銭形平次 296〜321話

仁和寺水掛不動キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おゆき/永野裕紀子 お勝/武田禎子
為吉/神戸瓢介
万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
樋口一平/永田光男

 →銭形平次表紙


第296話「初手柄娘岡ッ引」1972.1.5 35

 年老いた目明しが捕われの賊を逃がす失態、娘はお上の冷たさに憤慨し仲間を語らって捜査に当る。なにしろ凶悪な相手なので人質になってしまったりするが、解決は彼女の働きとする平次、駆けつけた老父に縄尻を渡し手柄を譲るのだった。

 ロケ地、仲間の鳥追い女を始末した血刀を洗う賊に立ち向かうお清たち、広沢池東岸(漁具あしらい。平次のお説教は堤の並木)
*お清に大川栄子。平次にも剣突を食わせるお転婆。


第297話「盗ッ人の涙」1972.1.12 35

 三年前犯した盗みを深く反省し生きてきた左官の棟梁、そっくり返すつもりで貯めた金を狙う元の仲間、また盗まれた先で勤めをしくじり浪々の身に妻子を亡くした男と、それぞれの思惑が交錯する展開。娘を救いに入り刺された棟梁が差し出しお縄を乞うたた血塗れの手は、力なく落ちる。

 ロケ地、左官の棟梁・政蔵が浪人に襲われる夜道、金戒光明寺東坂下石垣際〜極楽橋。政蔵の娘がさらわれ、金持って来いと指定の下谷満願寺、金戒光明寺石段・鐘楼(浪人が飛び出してくるのは長安院下坂側から)。上総屋へ乗り込み政蔵に口を割らせると番所を飛び出し走ってゆく浪人、娘の無事を祈り水垢離をとる政蔵を見る神社、木島神社(水垢離は元糺の池、浪人と平次が見遣るのは舞殿脇)。旗本屋敷から逃げたルートを調べ、可能か船頭に聞き込みに行く大川端、嵐峡(嵐山は紅葉)。十手を持たず政蔵を諄々と説く平次、吉田神社竹中稲荷(三高碑への石段、舞殿脇)。船頭の徳松がさらった娘を隠している霊岸島の船小屋、上賀茂神社ならの小川に船と漁具をあしらい船着きとし、奈良社北神饌所にライトが当っている(船小屋内部はセット)
*政蔵に水島道太郎、徳松は穂積隆信、浪人は尾上鯉之助。


第298話「女房関白」1972.1.19 35

 番頭あがりの婿養子で恐妻家の京屋の主、その割には客の芸者にべたべたしたり、挙句は茶屋女に手を出し美人局に遭う始末。この脇の甘い男と、愛する我が子とお店を守るため女将がとった奇策を解き明かすのが主題のお話。事件解決後、もう一枚打たれていた布石が「生身」で出てきて、悪い癖を出しかけていたやもめの亭主はけちょんけちょん。

 ロケ地、成田参詣から急遽戻ってきた京屋の坊が襲われる街道、北嵯峨農地竹林際。
*婿養子は玉川良一、女将は姫ゆり子でラストに出てくる遠縁の女と二役。小憎たらしい小僧は雷門ケン坊、美人局のワルは黒部進。本家の大旦那に雇われ坊を襲うチンピラの一人に福ちゃん、潜んでいた親分たちに石ぶつけられ腕ひしがれて散々な目に。


