第2シリーズ
殿さま栄五郎/雲竜剣/おみね徳次郎/むかしの女/白い粉/托鉢無宿/五年目の客/雨引の文五郎/盗賊二筋道/本門寺慕雪/女賊/四度目の女房/雨乞い庄衛門/密告/夜狐/霧の朝/白と黒/春の淡雪/下段の剣/熱海みやげの宝もの
「殿さま栄五郎」1990.4.4 通算27話SP 原作同名 14巻
口合屋・鷹田の平十に持ち込まれた急ぎ働きの助っ人探し、凶盗・火間虫の虎次郎の仕事と見極めた鬼平はみずから乗り込むことを決意。この際蓑火の軍師と名高い殿さま栄五郎と偽って入る。信用させるため捕えた火間虫の手下を牢から「救出」してみせたりする。偽装は本物を見知っている火間虫配下の者から露見、急いで仕事にかかる一味が侵入した回船問屋には手が回っていた。
急ぎ働きの火間虫が効果的に悪どく描写され、いまどきのお盗めを嘆く鷹田の平十と相俟って雰囲気を作る。見逃してやる筈だった平十が連行される船上から身を躍らせ自死してしまう悲劇が際立つ。
ロケ地
- 火間虫が口合人を探すと見込んで密偵が走るくだり、伊佐次は金戒光明寺石段から東の坂、塔頭道と駆ける。
- 鷹田の平十が花屋を営む麻布法住寺(原作では谷中)の墓地、黒谷墓地(バックに三重塔)。
- 平十身投げのシーンは大沢池か広沢池か(薄暗いうえに周囲の風景全く映らず)。
「雲竜剣」1990.10.3 通算28話SP 原作同名 15巻
半年ばかり平蔵の夢に現れ続ける怪しの刺客、その太刀筋は師匠・高杉銀平が語った「雲竜剣」。火盗改の同心が二人まで殺され、隙を狙っての急ぎ働きの凶盗が出る。
探るうち明らかになった雲竜剣の使い手の正体は、高杉が対峙した剣客の息子だった。
その剣客・塚本伯道は医師でもあり、またその裏の顔は本格のおつとめをする大盗っ人であった。盗みの目的は民に思うさま医療を施したいという発意からきており、長年にわたり各地に奉謝宿を設け、引き金を作る盗めを最後と定め江戸へ入る伯道。そのアジトへ一人乗り込む平蔵。伯道は平蔵が何者か既に察知しており観念、しかし凶盗と成り果てた息子の始末に猶予を願い出る。金打し諾す平蔵、伯道が斃れたあとを受け凶剣に立ち向かう。
ロケ地
- 片山同心殺害現場(設定、入間川沿いの法泉寺)、下鴨神社(平蔵が騎馬で駆けつけるシーンは馬場・クレーン撮影、現場は泉川畔等)。
- 平蔵が雲竜剣の使い手に襲撃されるからすみ川沿いの道、大覚寺放生池堤。
- 同心・金子の死体発見現場となる深川平野町海福寺塀外、下鴨神社池跡。
- 牛久沼、西の湖。小貝川渡し及び街道筋、西の湖と周囲のダート。ここは後段の保土ヶ谷付近の道にも使用。
- 東海道の松原に琵琶湖畔。
- 鍵師・栄三郎が藤沢への道中渡る東海道の橋(設定は目黒川中ノ橋?)、木津川流れ橋。
「おみね徳次郎」1990.10.17 通算29話 原作同名 4巻
盗賊同士が夫婦になってしまい掟に苦しめられるというストーリィだが男のほうが銜えこまれている感じで、法楽寺の直右衛門配下の引き込み・おみねの存在感が大きい。徳次郎のほうのおかしらは出てこないし。虫の音を愛でる季節というのに土砂降りのシーンが多い
おみねに偶然出会い惚気混じりに近況を聞かされるおまさ。出会いの橋は中ノ島橋。一別後振り返り友の顔から密偵の顔に切り替わる表情が秀逸。
事後、上州高崎でおみねと徳次郎が幸せに暮らしていることに謝辞述べるおまさに平蔵「俺ァ知らねェよ」
