月影兵庫あばれ旅1989.10-12TX/松竹

キャスト
月影兵庫/村上弘明
桔梗/片平なぎさ
合点の安/大和田獏
おしま/芦川よしみ
幻一角/目黒祐樹
牧野備前守忠精/成田三樹夫
松平伊豆守信明/芦田伸介


第1話「消えた姫君を追え!(前)」

 総髪の茶筅髷が柳生十兵衛みたいな「村上」兵庫、その「旅」のフォーマットの、とっかかりとなる一話。お話の背景に知恵伊豆と老中・牧野備前守との対立があり、女好きの将軍に伊豆が宛がおうとした公家の姫が牧野の陰謀で逃亡、その場に居合わせて女を助け逃がしたことで叔父の伊豆に怒られ追走を命じられてしまう月影兵庫、牧野方には怪しの強敵がいたりして、今回の「旅」は川崎まで。

ロケ地
・松平伊豆守邸から出動する侍たち、大覚寺大門妙心寺大庫裏付近路地。
・綾姫の駕籠が逃げ込む麻布・東福寺、随心院薬医門、大玄関。ここから出る駕籠を追う兵庫たち、宗像氏が追うのは妙心寺衡梅院前、黒祖・岡島組が追うのは玉鳳院前、兵庫が追うのは大覚寺放生池畔、全部偽者でカラ。姫をむざむざ逃した兵庫にお冠の桔梗が路銀を渡し品川へ向かえと指示、五社明神
・綾姫一行が船に乗るシーンはセット水際から広沢池東岸にスイッチ。
・江戸城、伊豆と牧野が陰険漫才の御廊下は相国寺方丈(座敷から法堂屋根を望むショット)
・牧野邸、飼っていた剣客・幻一角に兵庫と戦い綾姫を京に送り届けるよう命じる備前守、相国寺大光明寺(門、石庭。中仕切りから石庭を見るショットも)
・一角に斬られて果てた岡島の荼毘、酵素河川敷。
・川崎宿、夜間逃げる姫の駕籠、中ノ島橋上。
・兵庫と死闘のすえ傷ついた一角がおしまに発見される水辺、広沢池西岸湿地
*兵庫の前に立ちはだかる剣客・幻一角には目黒祐樹、名前からして異様に怪しいが天空剣士ほどではない。兵庫に髷切られちゃったうえ桔梗に猫引っ掻きされて散々のスケベ宗像氏も傑作。スムーズな形で兵庫の傍にいることになる合点の安に大和田獏、彼が唯一月影のダンナと焼津の半次を偲ばせる役回り


第2話「消えた姫君を追え!(後)」

 姫の駕籠の行く手では、牧野の内意を受けた藩の家老と、伊豆に知れてはお家の一大事と反発する若手のトラブルになったりして物騒な展開。剣戟に巻き込まれた姫が絶望して「もう死ぬ」モードに入ってるのを見た兵庫は、「自害なされた」ことにして姫を解放してやる…いいのかなー。

ロケ地
・小田原を先発した桔梗がゆく道、下の道に兵庫と安が通りかかるのは酵素ダートと河川敷(見下ろし)
・姫が足を浸し休んでいるところへ現れる兵庫、清滝か。
・沼津城下、宿場でトラブルに巻き込まれ逃げた姫がゆく夜道、下鴨神社参道石橋〜河合社脇。絶望して侍女とともに死のうとする林、池跡。
*兵庫と喧嘩の宗像、浪人を雇って命を狙わせたりするが、沼津城下で若侍の密談を聞いてしまい敢無く斬殺されてしまい一巻の終わり。*幻一角はもはや個人的理由で兵庫の命を狙うが、情婦となった小料理屋の女将に割って入られてしまう。対決の場のセットは、隠亡堀みたいなしつらえで不気味感を出してある。


第3話「蔭で糸引く奴の顔

 今回の旅は会津、お家騒動勃発中。重役の思惑に振り回される哀れな藩士夫婦のお話、幼君をよいことに藩政を壟断する国家老には稲葉がついていて、サポートのため東山温泉へお忍びでやって来ている。痔の療養という設定で、口実かと思いきや成田三樹夫はほうほうの態で温泉へ這ってゆく…ここんとこ、メチャ可愛いので必見。

