1980 東京12チャンネル/松竹/歌舞伎座テレビ
キャスト
花房出雲/中村吉右衛門
宇部伝十郎/川崎公明 松浪蔵人/伊吹剛 関大助/長門勇
小笛/北川恵 はつね/岩井友見 勘兵衛/小島三児
三十六番所は三味線堀にあり、そこは繁華街の真ん中で隣は女郎屋、向かいは酒肆という騒がしさ。
ここに赴任の新頭取・花房出雲は斬り捨て御免の認可をいただき、以後「斬り捨て番所」の異名を轟かす。
「大将」出雲は独身で番所に寝泊りすることが多く、向かいの酒肆・千扇の女将・はつねとは微妙な仲。「御免!」の気合とともにワルを真っ向斬りする剛剣は見もの。血刀を懐紙で拭うおきまりの際、ひらひらと上に撒いたりしないでそっけなく下に放るのも独特。
番所衆は三人、子沢山の「とっつあん」関大助は古株で人情の機微に通じた役まわり、武器に槍やトンファーも用いる。
若手の伝十郎は時にヘマもやらかすが熱血漢で、走り役をかっちりとつとめる。
中堅の蔵人は潜入役をつとめることもあるが、中ほどでは出てこない回も多い。
隣の女郎屋の主・勘兵衛はお笑い要員で、毎回出てくる主要メンバー。とっつあんと共に自分の妓楼の風呂を覗くお仲間だったりする。
はじめのほうこそ固いイメージのお話だが、回を重ねるにつれブレイクしてゆき、諸方へ出向いての番所衆の八面六臂の大活躍が描かれる、ノリのよい一作。
第1話「炎と燃える三十六番所の灯」
(前)
頭取が殺され、廃止かと噂される歓楽街のど真ん中の番所に、横紙破りの新任頭取が赴任する。幼馴染の大目付に頼み込まれ「いやいや」受けた奥祐筆、まずは前任者の死因を探りにかかる。今回は北町与力と、グルの商人を追い詰めシメたあと、襲い来る刺客の段で中程。
ロケ地
・北町奉行所、大覚寺明智門。
・前頭取・神崎の娘が番所へ父の日記を届けた帰り襲われる、金戒光明寺長安院下坂〜長安院門(門内に引き込まれ斬殺)。ここへ駆けつける花房出雲、経蔵脇〜三門。
・北町与力と豊後屋の前に立ちはだかる出雲、中ノ島橋上。殺陣は栗石敷きの右岸河川敷へ移動。
・前頭取父娘の墓に参る出雲と大目付、黒谷墓地(文殊塔バック)。
■ ■ ■ ■ ■ ■
(後)
墓地の殺陣から再開。
番所には筋向いの女郎屋に居続けを装った見張りがつく。そして神崎(前頭取)の残した謎は、リークの使い走りをさせられた出雲の幼馴染から解けることとなる。闇将軍と名を馳せた西国屋に討ち込み、証拠を掴んだ出雲と大目付は裏の大物・老中に迫り、抵抗するや「斬り捨て御免!」でばっさり。
ロケ地
・大御番士・三田村が西国屋の使いの者にリーク文書を手渡す日本橋近くの路上、大覚寺大沢池畔にセットの茶店。
・西国屋の寮、門は不明なるも座敷から見えるのは広沢池。
・老中・堀伊賀守邸、相国寺林光院(門越しに前庭と玄関、成敗時には中での撮りも)。
・三田村の死体が見つかる、嵐山公園中州右岸側河川敷。
・三田村の妻子を送ってゆく道で刺客、相国寺鐘楼脇。
・お城お廊下をゆく大目付、大覚寺宸殿前廊。
・三田村の後任のリーク役の旗本が西国屋の手下に文書を渡す、今宮神社楼門。この旗本を追い掛け回す大目付、高倉脇坂〜石橋。
