暴れん坊将軍

第9シリーズ 1998-1999テレビ朝日/東映

二条城内濠キャスト
徳川吉宗(徳田新之助)/松平健 大岡忠相/田村亮 隼人(庭番)/大森貴人 皐月(庭番)/東風平千香 宍戸官兵衛(じい、-15話)/高島忠夫 有馬彦右衛門(じい、16話-)/名古屋章 め組の長次郎/山本譲二 おぶん/生稲晃子 お凛/松金よね子 花川戸の辰五郎/北島三郎

め組に長次郎の姉で産婆のお凛が出戻り、女お庭番が皐月に代わる。第8シリーズの鶴姫の設定はクリアされ、上様は独身。OPでは懐かしのお城脱出ネタが展開される。


第1話「遊郭に仕掛けられた罠 吉宗VS闇将軍

 大盗・雲霧仁左衛門が江戸の町を荒らし回る。なぜかいつもタイミングよく現場に駆けつける火盗改は果たしてグル、雲霧の偽物を「逮捕」し忠相を追い落とすつもりの火盗長官と、闇将軍になりおおせる腹の盗人。そして吉宗に激しい憎悪を抱く雲霧には哀れな過去があった。

 ロケ地、芝浜の親戚に身を寄せていた上様の乳母、間人海岸か。雲霧と火盗長官が大仕事を終え、吉原の楼でとんでもない野望をブチ上げているところへ正義の扇、室内から移動しての立ち回りは吉田神社竹中稲荷(本殿、舞殿)。上様と雲霧の一騎打ちは宇治川中州・橘橋へスイッチ(橋たもとに塀をセットし鳥居と祠をあしらってある)。ラスト逍遥の庭、二条城清流園
*幼馴染「仁吉」の雲霧に永島敏行、火盗長官の大榎に立川三貴。
*福ちゃん二態、産婆のお凛と事を構える大榎の馬まわりにいるお供の侍と、芝浜で新さんを襲う雲霧一味の浪人。ラス立ちには不在。


第2話「狙われた女の園 消えた五千両の謎

 仕事をクビになったと言えず、朝には家を出るもののふらふら彷徨いコソ泥をしていた大工が巻き込まれる騒動。盗っ人の隠した金を見つけて有頂天になるも束の間、当の賊に脅され使い走りを強要されてしまう。

 ロケ地、小梅清涼庵、中山邸通用門、塀。朝家を出た大工の鶴吉がほっつき歩く道、大覚寺放生池堤有栖川(向島まで来てしまう段)。捕り方に追われた賊が金箱を隠した清涼庵の井戸がある清涼庵裏手、不明(井戸は作り物、門は唐破風つき)。賊が鶴吉に千両箱を引き上げるよう脅す、大沢池堤。金を引き上げたあと鶴吉が始末されかかる水辺、広沢池北岸(生き埋め用の穴が掘ってある)。事後、女房に更正を誓う鶴吉のくだり、一家で赴く縁日は大覚寺心経宝塔前にセット。茶店で彼らを見ていたお由利の方と新さんが帰る道、放生池堤


第3話「私の子を返して!さらわれた妊婦たち

 磐木平藩のお家騒動、懐妊中の側室が産む子を跡目にし藩政を牛耳ろうとする江戸家老の企み。男か女か判らないじゃんと思っていると、「親に言えない子を産む女」を探してきて、お腹さまと一緒に出産させすり替えるという荒技…両方女だったらどうするつもりだったんだろう…。お産に呼ばれたお凛とおぶんが巻き込まれて大騒動、事は上様の知るところとなる。

 ロケ地、磐木平藩主の跡目について話す上様トリオ、二条城清流園。お凛らが連れ込まれる妊婦二人がいるお屋敷、中山邸(海産物問屋・陸奥屋寮)。おぶんが残した手がかりを追うめ組の衆と新さん、大覚寺大沢池堤下用水路石橋。寮外観(お凛の放火で煙上がる萱葺民家)、不明。お腹さま・妙を呼び出すお堂、御室八十八ヶ所。妙が奉行所へ走る道、上賀茂神社神事橋ならの小川(吹き矢でやられる)。事後、磐木平藩主が隠居してお腹さまの遺児である娘を育てる話をするトリオ、二条城二の丸御殿内庭。
*江戸家老の手下の吹き矢腰元、ラス立ちにも登場。上様を狙うが隼人に阻まれ、打ち返された毒矢は腰元の首に刺さるという段取り。このエピソードこそ福ちゃん本「どこかで誰かが見ていてくれる」の「こんな立ち回りはアカンがな」で、吹き矢のピンポンと称されたアレ。その福ちゃんは二態で登場、寮が使われたことで陸奥屋を南町に引っ張ってくる同心と、ラス立ちの家士。


第4話「哀れ!身売り娘を生む参勤交代

 上米の制にまつわるエピソード、困窮する勤番侍のお話を中心に、改革政策を任されるものの「改革は新しい利権の発生」と嘯く獅子身中の虫を成敗する過程を描く。

 ロケ地、酔った勤番侍とめ組の喧嘩に割って入る同じく勤番の垣見五郎太、下鴨神社糺の森池跡。参勤交代制度について非を鳴らす垣見、上賀茂神社ならの小川神事橋下手の汀。垣見の仕える角館藩上屋敷を訪ねる新さん、大覚寺大門。出府した垣見の娘が語る母の入水未遂、広沢池東岸。お凛に垣見への貸付は難しいと聞かされる新さん(お凛の副業は金貸し)梅宮大社楼門越しに舞殿。コソ泥をしに行った先で金にまつわる殺しを見て追っかけられた垣見が朝帰りの藩邸、妙心寺隣華院門。事後、上様トリオが談笑の庭、阪口青龍苑。垣見たちが国へ発つ道、嵐山自転車道
*朴訥な田舎侍・垣見に新克利、きょろんとした真ん丸お目目がなんとも可愛い。タイトルの身売りは垣見の娘が金策に苦しむ父を見かねて岡場所へ(未遂)。
*ラス立ち福ちゃん入り。


第5話「熱くてたまらない!将軍に惚れた若後家

 三人もの亭主に先立たれた女・お春は、身投げを止めた徳田新之助に「運命」を感じべたべたとつきまとう。辟易しながらも可愛いヤツとか思ってる将軍は、貸付金の行方がキナ臭くて大忙し。この件にからんで、お春の亭主が暗殺されたという無理矢理っぽい設定がついている。