ロケ地
・日も高いのにのんきに桶持って銭湯帰りの兵庫、今宮神社東参道
・松平伊豆守に国家老の横暴を訴えた会津の江戸家老が将軍の姫を貰う話にされ、弱りきって出てくる門、大覚寺大門
・兵庫と安が食い物の話をしながら会津へ向かう道、および稲葉の駕籠がゆく道、不明。
・国家老に人斬りを強要される中山恵吾邸、民家門
・国家老・高藤邸、随心院長屋門。中山が間違って兵庫に斬りかかるのは本堂裏手土塀際。
・稲葉が滞在の東山温泉への橋、西明寺参道・指月橋
・登城の藩士を見て堀端を歩く兵庫、二条城内濠端。
・企てが失敗し稲葉の手下に消され棄てられる国家老、清滝川


第4話「生きる為に忘れろ!

 白河藩での紛争、土地が貧しいため国替えを画策する改革派と、産品で私腹肥やしの国家老が対立。「切腹」して死んだ改革派の勘定奉行の遺児たちが真実を求めて走るが、親切づらで彼らに接する「妹の婚約者」は世の中金と変節し、ワルに通じていた。
タイトルはその婚約者が事あるごとに兄妹に説く、追求をやめるよう諭すターム。兵庫はこれに反発し、兄をも殺された妹の仇討ちを助勢することになる。

ロケ地
・白河藩城、彦根城天守。本丸石垣下で「切腹」の勘定奉行・戸倉主馬、天秤櫓下。
・戸倉邸、相国寺林光院門と玄関。
・白河へ向かう兵庫たち、戸倉の息子・元之介を見る道に谷山林道切り通しや分岐道など各所を使用、茶店セットもあり。
・夜の城下、追われる戸倉の娘・加代に助けを求められる兵庫、相国寺方丈塀際。兄がやってきて再会は法堂と方丈間の回廊
・婚約者・新島が加代に「忘れろ」説得、大覚寺天神島
・兄のほうにも「忘れろ」をやる新島、見ていた兵庫が元之介と話す坂、知恩院北門下の坂道。
・新島が陰謀に加担した勘定方与力と元之介を暗殺する寺、西明寺(山門、参道、アーチ回廊)
・白河を発つ兵庫一行、谷山林道・両に切り通しの道。


第5話「やっぱり女は怖い

 仙台へ向かう途中、とんだ性悪の泥棒女にひっかかったり、恐妻家の旦那に泣きつかれたり、幻一角もしつこく襲ってくる珍道中。お話の根底には兵庫にアタックの桔梗、もろに妻にしてくれと迫られる兵庫だが、出会う諸々の事象からタイトルの結論が導かれ黙って旅だつ。ラストは街道で男装・騎馬の桔梗に追いつかれて幕。

ロケ地
・駕籠に乗って橋を渡る桔梗、流れ橋
・妻から逃げ出した男に泣きつかれる兵庫たち、谷山林道
・騙りの盗っ人女を探しに出てゆく兵庫、大覚寺放生池堤護摩堂前。
・仙台藩御用の飛脚を襲う一角、酵素ダート。藩士に囲まれチャンバラは河川敷川中。
・騙り女とグルの浪人がたむろする乗覚寺、永観堂(放生池石橋、阿弥陀堂と石段、墓地)


第6話「三部の税と戦え

 よくある代官の苛政に泣く民衆のお話、何してもかかる「三分」の税率がミソ。この頃は3%だったんだよねぇ。
改革派の若者を助けて動く兵庫、天狗のかっこして出てくるのが笑える。

ロケ地
・近道で庄内入りの兵庫たち、保津峡落合落下岩
・腹を減らした兵庫が、浪人たちの弁当を凝視していてスカウトされるのは木津河原
・農民たちに頼みごとを持ち込まれる桔梗たち、酵素ダート
・一揆の相談がぶたれる鎮守、鳥居本八幡宮
・庄内藩小砂川代官所、民家長屋門
・桔梗らが代官の追っ手に遭う道、酵素ダート
・家老・松本邸、相国寺大光明寺(桔梗侵入は南塀)
・世直し天狗が仮面をとるやしろ、大覚寺五社明神


