1985 ABC/松竹
キャスト
新吉/宅間伸 おくら/萬田久子 松/斉藤清六
春光尼/西崎みどり 柳次/津川雅彦
新吉の表の顔は鳥刺し、武器は吹き矢。仕事の際には上衣を被り帯を鉢巻にする。
おくらと松は瓦屋の夫婦。武器は瓦片を鋭く研いだもので、髪を一房そいで切れ味を試すのが恒例。亭主は的を示すなどサポート役をつとめる。
春光尼は元締代行、仕事に同行し見届けるほか囮もつとめる。可愛い声の読経も見もの、おきまりの「西崎みどりに絡む男」は当時売れっ子の漫才師。
柳次は担ぎ呉服屋。娘と若い後妻の三人家族で、お話の前後に彼らの泣き笑いホームドラマが挿入される。男と逃げた先妻にも悩まされる。殺し技は反物に仕込んだ金糸を用いての絞殺。広げた反物を踏んでターゲットに近づき、地獄絵の刺繍から糸を引き抜いて行うのが基本形。
第1話「江戸絵図の謎を探ります」1985.8.2
橋掛人の元締・暗闇の多助が殺されるのが端緒、十三箇所のマーク付き地図を託された娘の春光尼は父の配下を求める。
多助殺しは、殺しの的だった楼主が反撃に出たもの。父の遺志を継ぎ、やり残した13件の殺しを遂行する意を示す尼に賛同する多助の配下たち、楼主殺害を依頼した元花魁のつながりで、足を洗っていた殺し屋・柳次が参加することになる。
ロケ地
・瑞観寺、不明。
・鳥刺しの新吉が柳次の娘・お咲にまとわりつかれる林、下鴨神社糺の森池跡。
・元吉原の太夫・尾上に事情を聞くおくら、大覚寺大沢池畔(放生池堤、護摩堂)。
*ターゲットの阿漕な楼主に八名信夫、彼に逆らい顔を灼かれ切見世女郎に落とされた尾上に本阿弥周子。
第2話「佃島のおとめ魚を探ります」1985.8.9
将軍がお召しになってからでないと獲ってはならぬ定めの「御留魚」のしきたり、これを利用して密かに道楽者を集め初物食いの会を催し大儲けの料亭。その主に借金漬けにされ、密漁の道具に使われ、邪魔になれば口封じに密殺される佃島の漁師たち。「依頼」はその一人から来る。
ロケ地
・佃島、琵琶湖西岸にセットか。
・密漁を摘発され斬られた仲間の死に落ち込む浅吉に声をかける新吉、嵐山公園中州湛水域右岸堀端。
・密殺された浅吉夫婦の死体が流れて来る川、中ノ島橋上手堰堤(新吉が橋上から見る)。
*仲間の死にアツくなる漁師・浅吉に本田博太郎。ワイルドな漁師のなりがよくお似合いでマル。
第3話「神田のゆうれい坂を探ります」1985.8.16
神田春日坂は「出る」と噂の通称幽霊坂、亭主殺しで死罪となった女が啜り泣くのだと囁かれるが、出ているのは無実の罪で斬首された母を泣く娘であった。その女は身を汚してまで真犯人を追うが敢無く消され、しかし頼みの筋は直前に橋掛人たちに届いていた。
*ワルの与力に西沢利明、真面目くさった顔で紋々は背負ってるし畳裏に小判敷いて夜中に数えてるし変態じみててコワい。
第4話「小伝馬町の怪奇牢を探ります」1985.8.23
柳次の過去が垣間見える一話、彼に殺し技を伝授した師匠がターゲットとなる。
地図に浮かんだ文字は牢、足跡を残さず細糸で絞める凶盗が出て柳次に疑いがかかるなか、新吉の牢潜入により依頼者とターゲットが知れる。柳次は、牢で生きていた「師匠」に凶行に加わるよう要請されるが、借金をして自らが頼み人になり外道に落ちた師匠との対決に向かう。
ロケ地
・小伝馬町牢屋敷、大覚寺明智門。
・柳次に疑問を投げつけ問いただす新吉、大覚寺放生池堤(蓮開花)。
・重蔵の手下・辰五郎を誘き出す新吉、中ノ島橋を逃げて下に回り追ってくるのを待つ。このあと一旦かわされて橋から落とされる新吉だが、とどめを刺そうと堰堤上を来たところを水中から躍り上がり仕留める。
・仕事の前にリゾートに逃がしておいた妻子を迎えにゆく柳次、ベソかきお咲は大覚寺放生池堤石橋〜護摩堂前。
