2003CX/東映
第1話「将軍の女たち〜運命の出逢い〜」2003.6.3
13代家定の世、島津候の養女として御台様となる篤子の輿入れ、お国言葉も抜けぬ篤子が曲折を経て、大奥総取締・瀧山と対決する覚悟を決めるに至るプロセスが描かれる。
篤子の恋人との別れ、次期将軍を巡っての島津の思惑、暗躍するっぽい紀州候の実母など、風雲急を告げる幕末の空気が出ているんだかいないんだかよく判らない、おんなのドロドロの予感。
ロケ地、安政三年薩摩のイメージに桜島(役者出ず)。すみ子と克顕のからみのある錦江湾の浜辺、琵琶湖西岸。江戸へ出立の篤子の駕籠がゆく薩摩の街道筋、山室堤道。輿入れの篤子と大奥勤めに赴くまるの出逢い、姫路城好古園松の庭付近の通路。城まで一緒に映る高所からのアングルもあり。島津候登城シーンの門は姫路城菱の門。このほか、西の丸や天守外観、はの門など各所が使われる。蔵のシーンでは彦根城西の丸三重櫓も。
*島津斉彬に本田博太郎
第2話「狙われた姫君」2003.6.10
いよいよ始まる瀧山の嫌がらせ、質素な篤子に反発の女たちの空気と相俟ってねちねちぎとぎと。そんななか篤子は斉彬に従ってきた恋人と顔をあわせ、意味深な言葉を口にする。そして将軍の子を産む決心をして閨のなか家定の心情がぽろりと漏れるとき、盛られた毒が利いてきたりなんかして。
ロケ地、雛の宴、姫路城西の丸(天守バック)。島津候の下城、いの門(表側)。
*「斉彬」博太郎、今回迫力で政治家の顔。例の口調でぼそっと部下を脅す。キレる役柄より迫るものがある。
第3話「江戸城燃ゆ」2003.6.17
篤子が飲まされていた毒の正体は子をなさぬための薬、瀧山さま開き直ってええ入れてましたがなにか・習慣ですと言ってのける。また、斉彬は後継が紀州に決まったことで篤子は用無しと東郷に言い放つ。井伊大老就任で風雲急を告げるなか大奥から出火、炎の中で東郷と再会の篤子さま、一方上様は篤子を火の中に探しに行こうとして血吐いて昏倒。
篤子に諦観を語ったり、自らを省みず火の中に助けに行こうとする純情を見せるなど、既成の家定像を塗りかえるドラマが面白い。
ロケ地、薩摩藩邸、大覚寺大門。まるが篤子に薬を調べると言う縁先、粟生光明寺方丈。家定が篤子に諦観まじりの「手水鉢の亀」を語る、彦根城玄宮園臥龍橋上。東郷が眺めやるお城の入口、姫路城ぬの門。
第4話「将軍死す」2003.6.24
炎に包まれる大奥、助けに来たという東郷に従わず残る篤子。以後倒れた家定の枕頭に詰める。瀧山は篤子の裏切りを家定に耳打ちするが、死の床の将軍は篤子の手をとり自らの死後自由になれと言い事切れる。東郷くんは再度忍んで来るが、篤子は家定の言を受け大奥に残ることに光明を見出し、申し出をはねつける。また、瀧山さまは憑き物が落ちたみたいに落飾した篤子に寡婦としての仲間意識を持ったり。
ロケ地、火事の被災者が診療を受ける広場、彦根城西の丸三重櫓前。瀧山が初山に火事の折の篤子のことを告げられる、粟生光明寺方丈。家定が執務後倒れる廊下、大覚寺むらさめの廊。宿下がりのまるが東郷を訪ねる薩摩藩邸、大覚寺大門。上様危篤の報にばばーんと映る天守、姫路城(ちょっと笑える切り替えショット)。焼け跡の普請と偽り城に入る東郷たち、姫路城ぬの門。
