銭形平次

603話〜624話  フジテレビ/東映

天神島キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おゆみ/つばめ真由美 おなお/つばめ奈緒美
壮吉/大橋壮太
万七/遠藤太津朗 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第604話「五年目の真実」1978.1.4 45

 年老いた舅によく仕える嫁、亭主は江戸払いで勘当の身。嫁に新たな縁をと気遣う義父だったが、当の倅は舞い戻り嫁に物騒な頼みごとを持ちかける。しかしそれは父と女房のための行為、すっかり堅気になった男はせめてもの贖罪に大金を作ろうとしていた。やばいヤマを踏んで消された亭主の仇を討つため、女は封印していた一世一代の「芸」を見せる。

ロケ地
・お参りの平次ファミリーがおぶんと舅を見かける明神さま、上御霊神社境内(楼門から参道、本殿に舞殿と映る/正月の風物をあしらい)。ラストシーンもここ。
・回船問屋から報酬を受け取るも殺された梅吉の検分、嵐山か(河川敷)
・解き放ちになりおぶんに割符を掏られた男が、髷の中にブツが無いのに気付くツナギの祠、大覚寺天神島(ラス立ち)
*おぶんは十朱幸代、舅は陶隆司、亭主は目黒祐樹で彼らは皆足を洗った掏摸。万七に微罪で捕まる、割符を持った男は八名信夫で、髷に隠したそれを掏るのが「芸」。抜け荷商人は新井和夫。*牢に潜入し探りを入れる八、ドスの利いたオカマっぷりが絶妙。


第605話「勤続三十年」1978.1.11 61

 平次ですら煙たがる、うるさ方の書役同心が登場。つきあううち、見習いたい夫婦と親分の認識は変わるが、追っていた事件の当事者が、そのダンナを脅し鬼畜息子を逃がそうとはかる。無体な要求の裏には、御内儀の秘めた過去が関わっていた。

ロケ地
・辱めを受けて入水した娘の死体が上がる大川端、広沢池東岸
・娘のお使いルートを調べた平次が落ちていた荷物と犯人の遺留品を見つける祠、大覚寺五社明神裏手塀際。
・馬鹿息子を隠してある板倉屋の寮、セットかロケか不明(草戸)
・二十年前の長崎、隠れキリシタンの摘発に走る町方(指揮は現板倉屋当主)金戒光明寺永運院下坂。刑場は大堰川河川敷か。
*佃のダンナは金井大、内儀は長内美那子。板倉屋は成瀬昌彦、色魔の倅は平野康。*ボーナス下賜の場面で、佃のダンナに書類不備を指摘され何度も却下されクサる万七のうしろに福ちゃんチラリ、目明しの模様。*内儀の過去の伏線に飛魚をアゴと呼んだり、胡麻豆腐が得意料理だったりの逸話を嵌めこんであり細かい。


第606話「紀州の子守唄」1978.1.18 45

 耳慣れぬ子守唄をうたう娘には哀しい理由、さらわれた富商の赤子の素性にも哀れな因縁、別れ別れの姉妹のユニゾンが泣かせる。

ロケ地
・山形屋の子守女・おしまが赤子をさらわれるくだり、子を負って歩く汀は広沢池か。差込みで休む茶店は今宮神社石橋たもとにあしらい、ここと東門周辺は今回頻繁に登場する。身代金受け渡しに指定の際の設定は「浄妙寺」境内。
・赤子を探し歩くおしまに話を聞く平次、腰掛けさせるのは神泉苑善女竜王社前、法成橋を渡ってやってくる運び。
・おさとに「姉」の思い出を語るおしま、紀州下里村イメージに棚田の里見下ろし、妹の手を引いて野道をゆく姉は北嵯峨農地、そのあと出る萱葺きも嵯峨付近か。
*姉を捜すため子守をしているおしまは岡崎友紀、姉だった若旦那の元情婦は倉野章子、彼女を慕う大工は伴直弥。酷薄な若旦那は大竹修造、権高な大旦那は永野達雄。


第607話「岡っ引の女房」1978.1.25 61

 小さな悪も許せぬ峻烈な若い岡っ引が、その性行ゆえ愛する女房を失う哀話。目明しの女房が誘拐されたうえ死体で見つかる事件、恋女房を亡くした若者は遮二無二仇を求めるが、とてつもなく苦い事実を知らされることになる。

