1996-1997ANB/東映
第1話「江戸っ子神輿が吉宗を呼ぶ!」
尾張宗春の陰謀炸裂、吉宗暗殺を謀る。献上のお雪に仕込まれた毒は寸前で阻まれ、上様は宗春に帰国を厳命する暴将にしてはハードな展開。しかしこれがために乗り込み成敗時宗春は不在で家老が血祭り、中尾彬は逃げのびる。
ロケ地、江戸城へ入る山王祭の神輿、姫路城大手門〜広場。尾張藩上屋敷、大覚寺大門。長岡藩牧野駿河守邸、妙心寺隣華院。中間に化けて牧野邸に入り込んだ尾張の隠密を怪しんで尾行する古参の中間・善平、衡梅院北東角〜鳥居本八幡宮広場。善平を殺した隠密に血の匂いを嗅ぐ朝右衛門、大覚寺参道石橋。尾張藩邸を探るお庭番・佐助、御殿川河床〜大門。善平の足取りを追う岡っ引・文吉と娘のおぶん、衡梅院角〜東海庵東塀際〜鳥居本。藩邸を探っていて斬られた文吉が放り出される、大覚寺参道。事後、上様トリオ事件を述懐の庭、二条城清流園。
*暴将では何度もある尾張の陰謀、たいていは江戸家老くらいしか出てこなくて、成敗のおり主君には関係ござらん拙者一人の企てなどと申し立てるのだが、今回は本人が登場のゴージャスな作り。やっぱり中尾彬は思いきりエラそうで迫力。*新顔のおぶん、女一心太助として登場、亡父の後を継いで十手を手にする経緯が描かれる。新さんを「にやけたサンピン」呼ばわりが笑える。*上様が毒の仕込まれた献上雪を口にする寸前で忠相が阻むくだり、毒と確認するのに金魚鉢に入れるが、諸侯居並ぶ接見の場にそんなもの置いてあるかフツー。*タイトルはメインのお話となんの関係もない、お祭り上覧の席で辰五郎に目くばせされて厠に行くなどと嘘ついて中座し、着替えて神輿担ぎに行っちゃう上様のこと。
第2話「江戸怪奇吉宗魔界を斬る!」
第3話「母恋し!がまん涙の夢枕」
涙の母子再会もの。丸亀藩城代家老の娘と奥小姓の道ならぬ恋は駆け落ちに至り、子もなすが引き裂かれる。このとき手討にしたと報告して父子を見逃し、娘を連れ帰った城代だが、後年これが政争の攻撃材料に使われてしまい悲劇となる。
ロケ地、元丸亀藩士・矢島について何か秘密があると話す上様トリオ、二条城清流園。雨の日に蜆とりをしていて倒れる矢島の息子・大吉、上賀茂神社ならの小川。大吉を母親に会わせてやる新さんたち、丸亀藩の若君(大吉の母が乳母)が野点の菖蒲園は梅宮大社神苑(野点の席は門脇に、これを見る新さんたちは雁行橋上。母に拒否される大吉、築島植え込み。大吉が母の守袋を投げ捨てるのは池中亭土橋)。逃がすため矢島を呼び出す城代、大覚寺五社明神(江戸家老の手下出て二人とも斬殺)。ラスト鯉に餌やり上様、二条城清流園。
*城代に御木本伸介、今回は悪役ではなく人情家。ラス立ち福ちゃん入り。
第4話「花の吉原 空飛ぶおいらん」
なにコレの絶句もののタイトルだが、一応ホントに吉原の花魁は「飛ぶ」。
当該の花魁は、幼時押し込みに両親を殺され、その後売られて軽業一座に育ち、回りまわって吉原一の花形となる。賊の顔をしっかりと見覚えており、親の仇を討つべく動くのが今回のストーリーだが、この花魁夜な夜な吉原を抜け出し、女郎を騙した男を成敗に出ているという傑物で、周囲にはシンパもいる。そのシンパが花魁の仇を探すため嘘ついてめ組に「依頼」、新さんも深く関わってゆく。仇は札差となりおおせていて、御金奉行とつるみ公金横流しで米相場吊り上げという悪事が設定されているが、なんだか上様が成敗するためのつけたりみたいな印象。
ロケ地、鬼子母神の朝顔市で花魁のシンパの野だいこと出会う新さんとめ組、清凉寺本堂前に縁日セット。花魁の親が殺された事件の報告を聞く上様、大覚寺大沢池木戸(忠相が小船着で鯉釣り、新さんが木戸をくぐってやってくる)。事後、じいと逍遥の上様、吉原の話で盛り上がり、二条城清流園。