*初めてのチームでの立ち回り、長門勇のとっつぁんはトンファーを巧みに振り回し、吉右衛門の頭取は革紐を操り遠くの敵も引き倒す。
第2話「無情の雨に泣く女」
仕官を求める若い浪人と、苦界に身を沈めて彼を助ける恋人。しかし仕官話は大騙りの、小藩の汚い企み。粘り強い探索と、向いの女郎屋に来た浪人の恋人から、跳梁する凶盗の真実を焙り出した番所衆、藩邸に討ち込み殲滅。この過程で落命する男、あとを追って女は入水という結果に終わり、大将は女の残した桜草の鉢を前に痛飲するのであった。
ロケ地
・おみつと池上大二郎が会う約束の橋、中ノ島橋。
・大川藩の使嗾で動く、仕官を求める浪人たちで組織された凶盗が出たり、出雲が釣りをしている大川端、広沢池東岸。
・黒川藩下屋敷、相国寺大光明寺門。
・藩邸の裏塀を乗り越え抜け出す池上、*。
・入水したおみつの下駄と鉢植えを発見する出雲、罧原堤下河原。
第3話「三十六番所にお指図無用」
将軍暗殺を黙過したことを恥じ意見書を提出の表御番医、しかし訴状を握りつぶされたうえ追われる身に。放浪の果て江戸に舞い戻り出雲を訪ねた老医師は惨殺され、娘にも魔手迫る。相手を大物と知りつつ討ちこむ番所衆、捕り方が出張るのには大目付が立ちはだかり援護射撃、大ワルの御数寄屋坊主は大将に真っ向に斬り下げられ絶命するのだった。
ロケ地、部屋住みの次男坊当時の出雲が医師・良石と知り合う、今宮神社東参道(娘の祝言帰りの医師は酔って一文字屋の扉際にへたりこみ)。お城のイメージに彦根城天守。
第4話「命を賭けた母子星」
今回は、悪辣を絵に描いたような陪臣を成敗、千扇に来た新しい手伝いの女がわけあり。夜鷹までして子の遊学費用を捻出のその女は、もとは池田藩士の妻女で、夫は知らずに手伝った武器密輸に絡んで消され、その仇を討とうとしてエラい目に遭って江戸へ逃れてきたのだった。母子を執拗に追う池田の悪家老を成敗の頭取、大目付は池田の殿様に直談判して裏から助ける。この池田候、三十六番所潰しの急先鋒だったが家来の悪事でおじゃん。
ロケ地
・菊乃が夜鷹に出る湯島天神、今宮神社石橋前。
・菊乃の息子・太一郎を見掛ける出雲、大覚寺放生池堤。太一郎と相撲とるのは天神島。小笛のツナギは五社明神。
・大目付登城の駕籠に「直訴」の出雲、金戒光明寺東坂〜放生池極楽橋。
・お城イメージに姫路城天守。
・池田藩下屋敷から出る家老の駕籠に立ちふさがる頭取たち、大覚寺大門〜参道石橋(ラス立ち)。
・長崎へ旅立つ母子を見送る頭取、大覚寺放生池堤(護摩堂前)。
第5話「捨て身の勝負 江戸の花」
お話は旗本奴と町奴の対立、これに町奴を束ねる実力者「風吹けば」散右衛門と娘の確執がからむ。頭取は旗本側からきな臭い嫌な匂いを嗅ぎ取り、散右衛門の内懐に飛び込み信頼を得るが、旗本たちの策謀で悲惨な事態に。出雲は怒りのオーラをまとい、ほぼ暴徒と化した旗本奴たちを雨の夜に斬り捨てる。
ロケ地
・意味なく中間を無礼討ちし抗争の発端となる旗本・田所邸、相国寺大光明寺(門、前庭)。
・この事件を頭取に報告の小船、広沢池東岸。
・散右衛門の娘・おきみに接触の出雲、大覚寺天神島(導入のショットは祠裏から)。
・事後、旅立つおきみを見送るおふね、広沢池西岸。
第6話「女の肌に秘めた謎」