ロケ地
・音吉の女房・おとよの墓に参る平次夫婦、不明(傾斜地、卒塔婆の様態は浄土宗か)
・目明しになるとおとよに告白した場所へやって来る音吉、松尾大社水場。
・おとよを「殺した」女を殺しかける音吉、下鴨神社河合社(夜)
*音吉は寺田農、おとよは結城しのぶで彼女を強請っていた同郷の遊び人は唐沢民賢。誘拐を仕組んだ小料理屋の女将は戸部京子、音吉が獄門台へ送った凶賊の女房。おとよ誘拐の心当たりを求める音吉のくだりでシメられているチンピラふうの男の一人に福ちゃん。平次の下っ引で久々登場の井上茂は「蝶太」とクレジット。


第608話「九両盗っ人」1978.2.1

 愛する女を安寧に送ってやるため罪を被る男、彼の人柄から自白に得心のゆかぬ親分は真実を見通すが、「摘発」は女の死まで待ってやる情を見せる。

ロケ地
・繁次が働く木場、「材木置場」、見張りの八は「玉垣」内に控える。
・お涼が入っている療養所、民家長屋門
*お涼の入院費も出している繁次は柴田p彦、前回捕縛時は自首で寄場送り。い組のかしらの娘・お涼は新海百合子、亭主で小頭の佐吉は石山律雄。医師は岩田直二。


第609話「幽霊から来た結び文」1978.2.8 61

 大店の娘と手代の心中事件のあと俄に巻き起こる跡目争い、声高に権利を主張する先代の弟は怪しい行動をとり、親分のもとには死んだ娘名義の「告発文」が届く。包み隠した親子二人の忠義の念を無駄にはしない、親分の正義が炸裂。

ロケ地
・白魚獲りの漁師が心中者の死体を引きあてる大川端、広沢池東岸
・「二人」が葬られた寺へ赴く平次、門イメージは御所管理事務所東門。墓守に話を聞くのは金戒光明寺墓地入口付近の休憩所(現在は建て替り)。騒ぎが起こる二人の卒塔婆は墓地中央の石段際、文殊塔映り込み。
・幽霊を演出していた「手代の姉」が殺されて見つかる千住・熱田明神境内、今宮神社石橋脇の溝。
・先代の弟が番頭を呼び出す稲荷、吉田神社竹中稲荷。参道の重ね鳥居で番頭が待ち受け、繁みに殺し屋が潜む。「弟」がやって来る見返りの入口があざとく照らされ、人影がシルエットで登場。奥に宗忠神社の玉垣もはっきり映り込む。
*長らく勘当になっていた先代の弟は垂水悟郎、娘は遠藤真理子で父と自分を暖かく受け入れてくれた先代に深く恩を感じ、死をもって報いようとする父を励ます次第。彼らが後事を託そうとする、喧しいものの筋の通った親戚筋は北原将光。忠義面の番頭は山本清、吹き矢を使う殺し屋は山本一郎。


第610話「姉妹」1978.2.15 45

 平次にも悪態をつく毒婦まるだしの常磐津の師匠は、見かけ以上の非道な女。悪事を見破られ追い詰められた土壇場でも悪あがき、しかし妹に突きつけた凶器を握る手はさすがに萎えるのだった。

ロケ地
・常磐津師匠のおせんに入れあげていた与吉が殺される聖天さまの楠、大覚寺天神島大木
・おせんと情夫が妹を消そうとする神社(?)赤山禅院本殿脇。
*おせんは左時枝、妹は清水めぐみ。常日頃から妹に邪慳で蓮っぱな姉の毒々しさが決め手の話、熱演が過ぎて見る者を暗澹たる心持ちにさせる役者は巧すぎ。暗ぁい話に万七親分の「猪の遠吠え」の常磐津が絶妙のタイミングで聞こえるのも妙。


第611話「おたみの江戸見物」1978.2.22 61

 富籤に当ったという兄の文を受けて田舎から出てきた妹は、着くなり兄の死を見せられる。しかも弔問客には怪しい奴がうようよ、盗賊の隠し金をめぐり散々危ない目を見た娘は、江戸を見限り帰ってゆく。