 ロケ地、欄干を越えて身投げ寸前のお春を抱きとめる新さん、中ノ島橋(もがいて二人でドボン)。火を焚いて衣を乾かす小屋、広沢池東岸。掛川藩領の大井川、保津峡落合河口(護岸工事中、やる気なしの手抜き仕事)。お春の三番目の亭主について報告する忠相、上賀茂神社ならの小川畔。掛川潜入の報告を上げる隼人、茶店は神事橋たもとにセット。忠相を追っかけるお春、今宮神社境内。大井川の工事が正当に進んでいると報告のじい、二条城清流園(野点の席しつらえ)
*天然系お春に石野真子、舞い上がり方がハンパでない。もう、欄干乗り越える際ののそーっとした動きからして笑える。抱きつく押し倒すの果て、映画村日本橋の上で「雨に歌えば」ノリ?のダンシング。最後にまだやるかの、忠相にも「運命」を感じて追っ掛けにかかるのがしつこくもおかしい。あたふた逃げる田村亮の足取りも見もの。
*貸付金を半分も懐に入れる掛川藩留守居役に中田浩二、グルの辰巳屋(お春の亭主を殺して成り上がる元番頭)に曽根晴美、家来には福ちゃんもいて悪役陣コテコテ。


第6話「だまされた男 芸者の吐息に仕掛けられた罠

 札差の一本化政策が打ち出され、肝煎になりたい堺屋は人望厚い伊勢屋を陥れにかかる。狙われたのは伊勢屋の放蕩息子、手口は美人局。バックには勘定奉行を狙う旗本、これが追い使うのは赤柄組なる愚連隊。馬鹿でも可愛い息子のために奔走した挙句伊勢屋は落命、新さんは通夜の席から成敗に出てゆく。

 ロケ地、花川戸の辰五郎宅から伊勢屋の娘・お絹を送ってゆく新さん、板倉修理介から妾奉公の話があったことを聞く、永観堂放生池石橋(御影堂へ通じるほう、背景の橋は弁天さんへ渡る橋)。板倉邸、大覚寺大門。美人局に遭って入水を思いつく伊勢屋の放蕩息子・宇太郎を見る新さん、中ノ島橋(夜)。宇太郎が借金証文を持ち出したことでめ組に泣きついたお絹を送ってゆく新さん、大覚寺放生池堤石橋たもとにお地蔵をセット。赤柄組が宇太郎を監禁している寺、神光院(監禁は蔵、ほかに庵や中興堂まわりも使用)
*ラス立ち福ちゃん入り。


第7話「謀略!あやつり人形にこき使われた吉宗

 め組の下っ端・千吉が巻き込まれるご落胤騒動、財政難をも顧みず藩政を壟断し私腹を肥やす江戸家老とその一派が仕組んだもので、千吉の妄想はほんとに夢なのだった。

 ロケ地、新さんに亡母の行李から出てきた短刀と印籠のことを相談する千吉、お稲荷さんと思われる神社、不明。五本松藩上屋敷、金戒光明寺永運院。城代が送り込んだ侍が斬られる坂、長安院下坂(夜)。五本松藩へ調査に向かう隼人が馬をやる街道、嵐山自転車道。藩主・淡路守は半月前に死亡と報告の皐月、神社?不明。藩邸に乗り込んでのラス立ち、室内から移動の殺陣は彦根城博物館へスイッチ。事後、跡取りの始末を報告の忠相、玄宮園竜臥橋
*千吉に三十石で召抱えられる新さん、追い出そうとする江戸家老らにこき使われ、というのがタイトルで厠掃除や三助も仰せつかる。


第8話「処刑直前!赤ん坊を産む女囚

 小伝馬町の牢にいる出産間近の女囚、赤猫による解き放ちの際め組と関わったことで知れる真実。ハメられた夫を庇い罪を着た女と、処刑までに真犯人を求めて動く夫と、命を賭けて思いあう二人を助けて皆が動く。

 ロケ地、小伝馬町牢屋敷、大覚寺明智門。賭場のあがりを持って蓬莱屋に届ける伊佐吉、法然院山門。殺されたお納戸役の調査中浮かんだ蓬莱屋のことを報告する隼人、永観堂放生池弁天島鳥居前に茶店セット。若年寄・越知土佐守邸、随心院薬医門式台玄関(ラス立ちもここ)。伊佐吉が酔ってお礼参りに行き寝込んだところを殺人犯に仕立てられる子宝稲荷、わら天神六勝大神
*伊佐吉に遠藤憲一、真面目な大工役で善人。しかし犯人を求めて遊び人を装う設定なのであんまりいつもと変わらず。遊び人の時はアイパッチを着用。女房が処刑される段、牢に駆けつけて門前で号泣の場面も。エンケン、こういう役どころが結構イイ。若年寄には内田勝正、奢侈禁止令緩和を申し立て裏で大儲けを企む。


第9話「疑惑の影 泣きぼくろの女

 多発する小町娘の誘拐、裏には密貿易でウハウハの悪徳商人がいて毛唐に斡旋。娘たちを隠すのにゴロツキの渡り中間を使い、放ったらかしの大名家の下屋敷が現場となるが、大目付の田口計が言を左右に探索を阻む。

 ロケ地、隼人に仙台藩下屋敷を探るよう命じる新さん、上賀茂神社ならの小川畔摂社脇。南町の隠密回りに追われたお蓮を「助けてしまう」新さん、上御霊神社本殿裏手。鯉に餌やり上様に渡り中間が実行犯と報告の皐月、二条城清流園。ゴロツキの渡り中間らが入る西海屋の寮、中山邸通用門。隼人の機転で阻止した誘拐の件を報告の忠相、二条城内濠端。お蓮に自分は菊さまではないと告白する新さん、大覚寺大沢池に浮かべた屋形船。一味に潜入の新さんが腕を試され、「スパイ」皐月を斬る、大沢池(池にドボン)。さらった娘たちを監禁してある宇都宮藩下屋敷、妙心寺天祥院門。事後、旅立つお蓮に弁当を差し入れ菊さまの居所を教えてやる新さん、琵琶湖西岸松原
*新さんを昔仕えた若様と誤認してベタベタのお蓮に杉田かおる、飲んだくれる場面アリ。


第10話「美人後家を守れ!弁護人になった将軍

 手の込んだ商家乗っ取り、亡くなった主の通夜に出奔していた兄が罷り出てくる。篤実と見えた番頭が糸を引いており、裏には老中までいやがる始末、お話は相続をめぐって係争のお白州が主な舞台となる。

