第一シリーズ
長谷川平蔵/中村吉右衛門 久栄(平蔵内儀)/多岐川裕美 佐嶋忠介(筆頭与力)/高橋悦史 酒井祐助(筆頭同心)/篠田三郎 沢田小平次(同心)/真田健一郎 木村忠吾(同心)/尾美としのり 村松忠之進(猫殿)/沼田爆 おまさ(密偵)/梶芽衣子 相模の彦十(密偵)/江戸家猫八 小房の粂八(密偵)/蟹江敬三 大滝の五郎蔵(密偵)/綿引勝彦 伊三次(密偵)/三浦浩一 五鉄の三次郎/藤巻潤 おとき(五鉄従業員)/江戸家まねき猫
暗剣白梅香 1989.7.12 通算1話 原作同名・1巻
鬼の平蔵がお役を退いてから急速に悪化する江戸の治安、京極備前守は急遽彼を復職させる。盗っ人どもは鳴りを潜めるが、活躍してもらっては困る筋から平蔵に刺客が放たれる。この暗殺者の内面と心の変化がドラマを作り、奇縁が交錯し哀れな結末を迎える。
ロケ地
- 鬼平解任以降出る凶悪な辻斬り、侍が抜く間もなく斬られる夜道、妙心寺春光院南路地(奥の蔵と塀は大庫裏)。
- 夜回りの平蔵、屋台に寄っての帰り刺客の気配に気付く橋、中ノ島橋。刃を交えるのは妙心寺大庫裏脇路地(原作設定は汐留付近、屋台の帰りではなく井上立泉宅を訪ねての帰り)。
- つけている香油からアシがつき火盗改に囲まれるも逃げた刺客・金子半四郎が、尾行する伊三次の気配に足を止め鯉口を緩める堀端、大覚寺有栖川畔(河床から見上げ、伊佐次が隠れるのは川べりの祠)。
- 火盗改の動きを知り金子とツナギをとるため店を出る「仲介者」の丸太橋の与平次、駕籠が渡る橋は摩気橋(改修以前)。駕籠を降りるのは摩気神社楼門前、社務所裏を通り金子のいる蔵へ。蔵はよく似たものが社務所裏にあるが、扉が少し違う(最近改修された)。
- 事後、金子を哀れみ佐嶋に述懐する平蔵、中ノ島橋下手右岸河川敷。
ゲスト
金子半四郎/近藤正臣 おえん/西川峰子 丸太橋の与平次/中田浩二 三の松の平十/中村又五郎 利右衛門/牟田悌三
*金子浪人が血の匂いを消すため塗りたくる香油は、捜査の糸口となるほか彼の人となりを端的に示すアイテム。鏡に向かい片袖抜いて塗ってるところは気味悪くも物悲しい。彼の殺気が消えてしまう原因のお女郎が、プロポーズをまったく真剣にとっていないうえ扱いがタダのお客というのも哀切。
原作では仲介者はおらず、金子は最初から平十と直に接している。ドラマでは中田浩二を斬ってから闇の元締めに会うので、又五郎丈の起用が生きてくる。
金子を「返り討ち」にする船宿の主、伊佐次が平蔵を訪ねてくる段で懐の匕首に気付くという伏線が憎い。
本所桜屋敷 1989.7.19 通算2話 原作同名・1巻
本所へ探索に出た平蔵は懐かしい人々と再会、追っていた事件は追憶の女の変わり果てた姿を見せつけることになる。
若き日の恋を抱えたままでいる親友、哀れな境遇から世を拗ねてしまった女、平蔵は桜花のもとに立ち尽くす友に声をかけず立ち去る。
ロケ地
- 小川や梅吉目撃情報を得て本所を探索の平蔵、八幡掘堀端。彦十がヤキを入れられているのを見る茶店は白雲橋上にセット、欄干越しに見る趣向。平蔵と彦十が話す姿をゴロツキが見て「鬼平」とビビるのは明治橋を見上げ。このあと訪ねる高杉道場跡へは堀を船で。屋敷は不明(低めの塀、草ぼうぼうの庭、庇つきのポーチも見える。設定通りに塀越しに桜)。
- 岸井左馬之助の回想、桜屋敷の娘・おふさと行き会う雨の路地、妙心寺大庫裏脇路地。
- 平蔵と左馬之助がおふさの嫁入り(船)を見送る橋、西の湖園地太鼓橋。
ゲスト
おふさ/萬田久子 岸井左馬之助/江守徹
*あばずれ女のおふさが絶品、お白州でもしどけなく横座り。
蛇の眼 1989.7.26 通算3話 原作同名・2巻(+1巻「座頭と猿」)
鬼の平蔵の勘ばたらきが、一見優しげな男の正体を峻別する。果たして名うての大盗だったその男は、仲間たちを震え上がらせている鬼平の雷名に激しい憎悪を滾らせていた。
ロケ地
- 五十海の権平と一味が処刑される品川の刑場、それを見ている白玉屋の紋蔵は罧原堤下河原。
- 雇われ浪人が平蔵を襲う道、大覚寺有栖川畔(五社明神脇)。
- 蛇の平十郎が狙う日本橋高砂町の道有屋敷、大覚寺。導入の外観は南塀を東から西にパン(平十郎宅の格子越し)、門は大門で手下が化けた蕎麦屋が店を出すのは参道石橋たもと。千賀道栄の揉み療治を終えて出てくる彦の市、紋蔵に蝋型を渡すお堂は護摩堂。
- 徳太郎とおそのがしけこむ屋形船、大覚寺大沢池畔(五社明神脇)。
- 平蔵が泳がせたおそのの前に現れる彦の市、金戒光明寺長安院下坂〜墓地際。
- 事後、新しい男を誑しこむおそのを見ての帰り、平蔵と酒井がくぐる門は黒谷三門。
ゲスト
蛇の平十郎/石橋蓮司 白玉屋紋蔵/誠直也 彦の市/山田吾一 おその/松居一代
*原作にもある天麩羅そばが出て、うさ忠と猫どのの蕎麦対決に。種は貝柱のかき揚げ。
血頭の丹兵衛 1989.8.2 通算4話 原作同名・1巻
密偵・小房の粂八誕生秘話。かつて掟を破った自分を放逐したおかしらを信じる粂八は、いま出ている急ぎ働きの「丹兵衛」は騙りだと、己が名を明かして平蔵に訴える。変節も見、変わらぬ心根も見て、粂八は鬼平の配下となる決心をする。
ロケ地
- 島田へ向かう粂八と火盗改同心たち、谷山林道(東海道)。
- 島田宿、同心たちとツナギをとる粂八、摩気神社境内。
- 丹兵衛が粂八に落ち合う指定の宿場はずれの橋、摩気橋。丹兵衛と手下がいる高倉は摩気民家裏手の「蔵」を映してから。