第299話「一度死んだ女」1972.1.26 35

 化粧っ気もなくDV亭主に虐げられるだけの日々を送る棒手振り女、或る日その亭主が殺され彼女が捕縛されるが、平次は僅かな手がかりから真実に迫ってゆく。

 ロケ地、駕籠舁きを聞き込み、亭主が殺された晩女が賭場へ行ったことを突き止める平次、今宮神社東門前に駕籠溜り(門と一和の間に葭簀張り)。女房の回想、死んだと思った心中相手と賭場の男の手引きで再会した神社、今宮神社稲荷社前。賭場を張る一家の三下(情報リークで口封じ)が死体で見つかる川端、大覚寺勅使門橋たもと・御殿川畔。賭場の親分を引っ掛けに行く文吉、下鴨神社河合社裏手の糺の森
*己を苛み早く恋しい人のもとへ行きたいと生きてきた女に真屋順子、事後はんなりと装った姿になるのがいじらしい。心中相手だった元大店の若旦那で今は渡世人の文吉に中野誠也。五百両の富籤を当てるもそれが元で殺されるDV亭主に汐路章、ヤクザの親分は加賀邦男。*女が一枚だけ隠していた晴れ着が謎解きのきっかけ、この伏線に平次夫婦の痴話喧嘩が挿まれている。


第300話「島破り」1972.2.2 35

 寄場を脱走した囚人が立て籠もった先で発覚する奇縁。浅蜊売りの老爺と囚人の青年が親子と知る、潜入した平次。ぎりぎりの切所で甦る血の絆が涙を誘う。

 ロケ地、浅蜊売りの老爺が棲む寺、不明(立て籠もりは蔵設定のお堂、前に短い階あり脇に回廊らしき構造物)
*老爺は北村英三、息子は高橋長英。


第301話「城を出た女」1972.2.9 35

 大奥出入りの袋物問屋が罠にはまり、御側室の不興を買い遠島に。とばっちりで暇を出された腰元は恩ある桔梗屋のため命を賭して動き、平次や樋口さまもまた職分を越え奔走する。

 ロケ地、お蓮の方が墓参の相国寺、相国寺林光院(相国寺と書いた表札、桔梗屋はそうこくじと発音)。江戸城イメージ、姫路城天守。父の墓に参る波津江をチンピラが襲う、金戒光明寺本堂裏手墓地
*波津江に葉山葉子、平次や波津江の行動を粋に黙認する上役に御木本伸介。お勝さんが波津江のお供で腰元に化ける一幕も。平次に「キンキラキンの御殿女中みたいな格好」で出たと怪しまれる。


第302話「ある絆」1972.2.16 35

 大店の嫁に望まれ幸福の絶頂にいた娘だが、父の過去が黒い影を落とす。しかし娘の年齢と調べ書きを突き合せた平次は、父親の前身のほかにも隠されていた真実に行き当たり、娘の縁談を復してやる。

 ロケ地、仕事を強要した賊一味のもとへ赴く佐平をつけた平次が浪人に襲われる森、下鴨神社糺の森。佐平を捕まえシメる凶賊・疾風の銀三郎、河合社裏手。一味を取り逃したあと佐平にはもっと大きな秘密がと呟く平次、河合社前
*佐平に島田正吾、お絹に八木孝子、銀三郎は戸浦六宏。*万七親分、番所でのんびりお茶啜り壺坂霊験記を唸る太平楽で今回も平次のおこぼれを狙ったり相変わらずだが、佐平に縄をかけられず「殺生だよぉ」なんて場面も。


第303話「洲崎弁天横丁」1972.2.23 35

 大店の婿養子に納まった男は、出先で幼馴染の愛しい女が苦界に沈んだ姿を見る。そのとき彼らから五年の月日は消え去り、哀しくも美しい純愛が戻ってくる。

 ロケ地、「誘拐された」弥之助の身代金引渡しに指定の芝・増上寺、永観堂御影堂前。お加代にお咎めなしの裁きを聞き平次らが出てくる南町奉行所、大覚寺大門
*お加代に赤座美代子、蓮っ葉な酌婦の純情な内面を好演。品川の旅籠の欲深主は藤尾純、とって代わろうとする悪党の用心棒に小林勝彦。*家付き娘の言動にハナっから眉を顰めていた親分、亭主の心配より暖簾を先に気に掛けるのを見てキツい一言。