 ロケ地、高輪北町を焼け出された被災者に炊き出しをする和泉屋夫婦、妙顕寺(三菩薩堂、本堂)。和泉屋番頭と老中が密談、大覚寺大沢池に屋形船。突然現れて相続権を主張する「兄」の探索を庭番に命じる新さん、梅宮大社神苑汀。武州・寄居で船頭をしていた「兄」の聞き込みに回る隼人、罧原堤下河原
*相続をめぐって争うお白州、公事師に老中の手が回っており悉く断られたので徳田新之助が弁護を務める運びに。この「裁判」では負け負け状態、最後は乗り込み成敗で決着。


第11話「しあわせにさせたい!仕立てられたお世継ぎ

 高家・日野家のご落胤騒動、これを利用して偽物をたて出世をはかる用人。孫でないと知っていて、「祖母」は偽者に仕立てられた幸薄い娘を孫の代わりにお姫様にしてやろうと黙すが、用人たちの非道を見て翻心→新さん登場でワル一巻の終わり。

 ロケ地、日野邸、大覚寺大門。用人の下っ端をつとめる春吉がおきみにご落胤と告げる、天神島大楠の根方。本物のご落胤の出産に立ち会った医師が消される、観月台付近(竹垣あしらい)。おきみの養父母の墓参りのあと、おくらと行く縁日、仁和寺参道。ほんとうの孫はとうに死んだと告白するおくら、化野念仏寺石仏群内陣(灯明つき)。用人らの企みを知った春吉が消されかかる、御室八十八ヶ所お堂前。小言産婆・おくらを召し出す上様、二条城清流園
*おくらはお凛の産婆のお師匠という設定、公方さまに叱言をするのが夢という元気な婆さん。日野家当主は何にも知らない善人。
*ラス立ち福ちゃん入り(家士)。


第12話「吉宗危機一髪!美しき婚約者の献身

 タイトルに危機一髪とかあっても、たいていは大したことナイのがほとんどだが、これはマジで上様がかなりヤバい目に遭うお話。相手は亀石征一郎で凶悪そのもの、徳田新之助が将軍と知ってもお構いなしで大騒動が起きるぞなんて言ってハイな状態。手下には福本先生なんかもいて、矢を射掛けられるわ銃隊は出てくるわ、挙句の果て忍者まで出て新さんを追い詰める。でも正義の鷹・雷鳴号が飛んできて助けてくれちゃったり。
舞台は八王子、狩りに出た上様は、処刑されたという散田村庄屋の息子が呆けてしまっているさまに異変の匂いを嗅ぐ。綱紀粛正と言い立て民を厳しく統制する代官は、秘密裡に隠し金山を掘っていた。

 ロケ地、八王子散田村の公儀御鷹狩場、瑞穂の造成地。散田村庄屋屋敷、民家長屋門(前景に農具小屋セット)。庄屋の倅・安兵衛の許婚者・多江を問い詰める新さん、走田神社本殿前。代官を付け狙う村の若者の回想、代官を襲うも失敗の門前、民家門前。杭を打ち測量の真似事をする安兵衛、鷹狩場に使われた野と同所、ガレ場の水脈跡なども使用。新さんが砂金を発見する川、天神川。見張りの立つ山、湖南アルプス。隠し金山の坑口、若布谷(柵セット)。金山に近づいて見つかり追っ手をかけられる新さん、追い詰められ崖落ちは保津峡落合落下岩(途中の岩につかまって中ぶらり、鷹が見つけて飛んでくる)。安兵衛と多江が磔にされる野、酵素河川敷。事後、帰途につく上様一行、渡し場と川、桂川宇津根付近か。


第13話「襲われた寝室!吉宗を狙うお姫様

 上様暗殺を企む薩摩の姫、しかし江戸家老に騙されてのことで、改易を避けてやりたい上様の温情に救われる。江戸家老が情報を遮断しているせいで出府できない薩摩藩主が傑作、ボクの代になってから密貿易ヤメたのにー、と案じる殿様は峰蘭太郎だったり。

 ロケ地、野駆けの上様が薩摩の刺客に襲われる山道、不明。刺客が落としていった刀を打った刀匠・国定兼光邸、妙心寺寿聖院。薩摩藩上屋敷、隣華院。藩邸勝手口から出てくるお凛、大庫裏通用門。姫が父に宛てた文を持った忍びが家老の手先に殺される、大覚寺有栖川畔〜五社明神。薩摩藩主が謀反の疑いを解かねばと案ずる庭、不明。姫がならず者(め組の衆のお芝居)にからまれ新さんに助けられる縁日、上賀茂神社神事橋。送ってゆく道でお凛とばったり、ならの小川畔。その後姫のリクエストで赴く海、琵琶湖西岸松原
*江戸家老に黒部進、ゴツいからどこかイイ人そうに見えちゃう。ラス立ち福ちゃん入り。
*大奥で寝ている上様を狙っての毒薬垂らし、オウムが騒いで未遂に。ああいう鳥がいる部屋で寝ているのか上様。


第14話「どんどん好きになっていく!将軍に惚れた女

 身重の女を助けた新さん、責任とってよ状態の女にせがまれ腹の子の父親芝居に付き合わされる。ところが女の家は江戸きっての材木商で、普請奉行と組んで悪さをしていた。お話は、タイトル通りの女心の変遷と、欲深普請奉行の悪行を描く。

 ロケ地、安産祈願のお札を貰いにゆく浅草寺イメージに仁和寺五重塔。新さんを好きになってゆくのが怖いと泣く女、夕陽の河原不明。
*注目は、小沢象演じる、女の父・材木商の甲州屋。お腹の子の父としてやってきた新さんに思いっきりエラソーにするし、普請奉行に賄賂使って談合してるあたりはいつも通りのワルなんだけど、娘の芝居に付き合ってくれた新さんが将軍と鋭く気付き恐れ入って改心→南町へ全てぶちまけにゆく道で暗殺。こういう小沢象はかなり珍しいかも。


第15話「潜入!吉宗の生母 小石川養生所の謎

 誰もが褒めちぎる医師が実は悪人というお話、しかし上には更に極悪人、典医に強烈な毒薬を作らせ藩侯の命を狙う江戸家老がいた。若君を籠絡するため奥方を阿片漬けにするエピソードもあり、薬を抜くのに「御生母」中村玉緒が大活躍。

 ロケ地、小梅清涼庵へ向かう新さん、大覚寺放生池堤。清涼庵、中山邸通用門。由利の方手作りの握り飯を頬張る新さん、大覚寺大沢池南堤下汀(養生所から出されたというヨタヨタ老人が堤道を通る→怒ったお由利の方養生所へ潜入)。養生所薬草園、および篠田道庵の籠る「薬物研鑽所」、不明(八丁堀の七人や天罰屋でも使っているところ)。西条藩主が参勤交代で出府の東海道(三島宿手前)木津堤。養生所の青年医師が殺されたことで庭番に調査を命じる新さん、大覚寺五社明神。篠田医師について報告を受ける新さん、木島神社本殿前。
*玉緒ちゃん、例の「グフフフ」笑いをやるが、決める場面ではいつも通りのカタい「お由利の方」。


第16話「大奥の改革 上様、お恨みいたします!

