ロケ地抄録
七人みさき 2000.8.12、C.A.L/松竹
御行の又市登場シーンの山道、谷山林道切り通し。
女の生首が流れてくる、桂川松尾橋付近。
るいの死体上がり妹のかなが取り縋り掻きくどく河原、松尾橋付近の焼肉河原。
又市と右近が雨宿りする破れ寺、大覚寺聖天堂。
るいの野辺送り、嵯峨酵素河川敷、背後に左岸側の山。
百介らがこの地の言い伝えと七人みさきの検証をする、伏見稲荷。
妊娠中の右近の妻が惨殺され薦にくるんで吊るされる橋、中ノ島橋。
御燈の小右衛門がおぎんの腕を締め上げる竹林、わらびの里。
大手門前の橋に灯る鬼火、彦根城。
桔梗と小右衛門が対決する火の円陣、大覚寺心経宝塔前の広場。
又市、藩士らに御札貼り付け失神させる、大覚寺五大堂脇。
殿の死を見た後家老が放心して歩く汀、沢ノ池東岸。小右衛門と合い討ち。仰向けに池に倒れた小右衛門を無数の白い手が水中に引き込んでゆく。
ラスト、旅立つおぎんのゆく街道、嵐山自転車道。百介が世に不思議なしと述懐する京の街を俯瞰する峠、谷山林道。
このCGおおはやりのご時世にこの凝りまくった画の数々。合成でもなさそうな不思議な効果、原作者の趣味もてんこ盛りの、どの角度からも○の珠玉作。
隠神たぬき 2000、C.A.L/松竹
満月の夜、石仏群のなかをゆく御行の又市、化野念仏寺。各個に灯がともされてありスモークが焚かれる。木々は紅葉。
一条戻橋に辻斬りの出た翌朝、能楽師・市村松之輔の京の宿、血のついた面が見つかる、大覚寺明智陣屋〜粟生光明寺。辻斬りの話載せた瓦版が売られている縁日をゆく又市、おぎんがおみくじを売っている、仁和寺・御室桜の林。背後に塔。
乾同心が入ってゆく京都西町奉行所、大覚寺明智門。市村への疑義申し立て聞かぬ上役に怒り十手返上、阿波にゆくと告げる、阿波のイメージに渦潮。
孫・ていを連れ散歩に来る宿屋の隠居・芝右衛門、上御霊神社。高倉には地獄絵が掲げられている。孫に地獄の話や賽の河原の話する芝右衛門、地獄のイメージ映像が挿入される。
母の里帰りに伴われるおてい、帰途辻斬りに遭い母・下女とともに惨殺される、粟生光明寺薬井門付近の紅葉道(参道石段の南)。脇の林の中から乾同心と百介が見ている。
捜査も打ち切られ悄然と孫と来た宮へ来る芝右衛門、高倉下で歌を詠む老人(事触れの治平)と会い「積みたる石を」の句に涙する。治平との会話で心の平安の糸口見出した芝右衛門は治平を宿に伴う。上御霊神社・高倉〜本殿〜楼門。
その夜、市村屋敷の松之輔の寝所に出る妖かし、八百八狸の長・隠神行部の落胤を隠しているだろうと詰問、障子には化野の石仏が大写しに。
治平と釣りにゆく芝右衛門、放生池堤。背後の大沢池には家鴨が二羽。
ご落胤・長二郎の付き人・藤左衛門が「辻斬り」に膾にされる竹林、わらびの里?