「むかしの女」1990.10.24 通算30話 原作同名 1巻
無頼浪人グループ・雷神党の噂を船を操る伊佐次から聞く平蔵、広沢池東岸・夜。
夜の街、ぐでんぐでんに酔い人にからんでいる仙台堀のおろくに会う平蔵、銕っつあんと呼ぶおろくに紙入れごと金を渡してやる。不審がる酒井におろくとの昔を照れ臭そうに語る平蔵。
おろくの連れ・おもんは昔の男から金せしめようと提案、初手の大丸屋仁兵衛から十両せしめ味をしめる二人。この一件が雷神党の耳に入り大丸屋からおろくの弟と偽り大金毟ってゆく浪人たち、次の算段におろくを拉致。
伊三次が首なし死体発見する、広沢池東岸。痕跡を辿ってゆくと深川末広町の雷神党のアジトに行き着く、近江舞子。雷神党は大丸屋へ「おろくの首」持ってゆき更に金を要求。首は新墓から掘ってきた代物。
アジト急襲する鬼平、夜の松林で大乱闘。槍ごと真っ二つのおかしらの殺陣が見物。
事後黙って姿消したおろく、猫に擬えて述懐の平蔵、おろくが長くないこと察し「いい女だったな」と堰き上がる感情。
「白い粉」1990.10.31 通算31話 原作同名 9巻
高遠藩家中と称する侍がばたばた駆け回るのに出くわす夜回り中の鬼平、立ち去りかけるところ斬りかかってくるのを叩き伏せると墨の入った者ばかり。こそこそおかしらの背後に隠れるうさ忠の仕草が可笑しい。
鬼平を襲ったのは盗人の手先で、真正面から行っても駄目と毒を盛る相談。火盗改役宅の板前・勘助が目をつけられハメられる。やめた筈の博打に手を出し借金塗れになった末女房を人質にとられ鬼平の膳に毒を盛れと命じられる。毒薬を渡され目隠しされた勘助が駕籠ごと放置される原作設定では神田昌平橋南詰八辻ケ原、下鴨神社糺の森。
平蔵の吸物に毒を盛った翌朝よろよろと役宅に近づく勘助は慌しく出入りする様子を見、また佐嶋与力に平蔵は急の病ゆえ食事は摂れないので今日は出仕無用と告げられる役宅の塀外、妙心寺大庫裏西側通用門。
夜、勘助が出向く女房を返して貰う約束の一ツ橋御門外の馬場と火除地錯雑の原、糺の森。盗人たちは勘助を殺そうとするが火盗の人数が伏せられていて平蔵も出張っている。その後盗人たちのアジトになっている本郷湯島天神門前の料亭・丸竹も急襲、料亭の建仁寺ふうの垣根は粟生光明寺石段途中にセットされているという凝りよう。
平蔵が毒を食らわなかった種明かしは博打に手を出してからの勘助の料理の味の異変にいち早く気付いていて見張りをつけてあったからというもので、勘助のメバルの煮付けを嬉しそうに待つ平蔵の姿や、鼠を捕まえておどけるうさ忠の姿に伏線が張られている。
ロケ地、勘助が最初に博打に誘われる築地塀、相国寺か妙心寺か不明。
「托鉢無宿」1990.11.7 通算32話 原作同名 5巻
品川宿を見回りの平蔵、人々に石で追われる弊衣蓬髪の坊主を見る。その僧が貴船明神の床下で寝牛の鍋蔵と鹿川の惣助の盗みの密談聞いてしまうのが話の発端。気付いた二人は僧のねぐら突き止め襲う、酵素。以外や僧は鮮やかに反撃、正体は平蔵と高杉道場で同門だった井関録之助で、旗本の息子だが父親が吉原の遊女と心中しその後放浪の果て乞食坊主に。
窮した寝牛の鍋蔵は元締・羽沢の嘉兵衛に井関の密殺を依頼。刺客が放たれるがこれが同じく高杉道場の菅野伊介。
