1995.11.24CX/松竹 深作欣二監督作品
殉死をテーマに、武士の意地が遂に一族を破滅に追いやる悲劇を描く。
森鴎外の簡素にして骨太な原作を、深作特有のスピード感溢れる演出で一気に見せ切る。
ロケ地
・危篤の君主に殉死を願い出て却下された弥一右衛門を城門で迎える長子・権兵衛、彦根城天秤櫓の内と外(夜間)。
・殉死者出るの報を聞き、急ぎ城を出て駆けつける藩士たち、天秤櫓橋上。
・小姓の小十郎たちが亡き藩公の菩提所前で自刃、仁和寺二王門東側の広場に卒塔婆セット。このあと続発する殉死者たちのシーン、青蓮院大楠下(切腹)、三井寺村雲橋上(白装束の武士二人通過)、西教寺境内(本堂前・墓地バック)、三井寺唐院門、お犬様を連れて自刃の犬牽役は小姓たちと同じ。この間、経緯を語るナレーションに被せてめまぐるしく画面が切り替わる。
・亡き藩公の荼毘が執り行われる春日村岫雲院、知るべの砕石場に似るも確証なし。
・城の廊下、弥一右衛門が殉死しないことへの陰口を聞く、知恩院御影堂外廊下。
・帰宅の弥一右衛門、山崎の屋敷近くの武家屋敷街に随心院北西角付近の塀。
・父の死後、禄が分割相続となった件について道場仲間の又七郎と話す四男・弥五兵衛、大覚寺大沢池に船を浮かべて釣り(背景に望雲亭)。
・亡君の一周忌法要が行われる向陽院、粟生光明寺(本堂大屋根上部と内陣)。
・法要の席で髻を切った権兵衛が打ち首との報を山崎屋敷に走り報告する末子・七之丞、随心院西塀〜長屋門。
・権兵衛が斬首される井出の口の刑場、下鴨神社馬場。払暁、残された四兄弟が兄の首を取り返しに来る梟首台は糺の森池跡の倒木前にセット。
・阿部一族に差し向けられる討手がゆく、彦根城天守裏手〜随心院北西角塀〜長屋門(切り返しでセットにスイッチ)。藩公が一族への討ち入りを遠見する天守下、彦根城天守裏手の垣上。戦死者の検屍も同所(三重櫓との間の広場)。
・ナレーションの背景などの、役者が映らないイメージ画に熊本城。
*一徹な老武士・弥一右衛門に山崎努、気骨ある戦国武者を好演、死出に舞う屋島も良し。一年も鬱屈の挙句いきなり過激な行動に出る長子・権兵衛に蟹江敬三、優しい温厚なアニさんと、外記に悪罵を吐く激情、そして斬首の場における苛烈な気迫が見せる。新藩主と腹心の林外記のみ白塗りビジュアル、わけても外記を演じる石橋蓮司、ちょっと「おじゃる」気味の狡猾な文官を吉良さまばりに熱演。鷹が亡君に殉じて火中に身を投じる場面や、権兵衛髻切りの場面など、仁義なき戦いふうの迫力ある画がわんさか。そしてなんといっても、方言がよくできている。
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