1972年5〜8月 フジ/東映 キャスト覚書 銀次/あおい輝彦(岡っ引の子、自称お祭りトンビ。得物は太鼓の撥) 棒の銀平/進藤英太郎(岡っ引、銀次は50過ぎでできた一人っ子。銀に朱房の十手は吉宗を暴れ馬から助けて大岡忠相から拝領) 安五郎/田辺靖雄(三助。4話で孤児の設定も) 藤四郎/渡辺篤史(浪人の子、絵師志願) 小次郎/内田善郎(貧乏旗本の子、ニックネームは蘭学) おみつ/中山麻里(呉服屋の令嬢、柔術使いのおとこ女) おふう/川口晶(溜まり場・八丁風呂を切り盛り) 田村兵庫/山口崇(南町与力) 一本長兵衛/露口茂(乞食頭) すずめ/萩原健一(長兵衛の手下、銀次称は「もじゃもじゃ頭」。出演は初期のみ) このほか、は組の女火消し、飴売り娘、女占い師などの女性メンバーが適宜銀次に手を貸す。 銀次が父の後を継いで一人前の岡っ引となるプロセスを描く「青春ドラマ」。事あるごとに銀次に助言を与えるのは闇の帝王・一本長兵衛、乞食のカッコをしているかと思えば、粋な芸者連れて舟遊びと洒落込んだり。メンバーはスケジュールの都合か、時折一部欠ける。銀次の得物は撥、悪者の腹や背に太鼓叩くみたいにバシっと決める。メンバーが口にする、独断専行・横暴・糾弾・××ハンターイ等のタームがいかにも70年代テイストなのも面白い。 第1話 「出発の歌」 1972.5.6 南町与力・田村兵庫の求めに応じ、八百八町の大掃除に乗り出す銀次たち、起こりの一話は五人の「家出」から。さっそく起こった事件は回船問屋・伊勢屋の抜け荷がらみ、異国へ渡ることを夢見る若者たちが割符を入手し伊勢屋を脅して密航しようとしていた。 ロケ地
銀次と共に家出組は計五人、それぞれの家族との別れがめまぐるしく描かれる。 第2話 「裏切られた女」 1972.5.13 一揆衆を売って江戸へ出た恋人を求めて、雪深い村から来た女。しかし男は汚い役人の手先となった挙句、娘の前で斬られてしまう。銀次たちはその場に乱入、裏で糸を引いていた同心と、仲間のちんぴらと格闘、田村の旦那と銀平がいるのはイイが、長兵衛とすずめもフツーに殺陣に参加していて笑える。今回も、娘や落ち込み銀次を励ますため太鼓叩きでハイに。 ロケ地
お志津に范文雀、恋人の留五郎に高野長英。 第3話 「飛びこんだ殺人者」 1972.5.20 今回は八丁風呂のおふうちゃんしんみりモノ。 ロケ地
今回も事件解決のヒントを告げに来る長兵衛、太吉逃がしに助っ人も手配。これが表は女たちに人気の小間物屋の池之端の新之助、裏の顔は義賊・そよ風小僧というお遊び、ピーターが演じる。長兵衛はほかにも、田村の旦那と一緒に奥祐筆に脅しをくれたりと活躍。 第4話 「小判の行方を追え」 1972.5.27 安五郎が連れてきた娘の持っていた太鼓から話がはじまる。彼女は豪商の孫で、実は三つ組物だった太鼓には莫大な隠し財産のありかが記されており、これを狙う勘定吟味役との攻防のすえ一万両ゲットの銀次たち。しかし金は娘の申し出で養生所に、銀次たちは三つ組の太鼓貰ってそれなりにハッピー。 ロケ地
前回に続きピーター登場、市中での太鼓の取り合いに介入。しかし協力でなく追っかけっこに参加したつもり、浪人たちに太鼓渡しちゃって銀次にオコられ。太鼓のひとつがあった骨董屋の主に梅津栄、珍妙な顔で頓死。 第5話 「幽霊かたき討ち」 1972.6.3 大店の馬鹿息子の横恋慕で、虫けらのように殺された恋人たち。心中と繕った挙句、売り物の女と蔑む大店の女将をお説教銀次、息子の「晴れ姿」を嬉しそうに聞いてる銀平とっつぁんが傑作。 ロケ地
捜査のため吉原へ行くとなると女たちに総スカン、青春ドラマみたい。銀平と嫌味の応酬の中で情報交換に変わる、漫才みたいな一幕も見もの。 第6話 「美女がつぎつぎ殺される」 1972.6.10 町でブイブイの旗本奴・赤鞘組、戸浦六宏の同心と組んで富商へ大掛かりな美人局を仕掛ける。この過程で過って殺された黄八丈を着る娘たちの件を看過し得ず銀次たちは動く。直接の動機が「俺たちの嫁になる女が減る」なのが笑える ロケ地
黄八丈の娘が狙われたことから、囮作戦に出る銀次たち。一人は中山麻里、今ひとりは渡辺篤史…髭そのまま、裾はしょって脚まるだし。花嫁の替玉もつとめる悪ノリぶり、白塗りに口髭で非常にキモチワルイ。 第7話 「怪談殺された幽霊」 1972.6.17 大ワルの検校が幕閣への貢物にする小町娘を拐かすお話、手口がふるっている。阿漕な高利貸しの座頭が殺されたあと、借主宅へ化けて出て娘を利息に貰うと言って消える。もちろん検校が仕組んだお芝居で座頭は生モノでグル、「出る」のが金田龍之介だから血も凍るビジュアル、天井から下がったりもする。 ロケ地
清悦の娘の許婚者・彦の市に池田秀一。 第8話 「幽霊大泥棒」 1972.6.24 続く幽霊ネタ、今回「出る」のはおみつの実家・河内屋。もちろんお芝居で、堅物の番頭が水茶屋女に誑かされて盗人の手引きをしたもの。ワルの内輪もめがラス立ち段階で描かれるが、水茶屋女の意外な純情なども盛り込まれている。 ロケ地