*人探し依頼の幇間に初代め組小頭。花魁付きのぶっとい姉ちゃんも見物、強弓を扱う。おぶんが花魁の身代りをさせられる一幕もあり、スケベ爺に剣突を食らわす表情が笑える。*空飛ぶ一件、楼を抜け出すのに花魁がロープ伝うのを謂うのでなく、むしろラス立ちの際の跳躍を指すものか。確かにばびゅーんと飛んでた…小林旭が猛禽類のマスクつけて立ち回るアレに、似ていた。*ラス立ちちょこっと福ちゃん入り。
第5話「卯之吉の死神退治」
石垣工事指名をめぐる陰謀、親友とその弟が巻き込まれるキナくさい事態に、阿呆なお芝居がきっかけでめ組の小頭も振り回される。
毒婦の誘惑で心中沙汰の卯之吉、からがら助かったあと幽霊を装って「出て」ワルをビビらせ、親玉のもとに逃げ込んだところを新さんが成敗に出張る。
ロケ地、先夜酒を過ごして珍しく的をはずす上様、二条城二の丸御殿。材木商急死の件を探っている旨新さんに告げるおぶん、仁和寺手水場下に茶店セット。巽屋の後妻と普請奉行らが悪企みの屋形船、大沢池上。乗り込みの際船着(大)も使用。これは卯之吉と後添えが「心中」する芝の海にも用いられるが、こちらは夜でアングルも変えてある。ラスト上様トリオ逍遥の庭は二条城清流園。
*小頭の「お芝居」、親友が寝込んで死ぬ死ぬと騒ぐのをいなすために打つ方便で、枕元の死神を足元に移すというおまじない…布団回すだけ。後添えがこれを「利く」と信じ込み、取り殺そうとしている二代目が助かっては困るため小頭を色仕掛けで籠絡にかかる。乗っ取りを企む割には間抜けな女で、幽霊を見たと奉行の屋敷に駆け込んで消されてしまう。*奉行配下の用心棒「駒田」に福ちゃん、なりはモロに「センセイ」。勘当の身ながら弟を案じる長太を襲い、おぶんに邪魔されて「貴様も斬るぞ」。ラス立ちにも登場、どアップで斬られポーズ決めておわぁとのけぞり。*脱け出すのに大奥ゆきを言い訳にする上様、お鈴廊下のシーンがあるが、そのカルさにコケる「暴将」大奥。
第6話「てんやわんやの親孝行」
浜松藩のお家騒動と、め組の源次の「孝行」芝居を描く一話。二つの話は別のものだが、導入に浜松藩城代の娘と、源次の母の出会いがある。
お家騒動のほうは、藩主を乱心と押し込め我が子を次期につけたい江戸家老の悪謀。め組のほうは、頭に出世したと嘘手紙を故郷に送ったため母が江戸に来てしまうのを受けてみんなでお芝居。見ものは源次の母で、菅井きんが演じる。
ロケ地、箱根山中で次席家老の手下に襲われる城代の娘、酵素ダートと崖の林。菅井きんが若衆姿の娘を手当ては河川敷木の根方。次期とされる若君は江戸家老の子と報告の庭番、仁和寺中門(内側)。城代の娘に事情を聞く新さん、広沢池東岸汀(映りが鮮明なのでアオコの質感出ている)。
第7話「愛妻騎馬奉行」
奈良奉行から抜擢の北町奉行、彼が奈良で裁いた領地争いで負けた大名はこれを深く根にもち、複雑きわまる仕掛けで彼と周囲を不幸に落とそうとはかる。彼の舅が仕える殿様をたぶらかす道具はガトリング砲という派手なもので、武器商の異人なども配されている、ちょっとトンデモくさい作り。妻に去り状を書き悪を討ちにかかる奉行と、一命をもって殿様を諫止する舅の、侍魂が描かれる。
ロケ地、北町奉行・兵藤と行き合わせた新さんが共に馬をやる野道、山室堤道。その後馬に水を飼う汀は桂か。おぶんが兵藤謹慎と騒ぐ芝の草市、神光院境内に縁日セット。兵藤の妻墓参の墓地、不明。これについて兵藤と話す新さん、上賀茂神社境内。山中でガトリング砲の試射がなされ、かどわかされた娘たちが的にされたのを見たおぶん、追われずり落ちる崖は谷山林道。去り状を渡され自失の兵藤の妻、大覚寺天神島朱橋(新さんがやってくるのは放生池堤)。事後、夫婦でお参りの兵藤、梅宮大社本殿(からかうおぶんは舞殿)。