同僚に横領の罪を着せられ切腹を装って殺された見習い蔵奉行の妻女、夫の無実を信じ恨みを晴らすべく一味を狙う。色仕掛けで一人は殺ったものの女一人の徒手空拳、一味とグルの悪徳商人の毒牙に操を奪われてしまう。絶望し自死を思う女を留めた頭取、欲をかいた一味が代官領からの蔵米を奪い私する証拠を押さえ、番所衆全員引き連れて勘定奉行を狙う黒幕・筆頭吟味役のもとに乗り込み大立ち回り。しかし、夫の無実が証明されたことを聞くや妻女は仏壇の前で自刃してしまうのだった。このことを頭取に告げられず空言を報告のとっつぁんの胸中を察する、渋い出雲なのであった。
ロケ地
・蔵奉行一味が札差・武州屋に三十六番所に尾けられたことを告げる、相国寺鐘楼脇(後段の金の授受も同所)。
・夫に詫び入水未遂の八重、広沢池東岸汀。
・筆頭吟味役・榊原邸、相国寺林光院。
・小笛とツナギの出雲が銃撃される、大覚寺大沢池畔(難を避け水中に飛び込み。刺客をやっつけたあと抜き手切って泳ぐ出雲の姿も見られる)。
第7話「魔性の女にひそむ業」
放火魔で男狂いのやんごとなき姫君、父・水戸中納言の懊悩、姫にあくまで忠誠を捧げる従者、そして出雲は止まらぬ乱行を終息させる役を負う。
幼時のトラウマから炎に狂い、父にさえ迫る狂気の姫君に「ラブハンター」田中真理、姫を狂おしいまでに恋い慕い最後は運命を共にする従者に石橋蓮司、父中納言には江見俊太郎と豪華キャスト。よくあるパターンのお話だが、姫の凄絶な美しさに加え、冷血から激情に至るレンジ炸裂の見応えある一作。紅蓮の炎に包まれ死にゆく姫を凝視しつつ、ぎりぎりと腹を抉るレンジのくだりは圧巻。自身も罪人と懺悔の中納言を演じる江見氏の、悪役でない姿も貴重。
ロケ地、姫の屋敷、中山邸(門、参道、通用門)。姫の見合いの野点、枳殻邸印月池畔芝地。水戸中納言の駕籠を葵紋の「印」を示し止める出雲、相国寺大光明寺南路地。水戸屋敷、大覚寺大門。
第8話「中仙道に草笛が哭く」
前回の「千姫御殿」に続き今回はプチ忠臣蔵。事の発端は、将軍(家斉だな)が約束した姫様降嫁を「忘れていて」ほかへ縁付かせたのを怒って訴えた大名が切腹・お家断絶の憂き目を見たこと。二年間雌伏していた家臣団、殿の恨みを奉じんとお輿入れの梓姫を狙うのだが、事を公けにできない幕府は三十六番所に警護を任じる。派手に葵紋をつけた行列はとっつぁんたちが担当し、本物の姫は出雲が付き添って二人連れ、しかし途中で見露わされすったもんだの挙句、輿入れ先の安中藩領はずれの碓氷川鷹巣橋にてラス立ち。
ロケ地
・江戸を発つ梓姫の葵紋の駕籠、相国寺大光明寺南路地。
・兄妹設定で山道をゆく出雲と姫が小休止の茶店ほか、谷山林道。
・蔭山藩家老が遺臣団を集めアジる桶川宿手前の鎮守、鳥居本八幡宮(演壇は舞殿)。
・出雲が姫を慰めるため草笛を教える崖、保津峡落合落下岩の上。草笛を聞きつける遺臣団、崖下河口。
・これから逃れた出雲と姫が農民に偽装してゆく野、北嵯峨農地(遠景に大覚寺心経宝塔の天辺が映りこむ)。
・鷹巣橋、木津川流れ橋(橋上、河原、橋脚)。
・安中藩のお城廊下、大覚寺宸殿縁先。
*ラス立ちの際、「とっつぁん」関大助は槍で立ち回り。
第9話「小太刀に濡らす涙雨」
