1975-1976日本テレビ/東映
キャスト
榊夢之介/高橋英樹
鉄平/桜木健一 おくみ/栗田ひろみ 菊造/木田三千雄
マサ/下之坊正道 からくり仁左ヱ門/片岡千恵蔵
秋山久蔵/深江章喜
南町で辣腕をふるった同心・榊夢之介は、役人でいては救い得ぬ人々のため職を擲ち人助けの道に入る。
表向きは寺に居候して金魚の飼育で生計を立てる浪人だが、堀端のお稲荷さんに窮状を訴える文と頼み料が投げ入れられるや動き出す。
彼をサポートするチームあり、屋根職人とその妹、元女形の爺さん、元大盗の植木屋と部下。彼らは調査活動はもちろん「十手無用」の成敗にも参加する。
一見「必殺」ノリの作品だが、主人公が高橋英樹なので冷徹な殺し屋ではなく、「許せぬ悪を叩っ斬る」正義の味方風味強し。断罪の際も、依頼者の身内と思えの台詞が入る。ゆえに、ふつう「依頼者」に肩入れしたり深い同情を寄せたりするのは御法度の「闇の殺し屋」なのに、「九丁堀」であることをつらっとさらしたりする。主人公の陽性を受けてチームは仲良しで結束も固い。馴染みの飯屋や女金貸しに、大飯食らいの現役同心も和気藹々。
タイトルの九丁堀は、八丁堀番外の「裏」を指す。御大が「くちょうぼり」と発音することもある。
キメ台詞は「貴様らのごとき極悪人には十手無用」。
第1話「粋に雨降る九丁堀」
ルーティンは決まっている設定で進む第一話、九丁堀稲荷へ依頼→調査→ワルの始末が描かれる(初仕事ではない)。
依頼は近頃態度のおかしな表具師の女房の素行調査、大盗の娘という出自を隠していた女が、過去の闇からの魔手に絡めとられるのを掬い上げてやるお話。罪を償うという女房には、役人じゃナイから融通という先生、あくまでアカるい高橋英樹。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸に祠セット。広沢池はこのあとはじめに女を脅した男が浮く仙台堀や、深川の船宿(南岸の料理屋を使用か)として使われる。
・女を脅迫する橋には前後とも中ノ島橋(橋上、橋下)。
・南町同心・秋山久蔵が榊に土左ヱ門に針で突いた傷があったと話す路地、西本願寺と興正寺境の路地。
第2話「わらを掴んだ女」
博打で身上を潰し首吊りの蝋燭問屋。依頼は娘から、汚名を晴らしてやってくれと岡場所からの訴え。しかし調査途中に娘は自ら仇に向かってゆき横死、その後ワルは揃って始末される。ストーリーはこのように単純でありきたりだが、ディティールで見せる。召集は夢之介が仏間の鉦がんがん叩いて。床の間はずごごーって開く仕掛けだし(会議をこんな秘密のお部屋でやるくせに、榊は依頼者の店へ堂々と登楼る)。菊造じいさんは女中に化けてワルのお座敷へ。極めつけは片岡の御大が賭場で代貸と道師をぷすってやる毒針のからくり。
ロケ地
・岡場所調査の報告を榊に上げる女形、大覚寺護摩堂。
第3話「美女が消えたまた一人」
次々と娘が誘拐されるが、身代金の要求もなし。狂気の芸術家は友の説得にも応じず、夢之介はやむなく刀を振るう。
ロケ地
・お町がさらわれた白魚橋、中ノ島橋(物音で見に行った下男は堀端。現場を見にやって来る夢之介と仁左の親方は橋下手の栗石敷きの右岸河川敷)。
・御家人の娘がさらわれた鎧戸渡し、瀬田橋竜宮(「傾いだ玉垣」下の川端)。その娘の死体が上がるのも同所。
・それを見た帰りの夢之介が通りかかる九丁稲荷、広沢池東岸。
・夢之介の要請で小名木川で張り込みの秋山同心、中ノ島橋下(橋上に人さらいが出て女を担いで走り去る)。
・玄斎を呼び出し誘拐事件について詰問する仁左の親方、大覚寺大沢池水門脇。