*今回なんといっても笑えるのは武器商の露人。ロシアの人見たら怒るよの典型的「時代劇の異人」で、切腹が見たいとか武家女とヤラせろなどとろくでもない要求をカマして下品に「オーチンハラショー・ハラキーリ」のセルゲイ…ロシア語喋らせたり妙にリアルなのがまたなんともアレ。
第8話「初手柄!おぶんの大奥退治」
大奥に瀰漫する天竺煙草、おぶんや辰五郎夫婦の活躍で首謀者が突き止められる。
オチは、上様が大奥をほったらかしなのがワルいと田之倉のじいが騒いで、上様逃げ回り。
ロケ地、外から帰った上様が船でお城の濠をゆくと奥女中の死体がプカー、大覚寺天神島北辺の水路。この件を探るおぶんが、奥女中の友人に話を聞く、善峯寺山門(内側)。友人の回想、失踪直前の奥女中と話した茶店、多宝塔下にセット。新さんにこのことを報告するおぶん、大覚寺五社明神脇に茶店セット(背景は大沢池)。大奥出入りで煙草の運び屋をしている小間物屋が呼び出され消される夜の神社、木島神社本殿前。新さんに大奥潜入の結果報告をする辰五郎、梅宮大社神苑土橋たもと。マリファナ騒ぎ首謀者の御広敷支配について話す上様トリオ、二条城清流園。悪事を知った奥女中の死体遺棄、大覚寺大沢池船着(小)。事後、じいに騒動の始末を語る上様、二条城本丸櫓門橋上。大奥放置の上様を責めて追っかけるじい、清流園。
*御広敷支配に立川三貴、マリファナでトリップシーンあり。奥女中の婚約者で、騒動の糸を引くワルの海産物問屋に草川祐馬。*奥女中の死体発見のくだり、上様は庭番二人とおわい船で出ているが、ご丁寧に「桶」がふたつ、ちゃんと乗せてあるのが笑える。また、「町場」で大根の煮付けをハフハフやる際の、上様のお箸の突き刺しっぷりに注目。
第9話「吉宗よ、誰が為に泣く」
タイトル通り、上様号泣の悲恋話。暴将の法則のひとつ「上様が好きになる娘は身分の如何にかかわらず手の届かない女」発動、今回は極貧ゆえ身売りの娘が不幸のどん底で命を落とす。娘を拷問の果て死に追いやったワルどもに、将軍ではなく徳田新之助として復讐の刃を向ける上様なのだった。
ロケ地、おつるの下駄の鼻緒をすげ替えてやる新さん、善峯寺観音堂坂。おぶんが来かかり二人を目撃は阿弥陀堂下坂。おつるの長屋を訪ね、母に身売りのことを聞く新さん、広沢池西岸湿地に長屋の裏木戸をセット、小魚を漁る子らを汀にあしらい。おつるを身請けに行った辰五郎に報告を聞く新さん、梅宮大社神苑汀(奥のほうの植え込み際)。
*鼻緒すげ替えの際、片足で立ってるおつるを「鶴みたい」と称する新さん、名前の話題の接穂なんだけど色気ないこと甚だしいような。おぶった娘が事切れてるのしばらく気付かないし。身請けのお金辰五郎に出して貰ってるし。でも巨体を揺すって泣くとこが可愛いんだよね。*霊岸島の長屋を追いたて、おつるを不幸に落とす一味が豪華。寺社奉行に中田浩二、配下に中田博久のダブル中田だけで迫力なのに、つるんでる商人は伊吹聡太朗で、こてこてのトライアングルを構成。*おつる役は中原果南、身売りした直後喀血という膝の力抜ける筋立てだが、女優さんは可憐に好演。
第10話「夢で拾った百両」
北町奉行と組んで不正をはたらく両替商、忠相に嗅ぎまわられて窮し、賄賂の運び屋に浪人を雇う。根が善人のこの浪人、お仕事中老婆を助けてその賄賂を紛失、これが呑んだくれで女房を泣かせている大工の手に。大金を手にして浮かれる大工、案じた女房は拾ったことが夢と芝居を打つ。これがまんま落語の「芝浜」、このあと浪人が女房の生き別れの兄と知れたりの騒がしい展開となる。