*柳次の師匠・重蔵に戸浦六宏、同じく反物に糸を仕込んで使うが柄はドラゴン。師弟対決は互いに糸をかけてぎりぎりと力対決になるが、次の糸を素早く繰り出した柳次の勝利に。仕込んだ襦袢が墨絵で渋い。
第5話「六本木の朝顔を探ります」1985.8.30
華道家元をめぐる騒動。亡父の遺志を継ごうとする妹と、あさはかな金儲けに走る姉。家伝書を先代に託された高弟が妨害工作の果て謀殺される過程で、恨みの筋は橋掛人たちに届く。
ロケ地
・入水の井泉流家元次女を助ける新吉、広沢池東岸汀と木立。
・井泉流家元邸、中山邸通用門(届け物に来た柳次が門前で弟子相手に叩き売りをするシーンもある)。
*出陣に際してのおくらの「テスト」は今回自分の髪でなく亭主のかざす「紙」をスパっと切り。実行の際も松がターゲットを固定するなど新味。今回の頼み人となる家元の「妹」、入水を新吉に阻まれ保護される段の、柳次→おくら→新吉ループで「元に戻る」プロセスが傑作。今回の柳次が家元を殺るくだり、蚊帳の上に例の不気味な反物の図柄を見せてビビらせ、殺す段ではずかずか乱暴に踏み込んでてるてる坊主にして括るのも傑作。
第6話「本所の七不思議を探ります」1985.9.6
女子教育で人気の高級塾、しかし実態は娘たちの母親を誘い込み麻薬漬けにして売春を強要する魔窟。これを主宰する謎の婦人・姉小路は、過去何人もの男を手玉に取り破滅に追い込んで財を掠めとってきた名うての毒婦で、春光尼の実母なのであった。
母の行いと親友の死に揺れる春光尼、最後はためらいを振り切って頼み料を置く。西崎みどり独特の生硬な演技が見事にハマっている。裏事情は柳次のみ知る設定。
ロケ地
・お久が立派ななりでお屋敷(デリバリー先)へ入ってゆくのを見る春光尼、大覚寺大門。ヤク中女に迫られた姉小路塾塾頭がこれを刺殺するのは五社明神〜護摩堂脇。殺害後の塾頭とすれ違う新吉、放生池堤。
・亡父・多助に聞いた、母が亡くなったという滝野川村へ赴き、農夫に事情を聞く春光尼、北嵯峨農地。
・お清が取り殺した男の一人・筑波屋の未亡人が語る回想の心中現場、罧原堤下汀。
*「本所」マークを焙ってもなかなか出てこない「清」の字、しかも薄い。これに父のためらいを見る春光尼のくだりが泣かせる。
第7話「湯島天神の紅梅を探ります」1985.9.13
ターゲットはその昔江戸を荒らし回った凶賊、依頼者は家族を殺され夜鷹に落ちた女と見えたがさにあらず、賊の首領の息子。受けた仕事を新吉とおくら夫婦が仕留めたのち、真に仕置すべき相手の前に柳次が立つ。
ロケ地
・賑わう湯島天神、北野天満宮参道(本殿前に縁日セット)。
・夜鷹に落し物を届ける新吉、女の身の上を聞かされる、大覚寺天神島。
*柳次の前の女房登場、娘を交えてお食事は鰻屋。若い葛岡さま。
第8話「浅草のマル秘ドクロを探ります」1985.9.20
*「マル秘」は○の中に秘の字
ほうぼうから借金しまくりの男、女房は健気に働き助けようとするが、男は阿漕な金貸しをも手玉にとる大ワルで、裏稼業の殺し屋も騙されかかってしまう。しかし柳次の沈着な観察により真実は見通され、男は自分が置いた頼み料で仕置される運びとなる。
ロケ地
・借金で一家心中の死体がぶら下がる、大覚寺天神島の大木。
・大金を手にし祝宴を張っている仁平と情婦、広沢池東岸に屋形船。新吉とおくらの仕置はここでなされる。
*情婦を狙ったおくらの瓦は、数回水を切って飛んでゆく。
第9話「柴又帝釈天のトラを探ります」1985.9.27
地図ヒントの「虎」は温泉でぽっくり逝ったとされる帝釈天の親分、しかし死んではおらず娘婿の政五郎に監禁の身。「虎」の名を継ぐための権利書のありかを吐かぬため辛うじて生かされていた。その虎も、世話をしていた妹娘もついには殺され、恨みを託された橋掛人たちが動く。
