1982.5.14CX/東映
大川橋蔵が又右衛門を演じた一作。
前段は、身内に降りかかった不幸と無二の友への情に苦悩する又右衛門の内面が活写され、橋蔵の眉根は寄せられ憂愁に沈む。これが後段、禍根を断つため助太刀を決意してのちは舞台芝居のように空気が変わり、戦略を練るくだりや三十六人斬りの大立ち回りでは華やかに型を決めてみせる。これが、ディティールも作り込まれたドラマを飽きさせず一気に収斂させるよいリズムを作り出している。
*写真は死闘の場となったロケ地・摩気橋。この作品が撮られた当時の橋脚は木製。
ロケ地
・大和・郡山城、彦根城佐和口多門櫓を濠越しに望み天守にズームイン。
・藩主の御前で行われる又右衛門と河合甚左衛門の立会い、相国寺方丈(縁先、前庭)。
・城下、隣り合わせの又右衛門と甚左のお長屋、妙伝寺塔頭。
・岡山城、吉井川越しのショット、本物。
・渡辺邸、土塀から続きの簡素な山門、建仁寺両足院前路地〜西来院。
・江戸城イメージ、姫路城天守。
・旗本・安藤邸、相国寺林光院(門、前庭、前路地使用、舅の横死を見て立ち尽くす又右衛門のバックには大通院の大屋根)。
・身柄交換のため連行される渡辺半左衛門の駕籠が渡る木橋、七谷川か本梅川か。
・関宿へ入る半左の駕籠に駆け寄る甚左、丹波国分寺。
・郡山を出立する甚左を見送る荒木家の下女と甚左の下男、毘沙門堂勅使門下石段。
・退転罷りならんと駄々をこねる殿に真剣白刃取りを「伝授」の又右衛門、相国寺方丈。
・永の暇を乞うた又右衛門が見返る郡山城、彦根城天守。
・奈良の寺で又五郎一行のルートについて忖度する又右衛門たち、西明寺(山門、境内)。
・笠置街道をゆく又五郎一行、谷山林道。
・木津川沿いのシーンは沢ノ池汀。
・決戦の鍵屋の辻、摩気橋(南詰に茶店をセット、遠景にお城を合成。立ち回りに橋上ほか民家や路地、摩気神社境内も使用)。
鍵屋の辻のロケは園部の摩気橋を大胆に使って撮られた。左岸側にたいそうなセットを組んで、道を塞いで上野城下を演出。
橋たもとに置かれた「右関越え、左伊勢路」の石標もなかなか。
お城がぜんぜん上野の天守じゃなくて書割なのも、不思議に似合う。
死闘のあと、返り血を浴びた橋蔵の背後に青空が美しい。
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