ロケ地、主を恐喝しようとした大黒屋の番頭が死体で見つかる、大覚寺大沢池畔。忠相が北町奉行に番頭殺しの件をチクリ、二条城本丸櫓門橋上。賄賂運びのバイト中、岡島浪人が疾駆する早馬から老婆を助ける道、大沢池北の並木道。このあと紛失したブツを探して北辺水路に入る場面も。
*「芝浜」に準拠のお話のオチは、祝宴で酒を勧められたアル中大工が「ここで呑んだらまた夢に」。*大工・虎吉(…)の酒乱ぶりを示す挿話に、往来で侍にからむシークエンス。頭にきて抜刀して凄む侍に福ちゃん、役名は「旗本」。
第11話「魔剣!鮮血の花嫁」
悪企みは、旗本が仕出かす騙りのイカサマ博打と借金逃れの札差殺し。これに使われる若侍が、タイトルにある婚礼間近のカップルを惨殺する変態さん。
遮二無二渦中に突っ込んでゆくおぶんをサポートする新さん、危機一髪を救いラス立ちなだれ込み。
ロケ地、定斉屋が渡る橋、摩気橋。札差・大隅屋の若旦那と婚約者がデートの祭礼の宮、摩気神社(男女いちゃつき→惨殺は本殿裏手、お供が待つのは境内にセットの茶店)。上様が抜け出しの際田之倉や小姓をまく、二条城本丸西虎口(石垣の向こうに彦根天守に似たお城を合成)。高砂を吟じつつ鴉を抜き打ちの五島順之助、仁和寺林間。謎の外出の日野屋を尾行するめ組の衆、大覚寺有栖川畔の道。一人お参りの日野屋の娘が襲われる、仁和寺九所明神。その娘の囮となって花嫁の駕籠に乗り込むおぶん、御室桜林。連れ込まれる邸、不明。事後、お城の庭で祭囃子を漏れ聞く上様、二条城清流園。
*大名を騙ってイカサマ博打開帳の旗本は遠藤太津朗。*「花嫁」に執着の変態さん、恋人に裏切られて逆上かと思いきや、脳内で思い込みの妄想。「魔剣」の持ち主のわりにはあっさり成敗されている。*トンデモ上様、二態。お城脱出の際、女装かと思わせて追わせ、本人は後ろから出てきてふっふっと笑い「許せよ」…。被衣の「大奥の女」なんだけど、どうせならホントに松平健が女装すればよかったのに。もう一つは、おぶんの妄想の婚礼の席で、思い切りカマっぽくてキモチワルイうっふん新さん…ひどいよおぶんちゃん…。
第12話「仇討ち心中、盗まれた砂金」
め組の小頭が心中騒ぎ、一人生き残って入牢。しかしこれは芸者のお芝居、父を殺した領主を狙うため死んだと思わせる工作だった。
ロケ地、卯之吉が死に損なって発見される大川端、広沢池東岸。心中相手の芸者・おきくの人相書きを上様に見せるじい、二条城本丸櫓門橋上。旗本・磯部の中間・文蔵が作次郎をボコる神田の市中、仁和寺鐘楼前〜水場下(茶店セット)。磯部の知行地・房州勝田村へ調査に入る庭番、琵琶湖西岸(松原と湖成三角州の浜)〜どこかの海の海女漁風景〜民家門前。名を変えて暮らしているおきくを説得する新さん、桂川松尾橋上手右岸汀。事後、作次郎の遺骨を抱いて故郷へ帰るおきく、広沢池東岸(船上)。磯部が隠匿していた砂金の使い道を話す上様とじい、二条城内濠端。
*元凶の殿様・磯部隼人正に亀石征一郎、悪事は砂金を見つけて届けたおきくの父をいたぶり殺したこと。砂金は庭の灯籠に仕込んであるのが笑える。*卯之吉の父登場、歌丸師匠。長屋の女将さん相手に猥談や、今生の名残りに酒を所望の語りが最高。*福ちゃん二態。磯部の中間(小船秋夫)が砂金持ってきて断られる賭場の用心棒と、ラス立ちの家士。
第13話「凧よ、あがれ、誇り高く」
娘を手籠めにする、遊ぶ金欲しさに辻斬りをはたらくなど身持ち悪すぎの大身旗本の次男坊、ある日現場に印籠落としてったうえ侍が見ていて窮地に。しかし親も親、甘い餌で証言者を潰しにかかる。お話は、評定の席での証言を約した侍の苦悩がメインとなる。