第5話「京から来た姫君」2003.7.1
家定の死去、篤子の落飾、まるは残留で、14代の御生母として実成院が大奥に乗り込んでくる。そして和宮降嫁、政治的大事件も大奥では「なによあの女」レベルの諍い、きたる荒波も意識せず太平楽な一時が描かれるがそれなりに深刻。
ロケ地、江戸城、姫路城天守。和宮お輿入れの道に好古園路地。八瀬童子が担いできた輿を女陸尺に渡すの渡さないのですったもんだのお迎えの門、姫路城ぬの門。
*場が一瞬にして凍る、和宮の実成院への答礼「ありがとう」。安達祐実うますぎ。
第6話「嵐の予感」2003.7.8
和宮を襲った「ご内証」の女は嘆きのまま座敷牢で縊死、側室選びに派手な振る舞いの実成院、家茂将軍は御用繁多、ねちねちと話進むなか、和宮と実成院対決の場面に待ってましたの瀧山さま復活。
ロケ地、瀧山さまにお戻りを願い出るまるがゆく、姫路城はの門下坂。奥医師に致仕を願い出る慎ちゃん、姫路城好古園屋敷門。
*和宮の御所ことば、そのままだととても理解不能のアレをソフトに処理している脚本は大いに評価できるかも。
第7話「禁断の恋」2003.7.15
実成院と和宮双方に厳しく指図の瀧山さま、酒控えろ・診察受けろとぴしぴし始動。
和宮は診察を受け、子の望めぬ体と判明する。瀧山と実成院の板ばさみとなった初島は恋に逃避、しかし役者を引き込んでいたことが露見し大騒動、和宮の懇願で初島は罪一等を減じられ遠島となる。
やまぬ実成院の放蕩、瀧山さまはそんななかおそのの墓参の折出会った僧侶に家定の面影を見るのだった(柳丈の顔が家定にモーフィング)。
ロケ地、おそのの死体を見送るまると初島、のちに初島追放を見送るまる、姫路城いの門。和宮が側付きの女官二人が京へ帰ったことを家茂に話す庭、彦根城玄宮園池畔。家茂が和宮不妊の診断を聞く、魚躍沼龍臥橋上。
第8話「束の間の夫婦」2003.7.22
大勢としては将軍上洛と、続いて長州征伐が始まる間のお話。家茂は倒れ、看病の和宮と束の間の琴瑟が描かれる。瀧山さまは心労の果て柳丈によろめき、まるの慎ちゃんは戦いに行ってしまう。
ロケ地、写真をとる和宮、姫路城西の丸。家茂に側室を勧める和宮、彦根城玄宮園魚躍沼・龍臥橋上。上洛の家茂の駕籠が出る、姫路城菱の門。柳丈の如是寺、龍潭寺。慎ちゃんがゆく街道筋、嵐山自転車道。
第9話「凶事を呼ぶ黒紋付の霊」2003.7.29
盆で多くの女中が宿下がり、閑散とする大奥で居残り組が無聊を慰めるイベントの百物語、最後の蝋燭を置きに開かずの間へ入った涼波が惨殺死体となって見つかる。
祐筆に話を聞きにいったまるは、そこでも開かずの間にまつわる黒紋付の女の不吉な言い伝えを聞かされる。涼波の件は針子の歪んだ愛憎の果てと知れるが、家慶公も見て直後頓死した曰くつきの黒紋付の女を上様も見てしまうのだった。
ロケ地、宿下がりの女たちがゆく、姫路城はの門下坂。墜死の櫓は姫路城櫓門に似るも不明。
*祐筆にふだんはナレーション担当の岸田今日子、ちょっと喋るだけで怖い。
第10話「上様ご出陣」2003.8.5
実成院の反対を押し切り、死も覚悟して長州征伐に出陣を決める家茂。
和宮は運命を悟り、せめても家茂の忘れ形見をと側室を寝所に上げるが、家茂は拒否。和宮の心根を愛しく思った家茂は足繁く訪ない、出陣までのひととき親密で幸福な二人の暮らしが続く。