井関は役宅へ現われ、平蔵に事の次第告げ菅野の目こぼしを依頼する。その後井関は粂八を伴い品川宿で寝牛の鍋蔵を探すが、同じく鍋蔵を狙う菅野の姿を見る。鍋蔵が入ってゆく盗人宿の寺、腰くらいまで石積の塀があって石段がある寺。
押込み先も暴かれ、盗めの当夜討ちかかる火盗改。事後、粂八が自害している菅野を発見、傍にあった包みには殺しの依頼料と「羽沢の嘉兵衛」の文字。即時逮捕の手出す平蔵。
「五年目の客」1990.11.14 通算33話 原作同名 4巻
品川宿の娼家、やつれた妓を呼び陽気に酒を呑む客、50両の大金を無造作に女に預ける。そこへ捕り方が現れ男が盗賊なのが知れる。魔がさした女はそのまま金を持って足抜け、信州上田の故郷へ裸足で走る道、大覚寺大沢池東堤(遠景に遍照寺山)。
それから五年、女は東神田の旅籠屋・丹波屋の女将・お吉となって見違えるような溌剌さで立ち働いている。ここへ五年前の盗賊・江口の音吉が偶然投宿、顔を見て驚愕のお吉。音吉のほうは丹波屋を狙っての投宿(丹波屋の絵図面を渡す浅草玉姫稲荷に走田神社本殿内陣)でお吉の事は気付いていないどころか事件さえ忘れているのだが、音吉の行動ひとつひとつにお吉は苛まれてゆく。思い余って50両を音吉に渡しこれで二度と現れないでくれあの時は悪かったと詫びを入れるお吉だが、そこでお吉があの時の敵娼と知った音吉はけたけたと笑うばかりか馴染みだとのしかかってくる。これを思わず簪で刺し殺すお吉。
鬼平は事が露見せぬよう計らい、白州で真実を述べるお吉に情をかけるが久栄の直感通りそのまま元には復せずお吉は入水、広沢池(水面ばかりで判断付きかねるところだがちらっと脇に映る桜と水面に影を落とす山の形から)。
今回は左馬之助と女性談義しきりの平蔵、これを強調せんが為の原作に無いラストの入水かと思われるが、それにしても救いの無い後味の悪さが残る。
「雨引の文五郎」1990.11.21 通算34話 原作同名 9巻
盗賊同士の諍いから雨引の文五郎の情報が齎され、鬼平自身が虚無僧姿で出張る。尾行する鬼平の前に文五郎を尾ける怪しい男たちがいる本所・小名木川沿いの旗本屋敷前、妙心寺塔頭道(焼杉の板塀はセットされたものか)?文五郎は逃げおおせ尾けていた落針の彦蔵が捕縛される。彦蔵を首実検の老密偵・五丁の勘兵衛は本格の盗めを固持する文五郎を売るのをためらう(原作では舟形の宗平)。勘兵衛と謀り彦蔵を出牢させ泳がせ、大滝の五郎蔵が見張る、鳥居本八幡宮の井戸端。
彦蔵が文五郎のアジトに押し入り争うところに火盗改の手入り、観念した文五郎は自首。しかし不敵な文五郎は難なく牢を破り勘兵衛の枕頭に香を上げたり牢の外に千社札貼ったりする。この行為を面白そうに笑う平蔵で幕。
「猫じゃらしの女」1990.11.28 通算35話 原作同名 6巻
伊佐次の馴染みの岡場所の女にとんだものが預けられてしまい、彼女は怖い目を見ることになる。今回ほぼその岡場所が舞台で、風俗も活写され伊三次の生い立ちも語られる。
型師の卯之吉が蝋型を渡さなかったニュアンスを少し変えてある。
ロケ地
- 監禁されていた卯之吉を助け出した粂八が赴く旗本屋敷(小高只七邸、平蔵と親交があり火盗改に便宜を図る)、相国寺大光明寺門。みよしやへ急行する甚右衛門一味が走る路地、大光明寺南塀際。
- 事後、およねに猫じゃらしを買う伊三次、北野天満宮本殿裏手に縁日を演出(原作設定、広徳寺門前)。
