宿命剣 鬼走り

1981.12.11フジ/中村プロ/東映 萬屋錦之介主演作品
藤沢周平原作 「隠し剣孤影抄」(文春文庫)所収


 秘剣ものというのは小説を読んでいる段にはとても面白いが、映像にするとどうもちょっとアレな事が多い。漫画原作のアニメですら、変移抜刀霞斬りも牙突もどうも納得ゆかないのだから、頭にあるそれと異なるのは致し方ない。この作も、ラスト「鬼走り」の秘剣が振るわれるくだりは見ていて面白いが、重厚さには欠ける感あり。しかしラス立ちに至るドラマは秀逸、悲嘆にくれるヨロキンがわなわな身を奮わせる演技を配しながら静謐な展開で、哀切な情を描きだす。

宝塔寺山門

 お話は、幼少時よりライバルである侍二人の対立が老境に差し掛かっても続き、周囲を巻き込んでの悲劇に発展するプロセスを描く。
元海坂藩大目付・小関十太夫は職を辞したのち自適の日々、しかし彼が大目付として断罪し失職した元勘定奉行・伊部帯刀の息は小関のスキャンダルを捏造し触れ回る。これに激した小関の長子が果し合いを挑み謀殺されるのが悲劇の発端、以後娘と次男も渦に巻き込まれ落命、墓碑累々と立つ仕儀に。小関も伊部も後継を亡くし、裸になった男二人の宿命の果し合いが行われる運びとなる。

ロケ地

  • 青沼、不明。
  • 妙月院、不明。
  • 長子・鶴之丞の死について家老に訴えたあと下城の小関十太夫、二尊院紅葉の馬場。待っていた杉戸が十太夫に経緯を話す、合祀無縁仏前。
  • 伊部邸の庭、阪口青龍苑
  • 伊部邸からの帰途、十太夫に寄ってくる息子と娘、相国寺鐘楼脇〜光源院前路地
  • 鶴之丞の妻が実家へ帰る道、相国寺大通院前路地〜鐘楼脇。
  • 小関家の墓、くろ谷(墓地、文殊塔)
  • 最後に残った息子が伊部の馬鹿息子の悪罵に耐えられず斬ってしまう坂道、伏見・宝塔寺参道。
  • 果し合いの場となる不動の森、いくつかの場所をミックスしてあり、ひとつは神護寺五大堂脇の林間。

*青沼で釣りの小関、ヌシの怪魚と遭うのがお話の発端。このビジュアル、「大川の隠居」より飛ばしていて、いっそ笑えるギザギザの背鰭にでっかい口と凶悪な歯。尾っぽがまた鯨か鯰か判んないようなヘンなやつで、水面にはごぼごぼと怪しく泡がたつ。


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