・玄斎の娘宅を訪ねた帰り道、鉄平が話をせがむも黙ってせかせか歩く夢之介、大覚寺放生池堤。拗ねた鉄平が座り込むお堂、護摩堂。
*夢之介に親友を疑われてかんかんに怒る仁左、鉄平らに夢之介との接触を禁じたり。事後きまりわるそうに酒持ってやってくる顔がラブリー。
第4話「私は見た」
お店に押し入り凶行を働く賊を見て運良く生き残る下女から、九丁堀稲荷に依頼が来る。彼女が見た賊と共謀し金を運び去る大身武士、その梅鉢紋が彼女を死に至らしめる。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸夕景(ラスト、下女の恋人が江戸を去るシーンも同所、こちらは桟橋をしつらえ)。
・加賀藩上屋敷、西本願寺大玄関門、南塀沿い路地。
・大聖寺藩下屋敷、大覚寺大門。
*凶盗に今井健二、大身武士に金田龍之介など悪役てんこ盛り。結婚資金に貯めた金をそっくり投げ出す依頼者の下女、夢之介はまるごと彼女の婚約者に返し今回タダ働きとなる。
第5話「この道ご用心」
辻斬りにやられた商家の娘から依頼が来る。ほかに夜鷹や夜回りが殺されているが、辻斬りは偽装の殺人事件。裏にはライバルを蹴落とそうとする札差と、これに加担し人殺しをしてのける部屋住みの若様がいた。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸。
・おしんが榊に浜田屋の内情を語る、今宮神社(参道、高倉前)。
・旗本・本多弾正邸、相国寺大光明寺門。この前に出ている蕎麦の屋台は方丈塀際。
・九丁堀稲荷へニセ手紙で呼び出される浜田屋の手代、駆けつける榊が走る、広沢池東岸堤。
・本多の若様を仕置する榊、相国寺大光明寺南塀。
*本多の殿様に、若様の行状について直談判の榊のダンナ、門前で「無礼者下がれ!」と怒気を発するお供の侍に福本先生。センセイ、クレジットに名あるも役名なく、劇中名を呼ばれることもなし。ひょっとして、本多の殿様が息子可愛さに身代わり出頭させた家来という設定なのかも。
第6話「鶴のかんざし」
やくざ者に腕の筋を斬られたかざり職の男、店は潰れ困窮のうちに妻も亡くし自棄の日々は酒浸り。片や犯人は大坂で成功したとの触れ込みで富商となる。江戸へ舞い戻った憎い仇を見つけたかざり職の娘は、お上へ訴えて出るが定法により時効成立でお咎め無し。
普通ならここで九丁堀にお願いパターンだが、この回は異色。悔い改めた者にはこの沙汰もありとする榊、謝っても元に戻らないのに理不尽極まると怒る鉄平が当初対立。しかし、後悔して更生し今の地位を得た話そのものが完全な虚偽、裏で役人とつるんだダークな素顔が見え、しかも娘が抜け荷取引相手の贄にされ消されるにおよび、出されてもいない依頼に応える九丁堀の面々なのだった。
ロケ地
・八百梅お房の死体が上がる川、嵐山公園中州岸。
・沖の本船へと船を出す雲州屋に必殺楊枝を飛ばす「釣り」のからくり仁左ヱ門、広沢池東岸。
・縁日に誘い込んだワル与力を雑踏のなか刺す榊、今宮神社境内。
*熱くなる鉄平に「九丁堀は商売」と御大、しかし筆半ばの訴状に金も無しで仕置にかかるメンバー、後期必殺テイストでもあり、からくり人っぽかったりもする。高橋英樹の「セコ突き」が見られるのも珍しい。
第7話「盗っ人仁義」
九丁堀稲荷に来た依頼は、近頃江戸にはびこる盗っ人の頭目に会いたいという、当の盗っ人の娘からのもの。彼女はまだ名乗りも上げぬその父が母を殺したと思い込み、会って訳を聞きたい一心の頼みだったが、真相は賊一味の齟齬から生じたもので、父は非道は犯さぬ昔気質の義賊と知れる。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸。