ロケ地
・弥之吉が仲間の庄三郎に追われ転落する中川橋、石清水の安居橋(改修前と思われる)
・おたみがチンピラにナンパされ危ないところを助けた平次(変装中)が二人して駆け入る神社、上御霊神社(楼門〜舞殿脇)
・兄の死を見たあとおたみが佇む小川、上賀茂社家町・明神川の橋(深川界隈)
・おたみに刃を向けて金のありかを迫ったお島を追う平次、明神川沿い〜「材木置場」。
・弥之吉の墓、招善寺墓地(参道坂の上)
・仲間の一人と目された男が平次に正体を告げる川べり、明神川
・金のありかを秘めた名所図会を奪った庄三郎が仲間と会うお堂、大覚寺護摩堂。平次と八が現れての立ち回りは天神島、火盗改が出張ってくるのは朱橋。
・平次に置手紙して江戸を去るおたみ、街道は北嵯峨農地の小丘。
*おたみは大関優子、負けん気の強さが可愛い。鬼面組は山本昌平、行友勝江、勝部演之。平次と同じく潜入していたダンナは宗方勝巳。


第612話「娘十手が恋に泣く」1978.3.1 61

 市中に出回る阿片を追う平次に、老目明しが後継にと目す娘が預けられる。しかし売人が殺された現場からは彼女の恋人の財布が出て、娘心は千々に乱れる。

ロケ地
・お京に彼女の父から来た話を伝える平次、仁和寺九所明神
・若狭屋へ聞き込みをした帰りの平次を襲う刺客、仁和寺観音堂脇、御室桜林
・売人の女が口封じに殺される川端、広沢池東岸
*お京は泉晶子、父で往年の十手の神様は伊沢一郎。お京の恋人の若狭屋の若大将は亀石征一郎、後ろ暗い事もしていた父は谷口完、後妻は藤山律子、その情夫で隠れて阿片を扱いお店乗っ取りも画していた番頭は早川保、彼が追い使う用心棒は有川正治。殺された売人の伝手を辿って踏み込む賭場に福ちゃんチラリ。*恋人を疑ったことで自分を許せず、十手も幸せも諦めて江戸を去るお京だが、平次が先に含みを持たせる。亀石氏荒っぽいものの全くの善人の、貴重?な話。


第613話「忠義者」1978.3.8 62

 放蕩者の若旦那が仕出かした事件は、ずっと内に憎悪を秘めていた「忠義者」の野心に火をつけてしまう。かつて共に角兵衛獅子をしていた女は、番頭の心を痛いほど察するものの、彼が更なる罪を犯すことには耐えられなかった。

ロケ地
・国分屋の若旦那・房吉が遊ぶ船宿、窓から見える流れは桂川大堰。その後船遊びに出て金を持ってきた番頭の宇助を愚弄する川端は大覚寺大沢池畔、船宿入口は大沢池木戸。
・なぜ若旦那を庇うと宇助に問うおせん、中ノ島橋たもと堰堤脇。後段では橋上。
・脅迫者に金を持ってゆく房吉、天神のやしろは木島神社本殿前。
・房吉が匿われている漁師小屋イメージ、松尾橋下手桂川畔か。
・漁師小屋で人に見られた房吉を隠す地蔵堂、大覚寺護摩堂(中も使用、立ち回りは外で。見ているおせんは石仏脇)。連行されてゆく宇助と房吉、放生池堤
*宇助は荻島真一、おせんは松本留美。若旦那は西田健で大旦那は岩田直二。


第614話「狙われた女」1978.3.15 45

 何者かに襲われ平次に保護された娘は記憶喪失に陥り、その後も身辺に怪しい影。娘の身元を探るうち出てきた両替商も、はじめ知らぬ存ぜぬで通すがやがて不審な動きを見せ、そして「平次を見込んだ」娘の真意が知れる。

ロケ地
・保護した娘を伴い両替商・和泉屋に話を聞いた帰り、その娘と話す平次、嵐山公園・桂川臨川寺前付近左岸河川敷(堰堤脇)
・和泉屋の寮が向島にあると聞き赴く平次、渡船をおりる船着は大覚寺大沢池畔。寮はロケかセットか不明(草戸)
・娘をさらった和泉屋の番頭が縊死を装って始末しようとする木、大覚寺天神島大木。平次は嵯峨帝の碑から現れ娘の首に掛けられた縄を投げ銭でカット、ラス立ち突入。
*平次を見込み姉の仇を討つため捨て身芝居を敢行する娘は永島暎子、呪いの人形を投げ込んだりして協力する恋人の船頭は剣持伴紀。娘の言い分を取り上げず悪党に鼻毛を読まれていた岡っ引は岡田栄弥、かつて盗っ人だった和泉屋主従は西山嘉孝と山本清。*親分がお冠の、八が聞き込んできたガセネタも重要なファクターの緻密さ、たかをくくっていた悪党が土壇場で逆転される爽快な結末に、恋人たちのその後も入れて八の笑い話に戻る憎い構成。