ロケ地
・柴又帝釈天の縁日、仁和寺観音堂脇にセット。
・虎が監禁されている小屋がある葦の原、広沢池東岸(船着セット)と西岸(小屋セット)。
・唐辛子売りの吉蔵と妹娘・お里が再会の帝釈天境内、仁和寺経蔵前。
*おくらの切れ味テスト、今回は紙。柳次の仕掛けは変則、布できゅっとシメてから糸を引き抜く。
第10話「日本橋の地獄火を探ります」1985.10.11
今回の相手は同業者、変わり身を得意とし衆人環視の中で堂々とやる手強い相手。この外道仕事師たちに殺された上方の元締の娘が情報をもたらし、ターゲットにされた呉服屋の番頭の臨終に、柳次が恨みの筋を託される。お話は、大店の呉服屋の跡目争い。
*見どころは、旅役者の女形に化けて現れる外道仕事師のヘッド・菅貫。はじめ気づかず見ていたら、やけにドスの利いた声で菅貫と判ってびっくり。女装はそんな凶悪でもナイ。*柳次の仕掛けは変則、呉服屋に入っての殺しだけに反物が幾本も吊るされ、うち一本が餓鬼のアレという趣向。
第11話「板橋のウラ仕掛けを探ります」1985.10.18
依頼者の意図が敵方にバレていて、罠のお芝居で板橋宿に誘い出される橋掛人たち。松と春光尼が捕われ、ルーティンにも変更を来たすなか、仕置は意外とあっさり。
ロケ地
・おくら夫婦が道中落石に遭う街道、谷山林道。
*企みの首謀者でありメインターゲットの問屋場の主は、多助の知り合いの元同業者という設定。橋掛から身を守るだけでなく、裏稼業の覇権を掌握しようとする強敵。担ぎ呉服屋として接触した柳次との丁々発止が見もの。
第12話「四谷の忍者寺を探ります」1985.10.25
今回の相手は忍者集団、強敵に対するにあたって柳次は昔の仲間を動かし探るが、アジトの間取りをとった時点で消されてしまう。このことが新吉の不審を呼び齟齬を生じる場面などもあるが、忍者寺でこき使われ用済みとなれぱ虫けらのように殺される下っ端からの、血を噴くような依頼は橋掛人に届く。
強敵に仕掛けるチーム、新吉とおくらが八面六臂の活躍を見せ、松や柳次も目一杯サポートの緊迫の展開。首魁に仕掛ける柳次の、複数の糸を用いての吊り技も見もの。
第13話「子連れ刺客の魔剣を探ります」1985.11.8
最後のターゲットは、必殺お馴染み・千代田のお城の住人。モノがものだけに頼み料も破格、藩札な時点でオチが予測できてしまうのもお楽しみ。あちこちの藩に将軍の御落胤を押し付けて自身の勢力拡大をはかる側用人、これに知恵をつけるお中揩ニ、いかにもの設定。側用人に恩を感じ刺客稼業を続ける使い手も出てきて、子連れで、父上の呼称を「ちゃん」に直させているのがモロで笑える。しかしなんといっても傑作なのは、大奥の事情を探るためお払い箱になったお女中をコマす柳次、優しいお父さんからゲスト悪役の津川雅彦の顔になっている。
ロケ地
・江戸城に姫路城天守。
・刺客・日下部伊織が追っ手の高沢藩士を返り討ちにする道、相国寺大光明寺南路地。
・父・伊織の背を拭く子、広沢池東岸汀。
・お国の方が参詣の光明寺、相国寺庫裏前に駕籠〜法堂基壇南東角。探りに入ったおくらが身を潜めるのは基壇北西角。
・側用人・田所邸、大光明寺門(田所を殺ったあと柳次が出てくるのも同じ)。邸を辞した伊織が出てくるのは通用門。
・新吉がお国の方に仕掛けるのは下鴨神社馬場。その前に走る林は糺の森、誘い出された護衛が瀬見の小川河床に降りているのも見られる(撮影当時は涸れ川)。
・紙切れとなった藩札を撒く新吉、保津峡落合巌上〜河口部右岸汀。
・春光尼がゆく野道、北嵯峨農地。
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