・闇の市助のアジト、丹波国分寺(門、本堂)。
・船で逃げる賊のシーンには罧原堤下汀。
・見逃され旅ゆく父と娘、丹波国分寺前の田畔(はさ木のある風景、畔には彼岸花が咲き乱れる)。
第8話「鐚銭一文おいらの願い」
小仏峠の近く、駒木野の里からぼろぼろになって歩き通し九丁堀へ願いを上げる少年。裏には献上松茸を運ぶ賄方役人の横暴、彼らの伽をさせられ不幸のどん底に叩き込まれた娘たちの涙があった。
もうハナから九丁堀であることを曝して動くチーム、事情を聞いた途端「斬る!」と声を荒げる夢之介、松茸持って道を急ぐ一行を街道の橋を通れなくして渡河させ、待ち構えて大立ち回り。帰り道、松茸とってくるの忘れたと悔やむ御大が傑作。
ロケ地
・留吉が江戸へと歩く道、地道や土橋、川辺に橋は本梅川若森廃橋と付近。
・江戸へ着いた留吉が渡る橋は中ノ島橋。
・九丁堀稲荷は夜間シーンなので暗くて確認できず。
・「お松茸様」一行を成敗する与瀬と吉野間の橋、木津川流れ橋。渡れなくする細工は桁をはずしてあるというもの、実際はずしてあるが一枚か二枚だけ。一行はやむなく渡河し、橋脚の下で待ち構えていた九丁堀チームにヤラれる。この際、橋桁から女たちの呪詛を込めた「恨」の絵馬がぷらーんと下げられる趣向。
第9話「八百八町連続爆破」
富商に爆弾が仕掛けられ、犠牲者多数。依頼はこれで子を亡くした母から来る。犯人は政治的不満分子と思いきや、新式火薬を作って騒擾の世に売り出そうという欲がらみ。師に裏切られ果てた若侍と恋仲になっていたおくみちゃん、兄と共に仕置に出向き仇を討つ。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸。
・硝石会所焔硝蔵、大覚寺明智門。
・おくみと高木のデート、今宮神社(数回デートの場面あり、東門内橋、本殿、合祀摂社、稲荷社など各所を使用。祭神については出雲から勧請とおくみの発言あり)。
・向陽塾、中山邸門。
・仙波屋爆破実行犯の塾生が死体となって浮く大川、嵐峡左岸汀。
*高木塾生に河原崎建三、青い書生を好演。師匠には岡田英次、インテリの大ワルの設定がなかなかハマっている。*爆弾の破片から向陽塾が浮上、山形大弐の柳子新論が書写された反故という設定。
第10話「死の影を追って」
自死とされた大工の死に納得いかない、恋人の芸者からの依頼。勘定組頭と両替商が改鋳をめぐって企む陰謀を聞いてしまったゆえと知れ「許せん」のよくあるパターン、しかし実行犯に江幡高志、ワルの役人に田口計、用心棒の凶悪な浪人に天津敏など配され見どころ多し。気の強い芸者が御大の娘かもというエピソードも挿まれる。
ロケ地
・大工が投げ落とされる勝福寺の鐘楼(塔とも)、相国寺鐘楼。掃除をしていて死体を見つける和尚のくだりに法堂も。
・江幡高志を始末した浪人がその足で役人を暗殺する夜道、大覚寺五社明神(本殿前、有栖川畔)。
・両替商・角屋小梅寮、中山邸通用門。ここから出た役人の前にずいと出る夢之介、湯豆腐嵯峨野朝鮮石人像前。
*役人をガードの用心棒の一人に福ちゃん、ラス立ち要員。
第11話「目刺し十匹うらみ武士」
揃いの赤マフラーして馬を飛ばし、目に付いた娘を陵辱するは町で棒手振りを引っ掛けて殺すはの悪たれは奥祐筆組頭のどら息子とその取り巻き。娘の恋人の岡っ引の手柄にして仇も討たせてやろうと「表」に回す夢之介の気配りは、南町同心を出世で釣った奥祐筆組頭の陰謀で裏目に出る。同心を演じる石橋蓮司と、どら息子の父の藤岡重慶が凄すぎ。レンジが旗本に婿入りの話を持ちかけられる段の表情の変化が見もの、御大の針を額に受けて祝いの品に埋もれてのぴくぴく断末魔も凄い。