ロケ地、重陽の節句で菊飾りのお城の庭、嵐亭延命閣。凧あげの御家人・神崎父子、上賀茂神社御所舎前芝地(バックに神事橋)。神崎に証言をやめるよう工作の旗本の用人、広沢池観音島。おぶんと神崎を襲う刺客、上賀茂神社ならの小川畔(バックに北神饌所)。
*大身旗本に西田健、豪華な衣装が姑息風味を助長してマル。*ラス立ち福ちゃん入り、酒肆の親爺の小峰さんもいい味。
第14話「尾張宗春の謀反」
またぞろ反逆の虫騒ぐ尾張大納言、今回は企画段階から細かく指示を出したりする。
将軍にも臆せず建白書を上申する気勢の軍学者を利用、蜂起させて騒ぎに乗じ焔硝蔵に火を放つという荒っぽい計画。もちろん、宗春の人もなげなやり口が失敗の因となっておじゃん、上様の口からじかに謹慎を言い渡されてしまうのだった。
ロケ地、軍学者・山下幸内が建白書を投じる評定所(目安箱)、大覚寺明智門。尾張上屋敷、大門。仕官を断られた浪人が門前でハラキリの岡崎藩上屋敷、妙心寺隣華院。庭番とツナギの新さん、上賀茂神社渉渓園。石津青年の死後、山下のもとに武装して集まり気勢を上げる浪人たち、鳥居本八幡宮。
*軍学者に「やいとや」大出俊、スクエアな中に軽妙さも見える人物を好演。彼が妹の婿に望む弟子の石津にあばれ八州御用旅で「表の八州」を演じた新田純一。*福ちゃん三回登場、新さんに賃仕事の労いに奢ってもらう塾生のくだりで遅れて入ってくる一人、鳥居本で正体(尾張の手先)を現して斬りかかってくるシーンにも登場。このあとラス立ちには尾張の家士として襷掛け鉢巻姿で出てくる。*公儀目付と偽り塾に討ち込みの尾張忍び、人の頭を飛び越す大跳躍カマして思い切り怪しい。
第15話「花の板前、妻敵討ち!」
武州松浦藩の内紛、藩主を毒殺し傀儡を立てようと謀る江戸家老。この企みを聞いてしまい消された女あり、しかも偽者を仕立てて不義密通の逃避行という筋を書かれていた。
彼女の夫の台所役人は、妻と情夫を追い成敗する責務を負うが、できずにいるうち舅の死をも見る羽目になったりして翻弄される。この男が、板前として雇われた先の娘に惚れられ婿に望まれて逃げ回るお話が、上様が事を知るきっかけとなる。
ロケ地、新さんが小頭に誘われて行く、粂造が板前をつとめる料理屋、錦水亭(東屋外観、おぶんがそろっと入るのは東屋草戸、粂造が辞去の際立ち止まって眺めるのは八条池東岸)。千住宿はずれで乱闘を繰り広げる松浦藩士たち、山室堤道に茶店セット。松浦藩の内紛について庭番の報告を受ける新さん、嵐山公園中州東端先端部。おぶんに粂造のことを聞く新さん、中ノ島橋上。粂造の長屋を訪ねたあと、おぶんの話に生返事をして剣突を食う新さん、大覚寺放生池畔(背景に聖天堂)。舅から逃げて船をやる粂造、渡し場は罧原堤下河原にセット。落ち着き先の一膳飯屋で自分を見逃してくれた新さんに、女敵討ちの意思がないと語る粂造、広沢池東岸。松浦藩の騒動は江戸家老の企みと上様に報告の庭番、二条城清流園。松浦藩上屋敷、大覚寺明智門。家老の手下を尾行する粂造、参道石橋(庭番が下に潜む)〜大沢池堤。妻の失踪の真実を知った粂造が佇み回想の汀、大沢池畔。妻との暮らしの回想、上賀茂神社奈良社前、ならの小川畔。一旦故郷へ戻った粂造を思う上様、二条城本丸櫓跡(本丸石垣北東角上)。
*粂造に大橋吾郎、花板ぶりや、「裏切った」妻に寄せる複雑な心情などを巧みに演じる。ちょっと詰め込み過ぎのシナリオだが、氏の好演に支えられ一貫したお話に仕上がっている。舅役の内田稔もいい味。*ラス立ち、福ちゃんと峰さん入り。
第16話「め組の喧嘩!二人の女房」
