銭形平次
  209〜243話

今宮神社門前茶屋・一和からキャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子
八五郎/林家珍平
お弓/土田早苗 お勝/武田禎子
為吉/神戸瓢介
万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
樋口一平/永田光男

209話からお静が交代のほか、ひょうたんやにお勝登場、お弓ちゃんのおばさん。


第209話「女が消えた」1970.5.6 19

 江戸へやって来たばかりの女が不思議な経緯で連れ去られた裏にはお家騒動、町方の女の危機を捨て置けず親分は甲州街道へ出張る。

 ロケ地、高遠藩隠し目付の顔を知る蕎麦屋の女房が首実検に連れ出される街道、不明(山上の溜池、湖尻と思われる堤を街道に見立て。流出?する川に朱橋架かる。水面は浅葱色)


第210話「腕白小僧」1970.5.13 30

 評判のいたずら小僧がもととされた火事は、平次らが躍起になって追っていた辻斬り強盗の仕業。悪ガキは一味にとっ捕まるが、友のため「証拠」の在り処は吐かないのだった。

 ロケ地、辻斬り事件、道具屋の番頭が殺られた御茶ノ水屋敷町、相国寺方丈塀際。呉服屋の番頭と丁稚が襲われた本郷湯島天神の路上、相国寺弁天社。三吉がほっつき歩く引越し先の深川界隈、上賀茂神社馬場。お照に宝物を見せるのはならの小川畔。ラスト、遊ぶ二人を見る親分も同所、葉を落とした枝垂れ桜が映り込んでいる。
*三吉の母(万七がデレデレ)に真屋順子、一味の浪人に伊達三郎。*三吉にいたずらされる八、寝ているところへカエル多数投げ込まれ。


第211話「おぼろ駕篭」1970.5.20 3055

 祝言目前の娘のかどわかし、調べを進めると何やら不審。裏には、娘の幸せを願う父の思惑が隠れていた。殊勝なオヤジを見た親分、すっ惚けた顔で誘拐事件はなかったことに。

 ロケ地、お品親分が「誘拐」の駕籠とすれ違う三間堀、西本願寺山科別院・四宮川の橋と川端の塀際、川へおりる階も映る。加助と「料金」のことで揉め争う若狭屋、わら天神本殿裏手。川越から帰ってくる若狭屋の娘を待つ橋たもとの茶店、流れ橋右岸堤にセット(現在コンクリートの部分もしっかり木)
*久々登場のお品親分、キャストは城野ゆき。若狭屋の娘と恋仲の浪人に村井国夫。


第212話「黒い矢」1970.5.27

 御金蔵を狙う賊は、邪魔な平次を殺しにかかる。それは首領亡き後の後継者争いレースでもあり、あの手この手で仕掛けてくるが、平次宅にまんまと潜入していた女を信じたお静の情が血路を開く。
*ロケなしセット撮り。最後のさいごに正体を現す冷酷な殺し屋に天津敏、一味の中には藤尾純も。


第213話「流人島異聞」1970.6.3 30

 御番所雇いの密偵が殺された裏にあった哀しい事情、同じく「イヌ」の島帰りはひたすら愛した女の幸せを願っていた。

 ロケ地、密偵の伊三郎を待つ万七、日吉大社大宮橋(刺された伊三郎の血がぽたぽた落ちてきてギャー)。佐八が簀巻きにされ放り込まれかける夜の大川、罧原堤下桂川か。伊豆沖の流人島「泡島」の情景、不明(袖志に似る海崖の棚田と岩浜)
*身分を偽っていた泡島の水汲女に村松英子、凍てついた表情が凄絶。彼女を思う鎌いたちの佐八に夏八木勲。


第214話「老岡ッ引の涙」1970.6.10 30

 永年御用を勤めた目明しの息子が、殺人事件の容疑者に。状況証拠真っ黒で伝馬町へ送られるところへ待ったをかける平次、奔走のすえ分限者のあととり娘を捜していた怪しの浪人を追い詰める。

 ロケ地、病の自分に代わって泉翁の遺児を探し当ててくれた河辺(ニセ仁科)に礼を述べる仁科浪人、三人で江戸を発とうとする街道筋は走田神社本殿前。
*老目明しは月形龍之介、老いたれど伝法口調もさすがの品格。放蕩息子に住吉正博。*あととり話の分限者は南蛮貿易で財を築いた「町人大名」の泉州屋、娘が二人江戸にという設定で殺された小唄師匠はその姉のほう。血筋の証明に黄金のデカい鈴とか、いかにものアイテムも出てくる。


