と結んだ上役に殺されてしまう。

ロケ地
・縊れたお紋が見つかる木、大覚寺天神島大木。
・絵師・浮世亭に手鎖の刑が申し渡されるお白州、相国寺方丈
・先生が「営業」の浅草界隈・正十が呼び込み、粟生光明寺山門
・お紋の墓のくだり、大工を問い詰める正十は粟生光明寺円光大師御本廟石段。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*冒頭、美人局を働き「平山主水」同心に袖の下を要求される正十「昔良く似た役人がいたみたい」が笑える。
*若はボコった末樽で轢き殺し、先生は大屋根から飛び降り串刺し。おばさん/吉野屋の四度目の婚礼のあくる朝、廊下を拭いているおばさん、見かけぬ顔と訝しむのを遣り過ごし厠で用足し中の吉野屋の背後に忍び寄り刺す「見かけない顔には気をつけるんだよぅ」。


第14話「額の傷が見た!恐怖のあしたを」1979.3.9

 頭を打ってから先読みのビジョンを見る正十、それが次々と現実になるのに脅え先生に縋る。彼が見たのは、自分のせいで娘を不幸にしたと自棄になる島帰りの父親。しかしその罪は濡れ衣だった。

ロケ地
・子供を探しに行ったおばさんのことを話す先生と若、相国寺鐘楼
・高崎藩作事方富沢邸、相国寺林光院(門、前の路地)
・仕置に走る先生、金戒光明寺東坂(猛スピードで駆け下り角を曲がってゆく)
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。


第15話「馬が喋った!あんた信じるか」1979.3.16

 飼い主の危機を仲介する馬の口、断末魔の叫びも届く。この不思議が、ニセ八州の悪行を焙りだしてゆく。

ロケ地
・安中までと馬子を呼び止める正十、谷山林道頂上付近。馬の口から出た、助けを呼ぶ声を聞く街道は首無地蔵付近。馬子を探しに走る正十、保津峡落合落下岩から落ちかかっている彼を見る(このあとカメラ目線で「あんた信じるか」)
・若が山籠りの先生と別れる街道、北嵯峨農地(農道)
・馬子が馬に水を飼う川、罧原堤付近桂川汀(馬子が斬り合いを見るくだりはセット)
・安中代官所、民家長屋門
・新任八州の許婚者が腹イタのおばさんを助ける道、北嵯峨か(松の根方)。連れ立って街道をゆく二人、嵐山自転車道
・絹取引所、下鴨神社河合社脇。絹商人が赤谷一家に殺されるのは池跡
・絹商人殺しを見た人夫たちに甘言を用いるニセ八州、民家塀際。代官所へ向かう彼らを止める正十、民家南塀際
・先生がニセ八州を仕置する林、下鴨神社池跡
・加代を見送るおばさん、松尾橋下手右岸堤か。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*ヤサに残った三下に近づくおばさん、「お尋ねしますが。お金が落ちてたんですが代官所はどちらでしょうか」戸をそっと閉め刺す「大事なあたしのお金だよ。落としたりなんかするもんか」、ふふと微笑いながら金を掻き集める。


第16話「病床で危篤の男が銭湯にいた!」1979.3.23

 正十が見る怪異は幽体離脱、銭湯に現れる寝たきりのはずの大旦那。不思議を引き起こす背景は、財産をめぐる醜い感情。博打狂いの倅と好色な娘に愛想が尽きた大旦那は、お気に入りの三助に遺産をやろうとするが、悪党の欲に火をつけてしまう。

ロケ地
・お孝が脅迫される材木置場、斉宮神社脇か。
・番頭が土左ヱ門で見つかる川、中ノ島橋下手右岸河川敷
・仕置に走る先生、河原か(礫)
・以蔵を仕置する若、大覚寺天神島(木に吊るしサンドバッグ殴り)
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*舞台は江戸、おばさんは子探しで不在。何度も出てくる大旦那のエイリアスが見もの。
*正ちゃんの鼻歌は「茂作ぅ〜茂〜作ぅ〜」。