獄門になった息子の仇と出雲を狙う裏稼業の大物、刺客に選んだのは小太刀を使う女。夜鷹のなりをして出雲を襲うが、女は名乗りを聞いて驚愕、出雲は彼女の幼馴染の「新ちゃん」だった。
ロケ地
・柳原土手で桔梗屋に腕を試されるおしの、下鴨神社河合社塀際。
・おしのの回想、喧嘩の新ちゃんに加勢して立ち回り、糺の森林間。
・出雲に別の刺客が差し向けられる妙法寺、金戒光明寺(石段上部〜三門)。小笛がおしのの身の上を出雲に報告、極楽橋上。
第10話「天童駒に秘めた謎」
禁制品の密取引で私腹を肥やし幕閣入りを目論む西の丸御留守居役、長崎からの輸送に使った者を消し我が世の春と高笑い。こやつらに別口で虫けらのように殺された仇持ちの、元天童藩鉄砲方の妻女と弟の死を見たブチ切れ出雲が乗り込み、問答無用の皆殺し。
ロケ地
・勘定方組頭が追われる夜の川、大覚寺御殿川河床。勅使門橋から上がり息をついているところをバッサリやられる。
・この死体が切腹を装って置かれる妙法寺、神護寺金堂前。検分に来る出雲は石段を来て去ってゆく。
・三又中州で水深を測る回船問屋・相馬屋が銃撃される、広沢池中央(船上)。通りかかって目撃の番所衆、観音島。
・相馬屋の葬儀に潜り込んだ小笛が出雲に報告の茶店(仇持ち妻女が勤務)、神護寺山門内側にセット。
・元勘定方・榊原邸、*。
・西の丸御留守居役邸、第1話で出た萱葺き門と同じ、不明。
第11話「傷だらけの墓標」
千扇の女将が七年前別れたきりの恋人に再会、しかし男はワルに追い使われる殺し屋と成り果てていてつれない。そのワル、元長崎奉行とつるみ阿片窟を開いている大ワル。しかも元奉行は、女将の恋人に手籠めの罪を肩代わりさせた経緯を持っていて、男を見て始末を命じる。回りまわった奇縁に絡めとられ男は命を落し、女将は阿片窟に放り込まれるが、真実を探り当ててブチ切れ出雲が乱入、一同ぶった斬り。
ロケ地
・絵馬売りをしている男の噂を聞き縁日に赴くはつね、会えず放心して帰る彼女に声を掛け損なう出雲、相国寺大光明寺まわりの路地。
・やっと会えた弥九郎と話すはつね、嵐山公園中州岸。男が去ったあと水面を見る橋、中ノ島橋。
・元長崎奉行・堀田刑部邸、相国寺林光院。
・阿片窟の増田屋寮、中山邸通用門。
・弥九郎が始末される汀、広沢池東岸。
・事後、弥九郎の名をかいた灯籠を流すはつね、罧原堤下河原。
第12話「江戸を走る通り魔」
立て籠もりネタ。鉄砲方から新式銃を盗み出した賊、追い詰められ三味線堀へ。内情を知悉していることから入り込む一文字屋、騒ぎを押し付けられてしまうお隣の三十六番所、人質にはとっつぁんの娘もいて緊迫のドラマが展開される。膠着状態を尺とって描き、残弾を数えつつ出雲は賊を追い詰める。
ロケ地
・鉄砲方が銃盗難に泡食って入る北町奉行所、大覚寺明智門。
・盗った銃を試し撃ちし反動でコケる熊蔵、大覚寺心経宝塔前。捕り方から逃げるシーンに御殿川河床。
・金を掴んで逃走の賊を追う出雲、木津河原(ちらっと流れ橋映りこみ)。
第13話「冥土へ送る地獄船」
