第三シリーズ 2001CX/松竹
第1話「手裏剣お秀」2001.6.5
杉原秀の話。父・左内は存命という脚色がなされている。
鰻売りの又六が小兵衛のもとに持ち込んだ話は、多人数で女一人を殺すという隣の浪人のよからぬ企み。その女にさんざんに打ち負かされた旗本の若様たちに加勢するというもので、物騒な話は七年前の事件も引きずり出す結果になる。的外れの遺恨を受け仇と追われる身の女とその父、主家に迷惑をかけぬため父娘二人して身を退いた老剣客は、病みついた体の捨て場所を求めていた。
ロケ地
・浪人たちが杉原道場へ赴く道、民家塀二箇所*、*。
・不二楼から品川台町へ赴く小兵衛、駕籠をおりたところへ三冬がやってくる、仁和寺茶店裏付近林間。
*杉原秀の根岸流手裏剣「蹄」披露は、小兵衛の求めに応じ三冬と対戦の形で行われる。父の左内には寺田農、渋い老剣士を演じる。又六の隣人の浪人で、実は仇討ちメンバーの一人だった益田に宇梶剛士。
第2話「鬼熊酒屋」2001.6.12
日ごろからどうにも気になる居酒屋の因業親爺が、人知れず業病に苦しむさまを見かけた小兵衛は当然のごとく首を突っ込み、その心を溶かしてゆく。浪人たちが酒場に押し入ったのを叩き伏せたあと、小兵衛は病よりも深く親爺を苦しめていた過去の行いを告白され、罪ほろぼしはとうに済んでいると説き肩の荷をおろしてやるのだった。
ロケ地
・鬼熊酒屋を襲う助っ人を頼んだ浪人に斬られかかっている与吉を助ける三冬、上賀茂神社北神饌所前。
・隠れて薬を服む熊五郎を見かけ宗哲を呼び診させる小兵衛、松尾大社亀の水場脇(背後に用水畔の山吹の枯れ枝がぼんやり映りこんでいる。原作設定は浅草の玉姫稲荷絵馬堂)。
・隠宅を訪ねてきた熊五郎を船で送ってゆく小兵衛夫婦、嵐峡。
*鬼熊を演じるは大滝秀治、気に入らぬ客を平気で叩き出す荒くれぶりと、内実は養女への呵責に苦しむ人間性を見事に融合させて演じる。*キャスティングの関係か、原作にない筋書きも入り、微妙に鬼熊の指向性が違ったりする。*おはるが熊五郎にふるまう「鴨飯」のほか、じゅうじゅうと焼かれる鬼熊酒屋の肴が生唾もの。
第3話「狂乱」2001.6.26
暗く内向的な性格から疎まれ蔑まれる若者。加えて並外れた剣の天稟は、彼を底なしの孤独に誘う結果となる。この「狂乱」の剣の道の迷い子を掬い上げてやろうとした小兵衛であったが、若者は既に抜き差しならぬところへ踏み込んでしまっていた。
ロケ地
・牛堀道場から憤りのまま出た石山甚市が突き当たった侍を斬ってすてる浅草観音参道、清凉寺境内(経蔵から本堂、多宝塔がぐるっと背景に映し出される)。
・石山が仕える湯島天神下の本多丹波守邸、大覚寺明智門〜遠侍前。彼が暮らすお長屋、妙伝寺塔頭。
・出稽古の牛堀九万之助を襲おうとして小兵衛に阻まれる石山、随心院裏土塀際。
・田沼に事の経緯を報告の三冬、書院をバックに池(田沼さま鯉に餌やり中)。
*原作とは話のゆくたてを少し変えてあるが、石山の底知れぬ孤独は同じ。追い詰められ暴発した魂は狂気をはらみ、無関係な人を多数巻き込んで返り血塗れの石山が「師」に討ち果たされ昇華されるくだりは、凄惨さゆえ尚更凍てついた心の悲惨さ哀れさを浮き彫りにする。
第4話「冬木立」2001.7.10
悲惨な境遇から女を掬い上げてやろうとした小兵衛の思いは空転。小兵衛やおもとらの真情を理解しつつも、女は「亭主」と過ごした春秋忘れ難く、その死を知ってのち儚く消える。女を不幸に落とした奴輩を成敗しても、小兵衛の虚ろは晴れない。
ロケ地
・小兵衛とのやりとりを怪しみ、おきみに迫る「亭主」竹造、近江八幡水郷葦原(西の湖の州と思われる)。
・香具師の元締・若松屋のことを報告の弥七、八幡堀堀端。
・釣りの小兵衛、おきみを襲った相模屋の主についての弥七の感想を聞き「耳が痛い」と述懐の川端、沢ノ池東岸汀。
・若松屋、中山邸通用門。
*土臭い気のいい小女と、すさみきった現在とを演じた女優のうまさが際立つ。
第5話「金貸し幸右衛門」2001.7.24
武士を捨て金貸しとなった男は、稼業のせいで娘を亡くしたことにより今度は生を捨てる。男が命を狙われたことで関わった小兵衛は娘の仇を討つかたちとなり、幸右衛門から莫大な遺産を託されることとなる。
ディティールを原作と少し変えてあり、静謐な構成となっている。
ロケ地
・娘の姿を求めて浅草寺へ赴く幸右衛門、不明。浅草富坂町の徒目付・川田十兵衛邸、妙心寺福寿院。弥七らの見張りシーンではここへ入る路地も使用。
・川田に雇われて幸右衛門を狙った浪人が消される妙縁寺裏空地、御室霊場か。
・入谷田圃に幸右衛門を襲撃する川田一味、大覚寺放生池堤、五社明神。
*第三シリーズは大治郎不在
・剣客商売 表紙
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