第615話「雨の声」1978.3.22 45

 父の死後十手を継ごうとした娘を襲う怪しい輩、樋口さまに娘を託された平次はそも「父」の死も不審と気付いて動くが、勘の鋭い娘もまた悲しい真実を察するのだった。

ロケ地
・おのぶの父・喜久三が頓死した現場、中ノ島橋下手右岸河川敷
・平次宅を抜け出したおのぶが、父が世話になっていた木崎同心に経緯を告げる神社、赤山禅院本殿内。
・父の足跡を辿って聞きこみの帰り、おのぶが「事故現場」へゆく道、嵐山公園中州湛水域端(右岸側堀端)。このあと中ノ島橋を渡り父が倒れていた川岸を凝視。ここで六造に銃を突きつけられ連れ込まれるのは赤山禅院境内、危機に平次が駆けつけ。
・捕縛した六造や岡っ引の富三郎の告白に出る、強請った金を取りに来た御高祖頭巾の女が出た川端、広沢池東岸
・富三郎から金を強請ったのは自分と万七に申し出る幸助、「材木置場」。
*おのぶは夏目雅子、喜久三の下っ引をしていた幸助は下塚誠。強請りをしていて喜久三の手が伸び「始末」にかかった岡っ引は武藤章生で相棒の六造は小田部通麿。平次の前でつらっと「真実の暴露」をやらかしてしまう木崎同心は青山良彦。*中ノ島橋の設定、「千石橋」は新木場か。


第616話「旗本襲撃」1978.3.29 62

 峻烈な奉行の就任を阻もうとする闇の勢力だが、腰元の自刃に不審を抱いた平次の慧眼が悪党の企みを打ち砕く。権力に媚びず、朋輩に篤く、かっこいい親分全開のお話。

ロケ地
・腰元が「自刃」して見つかる不忍池端、大覚寺天神島
・腰元の亡骸が牧野家に引き取られたあと、平次にこの件から手を引くよう求める島村同心、相国寺天界橋
・牧野備前守邸、表門は相国寺大光明寺門。平次が腰元に聞き込みを敢行するも用人に見咎められる勝手口は南通用門。
・元岡場所の女・お仙の回想、源八と逃げるも見つかり制裁を受けた町角は大覚寺天神島
*ヤクザが大嫌いな牧野備前守は林与一、次期南町奉行。用人は山口幸生、権高だがただ偉そうなだけ。島村同心は大林丈史。裏の組織を統合して幕府人事にまで容喙しようとした顔役は福山象二、彼に因果を含まされ奉行を襲った源八は水上保弘、惚れていた岡場所の女は志乃原良子。*リストラ対象の万七のため、あざといまでの「冷たいそぶり」芝居の平次、万七も真意を知り涙するが、どこまでわかってるのか定かではない。


第617話「おゆき」1978.4.5 45

 フローが変わり価値の上がった鎌倉河岸をめぐり、汚い企みが横行。嫌がらせに屈せず頑張る一軒の店を舞台に、愛憎交錯するドラマが繰り広げられる。

ロケ地
・三年ぶりに戻った豆腐屋の道楽息子が情婦と会う神社、不明(本殿前から境内を見返る図、舞殿前と脇に鳥居)
・別れを切り出されかっとなった道楽息子が女を「絞め殺す」川端、嵐山公園堀端(中ノ島橋下手右岸端、橋脚と堰堤映り込み)
*豆腐屋の老主人は小栗一也、病の父に代わり店を切り盛りする捨て子の養女は中田喜子で彼女を支える若者は立花直樹、ぐれた倅は宮川K夫でいかにもの情婦は八重垣百合。親切面の地主は陶隆司、手先をつとめるチンピラは千葉敏郎。


第618話「男の勲章」1978.4.12 62

 鉄砲組から奪った洋式連発銃を用い、兄を獄門にした平次に復讐をはかる鬼面の男。平次を貶め嬲るやり口は辛辣、頼みの投げ銭も封じられ果てはお静をさらわれて窮地に陥る親分だが、周囲の手も借りて一対一の戦いに臨む。