家茂出陣の件で瀧山への憎悪を募らせた実成院は、訪ねてきた柳丈と会見した件で追い詰めようとするが、家茂は瀧山に大奥の後事を託し出てゆく。
悪夢を見続けていたまるは、実家からの文で慎ちゃんが戦場から無事帰還したことを知りうきうき、しかし同刻、大奥には家茂大坂城に病没の悲報がもたらされる。
新将軍・慶喜は情勢ゆえ奥へは姿を現さず、大奥は外界と隔てられた日常を送る。そして勃発する戊辰戦争、まるは慎ちゃんが再び従軍していることを知らない。
ロケ地、和宮と琴瑟の日々を送る家茂、彦根城玄宮園。柳丈が七ツ口に訪ねてきたと聞かされる瀧山、粟生光明寺方丈縁先。長州征伐に出立の家茂、姫路城西の丸(天守バック)。家茂病没の大坂城、天守は本物。鳥羽伏見の戦い・慎ちゃんが撃たれる野原、酵素河川敷。
第11話「将軍の女たち〜旅立ちのとき〜」2003.8.19
軍を見捨てて江戸に帰還する慶喜、徳川の終焉が近づく。危機を感じ混乱する大奥に、篤子が帰ってくる。尚徳川への奉仕を説く瀧山を抑え動く天璋院、些かの対立はあれど静穏の裡に明け渡される江戸城、二人の女が大奥の最期を見る。そして物語を縁取るまるの話は、辛くも生き延びた慎ちゃんとの再会で終わる。
ロケ地、戦場で虫の息の慎ちゃんが医師に助けられる野、酵素河川敷。養生の医師宅は酵素民家セット。江戸城に姫路城菱の門、はの門下坂、いの門。天璋院のもとから下がる瀧山のゆく廊下、粟生光明寺本堂裏手の御廟への渡廊。
第12話「明治篇 新しい生命」2003.9.2
時は戊辰の役終結の翌年、慎ちゃんと結婚し診療所を開き身重となったまるを訪ねてくる初島さま。二人の会話をフレームに回想シーンがめぐる。
牛鍋屋を開くお笑いトリオの話や、瀧山さまの近況が語られるなか、天璋院の話になるが二人とも消息を知らない。敵方の縁者ゆえ身を潜め暮らすのだろうと忖度する二人、しかし真ちゃんの往診に付き添った帰りまるが見たのは、耳目を集めつつ力車を遣る洋装の篤子だった。
大奥SP〜幕末の女たち〜 2004.3.26
役割人格を演じきり、砂を噛むような日常の果て木隅のまま死ぬ男。
異色の家定像を目に焼き付ける、本編に骨太な肉付けを与える一編、狂言回しのまるも慎ちゃんも出てこず、物語は緊張感に満ちたハードな展開を見せる。
紀州慶福謁見の際の「カステラに毒」にまつわる騒動を前段の主軸に置き、米国との屈辱外交を巡る諸方の思惑を後段の軸とし、家定将軍の御世を描き出すドラマはなんといっても役者・北村一輝あってこそのもの。あらゆるエピソードが彼に向かって収斂し、時の歯車が身を轢き潰すなか、愛しいものたちへの溢れんばかりの情が迸り、「運命の一包」は彼の口に入るを阻まれるのだった。
ロケ地、江戸城外観に姫路城天守(冒頭、婚儀祝宴の大広間とCG合成)。城の庭に彦根城玄宮園。薩摩での東郷と篤子のエピソードに摩気橋、そこから眺めやる娘の身売りは山室堤道。下田・玉泉寺の米国総領事館、金戒光明寺禅堂。篤子が法要に訪れ東郷から毒薬を渡される芝・増上寺、粟生光明寺本堂(南面からの撮り)。
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