第17話「美人画から抜け出た女は何処へ?」1979.3.20

 絵の女が消える怪現象、絵師と心中した、モデルとなった芸者の心残り。事件の裏には女を食い物にする興行主・村田屋と女形の雪之介、「出て」まで気にかけた妹が籠絡された挙句殺されたとき、絵は涙を流す。

ロケ地
・行の先生の傍らで青汁を飲みウゲーの若、下鴨神社糺の森
・画の持ち主の商人が正十にそれを譲る川べり、下鴨神社泉川畔。おばさんが先生に画を見せるのは河合社脇。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*村田屋の座敷に踊る姉妹の幻影、扇かざしながら入ってくるのはおばさん「村田屋さんわたしを一度でいいから舞台に出さして下さいな。お願いしますよ」(刺す)「あたしゃ芸は無いけど男を食い物にしたりしないよ」(抜く)「舞台に立ちたいねぇ」。
*雪之介を仕置する先生、芝居口調で珍しくターゲットに呪詛「地獄へ行きやがれ」、殺し技はいつもの串刺し。


第18話「抜けない刀が過去を斬る!」1979.4.6

 おばさんの過去が垣間見える一話、誰にも抜けぬ刀がおばさんの手で怪しの光芒とともに抜ける不思議。刀は、四年前暗殺された、藩政改革を唱えた学者・安田一輝のもの。訳もわからず城代屋敷や一輝の墓をうろつくおばさんに、「なぜ戻ってきた」「まだ四年しか経ってない」「二度と現れるな」と告げる城代の手下。そうこうするうち一輝塾の若者たちは逸り決起するが、待っていたリーダーは来ず討手が現れる。

ロケ地
・この町が気になると座り込むおばさん、大覚寺放生池堤(橋たもとの池端に茶店あしらい)
・城代の駕籠を襲う一輝塾の若者たち、相国寺鐘楼まわり〜方丈塀際〜大光明寺南路地(ここで斬り込み)。正十とおねむが鐘楼入口でいちゃついていて目撃、怪しい奴と捕縛される。
・安田一輝の墓、黒谷か。
・城代屋敷、相国寺林光院(内側からの撮り、誰の屋敷か問うおばさんの背後に大通院の塀と屋根が映り込む)
・一輝塾残党のリーダー・小四郎が家老に呼びつけられた事を知らせに走る若侍、大覚寺放生池堤
・決起の集合場所へ急ぐ若侍たち、鳥居本八幡宮広場。集合場所の鎮守は舞殿(全員討たれる)
・仕置に走る先生、木津堤か(12話のバンク?)
・若が城代の手下を引きずり落とす橋、広沢池観音島。仕置は西岸の葦原。
・小四郎を仕置する先生、相国寺大光明寺南塀際。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*牢に入れられた正十「我々は無実だ!罪無き者を解放しろ!権力の横暴を許すな!」と吠える。おねむにも共にシュプレヒコール挙げることを促し「我々は無実だ!」とやるのに呼応したおねむは力強く叫ぶ「熊野権現の護符、いらんかねー!」。
*過去の「刺客」のおばさん、なりは忍者ふう黒装束。*ひたひたと廊下を歩むおばさん、一輝の刀抜き放ち家老を斬「この刀に取り憑いた呪いを解いてやって下さいな」(争い金魚鉢倒す/再度刺して抜く)「これでもう抜けなくてもいいよ」(金魚を鉢に戻す)。