 大奥大改革を打ち出す上様、甘い汁を吸っていた向きは猛然と反発し、様々な策謀を仕掛けてくる。お話は、改革に際し大奥を出された女たちの一人・志乃を中心に進む。

 ロケ地、大奥総取締・浦瀬が御広敷役人の弟と巻き返しについて話す庭、不明(滝組の上に四阿)。城を下がる志乃を呼び止め迫る浦瀬の弟・源之丞、二条城本丸西虎口。志乃の実家・野坂家、妙心寺衡梅院門。め組で会った新さんと、将軍を思い出しながらゆく志乃、罧原堤下河原。釣りの新さんに大奥を出された女たちのスキャンダルを書き立てる瓦版屋について報告する隼人、梅宮大社神苑(志乃の父・野坂が同じく釣りにやってくる)。志乃が源之丞に拉致される植込みの路地、不明。大奥を出されたため「縊死した」女・琴路殺害の実態・回想シーン、大覚寺五社明神裏手(首にロープを掛ける一人は内陣から乗り出し)。さらわれた志乃と丹波屋殺しの証拠品の印籠交換場所の鮫洲原、琵琶湖西岸の湖成三角州。事後、日本一の殿方に恋をして幸せだったと新さんに語る志乃、二尊院紅葉の馬場
*お暇を出される場面で昏倒の志乃、上様は彼女を抱きかかえて部屋に連れてゆくが、これで志乃は将軍に惚れてしまう。これはイイんだけど、ラスト、思い出にするからぎゅっと抱きしめてと言われた新さん、志乃の肩を鷲掴み…相撲とってるんじゃないんだから。
*ラス立ち福ちゃん入り。峰蘭太郎もいるが、この直前に大岡さまの配下で出ていて笑える。
*この回で「じい」が名古屋章にスイッチ。


第17話「乙女の叫び 私の命をさしあげます!

 手下の犯した非道を恥じ、足を洗って遺児の娘を守り育ててきた盗賊の首領は、生きていたその兄が仕出かした殺しに際会し、彼の罪をもかぶろうとする。しかし思いは空しく、盗っ人の一味になっていた「兄」は、賊と結託していた寺社奉行の手にかかってしまい、妹とまみゆることなく散るのだった。

 ロケ地、賊を追う捕り方、決まって足取りが消える雑司ヶ谷の寺社地、金戒光明寺石段〜永雲院下坂〜永雲院。賊を匿う瑞雲院(和尚は小峰さん)青蓮院長屋門(大楠越し)
*前非を悔い「捕えられた」兄・庄三は寺社方に引き渡された段で密殺されるというひっでぇ展開、庄三はどちらにせよ罪に服さねばならないので、こういうケースでは「死」が用意されていることもよくあるが、付き添いの南町同心はカワイソ過ぎ、峰蘭太郎演じるこれをぶっすり殺るのは寺社奉行の家来の福ちゃん。


第18話「哀切愁々 母子合わせ鏡

 榛名藩のお家騒動、藩主の信頼厚い御舎弟は公金横領の城代を糾そうと動くがしてやられ、謀反人にされてしまう。もちろん新さんは正義の味方なので窮地に陥った御舎弟を助けて動くが、彼の身の上は卑母と引き離されて育ったという誰かと同じもので、お由利の方も出てしんみり情話が展開される。

 ロケ地、め組の衆とハイキングの新さん、斬りあいを見る水辺、沢ノ池東岸。怪我人を運び込む現場近くの小梅清涼庵、中山邸(門、参道)。この襲撃犯を追った隼人が潜む橋、大覚寺勅使門橋下。彼らが入る榛名藩上屋敷、大門。清涼庵の近くに住む「御舎弟」の生母宅、民家門越しに母屋。兄藩主の駕籠に訴えてでる御舎弟、随心院裏土塀。
*ラス立ち福ちゃん/峰蘭太郎入り。


第19話「江戸壊滅の危機!すい星激突の恐怖

 ときどき魂の抜けるようなトンデモをカマしてくれて好き者にはたまらない暴将、わけても必見の怪作がコレ。お話自体は通常パターン、裏に尾張がいて江戸の町を混乱に陥れ吉宗失脚をはかるネタなのだが、「混乱」のもとの彗星の描きかたがトンデモ。箒星ネタは初期シリーズでもやっていて、思い切りちゃちい書割で大いに笑わせてくれたものだが、本作はCG?を駆使したリアル系で青い地球も映し出される。何度も挿まれる燃ゆる箒星は怪しの尾を曳き、遂に日野在にどどーんと落ちるが、もうスケールがヘンで抱腹もの…あれじゃセカンドインパクト起きて世界中ヤバい。落ちる野が一瞬映し出されるが、これがまたアリゾナの荒野みたいで見る者を混乱させる。上がる炎もガソリンまるだしで、このへんのいい加減さもすごい…けして馬鹿にしているのではなく、機会あらば是非見るべき痛快作と言いたいのである。

 ロケ地、将軍のお召しで長崎から出てくる市井の天文学者・西川如見一行がゆく汀、琵琶湖西岸(新さんが待っている茶店は松原に仕立て)。如見のプレゼンつきで行う世直し天狗党のアジテーション、仁和寺金堂前。娘をタテに脅される如見、経蔵。日野宿はずれ・大和田村から人々を避難させ、橋上から彗星落下を見るめ組の衆、流れ橋(彗星は城陽市方向に落下、もちろん画面は合成)
*天然系の学者は笹野高史。陰謀の主の若年寄は西沢利明。ラス立ち開始後真っ先に斬りかかってくる手下に福ちゃん、このほか峰蘭さん傑作な二態。
*彗星のほか、上様ご自慢の司天台も凄くて特大渾天儀なんかあって派手。初めに彗星を発見するのは上様で、毎晩天体観測している模様。