ロケ地
・鉄砲組試練場、酵素河川敷(柵あしらい、粉雪が舞う)
・八が追った一味が始末され見つかる大川端、罧原堤下汀
・左手での投げ銭トレーニング、大覚寺天神島(嵯峨帝碑のところに「的」、家近く設定)
・アジトへ捕り方が入ったと報告する八、大覚寺護摩堂。決戦に臨む平次がついてゆくと縋る八を当て落とすのは五社明神
・アジトを出て日本橋へ向かう利助と一味のくだり、隠れ家の門は料亭ふう、途中のルートは赤山禅院本殿脇を石仏越しに。日本橋へは行かせぬと道に立ちはだかる親分は赤山禅院参道、土手から登場。
*平次を恨む利助は新田昌玄、手下は黒部進。駕籠側をつとめる一人に福ちゃん、ピンクの着物。大枚のお礼をくれる鉄砲方役人は北原将光。*八が日本橋に晒され謹慎を食らうので清吉が平次に付く。このために万七は湯治設定が入る。


第619話「母子笛」1978.4.19 63

 若手同心から母親さがしを頼まれる平次、折しも江戸に舞い戻った凶賊を追ううち引っ掛かってきた手がかりの女が、どうやらダンナの御母堂らしいと知れる。恩と情の板挟みになる母、母を恋う青年、双方を気遣う親分のとりなしが泣かせる。

ロケ地
・凶賊に名前を使われた旗本の屋敷、相国寺大光明寺。平次の指示で見張る八は塀の南東角、そこへすりすりと近づく万七らは南塀際。八を押しのけて尾行した万七がお供衆に誰何されるのは大通院塀南西角(鐘楼映り込み)
・おまきが参る浅川将監の墓、金戒光明寺本堂裏手墓地
・今の亭主の灘屋の正体を知り、生き別れの息子が町方と知らされたおまきが入水しかける水辺、大覚寺大沢池堤
・灘屋へ手入れのあと母を捜す沢村同心、大覚寺大沢池堤。おまきが息子の目を逃れて渡し船に乗り込む矢切の渡しは大堰川河川敷、川端に茶店をあしらい、沢村が駆け下りてくる段では堤法面を使い、船の行く手には保津小橋がちらりと映り込む。
*沢村のダンナは藤間文彦、浅川の殿様が下女に手をつけて産ませた子で葛飾村の百姓に里子に出されたあと沢村家の養子に。子と話されたあと流浪した母・おまきは月丘千秋、上方で彼女を苦界から救った「亭主」の灘屋は幸田宗丸。万七の責任なすりで当初平次にお冠の御旗本は酒井哲、親分の肝の太さに感服して意気投合の運び。


第620話「はぐれ絆」1978.4.26 45

 血縁はないが出自ゆえ固く結ばれた兄妹の絆は、括りを越えかけていた。ひたすらに妹の幸せを願う兄が仕出かした些細な盗みが、抜き差しならぬ深みへ運命を引きずり込む。

ロケ地
・傷害事件を起こした元兄弟子を番所から引き取った帰り、更なる脅しをかけられる佐和吉、桂川大堰(中州側)
・佐和吉の妹・おみよの回想、兄に簪を貰い躍り上がって喜ぶ橋、神泉苑法成橋
・佐和吉を脅していた元兄弟子が始末され見つかる川端、広沢池東岸(水無)
*佐和吉は横光克彦、おみよは鳥居恵子。元兄弟子は田畑猛雄、表は善人面の賊の首領は森幹太。*佐和吉は仕事先で蔵の鍵の蝋型を取らされていたという運び、島送りは免れないが次に会う時は兄妹の軛を離れ夫婦と平次が示唆。二人は共に女郎の生んだ父なし子で遊里の女たちに育てられた経緯を持つ。


第621話「しのぶ河岸」1978.5.3 45

 つましくも幸せに暮らす夫婦に立ちかけた波風だが、冴えない男呼ばわりされている亭主の真心は揺るがない。女の前に現れた昔の男は、親分に正体を暴かれお縄。

ロケ地
・佐吉がおそのを呼び出し復縁を迫る川端、大覚寺大沢池(木戸付近、北西畔)。その場を去ろうとしたおそのが平次とばったり会うのは放生池堤
・老爺に身をやつした佐吉が手下と会う天現の森、下鴨神社糺の森・池跡。
・おそのの昔の朋輩に聞き込みの平次、店から連れ出して話を聞く屋台は中ノ島橋たもと堰堤脇(中州側)にあしらい。
・口さがない女たちの噂話を聞いてしまった喜助と話す平次、木島神社摂社か。
*酌婦上がりのおそのは本阿弥周子、亭主の喜助は重久剛一。色悪の凶賊は有川博。*一晩帰らなかった訳を繕ってやる親分の情けが泣かせるが、噂のおおもとは万七親分?