第19話「童が近づくと殺人者が判る」1979.4.13

 父の死をきっかけに霊感を持つ少年、能力は殺人者を言い当てること。怪しく緑に光る彼の目は、父を殺した悪党を過たず見抜く。

ロケ地
・漆ヶ原代官所、大覚寺明智門
・おねむが居眠りの池端、大覚寺大沢池畔。
・芳坊と遊ぶおねむ、金戒光明寺石段(正十が来て江戸で大儲け等と持ちかけ腕を噛まれる)
・芳坊の母の回想、最後に亭主を見た水辺、桂川畔か広沢池か。
・権三の死体が代官所から運び出されるのを見る正十、大覚寺御殿川の中。
・役人に権三の十手を見せ誘き出す正十、走って逃げる橋は参道石橋。追った侍がおばさんに仕置されるのは御室霊場大窪寺裏手・宝筐印塔脇。
・まだ欲をかいている正十に芳坊の霊感はもう無くなっていると告げる若、金戒光明寺三門下。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*芳坊を見て欲をかく正十が大笑い、見た途端「ステキな子、うちのセンセとは大違い」。力を確かめるのに先生たちを見せるし←この際の言い草「折り紙つきの殺し屋だもんね」。「あれを江戸に連れて行けば大儲け間違いなし大岡越前も真っ青」の呟きも。
*おばさんの仕置/正十を追ってきた侍、おばさんが石仏に前垂れ掛けている所に来て声を掛けられる「お侍さん、折れてる十手渡してくれって頼まれたよ(刺す)この十手、タダじゃあげられないよ、お前さんと引換えさ(ずぶずぶと刺して抜く)同じ人殺しでもお前さんと一緒にされちゃたまらないよ」。


第20話「水探しの占い棒が死体を見つけた」1979.4.20

 水飢饉の村。青年が学んできた治水技術も、その母の持つ水を探り当てる超常の力も、悪党どもの私利私欲により無駄となる。

・水門を開けに行った百姓たちが役人に見つかり斬られる池端、大覚寺大沢池水門
・毒草を食った若が倒れこむ荒地、桂川河川敷か(或いは大堰川区間)
・家へ一行を招じてくれた耕助の母がダウンジングの丘、御室霊場頂上付近。正ちゃんがダウンジング棒で遊んでいて死体を見つけるのも同所。
・庄屋屋敷、民家門(ここへ引き取られている娘と耕助が話すのは前畑)
・代官所陣屋、大覚寺明智門
・行者たちが耕助らを殺したと百姓たちに嘘を吹き込む庄屋の手先、鳥居本八幡宮本殿前。
・太陽パワー充填後走り出す先生、金戒光明寺東坂(14話のバンク映像)
・おばさんが庄屋を刺す林、鳥居本八幡宮
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*ダウンジング棒を温泉探すとか言って弄んでいた正十は死体を見つけ「碌なモン見つけへんのや」と半泣き。その前の寝ていたおねむ発見時には不埒な言動も。
*おばさん殺し文句/「ちょっとあのぅ、このあたりに仏の庄屋様っていう偉い庄屋様がいらっしゃるそうで」「ホントにあなた様で?」「おかしいね、仏っていうのは死んだ人のことを言うんじゃないのかねぇ(刺す)地獄へ行きな!(抜く)地獄に仏さ」(刀を拭う)。

第21話「夜空を飛ぶ女が見た悪の罠」1979.4.27

 空飛ぶ女の不思議は深層心理に。体が理性を裏切る業、思いあう夫婦は色悪により奈落へ叩き落される。

・飛ぶ女のしごきを持ってゆく名主屋敷、民家長屋門。おばさんと正十がいるのは塀際。
・女が飛び去った先の巌上でサーチする先生、保津峡落合崖下
・見つかった水車小屋から歩いて帰るも足を痛めて座り込む女、中山池。彼女をおぶってゆく先生は切り通しの道、おねむが浪人にナンパされるのも同所で正十が浪人をだまくらかして逃げ去る「道」は溜池堤(山はもちろん堰堤の形状などあちこち様変わりしているので特定が難しく、間違いの可能性あり)
・水車小屋が見えると言う先生の言葉を聞き動揺する名主、家を飛び出し座り込む河原、罧原堤下河原
・先生に会いに来るおせい、柊野堰堤。おせいの回想、清七に乱暴されたことを思い詰め身投げしようとしたのを止めた夫・名主喜兵ヱ、保津峡落合崖上・落下岩
・清七とグルの浪人たちに連れ去られるおせい、走田神社本殿前〜参道。民造が斬られるのは鳥居手前。
・清七が名主に千両を要求する塀際、民家塀
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*小屋に逃げ込んできた清七におばさんが声をかける「あんたも拝んでやんな(刺す)二人が迷わず成仏するには(再度刺す)あんたに地獄へ行って貰わなくちゃね(抜く)」おばさんのコロシ目の当たりにした正十の驚愕の表情も見もの。