第20話「燃え上る恋の炎(ほむら)!出世を捨てた若大名

 新見藩主・関但馬守は殖産に力を入れ産業を興す有能な若者、上様も特に目をかけ外様から譜代へと格上げをはかるほど。この件で移封話が出て、産品の鉄で銃を密造していた江戸家老は藩主を密殺し国替えを潰そうと暗躍。しかし当の藩主はというと有能さもどこへやら、恋に目がくらみ、姿を消した腰元を追って逐電する始末。上様は悪者を成敗してやるほか、腰元をお姫様に仕立てて結婚を世話するという大甘ぶりを見せる。

 ロケ地、但馬守が藩領視察のイメージ、谷山林道分岐道崖上。腰元の長屋を訪ね口説こうとする但馬守、ここは危ないと腰元が連れてゆく神社、大原野神社参道際の蔵と祠群。刺客たちが入る備中屋の寮、不明(民家か)。ラスト、庭を散策の上様トリオ、二条城二の丸御殿に姫路城天守を合成。
*福ちゃん、江戸家老の手下の新見藩士。藩主をつけ狙う刺客で劇中呼称は猿渡、クレジットはあるものの役名記述なし。


第21話「仮面の男 父上に会わせて!少女の悲痛な訴え

 水口藩家老が両替商と組んで偽金つくり、藩主は監禁され偽者を据えてあるというトンデモで、忠義づらをして偽金の被害者として届け出たりする周到さ。しかし、偽者役に半年も拘束されている浪人の妻子が街頭に出て必死に行方を捜す姿が新さんの目にとまり、悪企みはバレてしまう。

 ロケ地、夫の似顔を見せて消息を求める中井浪人の妻子、仁和寺手水場(周囲に屋台などあしらい)。中井の居場所を知っていると言う浪人に拉致されかかる妻子、九所明神。浪人たちを追い使う侍を尾行する庭番、大覚寺大沢池木戸大門(水口藩上屋敷)。偽金工房を逃げ出したかざり職人が走る掘割、有栖川河床。彼の死体が発見される川辺、中ノ島橋下手河原(女房が駆けつけるのは橋上)。偽金工房のある辰巳屋向島寮、中山邸通用門。中井一家を見送る新さん、嵐山東公園並木。
*タイトルの「仮面」は監禁中の藩主につけられているもので、つくりはジェイソンというかオペラ座の怪人というか、およそ江戸時代らしからぬ珍妙なもの。
*福ちゃん二態、藩士と用心棒の浪人。あまり間を置かず出てくるのがおかしい。


第22話「壮絶!三河士魂 養父の仇を討つ吉宗

 お凛のお節介で養子の口を紹介されてしまう新さん、連れて行かれた旗本の家にキナ臭い匂いを嗅ぎ入り込むことに。公金横領で切腹したというその家の長子は果たして冤罪のうえ密殺されており、恋人だった女郎は命を賭して無実の証拠をつかみ、死の際に嫁と認められ涙のうちに逝く。新さんは頑固親父とひととき家族として過ごし、実父とは持てなかった時間を楽しむが、親父が息子の無念を晴らしに勘定奉行邸に乗り込み壮絶に散ったのを見て、「父の仇」と峰を返しワルを斬って捨てるのだった。

 ロケ地、養子先の河野家を訪ねてきた花魁を追いかけて事情を聞く新さん、妙心寺玉鳳院前路地。調子よく入り込んだ「養子」のことを愚痴りながら同僚と出勤する河野十内、金戒光明寺永運院下坂。頑固親父と和気藹々の新さん、金戒光明寺石段三門、釣りは渡月橋下手中州岸(この間碧巌録の唱和がBGMに)。河野家で拭き掃除中の新さんを見て怒髪天のじいを連れ出し話す、妙心寺大庫裏脇路地。勘定奉行の密談を立ち聞きし、息子は潔白だったと知り息をつく十内、金戒光明寺善教院脇坂。花魁・朝顔が宴席で得た勘定奉行の二重帳簿を弟に託す、山室堤道。事後、じいと河野家のその後を話す上様、二条城内濠端。
*頑固親父に神山繁、碧巌録で意気投合がおかしい。
*ラス立ち福ちゃん入り。


第23話「山茶花の誓い 再会した兄は別人!?

 女たちが夢中になる聖天上人は大騙りの偽物、寺社奉行と組んだ破戒僧が、貧から抜け出したい青年僧を利用し追い使っていた。悪企みは、故郷に残した妹の出現と上様の慈悲によって青年僧が脱落し潰える。

 ロケ地、寄進を断りに行った大黒屋が土左ヱ門で上がる大川、嵐峡船着。兄を探しに来たと話すおたみ、南禅寺三門。聖天上人のいる関東十八檀林・浄光院、鹿王院(中門、庫裏、式台玄関、客殿廊下)。おたみが泊まったお堂、大覚寺護摩堂(話しながら歩くくだりで大沢池池底をゆくシーンがある。もちろん水は無し)。おたみの回想、村の子に苛められる妹を庇う兄、摩気橋たもと、河原。出家し妹と別れ旅立つ兄、摩気神社本殿。兄に追いすがる幼いおたみ、本殿裏手谷地田脇地道(誓いの山茶花が生えている)。隼人に羽黒山調査を命じる新さん、大覚寺天神島。羽黒山を山伏姿で走る隼人、琴滝。聖天上人を訪ね兄かと問うた帰り、おたみを襲う山伏たち、大覚寺五社明神。寺社奉行・神谷土佐守邸、大門。聖天上人を召し、吹上庭で話す上様、二条城清流園(山茶花の陰におたみを連れて来ている)。破戒僧・運慶の回想、本物の聖天上人を突き落とした崖、保津峡落合落下岩。大黒屋の死体を捨てた橋、中ノ島橋。おたみをさらう山伏、大覚寺五社明神。神谷邸乗り込み後のラス立ち、セットから大門へスイッチ、参道石橋も使う。ラスト庭で物思う上様、二条城清流園(南望のショット)


第24話「涙の上州路 誉れの仇討ち

 女衒から娘らを救ったことから、新さんは飢饉続きで難渋というその故郷・倉賀野へ。道中知り合った旅の一座の太夫もそこの出で、名主の父を郡代ぐるみの謀略により亡くしていた。