第215話「喪服の似合う女」1970.6.17 30

 亭主を二人も亡くす紺屋の家付娘、不幸は家業第一の父が技術を持つ男を婿に選んだことに発していた。

 ロケ地、紺屋九兵ヱ方裏手の干し場、嵐山公園堀端(南岸)に塀あしらい。幼馴染の銀次郎と会うおせい、相国寺鐘楼裏手。
*松浦藩から注文されたろうけつ染めがモチーフ、凶器は材料の蝋だったりする。婿殺しこそやっていないが、おせいを陥れてあわよくば店乗っ取りを目論む婿になれなかった職人なんかも出て、若後家周辺に漂う怪しげなムードを盛り上げる。


第216話「龍巻組始末」1970.6.24 3056

 関八州を荒らし回った凶賊が江戸に現れる。賊の正体は最初のほうに判り易い伏線が張られ、お話は引き込みを強要されるも裏切り一味に追われる元板前と、彼を探して江戸にやって来た、賊に狙われていた料亭の娘との情話が主体となる。

 ロケ地、両替商押し込みの引き込みをつとめた男について漁師に聞き込みの平次、嵐山公園中州下端・南岸河川敷(漁具あしらい)。関八州の岡っ引・勘助の談話、八王子の料亭を狙う龍巻組が集合と密告があり捕り方が張り込んだ鎮守、木島神社(本殿、舞殿ほか境内)。人足仲間に誘われしたたかに飲んだ帰りの元板前・文吉が始末されかかる池端、永観堂放生池畔(酔った二人が腰掛けるのは流出口の橋の欄干、このあと立ち回りで八王子料亭の娘・お孝が文吉を庇い斬られるのは参道付近)
*追い詰められ旅籠に立て籠もった引き込みを捕えるべく搦め手から回りこむ万七親分、障子にシルエット映っててバレバレなのが大笑い。このほかラス立ちで強敵に手こずっている平次が、万七のヘルプまでつとめるのもなかなか微笑ましい。八と清吉は漫才してるし。*八州回りと同じ浅葱の房をつけた十手を持つ勘助、その権威に「おっ」という場面もちゃんと描かれていて面白い。勘助は田崎潤。


第217話「金が敵」1970.7.1 3156

 富籤に当った金貸し婆さんが殺される。出入りしていた実直な若い大工は人柄に反して怪しい動きを見せるが、彼は弟のように可愛がっていた苦学生の秘密を見てしまっていた。

 ロケ地、富突きが行われる天神さま、新日吉神社(富突きは舞殿、続々と境内へ入ってくる町衆の様子は楼門を真横から見て撮ってある。楼門をくぐる人々を画面奥に、楼門脇の小道をゆく人々を手前に持ってくる)。医師・洪庵宅、御所拾翠亭(入口の看板は「書替え」)。洪庵の聞き込み帰りの八がならず者にボコられる道、相国寺法堂前〜弁天社(危機に駆けつけた平次は鐘楼の向こうから登場)。旗本・梶原邸から出てきた洪庵と桂助に縁談話を聞かされる平次、相国寺大光明寺(旗本屋敷)方丈南東角・湯屋前。お町が信太に本当の気持ちを告白する水辺、中ノ島橋下手・中州側岸
*ちょっと「罪と罰」ふうの逸話、苦学生はラスコーリニコフよりスヴィドリガイロフ寄りかも。桂助を甘やかし庇う信太は東野孝彦、のちの英心。


第218話「十手の怒り」1970.7.8 19

 商家の娘をさらう、白昼無礼討ちと称し人を斬るなど無体の限りを尽くす旗本は老中の甥、しかもヤクザを使い長屋を潰して歓楽街を作り猟官運動資金調達を目論む文句なしの極悪人。ほかにもいろいろあり親分の怒りは頂点に達するが、ワル一堂に会す座敷へ乗り込んで皆殺し成敗とはいかないのが銭形平次の面白さ、煩悶する平次が存分に描かれたあと決死の対決に至るが、処断を免れない旗本自身への手出しは為されずまさしく因果応報の結末となる。

 ロケ地、手代と逢引の丹波屋の娘が拉致される夜の橋、大覚寺天神島朱橋。根岸の阿部主水之介邸、随心院薬医門(門前にいる平次にガンを飛ばす阿部は拝観口、鉄砲政に生きのいい的を調達するよう命じる弓の稽古の阿部は大玄関前、弓を射かけられる屋根職の嘉助は薬医門内側)。阿部の飼う浪人・大場が平次を襲う夜の神社、大覚寺五社明神(ハイジャンプのほか燈籠飛び乗りの大技あり)。夜道をゆく阿部らを見る狂女(丹波屋の娘)大覚寺天神島(この直後阿部の前に平次が立ちはだかる)
*死も覚悟の気配を察し黙って見送るお静が泣かせる。勝ったところでと判っているので、黒紋付をまといただ祈る姿は哀切。*樋口さまの苦悩を描くのに出てくる事情は息子の進学、緻密に構成された筋立てが見もの。*阿部主水之介は青木義郎、酷薄な大身旗本を好演。