第22話「死人が教えた金のありか」1979.5.4

 足を洗おうとした盗賊は仲間に斬られるが、女房に幻で意志を伝える怪異。殺しの現場を子供に見られてしまうおばさん、「人殺し!」の叫びが悲しい記憶を連れてきて、我が子の名前を思い出す。

・賊一味が金を隠しにゆく夜の山道、保津峡落合河口に丸木橋あしらい。石仏の傍に隠すくだりはセット撮り(仲間割れ)
・野宿していた正十たちが役人に誰何される丘、北嵯峨か(松の根方)。仲間に斬られた男が這い出てくる。
・母が連行されてしまいしょげる坊を構うおばさん、罧原堤下河原。坊の首に手をかける賊のかしらのシーンも同所。
・隠し金を掘りにゆくお民と先生、正十が捕らぬ狸の勘定をぶつのは堤か。あの丸木橋を渡ってとお民が指差す巌、保津峡落合落下岩。丸木橋は先に出たものと同じ河口にあしらい、先生らがやってくるのは右岸汀。樵に野仏のことを聞く山道は酵素か。崖をつたいゆく道は保津峡巌崖道→セットの野仏に切り替わり。二人と別れ沢の奥に向かう先生のくだりは落下岩、崖際を掘っていると落石。
・ナレーションに大内辻堂とボタ山のバンク映像。
*おばさんは盗賊の頭のところへ赴き「早発ちですか」「そんな心配は御無用ですよ、急ぎの渡しの船がありますよ(刺す)、三途の川に(再度刺す)。地獄で閻魔様が針の筵を敷いて待ってるよ(抜く)」。この現場を見ていた京太、記憶を取り戻し人殺しと喚く。衝撃を受けたおばさんは懊悩の果て子の名を思い出す。

第23話「悪用した催眠術!先生勝てるか」1979.5.11

 おばさんの子供は里子に出され大事にされていたが、養家に災難。見捨てておけず奔走するおばさんは、裏で宿場を牛耳る善人面の問屋場の存在を知る。

・道端で寝ている先生にいきなり武家女になって催眠術で女郎に戻った敵娼のことを話す正十、北嵯峨か(松の根方)
・催眠術の謎を正十に語る先生、嵐山公園・中ノ島橋上手堰堤際岸
・おばさんがチームに息子の養家の難儀について先生たちに相談を持ちかける水辺、広沢池東岸。先生のいる釣り小屋は池に張りだして建てられている。正十が荒川屋の裏の顔を知らせるくだりも同所。
・熊谷の町が見える山上のおばさんの墓、造成地か。
・別れゆく残りのメンバー、正十がおねむに別れを告げ走る街道、木津河原。一人になったおねむが売り声を上げ渡る橋、流れ橋(下手に船、若が橋上のおねむに皆の消息を聞く。このあとのおねむは木津堤に)。先生が登ってゆく山、いつものボタ山。
*銭を数えている荒川屋を背後から刺すおばさん「芝居もそこまでいくと鼻につくよ(トリプル刺し、刀拭い)、紙切れ一枚で大事な店を潰されたんじゃたまらないよ」。戸を開け表に出ると、怪しい女が来ているとの報に代官以下出張って来ている。悪党どもの刃を受け倒れる間際、先生の名を叫び刀を宙に放り投げるおばさん、刀は先生が隠れている小屋に届く。このあと、正十の背中で息絶えるシーンは凄絶。

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