 ロケ地、上州さして中山道をゆく新さん、山室堤道(スタックした旅の一座の荷車を助ける)。岩鼻代官所、民家長屋門。女衒から助けた娘らの村を見にゆくくだりのイメージ、美山町民家群(空撮)。娘らが野良に出る畑地、不明。
*一座との関わりで新さんおちゃらけシーン多数、騙されて女風呂に入ったり、芝居の助っ人で大狒々の着ぐるみかぶったりで庭番も呆れかえり。
*福ちゃん代官所の役人。


第25話「牢獄炎上!暗闇に咲く地獄花

 阿片の探索のためワルの根城に潜入という無茶をやる上様、全然中毒者に見えなくて正体バレバレ、監禁されてしまう。また、旧友がヤバい橋を渡っていることを案じ嗅ぎ回った長次郎も同じく罠にはまり、二人は同じ牢の秘密部屋で焼き殺されかかるが、元町火消しの「男の友情」が危難を救う。

 ロケ地、重阿弥に伝馬町牢屋敷の地下にあるアジトへ連れ込まれる新さん、船でゆく掘割は嵐山公園中州湛水域(セットにつなげて、堀の石垣のひとつが秘密の入口という趣向、設定は小伝馬町牢屋敷そばの神田堀か)。アジトから阿片を運び出した船が町方に囲まれる、渡月小橋(橋は桁の下部がちらっと映り、橋南詰めの降り口と右岸河川敷を効果的に用いる)。ラスト逍遥の庭、二条城清流園
*大ワルは、黒幕のはずの老中もビビる、怪しの衣装をまとった正体不明の男・重阿弥。阿片密売で得た金を大名貸しに使い、暴利を貪るだけでなく鉱山開発権まで毟り取る悪辣さ。乱暴でねちっこいこのワルを演じるは立川三貴、狂気を孕んだ丸い目を剥いて熱演。手下の牢名主は山本昌平で、これもかなりコワい。
*娘を阿片で廃人にされ、怒りに燃えて探索に励む南町同心に峰蘭太郎、被害者ぶりもなかなか。


第26話「消えた香炉 正直三姉弟の災難

 紀州藩乗っ取りの陰謀、勅使接待で披露しなきゃならない香炉を掠め取り、婿の留守居役を重職にとはかる豪商が黒幕。企みの最中に香炉は下屋敷近くの百姓娘の手に渡り、この娘がひと儲けを企むもんだから、すったもんだの大騒動に。

 ロケ地、紀州家下屋敷から香炉を運び出す行列を襲う浪士らが駆け渡る橋、保津小橋。藩士らとチャンバラの河原は桂川(保津小橋付近ではなくもう少し上手の竹の河畔林がある礫の多い河原、川中も使用。詳細特定には至らず)。新さんに香炉を売りつけようと絵を見せるお杏、上御霊神社本殿裏手。中渋谷村のお杏の家、萱葺民家。香炉のことで川浚えなどと騒ぐ紀州家上屋敷の庭、不明(上様がやってきて茶室に招かれる。芝地に亭がある)。大坂屋寮、民家長屋門。弟を賭場から連れ帰るお杏が通る塀際、民家塀。ラスト逍遥の庭、坂口か。
*新さんと再度会い香炉を売る約束のお杏を襲う浪人の一人に福ちゃん、皐月にカラーボール投げられて着物黄色の粉まみれ。
*家老の外山高士、珍しくワルでなくハメられる側。紀州藩主は伊庭剛。


第27話「宿命の絆 わが子に一目逢いたい!

 妙なほど子供に親切な蕎麦屋の親爺、神隠しに遭った息子を探して旅の果て江戸へ流れ着いていた。その子が今回の紛争の当事者というご都合主義的展開なるも、蕎麦屋夫婦に山本学と赤座美代子を配してあって充分に感動的。ワルの作事奉行が川合伸旺なのもよい記号。

 ロケ地、目安箱に訴状を入れようとして阻まれ斬られる作事奉行配下の侍、広沢池東岸(水無)。その息子・右近がやっきになって犯人捜しをしていると話す新さんと忠相、茶店は大覚寺心経宝塔前にセット。蕎麦屋夫婦が息子を求めて旅ゆく道、大沢池堤(紅葉)広沢池東岸(干上がった池底を干潟に見立てて、富士山を合成)。作事奉行に賄賂を渡す木曽屋、夜の大沢池に屋形船。グルの目付が長次郎に迫られて船で逃げる、罧原堤下桂川(船のうしろに竹筒、隼人が潜水して尾行という設定、潜りシーンはプール)。右近の婚約者をさらう芝居に乗せられるお凛、上御霊神社本殿、境内。騙して呼び出しの要町の絵馬堂、高倉。さらうのは本殿裏手。新さんが蕎麦屋に右近が息子であると話す、罧原堤下河原。ラスト、顛末を語る上様トリオが逍遥の庭、二条城内濠端。


第28話「江戸城大揺れ!!吉宗ついに結婚か…

 初期シリーズでもやった「竹姫」ばなし、あの頃は女ごころをイマイチ解さぬ朴念仁だった上様も、今回は熱く燃え上がる。珍しく天英院なんかも出てきて、相も変わらず不行跡の元幕閣が悪さを仕掛けてくる。

 ロケ地、冒頭め組とお参りのほか、竹姫とデートの浅草寺、嵯峨清凉寺(本堂と境内を使用、本物の浅草寺の山門と塔の上部をイメージに持ってきてある)。竹姫の住む西の丸御殿、姫路城西の丸二条城二の丸御殿(イメージカット)。市中へ出てきた竹姫を出迎える新さん、梅宮大社神苑。天英院に竹姫との間柄が大叔母として真っ向から反対され苦悩に立ち尽くす上様、二条城清流園。偽手紙で呼び出された竹姫が拉致される外桜田地蔵堂、大覚寺天神島朱橋護摩堂


第29話「消えた密書!くの一が愛した男

 揺れる岩槻藩、藩主と甥が諍いとされるが、実のところは藩政を壟断し民の生き血を吸う悪家老の所業で、放埓と聞こえた甥は殖産に明るい有能な青年。しかし彼は政策を悉く家老に阻まれ、世捨て人のように過ごしていた。タイトル通り、甥の屋敷に女中として入り込んだお庭番・皐月が立場を半ば逸脱し励ますお話がある。