第7話「悪党だます悪い奴

 舞台は信州上田、貧しい藩では大藩から養子を迎え、持参金で息をついていた。ここに悪企み発生、養子の若君誘拐、裏には家老の汚れた欲望があった。
誘拐事件に加担する幻一角、おしまのために大金を得ようとするが、誘拐のウラを憎き兵庫に聞かされてしまうという馬鹿を見るのだった。

ロケ地
・賭場からプイと出た一角に金を渡そうとするおしま、今宮神社境内。
・若君誘拐の恵林寺、神護寺(山門で兵庫誰何され足止め、金堂下石段で和尚や藩士斬られ若君拉致)
・身代金を乗せた馬が出立する城門、彦根城天秤櫓(イメージに天守も)
・最初のコンタクト現場・八丁峠は谷山林道(誘拐犯は崖上から荷馬のうしろをぞろぞろついてくる不自然な旅人や虚無僧の群れを見ていてバレバレ)
・藩主の「実子」松千代君が遊ぶ庭、仁和寺宸殿。二回目の授受、大覚寺大沢池畔。


第8話「殺したのは私じゃない

 裏で高利貸しをしていた阿漕な商人が毒殺され、酷い扱いを受けていた後妻が疑われマジで「土壇場」までゆく。兵庫の介入で、間者を送り込んでいた真犯人が知れ女は助かるが、悲哀は消えず当地を去るのだった。

ロケ地
・奥州岩代国をゆく兵庫と安、迎えの駕籠に押し込まれるのは北嵯峨農地か。
・連れ込まれるどこかの寮、中山邸通用門(桔梗が待ち構えているのは邸内)
・丸橋屋利兵衛が渡って細工されてた橋桁がはずれてドボン、中ノ島橋(安が助けあげるのは右岸)
・小間物屋に化けてお城へ入る安、門不明。お中揩ノ連れ込まれるのは相国寺方丈北廊下(障子破れてるのが映るが、これが「藩のお台所も火の車」情報の根拠?)
・兵庫に刺客が殺到、仁和寺観音堂脇。
・勘定奉行の間者が証拠品を焼き捨てる汀、広沢池東岸
*兵庫は泳げない設定が出てくる。丸橋屋は遠藤太津朗。


第9話「三途の川は渡れない

 舞台は松代、民の困窮を見かねた若侍が庄屋屋敷から米を奪還しようとはかる。城代家老宅に招かれていた兵庫はその若侍を斬る役を振られるが、途中から悪家老らに刃を向けることに。

ロケ地
・真田領に入った山道で兵庫に置いていかれる安、保津峡落合崖道
・郡代役人の若者・角田と百姓らが荷車を引くのに行き会う兵庫、幼松のある砂地の荒地、不明。
・兵庫を倒す剣を磨く幻一角、下鴨神社糺の森
・滝に打たれ祈るおしま、菩提滝
・一揆の相談をぶつ角田と百姓、大覚寺五社明神舞殿(壁をセット)、安がおしまの傷の手当てをしていて「聞いたな」と捕まってしまうのは本殿石段
・城代家老邸、相国寺大光明寺(門、庭、中仕切戸)
・逃げてきた一揆衆に、おしまの頼みで加勢する一角、広沢池東岸下鴨神社池跡。あらかた倒したとこで兵庫を見てしまい、そのまま果し合いに移行、場所も保津峡落合河口部へ移動。危なっかしい橋の上でチャンバラ→二人ともドボンで兵庫のみ上がってくる。
・願文を書いたかわらけを投げ、一角の無事を祈るおしま、保津峡落合落下岩上。
・桔梗を置いて去るも追いつかれる兵庫たち、流れ橋
*ニヒルに決めておしまのもとから去ったりする一角だが、性にあわない人助けをさせられたうえに、対兵庫の秘策「目に光当てて幻惑」がうまくいかず、挙句の果て川落ちで行方不明…可哀相すぎの目黒祐樹。兵庫の「泳げない」は大嘘、落ちたついでに魚を獲って上がってきたりする。


