剣客商売スペシャル、2005.1.11CX
死病に取りつかれた剣客が、死を前にとる行動。里人を苦しめるゴロツキどもを成敗する刃、それは己を裏切った妻への憎悪が振るわせたものでもあった。
他方、辻斬りで身を滅ぼした父を持つ青年は、運命を呪うでもなくたつきの道を見つけ日々精励するが、已む無くとはいえ人を殺めたことに嫌気がさし武士を捨てる。
原作から二本題材をとり、江戸と郊外の村で起こる事件をつなぎ、死にゆく剣客に「妻子」という要素を加えて仕上げてある。タイトルの「母と娘」はこれで、幼くして母に棄てられた娘の思いを、早世した母を持つ三冬の思いと重ねる趣向。母子の出会いのドラマは、母が旅の絵師という変わった設定なので、ドロドロにも大甘にもならず静謐に進行する。
ロケ地
・関屋村、美山町民家。
・おふくが船で永井源太郎を送ってゆく掘割、八幡掘。
・小兵衛たちが村松のために鼈を持って青砥村へゆく道、美山町民家を合成の地道。青砥村、美山町民家。
・殺された仲間のことで村人たちに突っかかるゴロツキ浪人たち、大覚寺五社明神本殿前。仲間の屍を運んでゆく、民家塀際(後段でも登場)。
・宗哲に村松太久蔵を紹介した道誉和尚の寺・行慶寺、龍潭寺山門。
・浪人らとつるむチンピラ・為吉を見張る傘徳、真如堂(傘徳がいる茶店は本堂前、為吉と引き込み女がいる茶店は塔向かいの茶所)。
・啓養堂を出て砂村新田で弓の鍛錬をする源太郎、琵琶湖西岸(湖畔のブッシュと、逃げた刺客を射る浜は湖成三角州の汀)。
・三冬とおもとが村松の娘・さよを呼び母と会わせる和泉屋寮、外観に大覚寺望雲亭(大沢池側)、草戸は錦水亭東屋入口。
・母子対面の間、近くの社で話す三冬とおもと、大覚寺護摩堂前。
・村松の墓、普済寺墓地。
原作小説は新潮文庫剣客商売シリーズ第12巻「十番斬り」所収の「十番斬り」と「罪ほろぼし」。
前者は病んだ剣客・村松の、後者は小兵衛に成敗された辻斬りの父を持つ若侍のお話。
キャスト、村松太久蔵に夏八木勲、青砥村に巣食うゴロツキたちを束ねる「おかしら」樺島長兵衛(原作では鎌島長右衛門)に渡辺哲。
永井源太郎は啓養堂の用心棒であり、子持ちの百姓女といい仲は原作どおり。おふくの住む村を関屋村に変えてある(原作では実家)。おふくと所帯は持つが、侍を捨てる設定はドラマのオリジナル。
グルメ描写は、病の村松に小兵衛が整えてゆく鼈セット。しかし折角の生き血は、さよに「どろどろだったから」捨てられてしまう。
・剣客商売 表紙
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