 ロケ地、暗殺された侍の遺品を届けに岩槻へ向かうめ組の衆、山室堤道(堤降り口中ほどに茶店あしらい、このほか河畔林切れ目部分や堤内地の道なども他の場面で使われる)。岩槻城下、宿を窺う侍にカマをかけてやりあう新さん、嵐山公園中州河川敷(取り戻した書付を川に落として流してしまう。慌てる上様が可愛い)。心中の母子を止める、中ノ島橋。岩槻城へ入る「不妊治療」お凛の駕籠、知恩院黒門道。流れ着いた文を拾う漁師、罧原堤下汀。百姓たちに藩主の甥・嘉信の評判を聞きこむ皐月、民家門前。藩札交換に関して騒いだ民が磔にされる刑場、酵素河川敷(公儀諸国見回役・徳田新之助とか吹いて処刑に待ったをかける)。期待する百姓や励ます梢から逃げて釣りの嘉信、大覚寺放生池堤(皐月と新さんは護摩堂前から様子を窺う)。嘉信邸襲撃の藩士と斬り結ぶ隼人、望雲亭脇・有栖川畔の小径
*藩主の甥に大橋吾郎、ナイーブなインテリ青年がお似合い。悪家老は南原宏治、グルの大目付は曽根晴美。
*嘉信に思い切り肩入れの皐月、庇って矢を受けラス立ちは腕吊って戦う。
*刑場の役人に小峰さんと福ちゃん、福ちゃんはラス立ちにもいる。ラス立ちでは目付方として入ってきているので、上様は裃姿。肩衣を抜きつつ立ち回り。


第30話「旗本屋敷の秘密!罠に落ちた子連れ医者

 お凛が昔憎からず思っていた医師志望の男は、未だに雀医者。博打のカタに引き受けた仕事は、旗本屋敷の賭場で痛めつけられた富商の倅を延命させるやばいヤマ、しかし新さんの助けで窮地を脱した男は、持ち前の本草の知識で難しいケースの妊婦を救い、やっと道が開けることになる。

 ロケ地、蔵で賭場を開帳する旗本寄合席・大野邸、相国寺林光院。ヤクザにボコられた若旦那たちを治療していた医師が辞めたいと申し出た直後暗殺される辻、相国寺湯屋前。お凛に団子を奢る新さん、茶店は大覚寺大沢池船着(大)に手すりやベンチに日傘をセット。ここから五社明神にお参りの雀医者・与一呂を見かける趣向。医師として雇われた与一呂が入ってゆく大野邸裏口、随心院土塀。ボコった挙句死に至らしめた富商の息子を検分するグルの南町同心、大覚寺放生池堤石橋たもと。与一呂の娘と話すお凛、吉田神社竹中稲荷本殿。逃げようとした与一呂がヤクザに囲まれるのは舞殿脇。これを見ため組の衆が新さんに注進に及ぶ石段、宗忠神社参道。妊婦の解熱薬を求めて今戸の農家へ走る与一呂、罧原堤下河原
*与一呂に蛭子能収、頼りないダメ男を好演、薬を求めて必死で走る姿はよい画。
*賭場を仕切るヤクザの手下に福ちゃん。


第31話「頑固爺いが一目惚れ!襲われた蛇の目傘の女

 幕閣が八人も暗殺される事態、じいも襲われる。空いたポストを売る、若年寄・目付・奥祐筆がタッグを組んでの悪企み、道具に使われた無役の若い旗本たちは結局消されるという悲劇。その一人は、じいの老いらくの恋の相手の弟だった。

 ロケ地、雨宿りのじいがお吟の鼻緒をすげてやる門、不明。お散歩のじいとお吟が次のデートの約束をする、上賀茂神社神事橋とたもと。辻斬りについて報告する隼人、大覚寺聖天堂。お吟に弟の辻斬りを指摘する新さん、二尊院紅葉の馬場。父母の墓の前で弟を糾すお吟、二尊院墓地
*じいのお相手に小川知子、ワルの首魁に元お庭番・宮内洋。
*恋破れたじいを慰労する席で、辰五郎とどっちが先に後添えをという話が出て、辰五郎が妻を亡くしている設定が明らかに。


第32話「母なればこそ 椿の花は知っていた

 寺社奉行大検使と凶賊が組んでの悪事、押し込み先の絵図面目当てで一味に引き込まれた大工の青年の悲劇を描く。

 ロケ地、大検使にナシを通したあと賊のアジトに踏み込むももぬけの殻、大覚寺聖天堂(外観のみ、すぐセットにスイッチ)。大工の清次が恋人の芸者に別れを切り出される、梅宮大社神苑(後段、清次の母が「椿」を切っているのも同所の中島)。清次の母・お浜が息子の不在を繕うためお凛をたばかる二本松の絵馬堂、大覚寺五社明神舞殿(扉と壁をデコレーション)。15年前大川で溺れたお浜を助けた凶賊・おぼろの藤兵衛、大沢池か。事後、出家したお浜と話す新さん、二尊院紅葉の馬場。清次の墓、二尊院墓地
*グレた息子を手にかける悲劇の母に松原智恵子。
*福ちゃん二態、藤兵衛一味の賊と、ラス立ちの家士。


第33話「辻斬り必殺剣の秘密!?幻の御前試合

 四年前の御前試合の決勝で負けた男、運命は坂を転げ落ち浪々の果て辻斬りに成り果てるも夢見た再びの栄光は、奸計に絡めとられ儚く散る。藩を退転するに至った上意討ちそのものが江戸家老のどら息子の穴埋めで、以降その手助けをしているに過ぎないのであった。上様が剣士を憐れみ死の際に掛けた言葉は、彼に幻の御前試合を見せてやることになる。

 ロケ地、因業金貸しを「天誅」の現場に居合わせた忠相が柳瀬と刃を交える、随心院土塀。四年前の御前試合の回想、二条城二の丸広場。柳瀬が「公金使い込み」の同僚を討つ、妙心寺涅槃堂前路地。柳瀬が御前試合で負けた大石の屋敷、衡梅院門。大石の妻女が柳瀬に負けてくれるよう頼み込む、仁和寺九所明神。御前試合の場で大石の妻子がフラッシュバックし隙を見せてしまう柳瀬、妻子のゆく小径は仁和寺金堂を背景の坂。事後、庭を逍遥の上様トリオ、二条城清流園
*今回の「カーン」は変則、江戸家老親子にたばかられ膾となって倒れている柳瀬を抱き起こして「余の顔見忘れたか」。柳瀬の脳内で「カーン」が鳴って、死の際にある彼は御前試合の勝者が与えられる、上様との立会いを幻視して眠りにつくという趣向。
*柳瀬浪人をしゃぶり尽くす家老の馬鹿息子に草川祐馬、恰幅いいので凶悪なお坊ちゃまにぴったり。


第34話「女お庭番の涙 怪盗夜がらすの正体は?