第219話「お化け葛籠」1970.7.15 31

 牛ヶ淵に上がった葛籠に入っていた「心中死体」の謎を追う平次、身銭を切って仏を引き取りまでして出た真実は、乱暴者のやっつけ仕事だった。

 ロケ地、葛籠が浮く牛ヶ淵、広沢池東岸。中の女の墓、相国寺墓地(遠景に大光明寺と方丈の破風)
*八の悪夢や万七の悪態などにも尺を取り、平次が仏を引き取る手口や葛籠屋につく大嘘など、小ネタに力が入っている。


第220話「蛍火の女」1970.7.22 31

 男の取りあいの果ての刃傷沙汰と見えた事件の裏には、親分もうるうるの哀れな母心。毒婦と詰られる女の真の顔は慈母、目の前にあった小さな幸せも振り捨てて娘に良かれと自ら奈落に陥ちた女は、薄幸のまま逝く。

 ロケ地、般若の久太郎が刺殺される州崎弁天境内、わら天神本殿脇。
*薄幸の女・お藤に藤間紫。よくできたシナリオに熱の入った演技で深いドラマを現出させる。


第221話「卑怯者」1970.7.29 31

 捕物名人を父に持つ佐吉は真面目一方の岡っ引、逃亡した賊の情婦にしつこく張り付くが、やがてその女と情を交わす仲に。それを賊一味に嗅ぎ付けられ、佐吉は追い込まれる。

 ロケ地、賊の首領・赤城の喜蔵が子分に迎えられる橋、神光院放生池石橋(南望、奥に蓬月庵)。佐吉とおちかが心中未遂の真金町の出合茶屋裏手の林、上賀茂神社北神饌所裏手。おちかが捕われ佐吉が呼び出される観真寺境内、神光院中興堂(堂内、堂前)
*女の心を疑いクサる佐吉を手荒くののしり奮い立たせる親分の言葉がタイトル。佐吉に工藤堅太郎。*真金町は聞き取った「まがねちょう」に字を宛てただけでいずこか不明(横浜の遊郭は御一新の後だし)。


第222話「牢奉行失踪」1970.8.5 31

 牢奉行がさらわれ罪人と引換えと脅迫状、名指しの三人を調べる親分は変装して牢に入ったり浪人に扮したり。謎を解く鍵は、怪しい女を息を切らして追っかけたお静からもたらされる。

 ロケ地、大和屋へ入りかけていた牢同心を呼びとめ連れ込む物陰、相国寺鐘楼裏手。
*「犯人」とグルの夜鳴き蕎麦親爺の木田三千雄、飄々とした足運びが絶品。


第223話「ふたつの顔の女」1970.8.12 3157

  平次が拾った記憶喪失の身投げ女は身持ちの悪い酌婦と知れるが、ありのままの女を見ている親分は疑問を持つ。出てきたのは阿片密売、親分の直感は正しく女は亭主の仇を求める貞女なのだった。

 ロケ地、夜釣りの平次たちが「身投げ女」を見つける大川、不明(桁隠しのついた木橋、護岸は石積み、平次の背後に見える流れは急流の瀞)。女の長屋へ首実検に向かう途中、殺しの疑いもあることを告げる神社(?)、不明(石畳の坂、朱玉垣の祠)。「お光」が万七に捕われた直後平次を襲う浪人者が出る道、不明(林間の坂道)
*お光に赤座美代子、唐物商の不知火屋に原健策、浪人に沼田曜一と阿波地大輔。思いきり怪しく岡っ引嫌いと広言する富商が「違う」のは風呂敷広げすぎの感あるも、さすがにきれいにまとめてある。


第224話「万七子守唄」1970.8.19 3157

 万七親分が踏み込んだ先にいた土蔵破りは知った顔、井戸に落ちた万助坊を助けてくれた恩人。しかも賊は逃亡の手引きを要求するのだった。

 ロケ地、伊蔵が万七に船を用意させる築地河岸、琵琶湖岸か(砂浜に巌露出)
*泥亀の伊蔵に花沢徳衛、あざとく万七を利用するが逃亡寸前に思い直し観念←江見俊太郎演じる仲間の浪人の酷薄さに嫌気+万助坊の視線。苦悩の万七親分はさすがの上手なんだけど、この前出てきた息子さんはもっと大きい坊だったぞ…嫁さんいつの間にか死んだことになってるし。