第304話「恋と十手」1972.3.1 35

 女を使い狙った先の男を誑かし荒稼ぎの賊、八五郎がまんまと誘いに乗ってしまう。舞い上がった分萎れる八だが、女には事情があり人のよい八を騙したことを悔いていたのが救い。

 ロケ地、一味が狙う旗本屋敷、相国寺林光院(門のほか、賊が捕り方に囲まれるくだりでは前庭も使用)。その屋敷の家来と会う一味の女、鐘楼裏手の碑脇。去る女を追ってゆく平次、弁天社前。逃げたおたきが入水しかけるのを止める八、中ノ島橋
*おたきに渋沢詩子、彼女の幼馴染の旗本の家来に北原隆、いたちの藤兵ヱに須藤健。*賊の手口には、誑かした男に戸を開けさせるのと留守宅にさせそこから侵入るのと二つのパターン、八がやられたのは後者で命は取られずに済むが十手持ちの面目丸潰れ、平次にも迷惑が及びかける。


第305話「夜の終り」1972.3.8 24

 大赦で八丈から帰ってきた男は、自分の女が弟と所帯を持っているのを知るが堪え、世間の冷たさにも耐えあくまで更生をはかる。しかし昔の仲間が彼の錠前破りの腕を欲し、弟夫婦をタテに迫るのだった。

 ロケ地、賊の浪人一味に追われ舌を噛む娘、下鴨神社河合社脇〜河合社前摂社玉垣内。大赦の御赦免船が着く霊岸島御番所、琵琶湖西岸(石垣の船着)。駕籠を襲う辻斬り浪人たち、下鴨神社河合社脇。来合わせた八が追うも丑松に邪魔されるのは河合社前の鳥居。賊一味が笠間藩邸へ押し込む「想像」シーン、神光院西門。普請場もクビになり川辺に佇む直次郎に誘いをかける丑松、日吉大社走井橋の上と下。直次郎の弟をさらった一味を追う八、駕籠を追う道と隠れ家床下へ侵入する石垣、不明。弟をタテに直次郎を呼び出す不忍池、大覚寺五社明神(水面映らず)
*直次郎に寺田農、弟に柴田p彦、「弟の女房」に北林早苗、酒肆親爺に永井柳次郎、賊の首領は五味竜太郎で森章二の顔も見える。*タイトルは魔手から逃れ再出発する直次郎を嘉した親分の言葉。「弟夫婦」は直次郎が永代橋から送られたことで帰還はないものと諦めていた設定。直次郎につっけんどんな酒肆の親爺は自分も島帰りで、最後に情を見せる。*為さん「男やもめ」発言あり。


第306話「隅田さわぎ」1972.3.15 36

 抜け荷摘発のお話、調査のすえ怪しい回船問屋に揺さぶりをかけ追い詰めてゆく。悪党一味に誘い込まれる貧しい浪人は清廉な人柄で、女子供を助けるため入り込むという挿話をからめ人情話に仕立ててある。

 ロケ地、抜け荷一味に狙われる川改番所、琵琶湖畔か(石積護岸に灯台と小屋あしらい)。十時浪人が働く普請場、琵琶湖西岸(対岸の山なみや岬・河口州の見え方から近江白浜か鴨川河口付近と推測される。砂浜と松原)。ちゃんが殺されると泣く坊に困り果てる八、大覚寺天神島祠脇(八が人さらいでないと判り詫びる姉が坊を座らせるのは嵯峨帝歌碑)。平戸屋から帰る姉弟を送ってゆく八が坊をおぶい渡る橋、不明。
*亡妻の遺言を守り息子を育てる心正しき浪人・十時(ととき)七郎太に大山勝己、ラス立ちではアクロバティックな迫力ある殺陣を披露。