 世を騒がす賊の一味に元紀州家お庭番、彼らと親しかった皐月と隼人の苦悩が描かれる。賊と成り果てた理由が身内の横車と知った上様が差し伸べた手は、今一歩で届かず悲劇となる。

 ロケ地、掏摸を締め上げた隼人、被害者が旧知の紀州家お庭番仲間のおゆうと知る、仁和寺観音堂脇。おゆうの夫で同じく紀州家お庭番だった才蔵と歩き話の皐月、今宮神社東門〜境内。吉宗の後を継いだ紀州候に言い寄られ逃げるおゆうと才蔵、保津峡落合河口(渡渉)御室八十八ヶ所御堂(おゆう流産)酵素河川敷(おゆうの治療費のため普請場で働く才蔵)。上様が夜鴉の仁兵衛の手配書を見て才蔵の働く淀屋と確認、二条城清流園。隼人と皐月が才蔵を説得の宮、今宮神社合祀摂社前。才蔵の墓、沢ノ池東岸汀。
*元お庭番が恩人と仰ぐ盗賊は北町奉行に上がりを掠められている設定、掟を守る筋目正しい賊で逃亡のおり同心を殺めたことで嫌気がさす運び。
*冒頭、夜鴉一味の庭番に殺されてしまう同心付きの岡っ引・佃の喜八に福ちゃん、呼子吹く姿が可愛い。


第35話「大岡越前失脚!?誘拐された恋女房

 忠相を失脚させ自分が南町奉行にと狙う悪党は作事奉行、実弟の材木商や縁戚の下僚と組んで鬼面の賊を演出・実行。仲間の捕縛で秘密が漏れるのを恐れた一味は、忠相の情を衝こうとしておぶんを誘拐する。

 ロケ地、忠相に辞任はダメと釘を刺す上様、二条城内濠端。芳しくない隼人の報告を受ける庭、清流園
*伏線もちゃんと引いてあるけど、おぶんが居所を知らせるため監禁場所から花火を打ち上げるというのは…無理ありすぎ。夜叉面の仲間のフリして囚人を逃がす上様、そのかっこのまま立ち回り、でも途中で次の間に消え通常スタイルにお色直し。


第36話「悪徳商法をつぶせ!二人の父を持つ若女房

 取り込み詐欺多発、思いきり怪しい安売り店は果たして騙し取ったブツを捌いていた。勘定奉行とグルの悪のディスカウント店「安売り大将」のあるじに小沢象、こいつが捨てた娘を辰五郎が養育という情話もあるが、見せ場は騙りをハメる上様チーム総動員の、ターゲットの薬種問屋になりすましての大芝居。

 ロケ地、騙りに関する庭番の報告を受ける新さん、上賀茂神社ならの小川神事橋たもとに茶店をセット。ディスカウンター・角屋が勘定奉行らと密談の屋形船、広沢池北東岸(団体施設の萱葺民家映り込み)。勘定奉行・村上邸、法然院山門。事後、芝居の件でじいがぶちぶち愚痴たれ、二条城清流園


第37話「悪妻教育指南!ニセ将軍になった吉宗

 新さんが夜釣りで知り合った太公望は小藩の殿様、加賀前田家から迎えた気位の高い奥方に辟易する彼に手を貸すことに。辰五郎プランで「ニセ吉宗」として奥方や加賀派家臣を諌めにいった行為は、隣藩の老中が領地を併呑しようとする悪企みに利用されかかったり。

 ロケ地、夜釣りの新さんと長次郎にアドバイスの志摩守、大覚寺天神島朱橋たもとの池端。信濃岩村藩上屋敷、大門(裏門は不明)。隼人が志摩守襲撃犯について報告、二条城内濠端(このあと船で濠に漕ぎ出す)。岩村藩の内情について協議の上様トリオ、清流園(ラスト逍遥も同所)。二十歳過ぎまで庶民の間で育ったと身の上を話す志摩守、上賀茂神社ならの小川(川に魚とりの子供たちをあしらい)。老中・本多伊勢守邸(福山藩上屋敷)妙心寺隣華院
*志摩守に赤塚真人、気の弱い恐妻家を好演。老中は亀石征一郎、だんだん怖さを増す凶相が傑作、志摩守夫妻を心中仕立てで殺そうとするが興奮のあまり首を刎ねてしまえと喚いたり…そんな心中はないだろ…。


第38話「天下取りの野望!吉宗VS宗春 涙の対決

 吉宗が市中徘徊の情報を得て、過激な手段に出てくる尾張。一方、年のせいか情に脆くなり昔芸者に生ませた子を探させる宗春は、芝の蕎麦屋の養女となっているその娘が「徳田新之助」を兄と慕うさまを見る。江戸を火の海にして混乱に乗じ吉宗を殺ると息巻く側近は、宗春に計画を却下され、娘の存在が殿を日和らせたと激し殺めてしまうのだった。

 ロケ地、名古屋城天守、本物。庭で「恒例行事」の、吉宗と書いた紙を巻きつけた藁づとを両断する宗春、彦根城玄宮園芝地(幔幕の向こうに天守)。市ヶ谷の尾張上屋敷、大覚寺大門(門越しに式台玄関も見えるクレーンショットあり)。尾張忍者が新さんを襲撃、放生池堤大沢池(失敗後船で大沢池を逃亡)。尾張忍者を尾行する隼人、有栖川河床(川端を忍者が走る)。千載一遇の好機を逃したと江戸家老に話す宗春の側近・星野織部、彦根城博物館(隼人が潜むのは堀端の木)。星野のことと宗春の隠し子のことを報告の隼人、大覚寺天神島。ご落胤のことなどに構っている場合でないと主君に迫る織部、彦根城玄宮園橋上、池端。母の墓参の美和、二尊院墓地(宗春来るが父とは名乗らず後日を期し去る)。寺を出る宗春、織部に吉宗殺害の好機と迫られるが止める、勅使門(唐門)。茶店で新さんにあれは誰と聞く美和、弁財天堂前に床机。
*上様から美和の亡骸を受け取った宗春、はたはたと落涙…これは西岡徳馬で正解、中尾彬のままだと凶悪すぎてこういう絵にならないかも。でも宗春だから、上様に側近を成敗されて黙っていないのでサシの真剣勝負を申し入れという無茶な運びに。
*上様は万年青年なのに、宗春だけ年とってる設定がお約束とはいえ笑える。暴将のこういうノーテンキさが大好き。


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