ロケ地
・竹森稲荷で馬を飛ばす「黒い稲妻」たち、下鴨神社参道(馬場からのショットと、二の鳥居を遠景の画)。お参りの娘に目をつけるのは河合社、連れ込むのは裏手の林。
・石川刑部邸、不明。
・上から探索中止の命令が来てクサる岡っ引と同心、罧原堤下河原。後段、再度娘を襲うどら息子たちのくだりでは漁師小屋と灯台があしらわれている。
第12話「狙われた玉の輿」
たちの悪い岡っ引・銀八に強請られしゃぶり尽くされる夜鷹たちからの依頼、次のターゲットは元掏摸の父を持つ富商の女将。南町に監査入る情勢下、銀八のやりたい放題の裏には当の監査役である徒歩目付がいた。玉の輿の娘にワルの魔手伸びるを察知した元掏摸の親爺は、娘が脅され危機に陥る場に現れ、身を張って庇い落命、直後チームはワルを仕置に向かう。
ロケ地
・南町奉行所、大覚寺明智門(内外)。
・夢之介がかつて追った掏摸・市兵ヱと再会する塀際、相国寺方丈西塀(市兵ヱが蕎麦の屋台を出す)。
・銀八が市兵ヱの娘で紙問屋・田丸屋の女将を脅す坂、今宮神社高倉脇坂。
・金を持って来させる波除稲荷、今宮神社稲荷社脇。
・事後、九丁堀稲荷へ参る夜鷹たち、広沢池東岸。
・自由の身を喜びつつゆく野道、北嵯峨農道。
*銀八に今井健二、弱者から容赦なく毟る血も涙も無いワルを好演。そのワルをも追い使う大ワル役人に綿引洪、欲深の上にど助平で凄すぎ。*嫁の素性も呑みこむ田丸屋、吉原送りの夜鷹たちを請け出してやる大度を見せる。理由がふるっていて、先代は盗品を元手にちりがみ屋を始めて成功というエピソードが語られる(口から出まかせかも)。
第13話「死神を追え」
強請りに応じなかった富商が二人まで殺された事件は、一つが本命で一つは目的ぼかし。九丁堀に助けを求めたドケチ商人が殺されたり、おくみが授受の際巻き込まれて投獄されるなど騒がしい展開。実行犯が仁左ヱ門のもとに逃げ込んで死んだことを利用し、悪企みの大元をとっ捕まえ早桶に詰めて秋山同心に引渡しで幕。
ロケ地
・大黒屋が刺される夜道、大覚寺大沢池堤道。
・越前屋に来た脅迫状に指定の波除稲荷、五社明神本殿前の石灯籠。
*稲荷に金を入れた依頼者が、ドケチゆえ見張っているところに面を曝して現れる榊、あなたがご神体?と付きまとわれて傑作。ドケチに梅津栄。
第14話「恋に咲く花 唐津湾」
依頼は失踪した許婚者を探してくれとの、唐津藩国家老の娘からのもの。岡っ引殺しや抜け荷と話が大きくなるなか、江戸家老と結託した回船問屋へ潜入のその男を気に入った夢之介は危機一髪を救ってやる。今回は娘についてきたじいやがフライングして落命するのみで、若い二人を見送るハッピーエンド。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸。
・荷船に潜入の信二郎とツナギをとる深川沖合、広沢池東岸。
第15話「おさよ無残」
凶盗に両親を殺され辛酸を舐めて育った男は、道をはずれ入墨者となり芸者のヒモとして日々を送る。仇を討ちたい一心の男を気遣う女は、男を死なせたくなくて九丁堀へ願いを上げるが、何度も出される「手を出すな」の指示は男の死を予感させる記号となる。
もうあからさまにお稲荷さまとしてメンを割る榊、出陣も記号じみている。
ロケ地
・おさよと話す榊のシーンに広沢池池底(水無)。
第16話「娘のいのり」