- 蓑火の喜之助が現れて丹兵衛の代わりに本格のお盗めをしたことを語るの茶店、谷山林道にあしらい・遠景に富士山合成。
ゲスト
丹兵衛は日下武史、蓑火のおかしらは島田正吾。
*グルメは「鮎飯」、猫殿のそれを貪り食ったことを久栄にねじ込まれる運び。
血闘 1989.8.9 通算5話 原作同名・4巻
女密偵・おまさ成立の話、荒れる「本所の銕」を母親のように叱った少女は、艶っぽい美女となって平蔵の前に現れる。しがらみから引き込みを務めていた彼女は、町で「鬼の平蔵」を見かけたことで運命を選び取るのだった。
ロケ地
- 平蔵がおまさを見かける下谷・広徳寺、仁和寺参道石段と茶店。平蔵と酒井は「茶店」で甘酒をやる。平蔵の姿を認めて立ち去るおまさは中門をくぐってゆく。ここは以降ツナギの場として使われる。
- おまさを引き込みに入れてある札差の用心棒を殺ったあと、亡骸を乗せて船でゆく一味、広沢池東岸付近。
- おまさと仁三郎のツナギ、広沢池北岸。
- おまさが平蔵を待つも仁三郎に「内通」が露見し拉致される広徳寺境内の祠裏、仁和寺九所明神脇と祠。おまさが落としていった「針」を追うくだりに観音堂脇石畳ほか一部に竹林(わらびの里か)。連れ込まれる家は広沢池東岸の「料亭跡」、門内外のほか前の小橋もはっきり映る。ここの設定は原作によると南葛飾郡渋江村・西光寺裏の化物屋敷。
- 火盗改へ注進におよぶ彦十が駕籠を走らせる道、大覚寺大沢池堤。暴れ馬に遭うのは五社明神(原作設定は浅草・門跡前通、但し彦十ではなく鶴やの船頭・由松)。
ゲスト
吉間の仁三郎は磯辺勉、強面浪人は岩尾正隆に唐沢民賢、広徳寺の茶店親爺は北見唯一。
*平蔵が救出に入った時点で嬲られているおまさ、「その女の情夫」の言葉に涙するさまと、きりりと「密偵」の顔になる切り替わりが泣かせる。
むっつり十蔵 1989.8.16 通算6話 原作「唖の十蔵」・1巻
冴えない同心にかけた平蔵の情が裏目。冷たい嫁を持つ「唖の十蔵」は、己を恃みと縋る哀れな女と出会ってしまう。
ロケ地
- 十蔵がおふじを預けた押上村・喜右衛門宅、民家前田畔と長屋門。
- おふじが仙吉を見かけた亀戸天神、今宮神社。高倉脇の坂を中心に「蕎麦屋」や茶店を演出。
- やって来た仙吉を尾行し取り囲む火盗改、大覚寺放生池堤。仙吉が飛び上がり逃げる「欄干」は観月台。
- 掛川の太平のアジトである王子稲荷裏参道の料亭・乳熊屋、中山邸参道〜通用門。
ゲスト
小野十蔵/柄本明 おふじ/竹井みどり 夜烏の仙吉/宮内洋 掛川の太平/浜田晃
*平蔵就任前からはじまる原作とは設定が些か異なり、賊は野槌の弥平ではなくて小川や梅吉も登場しない。また、亀戸天神ではなく柳島・妙見堂と記されているが、柳島村の妙見大菩薩・法性寺は天神川(十間川)を挟んで向かいあたりなので水辺の設定は原作通りととってよいかと思う。原作には捕物のシーンで「天神川の柳島橋」が出てくるが、又兵衛橋ともいうその橋のたもとに「妙見堂」がある。橋は北十間川との合流点に架かる。もちろん「妙見堂」のある柳島村は押上村の隣村で、同じく境を接する亀戸村にある臥竜梅が有名っぽい梅屋敷の持ち主が「百姓喜右衛門」だったりするのも面白い。「仙吉」逃走のくだり、原作では「小川や梅吉」が柳島橋の欄干へ躍り上がり、橋を挟んで向かいの堀左京亮下屋敷に逃げ込むが、橋たもとには堀丹波守三万石の屋敷があったと切絵図に記されている。
明神の次郎吉 1989.8.30 通算7話 原作同名・8巻
岸井左馬之助を感心させた奇特な男、実は賊の一味。彼を知るおまさは悩んだすえおかしらに報告、友からその男の人となりを聞いていた平蔵もさすがに驚くが、すぐさま「目立たぬ」よう手配りをはじめる。
ロケ地
- 次郎吉が瀕死の法円坊を見つけた夜の前田原、不明(草原)。
- 岸井左馬之助が寄宿している押上村の春慶寺、西明寺。山門のほか境内、出入りに参道坂が使われ、密偵の見張りには脇の石積も。
- 法円坊の遺品を届けてくれた次郎吉を、大八に乗せて五鉄へ向かう左馬之助、渡る橋は中ノ島橋。お帰りの絵もあり、夜間撮影。
- 左馬之助の回想、したたか呑んだ翌朝急に修行にと発った法円坊を見送った道、不明(小柴垣の道、鳥居本か北嵯峨か)。
- 櫛山の武兵衛の盗人宿、不明(板塀をめぐらせた民家、周囲には幼木が植えだされ、裏は植林杉。造園業の敷地か)。設定は千駄ヶ谷。
- 伊三次とツナギをとる平蔵、上御霊神社本殿脇に緋毛氈の床机あしらい。
- 動きだす櫛山一味、報告を待つ平蔵は今宮神社境内屋形に腰掛け、一味は高倉脇坂を駆け下りてゆく。高倉下に伊三次、燈籠脇に彦十らが潜み、楼門下におまさがいて平蔵を誘導。この先の寺へ入ったと報告する彦十、相国寺回廊。
- 一味が入った荒れ寺・宗清寺、相国寺大光明寺。おまさが湯屋角で見張っていると、南通用門から出てきて走り去る。このあとはセットへスイッチ。
- 小田井宿さして中山道をゆく岸井左馬之助、谷山林道切り通し。
ゲスト
明神の次郎吉/ガッツ石松 宗円/徳田興人 春慶寺住職/松田明 櫛山の武兵衛/土屋嘉男
*ラスト、久栄に今回の事を述懐する平蔵の段で、「人は悪いことをしながら良いことをし、良いことをしながら悪事を働く」の名台詞が出る。
さむらい松五郎 1989.9.6 通算8話 原作同名・14巻
火盗同心の山口が、賊と酷似していることから起こる椿事。今まさに盗みに入らんとしていた一味を捕えるべく、誤認されたままなりすましは続くが、当の松五郎が出てきてしまう。