第307話「びいどろを吹く女」1972.3.22 36

 御用達になることを渇仰する富商の内幕を描くお話。脇目もふらず商いに精を出す女房を諌めるため若主人が打った大芝居は、欲深い者の悪心を呼び覚ましてしまう。

 ロケ地、密告状通りに襲われる松前屋夫婦、相国寺境内か。襲撃犯を泳がせ突き止めるアジト、神光院中興堂
*タイトルの女は若旦那の従兄弟の厄介者、たらし髪に呆けた態度で吹くポッペンがハナっから怪しさ満点。


第308話「稲荷の鈴」1972.3.29 36

 同じ牢にいた囚人に娘への伝言を託された渡世人、彼が義理を果たす過程に奇縁悪縁入り乱れ、謎だった言づては親分が解いてみせる。

 ロケ地、久蔵の言づてを伝えに赴いた三次郎が立ち寄る深川八幡裏の屋台、御香宮本殿脇、藤八が追っかけてきて儲け話に乗せろと言うのは高倉前。伝法院一家と喧嘩はごこんさん境内か。三次郎がお近の「子守唄」を聞く水辺、大覚寺放生池堤。平次とお近らが出生を記した鈴を取りに行く袖擦稲荷、今宮神社稲荷社。陰ながら見ていた三次郎が宮を出て行くのは石橋東門
*三次郎に睦五郎、喧嘩沙汰で食らいこむものの筋の通った男で、伝言は謎のまま放っておけないし、世話になった女将のため証文も取り返してやるイイ奴。藤八は中田浩二でヤクザの親分は天王寺虎之助、実は大した悪党の屋台の親爺は沢村惣之助。


第309話「裏切り者」1972.4.5 36

 連続する両替商殺しを贋金つくり一味の仕業とみる平次、同じ見方をする吟味与力が囚われの贋金作り名人を囮に使う手に出るが、これにはとんだ企みが隠されていた。

 ロケ地、一味と接触した贋金作りの常次郎が平次とツナギをとる屋形船、大覚寺大沢池。金座から小判を運ぶ行列がゆく道、上賀茂神社渉渓園(林間に北神饌所が垣間見える)。その途中馬を損じたと一旦金を運び込む延命寺、神光院本堂(警護の侍が放生池の橋を渡るシーンもあり、立ち回りでは中興堂や石柱なども映り込む)
*囚人・常次郎に小池朝雄、自分を密告した者を知りたくて捜査に協力。女房と子がまともな「父」を得ているのを確認し復讐を思いとどまる。その「父」の密告者は地井武男、裏切りにトラウマを持つ心情を好演。吟味与力は川合伸旺。


第310話「死ね!八五郎」1972.4.12 24

 卍組なる賊が跋扈、夜回りの平次らはまたぞろ出現したところに遭遇するが、八が追ったほうの首領は、父母を亡くし途方に暮れていた彼の面倒を見てくれたなつかしい兄貴分。衝撃に自失し取り逃がす八、功を焦る平次のライバルがわざと逃がしたと故障を申し立て窮地に陥るが、親分は八の顔が立つよう影に徹して動くのだった。

 ロケ地、平次が捕えた賊の子分が解き放ちになり尾行する八、闇から飛んできた銭に脚を痛めた子分に肩を貸し左右吉の居所を探るくだりは御室霊場のお堂前。左右吉の妹がお参りのお不動さん、仁和寺水かけ不動尊(八と娘の会話を聞きつけ悪企みの伝次の背後に鐘楼や水場の屋形映り込み)。事後、左右吉の墓に詣でて帰りの八とお静、黒谷墓地石段。やってきた平次に妹はお構いなしと聞き駆け出しすっ転ぶ八、極楽橋上。
*左右吉に長門裕之、スラムの住民のため盗みを働く義賊。嫌味なライバル岡っ引は安部徹。*窮地の八を突き放す親分だが、裏ではフォローしまくり。また、当の左右吉まで八のためわざと捕まるお膳立て、セコい伝次まで改悛し捕り方一同ハラハラと見上げる大屋根で「卍」首領と対峙する八五郎、最後は涙の訣別。タイトルは親分が屋根で戦う八に送るエールというのも泣かせる。