第9話 「うそつき寅は見た」 1972.7.1 抜け荷摘発もの。夜中に荷を運んでいるのを目撃した子供が信用してもらえずフテるのを掬い上げてやる銀次、今回この子を助けた際負った傷で寝たままの演技となる。 ロケ地
銀次は終始寝間で安楽椅子探偵を決め込み、銀平のとっつぁん大活躍。金と女を掴まされて情報を流していた同心に長谷川明彦、中途半端なワルの苦悩を好演。相手の女は赤座美代子、抜け荷商人は高品格。長兵衛さん、見舞の菓子箱の掛け紙にヒント書いて提供のお茶目。 第10話 「人情牢破り」 1972.7.8 無実の罪に落とされた親子を救うお話、足の悪い男児のリハビリも兼ねる、青春ドラマ風の展開。脱獄はなく、どっちかというと乱入。 ロケ地
今回も岡っ引と与力が悪事に加担、与力に和崎俊哉。 第11話 「脱獄親子の十手」 1972.7.15 立て続けに三人もの盗っ人が破牢、裏には逃がし屋がいた。 ロケ地
父を案じ十手を黙って持ち出す銀次、悪者を括って十手を返すが、対面はナシで窓から放り込み。差し入れが夜店の金魚なのもファンキー。逃がし屋に手を貸す同心に南原宏治。 第12話 「罠にかかった安五郎」 1972.7.22 大酒食らって正体をなくした安五郎、殺人犯に仕立てられ捕縛さる。いつものように事件操る役人と岡っ引、裏には銀平の捜査の目をそらしたい抜け荷商人がいた。 ロケ地
ワルが豪華キャスト、抜け荷の安房屋に名古屋章、手を貸す同心に近藤洋介、安五郎をハメた遊び人には中田浩二(途中で消されて、凄い顔で死んでいる)。 第13話 「御用太鼓が闇を裂く」 1972.7.29 贅沢禁止のニセ高札が立てられたかと思うと、芸者に小判をばらまく富商やエロ坊主が懲らしめられて晒される。彼らの額には「楽」の字。これは前大老・松平定信こと「白河楽翁」が再び政界に返り咲くのを阻止しようとの企みであった。 ロケ地
今回、合図の太鼓に記号としての意味を持たせる銀次たち、無茶苦茶複雑な伝言をやらかして傑作。後味のわるい結末に沈む銀次を慰めに来る親父、ここでも小道具は太鼓。 第14話 「反乱の城下町」 1972.8.5 松前藩の不正を糾そうとした浪人を助けて動く銀次たち、今回銀平のとっつぁんが大活躍、浪人の家に書付を取りに行ってやり斬られて負傷。悪者が処分を受け、浪人は復帰叶い昇進という結末に釈然としない若者たちが描かれるあたり、制作当時の空気を感じさせる。 ロケ地
今回田村さま旅立ち設定(姿は見せず)。長兵衛は皮肉っぽくヒントを与えてゆく。生硬な石原浪人に睦五郎。 第15話 「鬼勘の黒い罠」 1972.8.12 北町同心・鳥居は鬼勘と異名をとるやり手、容赦ない取調べで恐れられる。お話は、その鬼勘が人生に疑問抱いちゃって方向転換、殺しの犯人強請って大金ゲット、代わりに無実の者を犯人に仕立てるが銀次の介入でおじゃんというもの。今回、安五郎が鬼勘の仕事を褒めちぎりチームと離れ、あろうことか鬼勘の下っ端になるという珍しい展開。 ロケ地
鬼勘は名和宏、ぎらついた同心役もなかなか。冤罪でとっ捕まる大工は島田順司、責め問いシーンがよくハマる。殺された棟梁んちの若頭?に福ちゃん、立ち回りなしで悪者でないフツーの人、ラストの宴会には大鯛もってニコニコ登場。しかしクレジット(役名なし、劇中呼称は勝五郎)は一本足らずの「福本清二」…。 第16話 「殺し屋が来た」 1972.8.19 連発銃をぶっ放す上方ヤクザが大暴れ、江戸ヤクザと大抗争と思われた騒動には黒幕あり、巻き込まれたふうを装ってライバルを抹殺しようとした札差の仕業。これにからんで子供がさらわれ、珍しく長兵衛から銀次たちに依頼が来る。闇の勢力を動かそうと企んだもので、子は長兵衛が隠して育てている一人息子なのだった。 ロケ地
珍しい長兵衛さんの内面描写が見もの、ナイショの奥さんは藤田弓子。*長兵衛の息子・金太と知り合うきっかけも、彼を探す手段も太鼓。捜索には江戸中の「太鼓好き」が集まってきて町なかで大真面目に合図の太鼓をとんつく叩いたりする…ふざけてるようにしか見えない…けっこう深刻なお話なのに。三次に佐藤蛾次郎、ベタのクレジットには川谷拓三の名も見える。 第17話 「もどってきた十手」 1972.8.26 銀平のとっつぁんの十手が盗まれ、殺しに使われてしまい窮地に。落ち込む父を見た銀次は自ら申し出て田村から十手を貰いうけ、事件解決に奔走する。 ロケ地
他のメンバーは銀次の下っ引として働くと宣言、その人数で食ってけるのか強烈に疑問。 *2004年秋にサンテレビで再放送されたものを拝見して書きました。「乞食」「三助」は流しているのに、かなり長い部分あちこちで音消しが入っていました。また、「不適切な表現」が云々の「おことわり」が冒頭に挿入されていました。 |