ロケ地
- 菩提寺へ詣で父母の墓に額づく山口、西教寺墓地か(丘の上、遠景に山。石段あり)。設定は目黒村・威得寺。
- 墓参の帰り、須坂の峰蔵に「松五郎さん」と声を掛けられる山口、仁和寺中門(南北両向きのアングルあり、参道には露店あしらい)。設定は目黒不動堂。
- 峰蔵と「松五郎」の山口が互いの事情を語り合う水辺、罧原堤下河原。
- 再び「山口」に会い、松五郎傘下で働きたいと申し出る峰蔵、帰る彼をつけてゆくおまさと伊三次、仁和寺塀際(内側)。
- 江戸へ出てきた松五郎と山口がすれ違うくだり、松五郎が休む目黒不動の茶店は仁和寺茶所。
- 山口と峰蔵が盃を交わしたあと、藤七の盗人宿に道具を取りに行くと言って出た峰蔵が本物の松五郎に出くわすくだり、不明(酒井がつけてゆく道は山裾の田畔、その後松五郎と峰蔵が話す水辺は沢ノ池に似る。別々の場所をつなげてある感じ)。
- 松五郎が捕縛されたあと、市中へ出て山口らと合流する平蔵、仁和寺九所明神鳥居〜拝殿(山口と小柳は内陣へ入り、縁先に腰掛けていて、おかしらを見て「外に出て」駆け寄り。背景に本殿も映り込む)。
ゲスト
須坂の峰蔵/赤塚真人 おちょう/石倭裕子 お兼/速水典子 阿久津/小池雄介 赤尾の清兵衛/平井満 ろくろ首の藤七/深江章喜 山口平吉・さむらい松五郎/坂東八十助
兇賊 1989.9.13 通算9話 原作同名・5巻
平蔵が評判を聞いて足を運んだ芋酒屋、そこの親爺が実はひとりばたらきの盗っ人。彼は、旅先で鬼平に強烈な害意を持つ者の話を立ち聞いており、賊の魔手から平蔵を守ることになる。
ロケ地
- 加賀・田近谷村の野道をゆく九平、不明(山裾の棚田)。丘から見る里、不明(前に水田、裏手は竹林。母屋は萱葺き、脇に大きめの小屋。実際に高みから眺めている感じ)。立ち寄る元の実家、美山民家に似る(軒瓦を出した萱葺き)。
- 帰途、どうやら盗人らしい二人連れが「鬼平の血を見なくちゃおさまらない」と話すのを聞く倶利伽羅峠、谷山林道。「地蔵堂」の祠をあしらい。後段では馬も入る。
- 九平の芋酒屋を出たあと、刺客に遭う平蔵、大覚寺放生池堤(エンドの橋)〜五社明神(池畔林間)。
- 網切の甚五郎の盗人宿、不明(かなり大きな萱葺民家、脇に板塀と門あり。大屋根の向うに山のシルエット。画面手前は水田)。設定は青山・原宿村の「丘の上の百姓家」。
- 甚五郎配下の友吉が入ってゆく向島の料亭・大村、中山邸通用門。
ゲスト
網切の甚五郎/青木義朗 文挟の友吉/江幡高志 おしづ/風間舞子 鷺原の九平/米倉斉加年
一本眉 1989.9.20 通算10話 原作 「墨斗の孫八」「一本眉」・13巻
業病が親兄弟を次々と奪い去った運命に脅え、自棄の果て賊となった男。手下に裏切られた老盗は、伝手を頼ってお盗めの人数をかき集めるが、金を残してやりたい子ができていたのだった。
ロケ地
- 清洲の甚五郎の盗人宿、民家門。乾分が注進に来る段では塀際、粂八の見張りでは前畑付近も使われる。
- 予定していたお盗めを中止し、外道の佐喜蔵を殺しに行く段で乗り込む船、セットかロケか不明(佐喜蔵のアジト近くで船をおりるシーンは明らかにセット)。
ゲスト
馬返しの与吉/尾藤イサオ 倉渕の佐喜蔵/藤岡重慶 清洲の甚五郎/芦田伸介
*メインの筋は「墨斗の孫八」から、主人公の名と容貌および外道の手下に裏切られ成敗する設定は「一本眉」から。事後、岡部の宿に金を届けた甚五郎の乾分・与吉が、佐渡送りにならず鬼平の密偵となった逸話はオリジナル。
狐火 1989.9.27 通算11話 原作同名・6巻
凶行ののちべたべたと名札を貼ってゆく賊、その一味の当代は、おまさが心ならずも別れた昔の情人、女密偵の心は千々に乱れる。
名を騙られていた二代目は、畜生働きをした弟に制裁を加えたあと神妙。先代の誼とおまさへの気遣いから、彼を目こぼしする平蔵のはからいが妙味。
ロケ地
- おまさの回想、十年前お盗めのあと勇五郎に置いていかれてしまった水辺、広沢池東岸に舟着きあしらい(夜間、盗金を船に積み込み中)。
- 叔母を見舞って帰りのおまさが、瀬戸川の源七を見た新宿の渡し場の茶店、大堰川河川敷。茶店を仕立ててある河川敷は広い礫河原で左岸側、対岸は竹の河畔林が汀に迫っている。
- 「狐火」が皆殺しを働いた無残な現場で、狐火の仕業でないと叫ぶおまさ。その後平蔵が話を聞くため彼女を連れてくる料亭、錦水亭。東屋外観にカイツブリの声を被せ、座敷から八条池を望む図に切り替わり。東屋が土手と斜めに立地することを利用し、うまいこと外の景色も映り込ませてある。原作設定は市ヶ谷八幡境内の料亭・万屋の離れ。
- 源七に会うため中川の渡船に乗るおまさ、大堰川。河畔林は竹、流れは瀞。茶店は先と同所の大堰川河川敷、店の中から流れが見える図も出る。ラスト、おまさが再度密偵として働きたいと申し出るシーンでは、対岸に消波ブロックなどちらり。
- おまさと勇五郎が苫船に乗って出るくだり、大堰川から広沢池東岸へスイッチ。東岸の並木の向うに板塀をあしらい、文吉のアジトに仕立ててある。隅田村木母寺近く設定。
- 勇五郎が文吉を始末する竹林、北嵯峨か。
ゲスト
狐火勇五郎/速水亮 文吉/伊藤高 お久/池田純子 瀬戸川の源七/垂水悟郎
兇剣 1989.10.11 通算12話(SP) 原作「兇剣」「艶婦の毒」・3巻