出雲がスケッチ中出会った盲の美女からはじまる一作、彼女のまわりで巻き起こる血腥い盗っ人たちの事件を描き、女を医者へ連れてゆく出雲で終わるお話。女が出雲に抱く淡い思いは一連の騒ぎのあとか細くフェードアウトしてゆく。島帰りの女の実父の抹殺、女を囲い妙な可愛がり方をする凶悪な元盗賊の鶴屋、プロの殺し屋まで出てけっこう派手。たくさんの蝋燭が各場面で印象的な使われ方をする。
ロケ地
・出雲とおゆきが出会う水辺、大沢池畔。
・船着きや汀をたっぷりと使う。鶴屋寮、一話と同所、不明。
*鶴屋に狙われた目撃者・勘兵衛の振る舞いが傑作。はじめ布団部屋に閉じこもりガタガタ、しまいに女装して千扇に入りびたり。癖になって事後もそのまま、伝十郎にしなだれかかったりする。よって今回のお色気入浴シーンは小島三児が胡麻塩のばあさんカツラつけてつとめる…げろげろ。*ラス立ちにおいては、OPにある如くの頭取大跳躍飛び降り斬りが見られる。重量感あって迫力、スローで見せるので細かい所作わかってなかなか。
第14話「江戸の怪盗流れ星」
あろうことか三十六番所頭取を騙り大名屋敷からまんまと大金を盗み取る男あり、義賊・流れ星と称される。外道は働かぬその盗っ人、或る日身投げから助けた女を保護するが、これがとんだ悪女で大騙り、蓄えた金を盗った挙句半次郎が父とも思う同居人の老爺を殺してゆく非道を働く。しかも女は火盗改与力とつるんでいた。老爺の仇も討てず無念のうちに惨殺された流れ星の死体を見た番所衆、殴り込みに近い形でワルのもとに踏み込み皆殺しにしてのけるのだった(出雲は言うに及ばず、伝十郎ととっつあんの「仕置」も見もの)。
ロケ地
・流れ星に騙され金を盗られた大名屋敷、相国寺大光明寺(南路地、門)。
・身投げ女をとどめる半次郎、中ノ島橋。
・半次郎が賭場にとの情報を話す番所衆、広沢池東岸汀。
・賭場(本所・高倉邸)で出雲に見つかり逃げる半次郎、大ジャンプで塀外・追ったとっつあんたちが出るのは相国寺大光明寺通用門。
*流れ星に目黒祐樹、気のいい盗賊を好演。悪びれず出雲に対する表情が秀逸。彼を騙す悪女には鮎川いずみ、今回のお色気要員もつとめる。*ED主題歌変わるもユリカモメはそのまま。
第15話「狼の仮面を斬れ」
上州へ遠征もする三十六番所、国元での揉め事解決を雁金藩主である老中に「政務忙しいから」と頼まれちゃったり。現地では城代討つべしと血気にはやる若侍たちがいて騒ぎを起こすが、真のワルは別というよくあるパターン。城代邸へ入り込む出雲や、誰何されて仇討ちだと口から出まかせをやるとっつあんなど、ディティールが傑作。
ロケ地、雁金城、彦根城天守。城代の娘をさらいに出る若侍たち、*。雪江が出てくる楼門、普済寺山門。城代・横山監物邸、*(以降、長屋門ほか主屋に蔵も使用)。若侍たちがアジトにしている堂、相国寺鐘楼。ラス立ちはここから法堂前回廊へ移動。
第16話「涙に曇る江戸の空」
胸を病んだ御徒士組頭、心も病んでいて一人斬るごとに寿命が延びるなどと妄想を抱き、拝領の正宗で辻斬りを働く。仕官を餌にこれに付き合わされていた浪人は、三十六番所に露見したことを覚り娘に後事を託し死を賭して諫言、しかし狂気の「殿」に聞く耳ある筈もなく無惨にも正宗の露と消える。その現場に踏み込んだ番所衆、怒りの鉄槌は居合わせた御徒士組全員に下されちゃったり。
