三隅研次監督作品 1965.10.16大映
キャスト
斑平/市川雷蔵 お咲/姿美千子
海野正信/戸浦六宏 虚無僧/五味龍太郎
醍醐弥一郎/内田朝雄 神戸菊馬/佐藤慶
狂疾の殿を戴く信州の小藩、同じく物狂いの御母堂の侍女から産み落とされた男は摩訶不思議な経緯から「犬の子」として侮られ蔑まれて育つ。名も犬の柄から斑平。
この男、ひそひそと噂される怪しの出自ゆえか天性か能く花を作り、これを契機として殿に近侍することとなる。
その後も異能は発揮され、実は公儀隠密だった剣客から学び取った居合の術は、彼を人斬りの道へといざなう。格段のポリシーあるべくもない男は、求められるままに剣を振るいその身に返り血を浴びてゆき、殿の頓死により一変した情勢下、仇として追い詰められる運びとなる。
花の心を読み美しく咲かせ、居合の極意もただ「視る」ことにより会得する斑平の異能、人と一線を画した能力は、夢に描いた「花の谷」にその身を散らせる悲劇的なゆくたてとなるのだった。
ロケ地
- 海野藩城、彦根城(天守、大手橋ほか)。
- 斑平が教えを乞うた居合の達人を公儀隠密として討つ羽目になる寺、法然院(山門、石橋、砂盛り)。
- 殿を排し、よそから藩主を迎えようと図る目付一派が江戸表へ放つ藩士たちと一人闘う斑平、大覚寺五社明神、河内風穴、保津峡落合(崖の上下に河口)、下鴨神社(馬場と林間)。
- 花の谷、上桂川付近か。野駆けの殿のくだりは饗庭か。
*冒頭から語られる斑平のネガティブイメージ、筆頭は犬。へっへっと舌を出すブチ模様の大型犬、怪しすぎ。もう一つは怨霊のやしろから斑平が持ち出す妖刀で、景清の佩刀と伝わり山賊が数多の人を斬ったという沸も派手な美しい刃。凄絶なこれらと、斑平が作り上げるお花畑の落差が、目も眩むような不協和音を醸し出す。
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