京見物の鬼平は休むどころか大忙し、賊召し捕りの立役者をつとめ、市中では追われる娘を助けて、これがもとで大坂の大盗・玄丹から刺客を送られる羽目に。このあと京都町奉行の勧めで奈良見物に赴くが、道中襲ってくる刺客を返り討ちにし、玄丹が狙う押し込み先をも防ぐという、八面六臂の大活躍を繰り広げるのであった。
ロケ地
- 虫栗一味が捕えられた夜、大坂へ走る玄丹の手下・伝五郎、木津堤か。
- 父の墓に参る平蔵、二尊院墓地。設定は千本出水七番町の華光寺。
- 京の市中を逍遥する平蔵、舞妓白川女が行き過ぎる寺の境内は仁和寺塔脇草叢。金閣と清水寺全景をイメージに挿入したあと、平蔵が歩むのは化野念仏寺石仏群(雲水あしらい)。このあと京都御所建礼門をイメージに挿入、およねを拾う市中セットにスイッチ。原作では逍遥は嵯峨だが、劇中特段の説明なし。
- およねを宿に連れ帰った翌朝、大和へ向けて発つ平蔵一行、清凉寺本堂前〜流れ橋〜石清水八幡宮参拝は現地で(原作ではここの宿院へ泊)。
- 石清水を後にした平蔵一行、あのあたりが宇治、と浦部が彼方を指す「道」は天神川河川敷(大堰堤上の広河原、背景にガレ山)。設定は生駒山地東裾の街道、浦部は謂れを披露し歌姫街道行きを勧める。
- 玄丹のもとへ浪人が集結し、江戸では岸井左馬之助が平蔵の京都行を知る頃、棚倉野へ差し掛かった平蔵一行がお昼をつかう河原、天神川河床・若布谷落ち口。およねが足を水に浸し休む前で、忠吾が魚を追って騒ぐ。浦部はゆかりの万葉歌を披露。
- 平蔵の動向について報告を受ける伝五郎、大覚寺五社明神祠脇。伝五郎がこのことを注進に走る田畔、不明(背景の山裾に民家)。道隈の道標に付けられた仲間の印を見て走りあがる坂、大内亀岡道の坂(山肌ガレ)。
- 祝園村へ差し掛かる平蔵一行、方向を示す印を付けつつ尾行していた谷松をシメる平蔵、酵素ダート。
- 捕えた谷松を大八に乗せて入る常念寺、不明(門越しに見える堂宇は、五本線入りクリーム色塀のアレ。門を入ってゆくシーンでは、奥に竹林が見える)。
- 平蔵に刺客を送る一方、計画していた盗みに乗り出す玄丹、出先で塒にしていたお堂から出てくるシーンは大覚寺聖天堂。
- 玄丹に命じられ、平蔵を狙うべく浪人衆を引き連れ街道をゆく大河内、不明(山裾の地道、田畔。このあと坂道へ。大内か)。
- 奈良イメージ、薬師寺(南塀越し西塔/大池付近からの遠景)、東大寺大仏殿遠景、興福寺(南円堂の甍越しに五重塔を望む図)。
- およねを忠吾に守らせ、浦部一人を伴い歌姫越の峠に差し掛かる平蔵、奈良を遥かに望む頂は谷山林道。
- 見失っていた平蔵を見つける伝五郎のくだり、不明。伝五郎たちが休んでいたのは萱葺民家、平蔵と浦部が行く道は田畔で民家映り込み。
- 平蔵現るの一報を受ける大河内ら、酵素河川敷でお昼中。このあと降り口坂を駆け上がり、ダートを走り抜ける(ダート待避所に、左馬之助が休む茶店をしつらえ)。
- 平蔵が近づく人数の気配を察し走り抜ける田畔、不明。伝五郎と大河内らが合流するのは大内坂か。
- 平蔵と浪人団死闘のくだり、犬飼天満宮。浦部と二人走り渡る橋は参道橋の天神橋、旧態の木橋で、ここに至る前に参道も映っている。立ち回りは橋上のほか境内、浪人たちが川を渡渉する場面もある。浦部が騎馬で駆け去るシーンは、山王寺前〜橋上。
- 玄丹らが押し入る大泉村庄屋宅、大覚寺明智門。門を開け侵入し、蔵にかかるところで捕り方登場。
- 京へ帰る一行、不明(山裾地道、石積みあり。谷地田か)。
ゲスト
浦部彦太郎/井川比佐志 およね/長谷川真弓 大河内一平/大前均 白狐の谷松/松崎真 猫鳥の伝五郎/粟津號 高津の玄丹/藤岡琢也 岸井左馬之助/江守徹
笹やのお熊 1989.10.18 通算13話 原作「お熊と茂平」・10巻
寺の下男が門前茶屋の婆さまに託した「遺産」は、分不相応な大金。平蔵の知るところとなり、婆さまも使って捜索が始まるや、果たして寺の預かり金を狙う盗賊が浮かび上がってくるのだった。
昔なじみの老婆を労わり気遣う、銕つぁんの優しさが際立つ情話。
ロケ地
- 本所・弥勒寺イメージ、清凉寺本堂大屋根。
- お熊婆さんの門前茶屋・笹や、今宮神社門前茶屋・かざりや。
- お熊に茂平の死を知らされた小塚原の畳屋・庄八が大八を曳いて渡る両国橋、中ノ島橋。お熊を尾行し店を見届けた帰りの女房と、橋上ですれ違いアイコンタクト。その後庄八が入ってゆく弥勒寺の山門、今宮神社東門。
- 庄八が手下を寺に入れるくだり、寺へ行くルートは中ノ島橋(堰堤をイメージに挿入)〜今宮神社東参道から東門。お熊が坊主に聞き込みのシーンは、東門が見える境内。
ゲスト
荒尾の庄八/早川純一 庄八の女房/田畑ゆり 今市の十右衛門/五味龍太郎 入升屋市五郎/下元年世 お熊/北林谷栄
あきれた奴 1989.10.25 通算14話 原作同名・8巻
人となりを信じ、盗賊を解放する同心。その心に応え、逃げた仲間を辛苦のすえ捕えてくる盗っ人。根気よく待って結果を見た平蔵は、二人ながら「あきれた奴」と笑う。
ロケ地
- その日非番の岡村も招集され、急襲する日影の長右衛門一味のアジト、民家門(夜間撮影、イメージのみ)。
- 難産のすえ死んだ「妻子」の墓に参る岡村、くろ谷か。
- 身投げしようとしていた母子を止める岡村、中ノ島橋。夜間撮影で、導入は橋側面。後段、牢を出された又八が身を躍らせて逃げる橋も同所。設定はいずれも両国橋。