おさいの幼馴染の女が登場、婚家が焼け主人を亡くしてめ組に保護される。この女・お勝は元々辰五郎を巡っておさいと鞘当ての経緯あり、ここをワルに付け込まれておさいと辰五郎を不幸に落とそうと陰謀に加担。しかし道具に使われたお勝は殺され、その死もおさいを罪に落とす芝居に使われようとしたとき、新さん乱入で幕が引かれる。
タイトルの女房はおさいとお勝、喧嘩は町火消しと定火消しの対立で、旗本が陰謀の黒幕。
ロケ地、お参りのおさいがお勝一家(油問屋・江戸屋)とばったり出会う、梅宮大社本殿。庭番に江戸屋放火の調査を命じる上様、二条城内濠端(北東部)。上州屋寮、中山邸通用門。辰五郎夫婦の仲裁を独身の上様が?とけたたましく笑う田之倉のじい、二条城清流園(ムカっときた上様が口の中でぶつぶつ)、ラスト逍遥も同所。
*ライバル・江戸屋に放火したうえ、お勝に辰五郎が江戸屋を見殺しにしたなどと吹き込む上州屋に中田浩二、こずるい商人をやらせたらピカ一。お勝は鈴鹿景子、ねっとりといやらしい女を好演。ラス立ち福ちゃん入り、上州屋の用心棒の「先生方」。かなりのアップでのけぞり。
第17話「子連れ刺客」
ちょっとないくらい悪辣な毒婦登場、これに翻弄された挙句修羅の道から立ち戻ることなく果てる一人の浪人の悲哀を描く。
女は前米倉藩主の側室で若殿暗殺を企て中、雇われた浪人が育てている女の子はその側室の娘という奇縁。男は、仕えていた豊岡藩の側室だった女が産んだ不義の赤子を殺すよう託されてできずに逐電し、男手ひとつで刺客を生業としながら養育していた。情勢が変わり若殿暗殺は中止、側室は刺客に雇った浪人を口封じにかかるのだった。
ロケ地、おぶんがコソ泥を捕まえたところへ出てきて頓狂にも弟子入り志願の若殿、大覚寺有栖川河床〜御殿川前芝地。小夜に父の浪人・鏑木のことを聞き出す朝右衛門と新さん、五社明神舞殿前。米倉藩上屋敷、大門。米倉藩前藩主の舎弟が野駆けで落馬して頓死(頭打つ石垣は別のとこみたい。騎馬のシーン、わーって喚いて走っててなんだかアレ)、嵐山自転車道。鏑木が呼び出され押し包まれて斬られる桜の森、上賀茂神社渉渓園。愛猫を探す美代の方、大覚寺勅使門前。ラスト、じいと毒婦のことを話す上様、二条城清流園。
*殺し屋の設定、なんだかあちこちから持ってきていて混沌。元締?は羅宇屋で流していてこそっとツナギに来て「世のため人のため」なんて言ってるし、鏑木浪人は刺客道(タイトルに「子連れ」入ってるし)や裏稼業などのタームを呟く。*福ちゃん二態、米倉藩士のほか、暗殺された幕府奥祐筆の家来としても登場(こっちは一応覆面してる)。*短筒で鏑木を撃つなどもするお美代の方、ラス立ちに山田朝右衛門が現れてバッサリ斬り捨て。
第18話「いなせ新さん、世直し道中」
先祖が神君に頂いた永代領地安堵のお墨付きをふりかざし領民を苦しめる旗本、在から奉公に来ていた娘は、父を殺された恨みと里人の難儀を思いお墨付きを盗み出す挙に出る。新さんはめ組の若い衆という態をとり、領地の下総へ向かう。
ロケ地、お墨付きが盗まれた件の報告を庭番から聞く新さん、梅宮大社神苑(中で塀際のと、門越しに中を見るショット)。直訴が露見して斬られるおきぬの父、民家塀際。成田参りの辰五郎の「お供」で街道をゆく新さん、山室堤道。大里村の高見沢陣屋、民家長屋門。おきぬを伴い大里村入りの田之倉のじいとおぶんが役人に捕まる、民家塀際。一人帰途につく新さん、山室堤道。
*えっらそうな旗本・高見沢に第一シリーズお庭番の和崎俊哉。上様に乗り込まれちゃって「カーン」鳴ったあとも抵抗、お墨付きかざして「吉宗どの、頭が高い」とやるのが傑作。上様がまたコレをずんばらりんと両断して「破棄」宣言。*おきぬの父を斬ったり、「め組の新吉」になってる上様に縄をかけたり、もちろんラス立ちにも登場と福ちゃん大忙し。