「盗賊二筋道」1990.12.5 通算36話 原作 「高萩の捨五郎」「寺尾の治兵衛」20巻
二つの原作を用いた話で、些か詰め込み過ぎの嫌いあり。高萩の捨五郎と平蔵の機微はよく描けているが、五郎蔵と寺尾の治兵衛の描写が短く急ぎすぎ。勿体無い。
ロケ地
- 平蔵と彦十がゆく請地村(現・向島)の秋葉大権現は今宮神社参道〜東門。
- 旗本に小便をかけ無礼討ちにされかかる子を捨五郎が助けに入る隅田川堤、大覚寺大沢池堤。
- お縄になった篭滝の太次郎の配下・仁吉が盗賊とツナギは大覚寺護摩堂前および大沢池南堤(遠景に心経宝塔)。
- 治兵衛の娘に金を届けに旅立つ捨五郎と五郎蔵、山室堤か(現在の浄化センター裏手?)。
「本門寺暮雪」1990.12.19 通算37話 原作同名 9巻
名も明らかでない凄腕の殺し屋「凄い奴」と対決の鬼平、緊張感溢れる一作。「凄い奴」は平蔵の剣弟・井関録之助がかつて上方で関わった香具師の元締・名幡の利兵衛の手下で、利兵衛と対峙する五郎蔵のシーンも緊迫感に満ちている。
ロケ地
- 街道筋の堂で雨宿りの名幡の利兵衛の話を聞いてしまい追われる録之助、保津峡落合崖上。落下岩から落ちるが途中に引っ掛かる。
- 細井家へ見舞いに赴く平蔵、うさ忠を伴い行く三田付近の寺町、妙心寺塔頭道。
- 「凄い奴」を窺っている録之助を見る済海寺、妙心寺法堂。
- 二本榎の細井邸へ入る平蔵、「凄い奴」が細井邸を窺う国昌寺、相国寺鐘楼。
- 細井邸から出る録之助を尾ける「凄い奴」、高輪付近の描写は大沢池〜大覚寺五社明神〜放生池堤。
- 対決の場となる池上本門寺、粟生光明寺石段。中ほどに犬と出会う茶店セット。殺陣は石段上部で。
「女賊」1991.1.23 通算38話 原作同名 5巻
盗めを退いた瀬音の小兵衛の倅・幸太郎が毒婦の盗賊・猿渡のお千代に引っ掛かり道を踏み外しかけるのを救い上げる平蔵の人情話。
ロケ地
- 東海道岡部宿で平穏の日々を送る小兵衛の元へやって来るかつての手下・福住の千蔵、摩気橋左岸たもと〜橋上、橋はまだ木製。
- 江戸へ出た小兵衛がおまさとツナぐ浅草寺境内、大覚寺聖天堂。
- 幸太郎が立ち尽くす牛天神下の井筒屋前、今宮神社参道。
- 猿渡のお千代に呼び出された幸太郎の駕籠がゆく道、大覚寺放生池堤〜望雲亭(上野池ノ端の出合茶屋・菱屋)。
- 盗みの手立てがついたあと幸太郎が押し込められるお千代の手下の用心棒を飼ってある根岸のアジト、中山邸門。ここに討ちこむ鬼平、殺陣は下鴨神社河合社前〜池跡。
- ラストの小兵衛と幸太郎の邂逅、摩気橋。
「四度目の女房」1991.1.30 通算39話 原作・他作品 「にっぽん怪盗伝/四度目の女房」
にっぽん怪盗伝を原作に持つ一作、火盗改より盗賊にウェイトはこのためか。
鬼平の密偵たちにも判らぬ巧妙な盗めで大金を持ってゆく盗賊が現れる。見分に入った際偶然うさ忠が引っ掛けた袖を引くと窓の格子がばらっと外れ、細工をした大工の名が浮かぶが、既に姿をくらました後。平蔵は大工の女房を根気良く張らせるが、一年も経ってついに現れたその男は頭を刺し自分も子分たちに膾にされ死んでしまう。
こう書いてしまうと単純だが、大工の女房・おふさを軸に別のドラマが展開する。