逃走中、目撃者の老婆を無慈悲に殺した賊がターゲット。この男、逃げ込んだ先の長屋で、父の帰りを待つ娘の寂しい心情につけこみ騙したばかりか、娘の家に盗んだ金を隠そうと画策し彼女を消そうとしていた。賊どもは事実を掴んだ夢之介たちにさくっと成敗され、騙された娘の気持ちを思いやって労わるくだりに長い尺がとられる。
ロケ地
・おみよを茶店に呼び出し匿っている男のことを聞く夢之介、長岡天神・錦水亭の見える池畔。
・匿った「佐吉」と浅草奥山に出かけるおみよ、今宮神社楼門〜高倉(見世物小屋がしつらえてある)。
・佐吉に頼まれた文を水に落としてしまうおみよ、神泉苑法成橋たもと。
*見世物小屋ではろくろっ首がかかっている。おみよをこれに誘っていた菊造さんが可愛い。
第17話「九丁堀危機一髪」
榊夢之介の初手柄だった盗賊が、手の込んだ仕掛けで復讐をはかる。偽の「依頼」で白井宿まで引っ張り出される夢之介、同道の香具師たちがみんな仕込みという陰謀に危機一髪、しかし仁左衛門の示唆で鉄平たちが来ており切り抜ける。なんかあるのかな、と思ってた連れの芸者はただの被害者。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸(水無)。
・街道筋、一部北嵯峨農道か。あとは堤道らしきものと山道、不明。
第18話「死を招く黄色い水」
女中が密談を聞いてしまい命を狙われるというよくあるお話だが、女一人を消すのに長屋の井戸に毒を投げ込み多人数を殺しカムフラージュとするなど、ワルが飛びぬけて悪辣。しかし腰の引けた善人の手代にやらせたもんだから目標の女を殺り損ない、九丁堀に恨みの筋が上げられる運びとなる。事後、家族を失った女に餞別をやってしまい九丁堀はまたもタダ働き。
ロケ地
・九丁堀稲荷、広沢池東岸。
・呉服屋の手代が物思いに沈む橋、中ノ島橋。
・千住の親戚に身を寄せた目撃者の娘が襲撃されるのを助けた夢之介が事情を聞く野道、北嵯峨農道。
・脚を引きずって帰る娘を見送る九丁堀チーム、中ノ島橋(娘は右岸を歩く)。
第19話「父ゃんが消えた!」
事の起こりは蜆売り少年の父の失踪、突き止めた居所は牢屋敷の真ん前の駕籠屋で、凶悪犯の息子三人を奪取しようと企む猛母は牢に向って穴を掘らせていた。駕籠で夜中に土を捨てにゆくさまなど、ちょっと大脱走みたいな面白さ。
ロケ地
・少年が行商の途中父の行方を占ってもらう易者は今宮神社石橋たもとに出ている。
・蜆採りの小川、大覚寺放生池の源頭か(うしろに線入りのクリーム塀、今は土管から出ているが70年代はどうだったか不明)。
第20話「奈落の花」
当代の人気役者二人、一人は殺されもう一人は犯人として捕縛、二番人気の下積み長かった扇蔵が名を上げることに。裏にはタニマチの商売がからんだ対立があり、ただ一人の目撃者の道具方の老爺は、娘が扇蔵の隠し妻ゆえに逡巡し黙り込む。
菊造の、昔馴染みの道具方の仇をとっての一言が泣かせる。
ロケ地
・殺された役者と捕まった役者と、両方のファンがひきもきらずお参りの九丁堀稲荷、広沢池東岸(水無)。
・道具方の娘に事情を聞く夢之介、錦水亭(東屋外観をズーム、出窓からの画のあと室内にスイッチ、八条池をバックにする)。
・父の遺骨を抱いて越後へ帰る娘を見送る鉄平たち、罧原堤下河原。
第21話「甦えったいれずみ者」
伝馬町の赤猫をきっかけに、北町同心殺しの冤罪事件を解決するお話。これは同時に、三年前友人の軽口で罪に落ち、父の仕事も恋人も失った哀しい女の無実を晴らしてやることにもなるのだった。
ロケ地
・稲荷へ願いを上げに来る仁吉夫婦、広沢池東岸(水無)。
・同心殺しの目撃者の女に話を聞くのは相国寺鐘楼脇。
・同心殺しの現場、大覚寺有栖川畔の道。