- 五鉄へ預けられたおたかから聞いた事情を岡村に告げるおまさ、広沢池観音島(降雨中、対岸の萱葺きも映り込む)。
- 岡村の回想、又八を捕えた谷中古門前町の正林寺、妙顕寺。夜勤明けの岡村がくぐる境内の渡廊は、尊神堂と三菩薩堂間の渡廊(現存せず)。塀を飛び越えてきた賊を見かけ捕えるくだりは参道塀際(境内)。
- 牢を出され「逃げた」又八がゆく旅路、広沢池西岸沿い田畔(田んぼ側から見上げ)。
- 逃げた紋三郎を捕え役宅に戻った又八が、動機を平蔵に申し述べるくだりで出る、恩ある清五郎に甥のことで頼みごとをされた町角、大覚寺天神島(汀の鳥居あたり)。
ゲスト
おたか/長谷直美 鹿留の又八/平泉成 八丁山の清五郎/守田比呂也 雨畑の紋三郎/三浪郁二 天野甚造(与力)/御木本伸介 岡村啓二郎/中村橋之助
*原作では岡村ではなく小柳安五郎、職務遂行中に妻が難産で落命するなど、筋立ては同じ。
*月代伸びて髭ぼうぼうの姿の似合わなさ加減が、ドラマを盛りたててる感じ。
泥鰌の和助始末 1998.11.1 通算15話 原作同名・7巻
巧妙な盗み細工を作る男は足を洗っており、昔の仲間の誘いにも応じず。しかし、彼を一瞬で盗みの道に引き戻す大事が出来する。
鬼平は、世間同様憎まれるに足る被害者に冷たく、遠島が決まった和助には温かい言葉をかけてやるのだった。
ロケ地
- 磯太郎が和助に悩みを打ち明ける大喜近くの祠、大覚寺天神島。
- 磯太郎の仇を討ちに小津屋へ盗みに入る和助、蔵イメージは大覚寺蔵。裏戸から出て船に金箱を積み込む堀端、広沢池東岸(土手に木塀を拵え、汀に船着きあしらい)。
ゲスト
大工・孫吉/小鹿番 磯太郎/山崎有右 金谷の久吉/高峰圭二 棟梁・喜兵衛/森幹太 泥鰌の和助/財津一郎
*本所の銕と関わりのあった老剣客や、裏切者の盗っ人がすっぱり除かれているので、和助の「始末」も原作と異なる。
*和助の巧みなお盗めを映像化してあり、見もの。
盗法秘伝 1989.11.29 通算16話 原作同名・3巻
旅先で男気を見せた平蔵は、あろうことか盗賊に見込まれる。憎めぬ親爺のお盗めにつきあったりするが、やがて身の上はバレてしまう。いたずらっ気たっぷりのおかしらが楽しい一作。
ロケ地
- 弥吉夫婦が打擲されているところへ、渡船を降りた平蔵がやって来るシーン、渡し場は大堰川河川敷(左岸側に茶店あしらい)。
- 渡し場からついてきた善八が、平蔵に声を掛け勝手に名乗る橋、摩気橋(橋脚は木製、欄干に祭礼の幟あしらい)。役人に連行されていった夫婦者の件のウラを喋る善八、祭りの神社は摩気神社、二人は楼門を出てくる。
- 平蔵に凄まれて退転した善八が再び現れる茶店、不明(店は切り通し下、道向うは池でその奥に谷地田。「道隈」の祠はあしらいものか)。
- 鎌を持って殴りこみに行こうとしていた弥吉に出くわす道、不明(植林杉の林)。話を聞いてやるのは摩気神社本殿裏手、覆屋の下。
- 善八が金を隠していた野、不明(スダジイの根方、石仏はあしらいものか)。
- 善八を見逃してやったあと、忠吾と街道をゆく平蔵、不明(溜池端、先に出た茶店のくだりの池と同所か)。
ゲスト
鬼頭監物/津村鷹志 弥吉/古田将士 米倉半四郎/加島剛 升屋市五郎/田中弘史 おかね/川村一代 女郎/大島揺子 おもよ/園英子 伊砂の善八/フランキー堺
*平蔵の旅は叔母の法要の帰途、お供のうさ忠を先に行かせてぶらぶら一人旅。原作では、病後療養の京都行の往路。
女掏摸お富 1989.12.6 通算17話 原作同名・2巻
天才的な腕を持ったがため、暗い淵へ落ちかけていた女掏摸。彼女の変装にふと目をとめた平蔵の慧眼が、掏摸集団を一網打尽にし、己を律せなくなっていた女を掬い上げる次第に。
ロケ地
- 冒頭、よろけた芝居で鮮やかに財布を掏り盗るお富、金戒光明寺石段(見上げ)。振り返って微笑む口もとに付けぼくろ。
- 彦十を伴い、従兄弟どのを訪ねる平蔵、巣鴨村の三沢家イメージに摩気民家(園部川右岸から塀越しに萱葺きを望む図と、北側からの外観と二態)。
- 仙右衛門と王子権現に詣でる平蔵、今宮神社東参道〜東門前(ここでお富とすれちがい、仙右衛門がほくろの有無に不審を抱く)。
- お富を見張る平蔵と彦十、今宮神社門前茶屋・かざりや(店の前の床机に陣取り)。小僧の尾行つきでお参りにやって来るお富、東門を「出て」本殿に額づき、境内に仕立てた茶店でほくろを付ける。掏った財布を始末するのは若宮社脇、平蔵たちが物陰から凝視している。
- 掏摸の元締の父に腕を誉められたあと、外に出て水で訓練の真似事をしてみる幼女のお富、広沢池西岸養魚場水場。お富の父・霞の定五郎の表稼業の質屋は、神田八軒町に。
- 七五三造が従いて初仕事のくだり、つけぼくろを渡されるのは大覚寺五社明神裏手、初めての掏摸は今宮神社境内〜大覚寺五社明神舞殿前〜セットにスイッチ。
- 侍の懐を狙ってしくじり、片腕を落とされ水に落ちる七五三造、中ノ島橋(夜)。
- 卯吉に呼び出され求婚されるお富、上賀茂神社ならの小川畔(左岸、夜)。
- 七五三造に餞別を求められる行人塚の林、下鴨神社池跡(木の根方に石仏あしらい)。お富から百両を受け取ってきた七五三造の前に立ちはだかる彦十、泉川畔。沢田同心が出て火盗と名乗り召し捕り。
- 虎七一味が捕まったあともお富を見張る平蔵、ほくろを付けて掏摸を働くお富は今宮神社境内。駕籠をつかまえ巣鴨へ向かうお富、下鴨神社馬場。駕籠をおりる水辺は上賀茂神社ならの小川水場前(右岸、昼間)。平蔵が立ち去る際には林にスモーク焚き。