亭主にベタ惚れのおふさは一夜岡場所に行って帰らぬだけで自害しようとし傷跡が首に残っている。亭主の伊之松もこれに深く情を掛けるが盗めのため姿をくらます。こののち残されたおふさはたつきのため高級娼婦となるが、それでも亭主を思い同じ客を取らぬという態度を貫く。
尾張で高名な頭領の下で働き「仕事」をする伊之松、或る日仲間の仁吉から思い遂げられず殺してしまった女の話を聞く、その女の首にあったという傷、彼らの頭がその女を奸計に嵌めた当の本人と聞いた伊之松はその場で仁吉を殺し江戸に走るのだった。
ロケ地
- 仁吉がおふさを襲う上野山内・屏風坂、大覚寺心経宝塔前〜護摩堂。
- おふさを追い詰め首を絞める青竜院裏の森、大覚寺天神島。原作では青竜院の森の大銀杏の下に腐乱死体が見つかり伊之松はそこで自死を遂げることになっているが別人のもので仁吉の放言とある。また本作でもおふさは死んでおらず亭主の帰りを待つふうに描かれている。
「雨乞い庄右衛門」1991.2.6 通算40話 原作同名 7巻
老いて病を得、死期間近の大盗、お定まりに裏切る情婦と手下。よくあるストーリィ、原作も小味な一作を重厚な画で見せる秀作。まるで歌舞伎の舞台を見るような庄右衛門の立ち居振る舞いが、裏切った手下を皆殺しのラストの大立ち回りに収斂してゆく見事な展開。これにモチーフとなる足踏み水車の映像が被さり、些か足らぬ気味の尺も気にならず。
ロケ地
- 三島宿手前の街道筋で老農夫が漕ぐ足踏み水車のシーン、摩気の民家。
*三島・小田原・藤沢と重ねてゆく道中にも重厚なドラマ挿まれ、終焉へと止揚してゆく展開、ラストの盗っ人宿での大立ち回りで燃え尽き事切れる庄右衛門の脳裏に去来する「みずぐるま」の画の見事さ、シリーズ中でも最上の部類に入る。
「密告」1991.2.13 通算41話 原作同名 11巻
女からの文によるタレコミで伏屋の紋蔵一味をお縄にする平蔵。その面持ちは深川で無頼の日々を送っていた頃の旧知・横山小平太に酷似。これに弄ばれ痛めつけられた娘あり、「本所の銕」は小平太に鉄槌を下し落とし前をつけさせた経緯があった。その娘・お百は小平太の子を産み、転変のすえ盗っ人の女房となりその息子は凶盗・紋蔵と成り果てていたのだった。
悪態をつく紋蔵に父は自分だと偽り断罪しようとする鬼平の気迫に落ちた紋蔵の口からお百の居所知れ、踏み込むが逃げた一味を殺し果てているのが発見される。お百が自死に用いた珊瑚の簪は平蔵が贈ったものだった。
ロケ地
- お百が働いていた深川平野町の陽岳寺門前茶屋・車屋、今宮神社門前茶屋・かざりや。
- 身籠ったお百が小平太に突き落とされる真土山聖天、不明。
- 押上村の竹薮で小平太の腕へしおり落とし前をつけさせる銕、鳥居本八幡宮広場。
- 上総の飯野へ後妻にゆくお百のシーンの水辺、桂川か。
- お百のアジトの浅草今戸長昌寺門前茶屋、萱葺き民家(その前に映る山際の寺は不明)。
*平蔵を思い江戸での盗めを嫌ったお百、火盗改長官になったばかりの平蔵と出会った際、簪を覚えているかと問うたやりとりが物悲しい。即答できずようやく思い出すふうの平蔵、思いの丈と質の違いがよく表現されている。
「夜狐」1991.2.20 通算42話 原作・他作品 「殺しの掟」
事もあろうに鬼平を呼び込もうとして捻り上げられた阿呆烏(ポン引き)の弥吉は侍が殺される現場を目撃し、下手な詮索をかました末知り合いの易者の尻馬に乗り恐喝に加担。侍は大身旗本・近藤監物の跡取り息子で、裏には実子を後継者と企む後妻がいた。不名誉な死に様を見た平蔵は内聞に済ませようとするが、好人物の近藤を更に苦しめる結果が待っていた。