第311話「さぬき屋殺し」1972.4.19 36

 自分を庇った兄貴分が辱めを受け面に傷を貰った件で起こる、のぼせた末の衝動殺人。現場にいた被害者の女房の誤認で疑われてしまった兄貴分は仕方なく身を隠すが、彼と彼の女房は平次の幼馴染だった。意地っ張りの男の顔を立て、犯人の罪を軽くするため計らう親分が泣かせる。

 ロケ地、留造が身を隠す蔵、不明(神社の一隅と思われる蔵、周囲に鳥居や朱玉垣。内外がお話に絡んでくる蔵はセット)
*犯人の板前は菅貫、兄貴分がエラいことになっているのに気付かず過ごすも、平次の策略で事実を知り出頭という経過を、気の弱そうなぽわっとした態度で演じドラマに味をつける。見せ場は磯村みどり演じる平次を頼る留造の女房、「平さん」に見返られたと恨み家へやって来て悪態をつく顔をスケッチしている親分、なに食わぬ顔が心憎い。


第312話「涙の十手」1972.4.26 36

 手掛けた事件がもとで女房を殺された岡っ引の哀話、恋女房を亡くした挙句讒訴され十手御取り上げになった男を案じる平次、親身にケアのほか悪党と対決の場面では己の十手を彼に渡す。

 ロケ地、仁吉の女房・おきたの死体が上がる大川、罧原堤下汀
*悪党が飼う用心棒は居合の名手で投げ銭も両断、二枚同時投げで立ち向かう親分、片方は斬られるが一枚は阿波地大輔の目にぐっさり。*仁吉は高城丈二、女房は御影京子。


第313話「日本一の大泥棒」1972.5.3 24

 以前出た時とは違う様態の盗みをはたらく怪盗・ねずみ、果たして偽者なのだが、大層な芝居を仕立てて本物を利用せんとした企みは自壊する。

 ロケ地、ねずみの手口を忖度するくだり、以前の犯行を回想の大名屋敷は相国寺方丈大屋根を塀越しに見たものと、大光明寺通用門(いずれもねずみマーク描かれ)。お節介な植木職人・新助の仕事場へ聞き込みにゆく平次、不明(母屋は萱葺き)。おしのに新助は香炉泥棒か問う平次、大覚寺護摩堂前。
*本物のねずみである新助は萩本欽一、同じく植木職の父を理不尽に無礼討ちされたことで大名屋敷を狙ってからかう怪盗に。偽ねずみの首領は貞淑な元御側室と見えてその実怖いおばさん、手下に千葉敏郎、宍戸大全、福本清三。


第314話「雨傘を干す女」1972.5.10 36

 永の浪人暮らしに倦んだ男は、仕官の手土産を得るためよくない仲間と組んで悪事に手を染めるが、浪人の妻は天晴れな貞女。件の書付を持って治外法権の尼寺に駆け込み、夫が道をそれるのを阻もうとする。

 ロケ地、内職の傘を干す浪人夫婦、大覚寺天神島祠脇。亡父の知人の磐木平藩江戸家老に仕官話の進捗状況を聞く神田浪人、相国寺路地か。神田の悪仲間の一人が殺されて見つかるお堂、不明(漆喰壁に小さな円窓、遠景塀越しに唐破風)。神田の妻・お柳が駆け込む根岸・弘妙寺、毘沙門堂西参道石段薬医門。お柳に事情を聞きたくて門跡の外出を待ち構え訴え出る平次、永観堂御影堂(放生池石橋たもと)。平次の情熱に折れた門跡のはからいでお柳と会い話を聞く向島菖蒲園、阪口青龍苑。夫のいる伝馬町の方向へ向けて傘を干すお柳、大覚寺天神島
*浪人は長谷川哲夫、妻女は岩崎加根子。