悲惨極まりないこの話にひらひらと舞う男あり、浪人父子と親しく、しかも辻斬り被害者の幼馴染。フツー、この男が不幸のどん底に落ちる設定が多いが期待を裏切り事後めでたく浪人の遺児と祝言をあげるハッピーエンド。火野正平なんだから、泣き入って掻き口説いて「旦那ァー」かなんか言って頓死かと思いきや意外。かなり珍しい運びかと。
ロケ地
・正宗を拝領した旗本を張る番所衆、とっつあんの見張る御先手組頭屋敷は相国寺林光院(門を東側から)。
・伝十郎が担当の本多主膳邸、相国寺大光明寺(門から見える甍は塀越しの湯屋)。
*魚屋・金太に正ちゃん、十手に憧れ設定でおもちゃのそれを携行しているのが可愛い。
第17話「女たちの仇討ち無情」
上司の不正を発見し糺そうとする勘定方の小役人、しかし調査を勘付かれ謀殺されてしまう。残された妻女二人と中間の許婚者は健気にも仇を奉じんと狙うが、巨悪の前に無力な女たちは散々な目に。これを掬い上げる三十六番所、大将は女に託された小刀を持って斬り込み、吉右衛門二刀流の殺陣が披露される。
ロケ地
・勘定方役人の二人が狙われる路地、相国寺方丈塀際と大光明寺南路地。
・勘定方組頭・金井邸、相国寺大光明寺門。
・金井邸に探索に入った妻女の死体が上がる、広沢池観音島(導入はロング)。
第18話「黄金地獄の闇を斬る」
豆を買占めて物価を高騰させ民を泣かせ私腹を肥やす両替商、豆腐屋の首くくり相次ぐ。これで親を亡くした子らが役人を憎み悪態をつくのも笑っていなし手を尽くして助けてやるガキにはとっても優しい大将、買占め資金に御用金を流用させる金奉行らのもとに乗り込みばっさり断罪「御免!」。
ロケ地
・両替商・唐津屋で悪態をつく平吉を助け話を聞く出雲、広沢池東岸。
・平吉が妹を診て貰いにゆく小石川療養所、大覚寺明智門。
・お城の御廊下で出雲の流した金奉行交代のガセネタを聞く金奉行、相国寺方丈縁先(中からのショット)。
・金奉行・高垣邸、相国寺大光明寺門。
・療養所の千絵先生と平吉が罠に落ちて出雲呼び出しの明神神楽堂、鳥居本八幡宮(舞殿、林間)。
*金奉行に和崎俊哉、千絵先生に西崎みどり。
第19話「闇夜に笑う天狗の面」
久々に登場の蔵人、とっつあんがタレコミ屋を使うのを不快に思う心が、弟夫婦を救い損ねる時差を作ってしまうカワイソーなお話。次々と富商を襲い凶行を重ねる賊・天狗党はクーデターを企図し筑波山にパラダイスを築こうとしている怪しい設定、政治結社なんだかカルトなんだかよく判らないが派手。
ロケ地
・天狗党が凶行後逃走に使う船、桂川大堰(杭沿いに横に船をすべらす)、後段タレコミ屋が消されるのも同所。
・出雲が捕われている天狗党一味二人を貰いうけにゆく南町奉行所、大覚寺明智門。
・蔵人との交換が行われる浜町河岸、広沢池東岸(水中戦闘と接舷攻撃が見られる)。
・蔵人の弟夫婦の墓、真如堂墓地か。
第20話「奈落の底に潜む謎」
金奉行の御母堂様は元大奥勤めのどえらい好き者で、これにお相手の役者を供給する水戸藩江戸家老は弱味につけこみ公儀から金を借り入れ全て自分の懐に入れていた。これを知った水戸家の若侍は義憤にかられ御母堂の相手の役者を殺害ののち自刃、これが最初の犠牲者。現場を見ていた楽屋番の老爺が二番目。そして御母堂の新たな贄として差し出された役者は閨を拒否し顔を傷つけられ絶望、恋人と心中。三十六番所には上つ方から捜査中止の指示が下るが、公方様お許しの斬り捨て番所はそんなこと聞いちゃいねー状態で成敗に入るのだった。