ロケ地
- 弥吉が平蔵にイイ娘がいると声をかける、大覚寺五社明神。
- 吉原帰りのうさ忠が近藤の息子の死体を発見する、大覚寺放生池堤。
- 近藤監物邸、相国寺大光明寺(門、石庭)。
- 易者・井坂浪人が金を持ってこさせる目黒不動の森、下鴨神社糺の森泉川畔〜池跡。駆けつける鬼平が騎馬でゆくのは馬場。
「霧の朝」1991.2.7 通算43話 原作同名 19巻
よく鬼平の用を努めてくれる下っ引の桶富の養子・幸太郎が拐される。養子に貰う際仲介してくれた医師にたびだび返してくれと懇願の実の親が事に及んだかと思いきや、桶富が捕えて磔刑台に送った盗っ人のおんなの逆恨み。しかしさらわれた幸太郎が盗っ人のアジトではたかれているのを実親が見てしまい、助けに入ろうとして捕われる始末。たまたま江戸に帰って来ていた井関録之助が介入し賊は一網打尽となるが、幸太郎はどさくさに実親が連れて行ってしまい行方知れずに。一月あまりの逃亡生活を経て新たに孕んだことを知った実親から、幸太郎は桶富の家に帰される仕儀となる。
霧の立ち込める朝帰って来た幸太郎を抱く桶富の女房・おろくは怒ろうてして怒れない複雑な心持ちを抱く、微妙な心情がよく映像化されている。また、これを見届ける鬼平は追捕を命じず見逃すのだった。
ロケ地
- さらわれた幸太郎を探すおろく、罧原堤下汀。
- 生みの親が取り戻しに来たのだと平蔵に告げるおろく、大覚寺大沢池畔。
- 品川・八ツ山下の荒れ小屋に帰着し、入り込んでいる吉造を見る井関録之助、化野念仏寺。
- 深川・霊厳寺門前茶屋の小女が桶富へ脅迫状を届ける道筋、大覚寺放生池堤。
- 霊厳寺、金戒光明寺三門・石段・塔頭道・寺務所(茶店セット)。
- 録之助が幸太郎をさらった賊の女を追い詰める、大覚寺護摩堂。
- おろくが幸太郎の帰還を願い雨の中お百度を踏む、鳥居本八幡宮。
「白と黒」1991.3.6 通算44話 原作同名 8巻
過日鬼平が腕を斬るも逃した門原の重兵衛一味の翻筋斗(もんどり)の亀五郎は潜伏するが、或る日賭場で声を掛けられた女に誘われ、もう一人の若い女と三人のウハウハ生活に入る。下女泥までして亀五郎に尽くす女たちは実は姉妹で、門原の重兵衛の盗っ人宿を差配した老爺の娘たち。亀五郎が手中にした盗み金・千両が目当てだった。
下女泥の線と亀五郎の線から動く火盗改、アジトに踏み込んで平蔵が見たものは女たちにまんまとやられて縛られ金をすっかり奪われた男の姿だった。
ロケ地
- 門原一味召し捕りの際平蔵が亀五郎に逃げられてしまう高輪台町・国昌寺、下鴨神社河合社前。
- 下女泥にやられた深川の菓子屋・船橋屋の番頭に聞き込みのうさ忠、北野天満宮本殿裏〜楼門前(茶店セット)。
- 巣鴨村西善寺近くの亀五郎のアジト付近、大覚寺五社明神。
- 賭場に現れた亀五郎を尾行の沢田同心と粂八、まかれ見失う、相国寺大光明寺。粂八が亀五郎に斬りかかられるのは南塀前。
*原作とは亀五郎が捕まるくだりが些か異なる。その代わり下女泥姉妹が活写され、喜び勇んで千両を大八で運んでゆく(このとき出役の平蔵とすれ違い)姿や、牢内の姉妹のふてぶてしくも笑いを誘う明るさなどが見所となる。