第10話「おれは盛岡には来なかった

 南部藩のお家騒動、事情を知悉するも、兵庫は命を賭けて藩を守ろうとした忠義者と聡明な「弟君」のため、伊豆の意には沿わず黙して去る。タイトルはその表明。

ロケ地
・江戸城、姫路城天守
・黄金献上の南部藩の使僧を従えた牧野備前守が御廊下で伊豆とばったり、相国寺方丈北廊下。
・桔梗が密書を見られた花巻の温泉宿、日吉大社日吉山荘(飛竜の滝アップあり)
・安が兵庫に公儀隠密かと聞く道、琵琶湖西岸松原
・使僧の寺・盛岡光照寺、相国寺方丈(南側外観、座敷を開け放ち南庭と法堂を遠景に)
・南部藩別邸へやってくる安、門は大覚寺大門。ぶつかった侍から財布を掏ってしまう、参道石橋。拾ったと届けにゆく、式台玄関。ご褒美にと茶室見学をせがみ藩士に伴われて渡る庭の橋、枳殻邸侵雪橋。ここで幼君頓死を見る(遣水脇の芝地で腰元に乗っかって遠眼鏡→くの一の化けた侍女に唆され木に登って落下)
・目付邸で兵庫はいないと言われた桔梗がゆく城下、大覚寺勅使門橋大沢池木戸(くの一出て当身で拉致)。安が襲われる宮、五社明神
・事後、盛岡を発つ兵庫と安、日吉大社西本宮参道大宮橋前〜走井橋(くの一とチャンバラ、その前にくの一が立っているのは走井堂石段上)
・くの一が監禁していた桔梗を助け出す社、大覚寺護摩堂
・安にも「盛岡になんか来てない」と言い聞かせつつゆく山道、谷山林道


第11話「極楽太鼓が鳴る地獄

 秋田入りの兵庫、名物のかわりに見るのは民の嘆き。暴利で金を貸し、借金でがんじがらめにした家の娘を悪所に売り大儲けする両替商と顔役。権勢を誇る藩目付がこれと結託し娘たちをつまみ食いする悪行を見た兵庫は、大天狗と称して撫で斬りにしてのける。

ロケ地
・最上川渡し舟で連れの女を手ひどく扱う女衒を諌める兵庫、船着は広沢池東岸
・久保田城下へ急ぐ兵庫と安、谷山林道
・城下、極楽太鼓の据えられている鎮守、鳥居本八幡宮舞殿。
・娘をカタにとられた父が祈る祠、松尾大社本殿脇摂社
・秋田を去る兵庫たち、谷山林道分岐道。
*極楽太鼓は、叩くと往生できる伝説を持つ太鼓。生よりも死を願う飯盛女たちの悲哀を表現する小道具だが、謂れ等説明弱すぎ。


第12話「道行き泪の置土産

 兵庫が拾った「見ていて気持ちのいい」男女は不義の駆け落ち者。逃がし屋と称するヤクザの魔手から救ってやるなど大いに肩入れの兵庫たちだが、覚悟を決めひとときの幸福を満喫していた女は、儚く散ってしまう。妻の死を見て呆然の冷血侍に女性心理を説く兵庫、柄にも無い発言はあとで安たちに揶揄されたり。

ロケ地
・おみのと朝之進と行き会い護摩の灰から助けてやる、あと少しで他領という番所手前の山道、谷山林道


第13話「決闘・無明ヶ原

 最終話の舞台は江戸、いよいよ煮詰まってきた伊豆と備前守の対立は、兵庫と幻一角の代理戦争で幕を閉じる。この間、身を投げ出して一角の手を治してやるおしまの哀話や、桔梗をめぐる兵庫と伊豆の嫡男の三角関係などのドラマが絡んでくる。

ロケ地
・松平伊豆守邸、大覚寺大門
・安がおしまの借金の事情を見る町角、大覚寺放生池堤に茶店セット、立ち聞きのくだりに護摩堂
・このことを伊豆邸にいる兵庫に報告の安、枳殻邸印月池畔。伊豆の嫡男である従兄弟の気持ちを知った兵庫が、桔梗に妻になってやれと話すのは侵雪橋上。
・従兄弟の死を見た兵庫が乱入する備前守邸、相国寺大光明寺(前庭、中仕切)
・一角と決戦の無明ヶ原、不明(砕石場跡っぽい)
・一角の遺骨を抱いて安曇野へ旅立つおしまを見送る兵庫、青蓮院西塀際。
*伊豆の養子話を蹴って再び旅に出る兵庫、今度は一人旅と気取るが、街道では安と桔梗が待ち構えている。


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