ゲスト
三沢仙右衛門/北村和夫 霞の定五郎/睦五朗 卯吉/中西良太 岸根の七五三造/片桐竜次 狐火の虎七/根岸一正 お富/坂口良子
浅草・御厩河岸 1989.12.13 通算18話 原作同名 1巻
孝心を嘉され見逃された錠前師は、爾来火盗改の御用をつとめる。病の父を養い、やがて嫁も貰い平穏な職人の日常を過ごすが、腕を見込んだ大盗が接触してくる。
御用と義理と意地に揺れる密偵の胸中のほか、盗っ人稼業を恬と恥じぬ父、亭主の所業を知った女房の苦悩、本格の盗賊の悠揚迫らざる大度など、人情の機微が描かれる。
ロケ地
- 松吉が酒井同心に呼び出され、父・卯三郎を訪ねた者の有無を問われる川端、罧原堤下汀(陸と汀に船)。
- 松吉が与兵衛に引き合わされる庭、不明(植木多数)。その後話す座敷も不明(開口部から美しい緑)。
- 与兵衛の的の醤油酢問屋・柳屋の蔵、大覚寺蔵(夜間、引き込みの手引きで松吉が入り、錠前を調べる)。
- 与兵衛のアジトを急襲する火盗改、立ち回りの庭不明(池や広い芝地あり)。
- 逐電した松吉が、大八に父を乗せ女房の後押しでゆく山道、谷山林道。
ゲスト
お梶/浅利香津代 卯三郎/田武謙三 彦造/石山雄大 いすかの喜左衛門/高並功 善太/遠山二郎 海老坂の与兵衛/岩井半四郎 松吉/本田博太郎
*本作の本田博太郎は「直次郎」タイプの明るい系、女房とのやりとりなどコミカル。
*松吉の腕試しに使われる小物のオルゴールは、松吉夫婦が喜んで聴くほか、平蔵夫婦も弄って遊ぶ。鮮やかに裏蓋を開ける、久栄さまの手つきが見もの。
むかしの男 1989.12.20 通算19話 原作同名 3巻
平蔵が甲州まで出張っている間に、捕縛された嘗役を取り返しに動く盗賊一味。ターゲットとなるのは久栄、平蔵と結ばれる前に関係のあった御家人・近藤唯四郎が盗賊の走狗となって現れる。気強くはねつける久栄だが、姪をさらわれ窮地に陥る。しかし息子の辰蔵と酒井の働きで、姪を取り戻し一味も捕縛。
帰着した平蔵は、久栄との関係を吹聴し勝ち誇る近藤に、ぬけぬけとのろけ混じりの応対。それを漏れ聞く久栄の表情が秀逸。
ロケ地
- 甲州へ出張の平蔵がゆく山道、谷山林道切り通し(導入は遠望の絵)。後段の還路小休止の、ほうとうを出す小仏峠の茶店は頂上付近作業場にセット。
- 久栄が妹と参詣すると、近藤が灯籠脇から見ている神社、梅宮大社楼門〜舞殿脇〜本殿。
- 久栄が近藤に呼び出される音羽護国寺門前の茶屋・よしの屋の庭、梅宮大社神苑。池中亭への土橋を渡る久栄の背後に、参集殿が見える。内部はセット撮り。
- 役宅で禁足中の辰蔵を誘い出しに来る悪友たち、妙心寺大庫裏西側通用門。久栄が出てゆく際は参道石畳も。
- 姪が誘拐されたあと久栄が近藤に呼び出される浮州の森、下鴨神社糺の森池跡。
- 人質交換場所の本郷林照院、粟生光明寺。本堂前境内から石段上部、駕籠が置かれるのは踊り場、人質が出て来るのは脇の繁みから、山門まで逃げた久栄たちと入れ替わりに、辰蔵と酒井が駕籠かき姿で駆け上がってくる。
ゲスト
近藤唯四郎/鹿内孝 勘造/亀石征一郎 美雪/小林かおり 辰蔵/長尾豪二郎 砂吉/きくち英一 三次/下元年世 用人・松浦/阿木五郎
山吹屋お勝 1990.1.10 通算20話 原作同名 5巻
平蔵の従弟、巣鴨のお大尽・三沢仙右衛門が年甲斐も無く惚れこんで一緒になると騒ぐ茶屋女は、鬼平を恨む凶盗が仕込んだ引き込み女だった。
忠吾に頼まれ、茶屋女の身元を調べに行った密偵・利八は、それがかつて掟を破り愛し合った女と知り、昔と同じように賊の手下と深間に落ちていることも知る。まだ生々しく愛しい女のため、利八はお勝と男を逃がしてやろうとするが、運命は既に暗いほうへ傾いていた。
ロケ地
- 巣鴨大尽の屋敷、摩気の民家。遊蕩指南のうさ忠がやって来るのを待ちかねて、仙右衛門ダンナが裏口から出てくる。
- 王子権現門前の料理屋・山吹屋、永観堂。中門から石畳、松岳院へパン、塔頭の門には「山吹屋」の暖簾がかけられている。室内はセット撮り、後段では松岳院の門内からの絵も出る。
- うさ忠に頼まれ調べに行った利八が、お勝を見て「おしの」であることを知り、山吹屋を出て悄然とゆく川辺、上賀茂神社ならの小川。回想のあと、制裁で失った指を撫でつつ自嘲する川辺は罧原堤下河川敷。
- 霧の七郎のアジトの駒込片町の数珠屋・油屋、今宮神社東門外のかざりや。導入は東門内側から。
- お勝の「男」と接触する利八、永観堂参道(政は向かいの塀際でお勝を見張り中)。お勝と逃げよと勧めるも信用されず、雨の中泥に塗れ争う林間、上賀茂神社渉渓園遣水端。
- 事後、怒鳴り込んできた仙右衛門から逃げ出し役宅通用門から出る平蔵、妙心寺大庫裏通用門。
ゲスト
お勝/風祭ゆき 関宿の利八/森次晃嗣 霧の七郎/菅貫太郎 政/森田順平 弥吉/岡部征純 お才/西岡慶子 夜兎の角右衛門/五味龍太郎 三沢仙右衛門/北村和夫
*鬼平がお勝を怪しむのは、酔客の手をはねのける鮮やかさから。これで忠吾経由で利八に話が行く次第。
*捕物のあと、瀕死の利八とお勝に対する平蔵の慈愛が泣かせる。
*夜兎の角右衛門の登場は、回想シーンのみ。登場人物の生死も、原作とは異なる。
敵 (かたき) 1990.1.17 通算21話 原作同名 4巻
のちに腕利きの密偵となる大滝の五郎蔵、その起こりの情話。