第315話「手裏剣小僧」1972.5.17 36

 なんとも謎な賊は実は二人いて、散りばめられた鍵を手繰り寄せてゆく親分の推理が冴える一作。情夫のため髪ふりみだし坊をタテにとったりする女が、親分の目力と己を母と呼ぶ坊に負けてしまう情話も挿まれる。
*ロケなしセット撮り。万七親分の妙な推理炸裂、一部当ってなくもないけどロジックは無茶苦茶。


第316話「母ごころ」1972.5.24 37

 牢で産んだ子を手放した母親は、陰ながら成長を見て喜びとしていたが、祝言を控えたその子が殺しの疑いで捕われるや、大芝居に打って出る。

 ロケ地、忠太郎は無実・犯人は片腕の浪人とのお秋の証言で平次らが赴く松川町の寺、宇治・興聖寺(竜宮門、境内、本堂)。忠太郎の許婚者がお百度を踏む三河町の神社、下鴨神社河合社境内。すぐ身の証が立って帰ってくると彼女に言うお秋を見ていた親分が、そんなに甘くないと言い放つのは門前。忠太郎が解き放ちになったあと、由木浪人と会うお秋を見る平次、下鴨神社参道石橋たもと。平次を襲う編笠の浪人、下鴨神社河合社裏塀際
*あいまい宿お女郎のお秋に高森和子、由木浪人に井上昭文。


第317話「中仙道地獄坂」1972.5.31 24

 隠居して信州へ引っ込んだ、平次知るべの元岡っ引がヤクザ代官つるんでの悪事にたまりかね、直訴にやって来る。彼は平次の目の前で司直の手に落ちてしまい処刑が決まるが、捨てておく筈のない親分は中仙道をとっつぁんの在へ。権威を笠に着る手強い悪党どもだが、平次側に思わぬ助け手が現れる図。

 ロケ地、碓氷の関所、湖南アルプス(山道際に切り通しのような独立岩、暴将第一シリーズOPと同じ場所)。まず目安箱へという平次の言を受け出向いた治兵ヱがヤクザに襲われる林、下鴨神社参道(現・瀬見の小川から見上げ)糺の森。治兵ヱ捕縛後、小田井村へ向かう平次、下鴨神社馬場大覚寺大沢池北西畔(茶店からヤクザが見ている)。松井田宿はずれで百姓衆に囲まれる平次、鳥居本八幡宮(平次が利助の子分といるのは小柴垣際、相談をぶっていた衆は鳥居下)。夫の無事を祈りお百度を踏むお静、木島神社本殿。治兵ヱの家、萱葺き民家(縁先に瓦を出したつくり)。敵に内通した治兵ヱの子分・半次をお縄にした平次が彼を連行する山道、湖南アルプス堂山付近の尾根道(半次と縄で手を繋いでの踏破)〜崖道(矢を射掛けられる)。横川代官所、大覚寺明智門
*平次に捕えられ仲間の矢を受け改心するとっつぁんの手下に田口計、思いきりこすっからい悪党だが、涙の幕切れ。とっつぁんをハメるヤクザは神田隆で悪代官は高品格、はじめ平次を悪党と誤認し突っかかるとっつぁんのシンパのヤクザは北村英三。危機に颯爽と現れる内藤さまの弟ぎみに川口恒。山で矢を射掛けてくる一味に福ちゃん。