薪能の舞台、大覚寺心経宝塔前。同刻、御行開始。手下を始末したあと長二に幻術かけ能舞台の上へ。狂乱の長二の頭上から鐘が落下、それが割れて現れたのは狸の死体。長二本体は隠れていた黒子姿の治平に密殺される、大覚寺五大堂観月台下。
芝右衛門狸の墓、大沢池天神島の大木の根方。百介の決め台詞は大沢池をバックに。ED、又市がゆく石段、粟生光明寺山門付近。
赤面ゑびす 2000、C.A.L/松竹
冬の荒波、汀をゆく御行の又市、間人海岸。打ち上げられた舟に放心した女とミイラ。
江戸の街角、呑馬術披露している算盤の徳次郎、北町同心・田所新兵衛にからまれ馬を呑んでみせろと言われめくらましにかける。火野正平の口のアップ変じて寒々しい水辺に。同心は褌一丁のすっぽんぽんでくしゃみする、広沢池(水なし)。
目隠しをされ依頼人のいる座敷に連れて行かれる又市と徳次郎、放心した女に幻術かける。徳次郎の算盤が鳴り時計の音響くなか女の記憶がフラッシュバック、戎の顔・島・村人・荒れた海。島影は竹生島。女は「戎島、赤面ゑびす」と呟き死亡。
戎島の資料持ってくる百介、大津市西教寺本堂前。話しながら墓地をゆく三人、西教寺墓地。
百介がゆく松林の浜、近江舞子。沖に島影、竹生島。雪の浜から戎島を見る百介、海津大崎付近から竹生島を。このあと盗賊の逃亡に巻き込まれ海へ。ほうほうの態で島に「歩き着いた」百介の見たものは戎島を支配する異常な領主・甲兵衛。歩き着いた百介は客人、流れ着いた盗賊は自分の私物として扱い残酷な行為を繰り広げる。島の住民たちは無表情で従うばかり。この狂乱ぶりを本田博太郎が余人にはできぬ怪演。独特の台詞まわし、殊に百介が甲兵衛の振舞を分析し「これは逆差別だ」と呟くくだりで廊下の柱を着物の裾まくってらったらったらーと踊り回るところなどは本田博太郎が演るからこそ画になる。
戎島の対岸の小屋で今後を話す又市とおぎん、徳次郎が入ってくる。実は徳次郎は戎島出身、育ての寺の和尚に話を聞きにゆく。和尚は海の中の道のことを語る、海津大崎の浜。和尚役に笑福亭松之助。
粗相をした下女が顔を赤く塗られ死体となって捨てられる、鳥居本八幡宮。その後も繰り返される甲兵衛の奇行に絶望の百介が佇む谷、清滝川。そこへ鈴の音、又市ら登場。
狂乱極まった甲兵衛、自分の子を宿した女まで殺してしまう。これが徳次郎の生き別れの妹、徳は弔い料と言って金を置く。
算盤をはじき島を巡る徳次郎(ピンクとサックスの仕置衣装が可愛い)、ゑびすの顔が赤く変わる。巨大な赤ゑびす見てますます狂乱の甲兵衛、屋敷を飛び出し祠に駆け込む、鳥居本八幡宮。祠の中でマグリット風の幻影見たうえ島人たちに取り囲まれ遂に発狂する甲兵衛。
ラスト、川にどぼんとぼんと大石投げ込み不貞腐れている徳次郎、百介の決め台詞、保津峡落合・清滝川河口部。
ED、おぎんがゆく松林の浜、近江舞子。又市がゆく浜、間人海岸。
福神ながし 2000.9.15、C.A.L/松竹
又市らの福乃屋への仕掛け、陰陽師に見破られる。その後又市が襲撃される、大沢池木戸〜有栖川掘割の中。
陰陽師・洲斎の武蔵晴明社、曼珠院下の鷺森神社。「箱」のことを話しながらゆく又市と百介、仁和寺中門。
洲斎のもとへやってきて妻女を殺したのは自分だと嘯く風見一学、心底を見透かされ憤然と立ち去る、蚕の社の三つ鳥居。夜、風見に呼び出されるおぎん、南禅寺三門。自分に洲斎の妻殺しを依頼したのは叶屋だと告げる。
御行に加わる洲斎、騒ぎのなかすたすたと奥座敷に入り「箱」を持ち出す。おぎんが父・風見と対決する武蔵晴明社参道、日吉大社東本宮参道。箱を川に流す洲斎と又市、木津河原。流す前に中を見るとミニチュアの生きた福助が入っている(荒俣宏)。
ED、流れ橋をゆく又市、セピア処理。
チームとしての御行もしっくり固まり、毎回首魁の回りにいる奇妙なカラーの戎島奉公会や七福神などのビジュアルもハマりノっている頂点で、たった四回で終わってしまったことが惜しい。だらだら続けないっていうのも見識だけど。京極堂の出演もなかなかだったし。水木御大と宮部みゆきが出ていたのは笑った。大沢在昌氏の岡っ引の鮫の入れ墨や百介が版元に持ち込む大部の戯作「姑獲鳥ナ夏」には笑い転げた。一話の魍魎の函のビジュアル化にも感心させられた。又市のレーザーポインターにもびっくり。
★参考図書 京極夏彦「怪」 巷説百物語のすべて 発行/角川書店 ISBN4-04-883618-8