ロケ地
・水戸家上屋敷、大覚寺大門。
・下屋敷、中山邸門。
・中村座のパトロン・大山友助に斬りかかるおみつ、大覚寺天神島(朱橋、祠、大木)。
・おみつと役者の心中死体が上がる両国河岸、罧原堤下河原。
*おみつは実はパトロンの実子で、彼女の死後友助は財を返上し出雲に証拠書類を託し江戸を去る。この際には自身の境涯を茶化した短歌を残してゆくエピソードあり。
第21話「男に惚れたはぐれ鳥」
青梅で拾った不良娘を更生させようとする出雲、その真情通じ娘は正道を歩みかけるが、過去からの魔手は哀れにも彼女を儚く散らす。
ロケ地
・武州・青梅の寺に乳母の墓参の出雲、丹波国分寺。地回りに追い回されるおもん、国分寺近くの田や川堤を使用と思われるが特定に至らず。
・地回りから助けて貰ったあと足を洗うおもん、広沢池東岸汀(北望)。
・おもんが御籤売りの露店を出す縁日、今宮神社楼門。出雲をお昼に誘うおもん、連れ立って行く二人を見る南町与力と直八、高倉脇坂。
・暮らし向きについておもんに聞く出雲、広沢池東岸(堤から見下ろし)。
*栗田ひろみ演じるおもんの可愛らしさが全編を貫く。これが後段、深手を負いながら出雲のもとへ行こうと這いずるくだりの哀れさを際立たせる。這って船を求めるおもん、この船どうか三味線掘へと願うシーンは涙もの。
第22話「目の前から消えた女」
キョーレツに悪い一味を退治るお話、町娘を誑し込んで結婚を餌に心中偽装までさせ使い捨てる旗本、これとつるみ次々とライバルを消し儲けるためには江戸を焼き払うつもりの材木商、小判じゃらじゃら飛び交う腐臭を断ち切るは三十六番所、「御免!」の気合は御府外の街道筋に響き渡るのであった。
ロケ地
・武蔵屋の若旦那と「心中」の果て日本橋に晒されるおちよ、中ノ島橋上。
・これを救い出した謎の侍について忖度の旗本たち、くろ谷墓地(文殊塔下付近)。
・出雲が保護した長屋から逃げ「恋人」の旗本と会うおちよ、金戒光明寺三門。
・「恋人」永田兵馬邸、大覚寺大門。
・柳橋近くの道で材木商・吉野屋の娘にからむ旗本、大沢池堤。
・吉野屋の娘と手代が心中死体として上がる浜町河岸、広沢池東岸汀。
・再び抜け出し兵馬と会うおちよ、金戒光明寺本堂縁下から基壇亀腹越しのショット。
・賄賂の効かぬ堅物の材木奉行を暗殺する旗本たち、金戒光明寺石段〜鐘楼(西側崖下からのショット)。
*鼻の下伸ばしてたり居眠りこいたりして二度もおちよを逃す伝十郎に大将の大喝「馬鹿もぉん!」は、ほぼうさ忠を叱る鬼平。
第23話「女の敵は地獄へ送れ」
柳橋芸者を騙し大金を貢がせ、邪魔になると消す極悪与力。その裏には「西の御前」と称される悪い噂のある西の丸留守居役、富商と組んで更なる野望を紡ぐワルどもは番所衆の断罪を受ける運びとなる。
ロケ地
・柳橋芸者・駒勇が殺されて見つかるあやめ河岸、大覚寺大沢池畔。駆けつけた番所衆が帰るさ、犯人について忖度の水辺、放生池堤。
