剣客商売 辻斬り 1982.12.3フジ/映像京都

 秋山小兵衛造形のモデルといわれる中村又五郎が小兵衛を演じる佳品。
一時間半という尺がいかにも惜しい。また、短い時間に多数のエピソードが詰め込まれるのも勿体無い。物語設定も過不足なく入っているが、うるさくはなっておらず「見せる」。

 筋立ては、三冬を我が息子に欲しい目付衆が裏でこそこそ工作するも、どら息子が肝心の勝負にぶざまに負けたうえ辻斬りの素行が露見し、失脚が示唆されて終わるというもの。
大治郎に三冬襲撃を依頼に来る目付衆の用人から始まり、証拠隠滅のため刺客を差し向けてくるのを迎え撃つ父子の姿が描かれる。鰻売りの又六や、まゆ墨の金ちゃんがからんでくる。小兵衛さんはまだおはると正式に祝言をあげていない設定。

ロケ地

広沢池西岸湿地・真崎稲荷付近の大治郎の道場は広沢池畔に「建てられて」いる模様。大川端の風情は葦原を効果的に用いて表現される。鐘ヶ淵と橋場を行き来する船は棹で操船。
・元鳥越の牛堀道場からの帰途、三冬が投網被せられ危機一髪に介入の大治郎、鳥居本八幡宮(小柴垣道と鳥居下)
・永井十太夫邸、大覚寺大門
・永井家の家士・内山を捕える大治郎、相国寺鐘楼
・又六が店を出す観音裏(原作設定は州崎弁天)今宮神社境内参道。
・市口が金ちゃんに仕事を持ちかける蕎麦の屋台、相国寺方丈西塀際。
・永井の息子が三冬と結婚を賭けて試合う田沼浜町屋敷の庭、下鴨神社河合社東塀に幔幕。・兄を見事追い払う又六を見たあと父子がゆく道、嵐山自転車道
・果たし状を受けて大治郎が赴く深川の市口道場、相国寺大光明寺(門、中仕切、方丈、金ちゃんと殺陣は方丈前の石庭)

*又五郎丈(二代目)の小兵衛さん、ちょん髷も可愛い小さな体がやはり原作に忠実で、ぴったりとハマる。加藤剛の大治郎は豪快な殺陣がやはり良し、山形小兵衛のシリーズでは些か「行きつけの店」がうるさく感じたが、本作では通いの賄い婆さんと子だけで静謐なのもよい。三冬さんもこの作によく似合うビジュアルで良し。おはるは、藤田版の小林綾子に軍配かも。訛り、櫓をやる姿が原作に最も近いと思う。金ちゃんは今まで二人見たが、この作のが一番男臭くて最もカマっぽい。


剣客商売 誘拐かどわかし 1983/3/4映像京都/フジ

 メインのお話は「品川お匙屋敷」、これに大治郎の師・嶋岡礼蔵の横死と、三冬の夫になりおおせようとする乱暴侍のエピソードが加味される。時間配分のゆえか、設定が微妙に変えられている部分もある。

 嶋岡礼蔵が大治郎の道場を訪ねるくだりから始まり、剣で負ければ結婚という三冬の縁談話を絡めつつドラマが進行、無法に殺された嶋岡を送り大治郎の日常は続く。しかし或る日三冬が追われ傷ついた女を看取ったことから事態は急転、抜け荷がらみのキナ臭い陰謀に巻き込まれてゆく。

ロケ地

旧中山邸・浅草橋場の秋山道場、広沢池畔にセット。
・嶋岡の果し合いの相手・柿本源七郎宅、相国寺大光明寺(ここへの道に回廊)、原作設定は麻布西光寺下。
・おはるが櫓をやる鐘ヶ淵、広沢池(田螺を喰う話をしたあと、小兵衛さん船を揺らしていちゃいちゃ)
・田沼下屋敷、随心院薬医門
・剣の試合が行われる庭は枳殻邸芝地(幔幕巡らせ)
・嶋岡の遺体を大八に乗せ柿本宅へ向かう秋山父子、桂川松尾橋付近堤道
・根岸の寮、中山邸(通用門、参道、門)
・京の無外流山本道場、相国寺林光院
・三冬が追われる女と出会う寛永寺、粟生光明寺(女が逃げ回るシーンに紅葉道、本堂裏。三冬に縋るシーンは石段上部)
・三冬が女の亡骸を託す根岸の円常寺、西明寺(山門、本堂)
・弥七が練香を届ける南町奉行所、大覚寺明智門
・手がかりを求め深川蛤町をうろつく大治郎と弥七が行き当たる若年寄米倉丹後守邸、大門
・典医・山路寿仙別邸、品川は御殿山の北隅に建つ「お匙屋敷」、毘沙門堂(塀と崖地、薬医門、弁天社、本堂透垣、宸殿、渡廊)
・大治郎が大久保平蔵(三冬の結婚賭けた試合相手)の髷を落とす松平美濃守邸門前、相国寺林光院


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