「春の淡雪」1991.3.13 通算45話 原作同名 21巻
与力・天野が形容した「遠い空から降ってきた生き物」の同心・大島は平蔵の危惧通り迷い道へ踏み込んでゆく。使っていた密偵に借金の枷から悪事に引き込まれ、大盗・池田屋五平の娘をさらい脅すというところまで行ってしまう大島、腹心の密偵・おまさや五郎蔵の働きで平蔵は事件の核心を掴み踏み込む。最後はおかしらの前で自刃し介錯を頼む大島。事後猫殿の鰯のなめろうを待つ平蔵の見る窓外の春の淡雪で幕。
ロケ地
- 大島が先陣を任される野の小屋、いずこかの砕石場か、バックに滝も見える。
- 平蔵が強請りの浪人の片耳を斬りおとす芝・西の久保八幡宮、今宮神社東門内側石橋上。
- おまさが平蔵に大島の密偵が怪しいと報告、大原野神社参道脇の蔵の前。
- おまさと五郎蔵がつなぎ笛で誘い出す清松のアジトの千束池、大原野神社鯉沢池(睡蓮がびっしり)。
- 人質交換の目黒の一本杉、上賀茂神社渉渓園のスダジイ。
「下段の剣」1991.3.20 通算46話 原作同名 7巻
坪井道場へやって来た剣客の下段の剣に心惹かれる鬼平の息子、風体を聞いて正体に気付く平蔵。その剣客は「本所の銕」が盗っ人の片棒を担ぐのを諌めてくれた剣の先輩だった。
その男・松岡重兵衛は昔馴染みの盗賊におつとめの助力を要請され、山城屋の押し込みを手伝うが一味に加わった錠前はずしが鬼畜で金を盗ったあと裏切る。乱闘のなか斬られてしまう松岡、忸怩たる思いで調書仕上げた平蔵は庭に出て息子と立ち会う。その木刀の構えは「下段」だった。
ロケ地
- 下段の剣の研究をする辰蔵、大覚寺五社明神。
- 松岡が斬られる水辺、広沢池東岸。
「熱海みやげの宝もの」1991.3.27 通算47話SP 原作同名 13巻
事後、密偵となる馬蕗の利平治との出会いを描く一作。
熱海へ夫婦で湯治の鬼平、彦十とおまさも伴う。ここで、彦十の昔馴染みである利平治と出会う。彼は高窓のおかしらを亡くしたあと、若頭に連絡を取るべく江戸への道中で、高窓一味を乗っ取った一派の手下に張り付かれていた。事情を知った平蔵は介入を決め動く。
火盗改の鼻を明かそうとする小田原奉行、高窓乗っ取りの高橋九十郎の暗躍が描かれ、程ケ谷宿手前の権太坂で鬼平と高橋の大立ち回りが行われる。
その場で利平治を解放し見逃してやる平蔵だが、一月後若頭を亡くした利平治は役宅に出頭してくるのだった。
*利平治にいかりや長介、嘗役という微妙な役柄を好演。彦十との絡みもたっぷりと尺を取り細やかに描かれる。はじめ盗賊の頭という設定で利平治に接する鬼平、闊達で鷹揚な人柄に徐々に惹かれてゆく利平治の変化も見もの。ゆえに原作では書かれている火盗改長官であることを名乗るシーン省かれても納得。*今回とってつけたように出てくる猫殿はおむすび講釈、珍しい佐嶋与力のお茶目と併せて長編の息抜き。
ロケ地
- 東海道の海のシーンはいつものような琵琶湖でなくマジ海(どこかは不明)。
- 利平治に張り付いている高橋の手下をまき小田原城下手前まで来る平蔵たち、早川畔で二手に別れるのは保津峡落合河口。
- 小田原奉行所(長屋門)と続きの土塀、民家長屋門、民家塀南西角。
- 高橋一味のアジトの寺、犬飼天満宮前天神橋と山王寺。
- ラス立ちの権太坂、谷山林道(手前の東海道にも使用)。
→鬼平犯科帳視聴メモ表紙
|