第318話「三ン下子守唄」1972.6.7 37

 内なる悪党が仕組んだ誘拐事件は、人のよい田舎者を手先に使って頓挫する。漸次明らかとなる犯人を、親分とともに薄紙を剥がしてゆく作りも楽しい。

 ロケ地、縁日を見回りの平次ら、木島神社参道(舞殿の破風がのぞく)。坊が馬に引っ掛けられて「仕事」をしくじった参次が兄ィらにボコられる神社、木島神社本殿前。事後、所払いで信州へ帰る参次、北嵯峨農地竹林脇。
*参次は常田富士男、井筒屋番頭は梅津栄、ヤクザの親分は近藤宏で怖い顔の用心棒は宮城幸生・肥えた子分は古川ロック。*凄腕の用心棒と対決する親分、十手を落とされるがしゅるっともう一本出してくる。*万七のはじけぶりも傑作、先輩風吹かすと平次にあとできっちり皮肉を言われ、酔っ払っておめぇんとこもそろそろ「七年目の浮気」とからんだり。


第319話「花が裂ける時」1972.6.14 25

 男の純愛は、女神とも思う女に届かぬばかりか却って女を苦しめていた。男の冤罪は晴れるが、大事なものをなくし絶望する彼に、さすがの親分も陳腐な慰めしか口にできない。

 ロケ地、勤め先の女将・お千勢の使いに出た板前の伊之吉が殺人犯に仕立てられる夜道、相国寺方丈塀際。逃げた伊之吉が、お千勢の父・玄琢に頼み平次に来て貰う神社、不明(切石の石段下に石鳥居、その前は細い参道と石畳)。伊之吉が火消し殺しの犯人と証言した札差の大番頭が縊死に擬装されて見つかる山道、不明。検分を見ていた怪しい浪人を追う平次たち、先に出た石段と同じ、この段では上のほうの曲折部も見え最上部に鳥居が見える(仕事人13話と同所)
*お千勢に加茂さくら、しとやかな女将の裡に揺らめく魔性を、ほのかに匂わすのがさすが。伊之吉は河原崎長一郎、偽証する大番頭の木田三千雄や、雇われ刺客の御家人・宮口二朗ほか脇も巧者揃い。


第320話「与力見習一番手柄」1972.6.21

 はじめての出動で難事件に当たってしまう見習与力の沢井謙之進、初手をしくじり賊を取り逃がす。悉く名与力だった父と比較されることに苛立ち、十手返上まで思い詰める謙之進に、月番代わりで事を急かすお奉行に加え父に対する賊の逆恨みもあり、重圧は増すばかりなのだった。
*ロケなしセット撮り。謙之進は田村亮、プレッシャーに苦りきる青年が似合いすぎ。妻女は高田美和、お静に心得を学びにやって来る素っ頓狂も可愛い、お似合いの堅物夫婦が楽しい。


第321話「お島の死」1972.6.28 25

 気のいい大工がいわれの無い罪に落とされかけた一件は、その昔男の未来を思って身を引いた、哀れな女のあまりにむごい末路を照らし出す。

 ロケ地、酔って寝込んだ大工の弥助が、目覚めて傍らに女の死体を発見する船小屋、広沢池東岸。殺されたお島がいた茶屋の聞き込み帰りの平次らに向け材木が落とされる普請場、上賀茂神社奈良社脇。逃げた男を追うも見失うのは渉渓園(スダジイの根方に今ある石積みが無いのが確認できる。足もとには遣水)。お島と親しかったお秋が殺されて見つかる八幡境内、木島神社元糺ノ池(泉入口の鳥居越しに舞殿を見上げるアングル)。お島の故郷・新座を訪ねる平次、北嵯峨農地・竹林際(帰り道は陵前、八の背後に御陵外縁の松の植え込み)。お秋の墓、小丘の中腹か(亀岡の墓地に似る)
*深江章喜の起用が痛いほど決まる筋立て。お島の駆け落ち相手を聞き込むと出てくる、優男・色白などという外見とは吹き出すほど似ても似つかぬいかつい深江氏なので大笑い。悪事を指摘され観念するかと見えて斬りかかってくるのも予想を裏切らず、憎い配置。大工は山城新伍で、上方弁の女房とともに軽妙な笑いを提供し悲惨な話に起伏をつくる。


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