・駒勇が毎月願掛けに来ていたあやめ河岸裏手の夫婦稲荷、吉田神社竹中稲荷(参道中ほどの重ね鳥居下に茶店セット、絵馬探しの小笛は摂社の祠)。
・西の御前・本田外記邸、大覚寺大門。
第24話「野獣討つべし」
出雲の剣の後輩夫婦が国許で祝言を挙げ江戸へ入る際、身持ちの悪い大名のどら息子に新妻を襲われ夫は銃殺、妻は三十六番所へ辿り着き事を告げたあと自害して果てる。この無惨に立ち上がる出雲、国へ逃げ帰ろうとするどら息子を追い、たった一人で雇われ用心棒たちと死闘のすえ討ち果たす殺陣もハードな一作。
ロケ地
・工藤夫妻が江戸へ向けて歩く中山道、谷山林道。
・見送り坂手前の茶店、下鴨神社河合社南東角にセット。狩り帰りの酒井源次郎が工藤の妻女を襲う、馬場〜泉川。
・鷲見藩酒井家江戸上屋敷、大覚寺大門と周辺。
・元鷲見藩士・鉤十兵衛がヤサにしている苫船、広沢池東岸。
・上州掛井藩城、彦根城天守閣。
・とっつあんが追うどら息子の駕籠(囮)、大内辻堂亀岡道を南下しお堂の辻で八木道(日光街道分岐)へ。その後岩槻宿へ向かう「駕籠」が渡る橋、本梅川若森廃橋。とっつあんを追う伝十郎は大内辻堂亀岡道をまっすぐ行き過ぎ、あれぇ?と振り返る丘は画面切り替わって亀岡道の登りカーブで、辻堂のほうを望む画もある。用心棒の愛人が出雲を見た話をする宮さんは辻堂から八木道にちょっと入った山ふところの神社。用心棒と死闘の廃村は不明。このほか、大内の風景に谷山林道が入れ子になっている。
*見当違いの駕籠を追わされるとっつあん、関所で張ってて動けない伝十郎、強敵待ち構える死地に単身赴く出雲、否が応でも盛り上がる展開に、用心棒の愛人が絡みちょっといい味。この女、自分の男にも出雲にもぺらぺらと見たまんまを喋り、要所で事態を転回させる役回り。ちょっとカワイソーな最期を遂げる。
第25話「江戸城危機一髪」
ご落胤騒動もの。下総香取在にいたホンモノを殺し、お墨付と刀を奪いお世継ぎ・照千代ぎみを名乗りブイブイのならず者コンビ。しかし金で抱き込めたと思った老中は上をいくしたたか者、政敵を消させ大金を掴んだが早いか牙をむきニセモノ一巻の終わり。これを見逃す筈もない三十六番所、金持って帰る前に立ち塞がり「御免!」。
ロケ地
・「照千代ぎみ」ご滞在の妙法寺、相国寺林光院門と庫裏、粟生光明寺石段をラス立ちに使用。
・老中・牧野備前守邸、大覚寺大門。
・老中・池田若狭守邸、相国寺大光明寺門上部、若狭守が暗殺される屋敷近くの練塀小路、大光明寺南路地。
・はつねが拉致され出雲呼び出し指定の池之端、広沢池東岸。駆け付けシーンは桂川右岸堤松尾橋付近。
・ラスト、長崎へ旅立つ出雲を見送る、木津堤と流れ橋。
*今日はちゃんといる蔵さん、はつね救出に赴き大将の代わりに膾となるが急所はずれてて生き延び設定。そして大将は唐突に一年間の長崎行きとなり、第一シリーズおわり。
*話数は、テレビ大阪で2004年に再放送されたものに準拠しています。第1話はサブタイトルが前後編とされていたのに従い、ひとつの話として扱いました。本放送時の形態については不明です。
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