しばらくなりを潜めていた本格の盗賊・五郎蔵だが、病篤い配下の最後の望みを叶えてやるため、江戸でのお盗めを計画。しかし、かつての仲間の息子に仇呼ばわりされて斬りつけられたり、身辺に怪しの浪人の目が光っていたり、不穏な気配。そして、ずいぶん前から裏切っていた者の正体が明らかとなる。
ロケ地
- 本所仲の郷本町如意輪寺門前の花屋へ入る五郎蔵を見る岸井左馬之助、建仁寺三門〜放生池石橋。くぐる門は神光院山門にスイッチ、花屋は水場まわりにセッティング。盗人宿と推測し盗賊改へ足を向ける岸井の場面は再び建仁寺へ戻り、禅居庵と久昌院間の路地・クランク部。
- 平蔵に旅先で見た情景を語る左馬之助、五郎蔵が亀吉の息子・与吉に親の仇と斬りかかられる三国峠、谷山林道(与吉は両側切り通し部分へ「落下」、塚は道の真ん中に)。
- 三国峠の盗人宿・坊主の湯、栂雄の指月亭(対岸から見た河畔の一室をイメージに。下の河原に掛け流しの樋をスモークで演出)。室内や、金を隠してあった井戸などはセット撮り。ロケ協力のクレジットあり。
- 葛西から五郎蔵を訪ねてきて利平に声をかける手下、神光院蓬月庵(花屋営業中、導入は本堂前の石橋越し。水場越しの絵も)。その手下にお盗めの刻限を告げる五郎蔵、神光院本堂裏手。
- 葛西の盗人宿、不明(昼と夜の絵あり、同一個所かは不明。大きな萱葺屋根は「兇賊」で出た盗っ人宿と同所、前庭での立ち回りあり)。原作設定では、小梅村・真成寺の裏。
- 亀吉を手に掛ける伝八(伝八の回想)、罧原堤下汀。
- 事後、身請けした文助の女房を伴い日本堤をゆく五郎蔵、木津堤。堤上に茶店や燈籠、法面の「道」に赤いぼんぼりあしらい。
ゲスト
大滝の五郎蔵/綿引勝彦 舟形の宗平/浜田寅彦 お浪/浅見美那 小妻の伝八/井上博一 富治/椎谷健治 文助/草薙良一 花屋利兵衛/相馬剛三 岸井左馬之助/江守徹
*盗人宿で裏切者と斬り結ぶ五郎蔵、そこへ火盗改の手が入るのだが、平蔵は五郎蔵に伝八への制裁を許可。これに加え、お浪を身請けする金を置かれ、強面の目に涙が滲む次第。
金太郎そば 1990/1/24 通算22話 原作・他作品 「にっぽん怪盗伝/金太郎蕎麦」
肩の刺青を見せて出前する、蕎麦屋の女将。人目を惹く奇行や、大事にしているお守りの馬には、深く哀しい過去があった。
幸薄い女が醸し出す細やかな情愛は男たちの心を癒し、やがて幸運となって還る。それを大事に思ってやる、おかしらの優しさが泣かせる。
ロケ地
- 刺青をしてきたお竹が倒れかかるところへ由松がやって来て助け起こす町角、不明(神社境内か、拝殿の裏?に燈籠と「斜めの木」。拝殿は銅葺き)。
- 善助の回想、金屋の主が寝込んだあと、お竹と二人風車を売った露店、北野天満宮本殿脇。金屋の若旦那・伊太郎とお竹が会っているところを目撃するのは上賀茂神社ならの小川畔、善助は神事橋を渡ったところで二人を見る。伊太郎に来た縁談にショックを受けたお竹が、貰った簪を流すのもならの小川。
- 金太郎蕎麦開店一年の日に、由松を連れて願ほどきに出向くお竹、祈願成就の絵馬を納めるやしろは北野天満宮地主神社。その後そぞろ歩き、由松に告白されるのは境内摂社周辺。
ゲスト
お竹/池波志乃 藁馬の重兵衛/織本順吉 由松/潮哲也 善助/灰地順 伊太郎/山内としお 金屋伊右衛門/堺左千夫 ちゃり文/うえだ峻
*お竹が大事にしている藁の馬は、賊が盗みのしるしに置いてゆく名札代わり。その賊がむかしお竹の客で、一夜の礼に三十両を呉れた恩人。
*火盗が乗り出す起こりの事件は、横田屋へ入った重兵衛が、なぜか若旦那の伊太郎の髷を落としていった件。
用心棒 1990.1.31 通算23話 原作同名 8巻
張子の虎の用心棒にまつわる情話、盗っ人に付け込まれ窮した弱虫は、町で見かけた強いご浪人に縋る。木村平九郎と名乗ったその人こそ、浪人姿を作って市中見回り中の火盗改長官なのだった。
ロケ地
- 忠吾が役宅へ使いに出した蕎麦屋の職人が消される川端、広沢池東岸(芦原近く、船上)。
- 掛取りに出た佐野倉の手代・文六の護衛をする高木軍兵衛、居合の極意など得意気に話す道は相国寺大光明寺前路地(大光明寺塀越しに方丈塀を見るアングル)。この後、二人組の浪人に勝負を挑まれる茶店は方丈南塀際にしつらえ、ボコボコにのされてしまう林は法堂南の林間。原作設定は州崎観音。
- おたみと葛西から帰ってくる途中、あの二人組が若侍にからんでいるところに遭遇するくだり、大覚寺放生池堤〜護摩堂裏(原作設定は深川の三十三間堂)。鮮やかに二人組を懲らした平蔵を追って名を聞く高木、石仏前。
- 佐野倉へ殺到する馬越の仁兵衛一味が駆ける夜道、大覚寺五社明神。平蔵に追い散らされた人数が、配備されていた火盗とやりあうのも同所。
ゲスト
高木軍兵衛/ジョニー大倉 おたみ/森口瑤子 文六/佐藤仁哉 馬越の仁兵衛/江角英明 内儀・おわか/村松康世 番頭・長吉/石浜祐次郎 浪人宮内/吉中六
*原作とは設定をかなり異にするが、高木軍兵衛の平蔵評「怖く優しく思い遣りがあり暖かいがやはり怖い人」は原作そのままに語られる。万七の兎汁のエピソードは無く、深川飯の味噌か醤油かの議論に。
引き込み女 1990.2.7 通算24話 原作同名 19巻
むかしおまさの妹分だった女が、捜査の網に。彼女について一切の処置を任されるおまさは、昔馴染みへの情に心乱れるが、やがて平蔵の深い心配りを知ることになる。