第622話「おやじ」1978.5.10 63

 妻に逃げられた男と、その倅の哀話。板前の父を尊敬し教えを守って暮らす堅物の青年だが、或る日戻った父はうらぶれた風体で、息子に追っ手から逃げる算段を依頼する。しかも父が連れている女は、父と自分を置き捨てた、憎んで余りある母に酷似しているのだった。

ロケ地
・父からの文を見た幸吉が会いにゆく稲荷橋近くの漁小屋、大堰川河川敷にあしらい。
・藤沢宿の宿役人や建場の衆に不審を抱いた平次が、まずお手配の文造を確保するべく聞き込むくだり、露天商に話を聞くのは中ノ島橋たもと、釣り人に稲荷橋近くで喧嘩していた親子のことを聞くのは中ノ島橋下手左岸河川敷(中州側護岸法面)
・江戸を出る父が幸吉に戒めを伝え包丁を渡した「包丁塚」、不明(石段下に水場、その前にさざれ石状の巌があるのが「塚」設定、あしらいものか否かは不明)
・文造がお時を隠していたお堂、大覚寺護摩堂。文造の消息を求める一味が渡り戻る橋は中ノ島橋、殺到した一味と平次が大立ち回りの際には護摩堂から天神島へ殺陣が移動。
*修行に行く途中で妻の失踪の真相を知り、直後妻に酷似した女に出会い、全てをその女の救済に賭けた「父」は加藤嘉。その女・お時は有吉ひとみで「妻」と二役で同じく「業病」に罹っている設定。父に女は魔物と吹き込まれて育った倅は長澄修、彼を慕う娘は吉本真由美。宿役人は五味竜太郎と川浪公次郎、建場の長後屋は守田学哉で手下に森章二。こやつらは悪辣な人身売買組織で、お時を異国に売り飛ばそうとしていたトンデモな奴ら。


第623話「鶴吉の掟」1978.5.17 63

 盗賊に拾われ育てられた男は、罪の意識と恩との狭間で懊悩する。しかし彼が遠流の間に親分は裏切りに遭って死んだため縁は切れぬままとなり、裏切者の始末という掟が彼を縛る。

ロケ地
・親分の情婦の常磐津師匠の家(三味線堀)広沢池東岸の「料亭」。様子を見に来た鶴吉が殺されかかる場面では葦原も。
・御赦免になった鶴吉が出迎えた平次を振り切り去ったのを尾行する八、上賀茂社家町明神川端、勘八に殴られて伸びるのは橋上。
・誰が親分をさしたと呟く鶴吉、大覚寺護摩堂(カメラ中から/大沢池が見えている。勘八に米問屋へ盗みに入ると話したのも同所)
・親分の娘・お幸と話す鶴吉、不明(汀に杭の河原、桂か大堰川か)。墓地は招善寺墓地、参道坂の上と坂が映る。
・鶴吉にお幸のことを聞く平次、松尾大社楼門内側。
・お幸が盗んだ金を返しに行った帰りの鶴吉を待ち構え消そうとする勘八、今宮神社東門。かざりや前や石橋も映る。
*鶴吉は三沢慎吾、お幸は井原千寿子。本格の盗賊の利の薄さに嫌気がさし裏切る勘八は三島史郎、殺しを請負う仲間に出水憲司。下っ引で井上茂ちらり。


第624話「死の淵に立つ平次」1978.5.24 63

 膾となって事切れる「悪夢」からはじまる話、危機の予感は的中、平次を恨む女が手の込んだ罠を仕掛けてくる。夢のとおり利き腕を封じられた親分は、殺し屋三人とやり合う仕儀に。

ロケ地
・悪夢のあと、お静の勧めもあってお参りにゆく平次、松尾大社本殿。
・「髪結いが殺された」河原、不明(623話と同所、八の聞き込み時には杭の立つ汀が映る。堤下の畑なども出る。大堰川か)
・狙われていることを承知で町をゆく平次、いよいよ四人とも出揃い平次を誘い込むくだりの「道」は桂川松尾橋下手右岸堤(並木)。殺し屋との決戦は不明、湖南アルプスか白水峡か砕石場か、侵食地形をうまく利用しての立ち回り。
*獄死した弟のことで平次を憎む女は野際陽子、図に当ったとほくそえむ表情が凄絶。平次が弟を看取ってくれたことを知る「救い」も入れてある。殺し屋は蟹江敬三、野口貴史、高並功。彼らのことは「商売人」と称される。


銭形平次 表紙


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