*仁吉の再吟味願いが却下され、処刑済みの死体を受け取ってきた段では夢之介が仲間に「落ち目」などとボロクソに言われるシーンあり、高橋英樹ものでは珍しいかも。実は元上司の粋なはからいで仁吉は早桶からコンニチハなのだが、依頼者みんな生存でハッピーエンドパターンもこの作では珍しいかも。
第22話「江戸の町から魚が消えた!」
御用魚召し上げもの。時化続きでたださえ少ない魚を公儀賄方がことごとく召し上げ、思い詰めて役人に斬りかかる者や首吊りも出るなか、賄方に新しく入った真面目な小役人が救済をはかるが敢無くワルの手にかかる。当初の依頼は調査に入る間もなく当該者が磔、正義漢の役人が非業に斃れてのち仕置の運び。
ロケ地
・賄方の役人に斬りかかった魚屋の磔刑、罧原堤下河原。
・江戸城イメージ、姫路城はの門下坂。
・賄方ヘッドの登城の際、直属上司の不正を訴える新人、建仁寺僧堂前路地。
第23話「ゆきと云う女」
孕んだことを責められ折檻を受けた飯盛女は、衝動的に男を刺し逃亡。倒れ込む街道筋で彼女を助けたのは、夫婦で旅をする幸福そうな幼馴染。その夜泊まった宿から出火、夫婦は焼死し、手形を託されていた飯盛女は幼馴染と取り違えられ、言い出せぬまま五年の月日が流れたのち、過去から魔手が伸びるのだった。
結城屋の女将におさまり健気に働く女を脅す男に岸田森、蛇のような表情が秀逸。これを追い使う岡っ引に遠藤太津朗、悪企みをする二人のどアップが実に暑苦しい。
ロケ地
・結城屋の若女将が毎月お参りする、幼馴染の女が葬られた粕壁宿の投げ込み寺、化野念仏寺。
・女将に結城屋の主を呼び出すよう強要する長次、罧原堤下河原。
第24話「二人清三郎」
大火を起こし行政が混乱するのを狙い、無宿人に人別を高値で売りつける阿漕。はじめの依頼は放火を目撃したお薦さんから来る。そして、人別を勝手に操作されたうえグルの役人に捕まり寄場送りとなった男の恋人から、重ねての頼みが九丁堀に。
ロケ地
・寄場へ恋人を訪ねるお民、罧原堤下河原か。
第25話「鬼を殺して!」
大物の香具師の元締と対決する一話。親分の銀蔵は女癖がわるくしかも飽き性、目をつけた女を無理矢理モノにしては捨てるという所行を繰り返していて、おさよの妹分の芸者が追い回されているのに介入した鉄平や菊造は仕事を干されてしまうハメに。そして、無理矢理囲われたすえ捨てられ、売り飛ばされかかっている女から稲荷に訴えが来る。
ロケ地
・銀蔵の縄張りの縁日、御香宮。本殿と参道を使用。
・見回りに来た銀蔵がマサに誘き出されてくる祠、大覚寺五社明神。
・事後、父の墓に参るおなみ、黒谷墓地。
*銀蔵に南原宏治、一の子分に五味龍太郎、下っ端には福ちゃんもいる(冒頭の行列と、夢之介乗り込みの際表で将棋さし)。おなみには土田早苗。
第26話「九丁堀ニセ者大作戦」
結びの一話は、九丁堀のニセモノが出て大騒動となる。何の関係もない商家に嫌がらせを働いて稲荷に依頼を持ってゆかせるよう仕向け、その後名を騙って凶行に及ぶもので、同心時代の榊が捕え獄門台に送った賊の弟が企んだ陰謀。鉄平たちが捕縛され夢之介たちも逃亡を余儀なくされるが、荒っぽい手段に出たチームによって悪企みは潰える。
ロケ地
・商家の生き残り娘によって破壊される稲荷、広沢池東岸。
・秋山が見張るなか釣りの夢之介、桂川松尾橋上手堰堤下。
・生き残り娘が許婚者と神奈川に発つのを見送るのは流れ橋。
*榊を疑い鉄平を激しく拷問する筆頭与力に宮口二朗、賊とはつながりもなく拍子抜け。
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