ロケ地
- 五鉄の三次が目撃した磯部の万吉を探索に出るおまさ、昔馴染みのお元を見かける深川万年橋、中ノ島橋。おまさは橋上にいて、堰堤脇に佇むお元を見る。
- お元が勤める菱屋を見張るおまさ、お元が外出したのを尾行、入った茶店で接触するくだり、大覚寺大沢池畔に茶店あしらい。再会を約し別れるのは放生池堤、彦十に苦衷を訴えるのも同所。
- お元と会い悩みを聞きだすおまさ、今宮神社稲荷社前・若宮社脇。お元を見つめる万吉は稲荷社脇に潜み。
- もうお元のことは平蔵に任せよとおまさに説く彦十、今宮神社楼門脇。
- お盗めを前にして店を出るお元、旅姿で行くのを呼び止めるおまさ、夜の橋は中ノ島橋。万吉が出て制裁を加えようとするところ、沢田同心が阻む。
- 見逃されたお元が江戸を離れる街道筋、北嵯峨農地畦道。
ゲスト
お元/高沢順子 佐兵衛(菱屋主人)/下塚諒 磯部の万吉/金子研三 駒止の喜太郎/林彰太郎 長右衛門/有川正治 按摩/北見唯一
*焦れた同心たちが密偵たちを軽んじる言辞を吐いて、酒井に窘められる場面あり。筆頭同心は平蔵と密偵の紐帯について説く。
雨の湯豆腐 1990.2.14 通算25話 原作・他作品 「殺しの掟/梅雨の湯豆腐」
平蔵が看破した通り、浅草寺での殺しは「プロ」の仕業。鮮やかに針一本で「的」を仕留める殺し屋は、かしらの娘に手を出し賊の一味を放逐された過去を持っていた。
殺した分だけ溜まる心の澱、そろそろ限界に近づいていた殺し屋に来た依頼は、忘れえぬ過去の愛憎を滾らせてしまう。
ロケ地
- 越後屋が殺される浅草寺、清凉寺。導入は山門越しに境内を望む絵で、赤い大提灯があしらってあるのは「エンディング」と同じ、数多の作品で使われてきた構図をなぞる。本堂前石畳に露店がしつらえられていて、そのうちの一つの蝦蟇の油売りを見ていた越後屋が、プスっと刺される。白昼の殺人にどよめく境内、走ってゆく人々を見る、たまたま居合わせた平蔵は茶店にいるが、その床机は経蔵前に出されていて屋根が映り込んでいる。
- 浅草・塩入土手の時次郎の家、民家。小川の下手から萱葺きの破風を望むアングルで、屋根が半ば土手に埋もれたかのような雰囲気の絵になっている。室内はセット撮り。
- 「辻屋の内儀」・お照が参る神田明神、北野天満宮。楼門をくぐるお照を時次郎がつけてくる。お照が額づくのは本殿、帰るところを為吉につかまるのは本殿脇紅殻塀際。お照と為吉をつける時次郎の後を、伊三次がつける段ではセット撮り。
- 請け負ったお照殺しを躊躇い苦悩する時次郎、殺しの先達の浪人・宮沢を呼び出しにゆく賭場は大覚寺聖天堂、前景に崩れ土塀あしらい。
ゲスト
お照/黒田福美 上松の清五郎/辻萬長 赤大黒の市兵衛/須永克彦 大工・為吉/新海文夫 卯の木屋・藤右衛門/高桐真 市助/日高久 宮沢要/大出俊 時次郎/清水健太郎
流星 1990.2.21 通算26話(SP) 原作 「大川の隠居」6巻、「流星」8巻
鬼平を憎悪する大盗が企む暗殺計画を軸に、巻き込まれた往年の名盗の人となりや、平蔵を苦しめるための贄となった身内の悲哀を織り込んで描く情話。老船頭が昔とった杵柄で仕出かすお遊びのお盗めや、平蔵を気遣う密偵たちの逸話もいい味。
ロケ地
- 病明け後の平蔵、久しぶりの市中見回りの帰りに乗る猪牙船、不明(夜、見えるのは水面のみ)。船頭の友五郎が「なくなった銀煙管」を持っているのを見たあと、粂八を呼び出し芝居を打てと指示するのは鳥居本八幡宮本殿脇。
- 船宿・加賀屋へ赴いた粂八、友五郎と鬼平の所持品を盗る話をする川端は広沢池(芦原へ船をつける)。
- 生駒の仙右衛門が差し向けた刺客が、鹿山の市之助に試される庭、不明(植え込みの中に燈籠がいっぱい)。
- 小柳安五郎の妻女が暗殺される市ヶ谷七軒町の路上、妙心寺大庫裏脇路地。
- 京極備前守に呼ばれ、火盗の身内警備に弓隊を出すかと問われる座敷、相国寺方丈座敷(前庭に面した座敷、襖が開け放たれていて、法堂が映り込む)。設定は京極の私邸。
- 鹿山の使いが友五郎に接触するくだり、船宿・加賀屋の船着きは嵐山公園・渡月小橋上手湛水域右岸(下流望)。船を出させての密談は広沢池芦原。
- 凶賊に襲われる巣鴨・本明寺、境内堂宇イメージは長命寺境内、山門等は不明。
- 板橋宿へ出張る平蔵、皆が集まり調査結果を上げる町外れの林、不明(雑木まじり竹林の中に巨石のアレ)。
- 刺客浪人の一人・沖が平蔵を襲う街道、酵素。馬子に引かれた馬上から斬りつけるのはダート、その後降り口を駆け下り河川敷でチャンバラ、川中での立ち回りも。
- 小柳と粂八がゆく新河岸川の岸辺、大堰川堤。対岸に見える無住の寺は合成、河畔林を背に汀にある趣向。流れは湛水。
- 小柳の知らせを受けて川越へ馬を駆る平蔵と配下、下鴨神社馬場。
- 荷駄をととのえ、出発の支度をする鹿山一味のアジト、不明(石積護岸の下で作業、上のほうに見える塀はクリーム色五本線入りのアレ、必殺仕事人・激突18話と同所。ここ続きと思しき通用門あり、石積下は当然ながら水無し)。
- 火盗の手入れから逃れ、友五郎に船を操らせる鹿山一味、広沢池〜罧原堤下川中。
ゲスト
浜崎の友五郎/犬塚弘 沖源蔵/河原崎次郎 杉浦要次郎/伊東達広 鹿山の市之助/南原宏治 藪原の伊助/花上晃 井上立泉/牧冬吉 木下与平次/出水憲司 お仲/富田圭子 京極備前守/仲谷昇 生駒の仙右衛門/金田龍之介
→鬼平犯科帳表紙
|