保坂延彦監督作品 1986.10.25東宝
キャスト
にせ/中井貴一 八重/原田美枝子 伊勢守/フランキー堺
瀬高/岡本信人 小鹿/火野正平 羽黒月仙/中村嘉葎雄 オケラの六/江波杏子
仙人/笠智衆
戦前の伊丹万作のサイレント映画をリメイク、導入は弁士つきの映画館からはじまり、書割の舞台セットで終わる。
お話は「剣豪の贋者が本物に勝ってしまう」と一言で済んでしまう筋立て。食い詰め浪人たちに拾われ騙りの片棒を担がされることからはじまり、剣豪に勝って、剣豪の娘に惚れられて、入水の町娘を助けて惚れられて、女ヤクザの出入りに介入して惚れられて、再度修行してきた剣豪にまた勝って、名を譲ると申し出られて断って、剣豪の娘と道行きで終わる。贋伊勢守を演じる中井貴一は、終始天然系の抜けてるんだか強いんだかなんだかわからない不思議な男を演じきる。これに絡む人々は定型のコメディタッチで進み、天然男のとぼけた行動に振り回される。昔の映画を意識した各人のしぐさは傑作、ニセの守水辺のストレッチダンシングなど、見てのお楽しみ。また、時代劇の「記号」が処々にはめ込まれるお遊びも楽しい。オープニングに映し出される西岡善信氏のスケッチ画や特製の書割も必見。
ロケ地、お供えの芋を盗み食う浪人・瀬高と小鹿、大内辻堂。伊勢守の贋者に仕立てる男を探す二人、辻堂付近の道。閻魔堂で一夜を明かす二人、門で「長楊枝を銜えた渡世人」と出会う、普済寺山門。贋者と三人、騙しとった着物を着てゆく橋、中ノ島橋。瀬高浪人が相撲の相手を募る茶店、今宮神社かざりや。相撲の相手と試合、上賀茂神社北神饌所前。贋者が拾った財布のことで喧嘩別れとなる水辺、沢ノ池源頭部か?盛大に砂を流す様は天神川とも思われるが確定要素見出せず。贋者が道場破りの羽黒月仙と会う道、*。月仙に伴われ赴く一筋縄兵衛道場、相国寺大光明寺(門、玄関と前庭)。江戸入りの贋者、襲われ娘を助ける巣鴨六地蔵の森、下鴨神社糺の森。女を送るのにおぶってやる贋者、馬場。女の屋敷・伊勢伊勢守邸門、随心院薬医門。玄関は相国寺林光院玄関(水石越し)。庭で伊勢守と立ち合いの贋者、枳殻邸印月池畔。贋者に破れ修行し直しにゆく伊勢守、湖南アルプスと天神川若布谷。遊里に売られるのを苦にして入水の娘を助ける贋者、中ノ島橋。伊勢守邸、八重に言い寄る近藤土方(門弟)、枳殻邸侵雪橋。八重に金を借りる贋者、相国寺湯屋脇〜通用門。入水未遂女に金を渡す贋者、尾行する八重のシーンは鐘楼基壇部をくるくる回り。オケラの六の出入りに介入の贋者、桂川宇津根付近と思われる。八重と話す贋者、上賀茂神社御所舎。お初と話す川、ならの小川神事橋下。