第225話「海鳴りの宿」1970.8.26 19

 江ノ島で骨休めバカンスの平次たちだが、江戸の有名な親分さんと見込まれて事件の渦中に。女将が命を狙われているという岬の旅籠ではきっちり事件が出来、怪しい奴だらけで謎は深まり、女将は疑心暗鬼に陥ってゆく。

 ロケ地、おそらく間人、画家に話を聞く波食台地形は城島か。
*家付娘の女将が翻弄されまくりのサスペンス仕立て、長逗留の常連もアレだけど先代からいる、北見唯一(この人けっこう好きなんだよね)演じるせむしの作造がなかなか。彼のペットのシロがまたじゃれまくりの噛む噛む犬で笑える。


第226話「間違われた男」1970.9.2 31

 琉球の御使者がやって来る料亭は抜け荷一味の巣窟、幕府の賓客には手を出せぬ平次だが、御使者が去った直後に踏み込みお縄。この間、首領と容貌が酷似した男が一味に引っ張り込まれるがこれが雁之助なもんだから、一方ではどたばた人情劇が展開される。

 ロケ地、恋人に会うため料亭を抜け出したお葉がゆく大川端、宇治川右岸川端。父が立ちはだかり次いで一味がやって来て連れ戻される坂、興聖寺琴坂(見返りの石門の向こうに川端の楠)。お葉を尾行していた八がこの事を親分に注進、中ノ島橋
*お葉は三島ゆり子、首領に嬲られたことを恨み、そっくりの音松に突きかかったことで事件が親分の目にとまる。音松は芦屋雁之助、厨房でのヘマや十蔵になりすます芝居のお稽古も傑作。


第227話「娘ごころ」1970.9.9 3158

 盗賊一味の若者に暗い過去、首領が捕縛され逃げる段で乗った誘拐事件で、青年はさらった娘が死ぬというのに激怒する。彼の身の上を聞いた娘がストックホルムシンドロームよろしく青年を慕うようになり、というのが後段のお話。

 ロケ地、つぶて組の残党が和泉屋の娘をさらう墓地、金戒光明寺本堂裏手墓地(侍女が助けを求めて走り平次と行き会うのは真如堂へ通じる路地〜本堂脇)。和泉屋が身代金を持ってやってくる川端は瀬田川汀、ならず者が娘を連れて出てくるお宮さんは瀬田橋竜宮(傾いだ玉垣も映り込む。社務所の裏塀を背にした平次が汀から見遣る対岸にお屋敷の蔵は合成)。酒を買いに隠れ家から出てくる吉三、相国寺林光院(待ち構えていた平次に捕まるのは塀際の路地)
*吉三の「悲惨な話」は妹の縊死、妹が惚れた外道を吉三が刺殺したのに面当て。輪をかけて悲惨なのが、父に吉三が死んだと聞かされたお小夜が胸を突いてしまう一件、しかし医者も首を捻る回復力で持ち直したりはこじつけくさい。事件の裏ではお小夜が欲しい旗本が糸を引いていて、富商の驕りも描かれいかにも銭形平次らしい趣向。


第228話「宵待草の墓標」1970.9.16 20

 平次がお縄にし更生させた男が、強盗殺人の疑い真っ黒状態で旅に。行く先まで追った親分、信じた心がちゃんと報われていたことを知る旅となる。

 ロケ地、伊豆七浦の漁村、間人海岸と周辺。盗賊一味と大立ち回りは立岩でダイナミックに。
*叩き大工の三之助に早川保、共に島送りになった男の後家に北林早苗。*平次は軽装、八が飴売りなのを見た万七と清吉も変装→絵師とお供。宿でそのなりの万七をからかいに行く親分が笑える。


第229話「負けるな母ちゃん」1970.9.23

 ミヤコ蝶々ゲストの、べったべた母ものドラマ。孝行なお子たちの助けも借りてやっと買った屋台を、グレた次男の罪滅ぼしと手放す母。人殺しとして捕われた息子の無実を信じきる母の思いは、遂に平次を動かす。
*ロケなしセット撮り。


第230話「盗まれた名画」1970.9.30 31

 金貸しが利殖に集めていた雪舟の軸が盗まれるが、実は贋作のその墨絵には、哀れな事情と汚い陰謀が隠されていた。

 ロケ地、事件絡みで不審な行動をとるお染の夜歩きを尾行する平次と八、下鴨神社参道石橋糺の森河合社前〜河合社舞殿で父と晩酌(設定はあと少しで御朱引きの外の郊外)。骨董屋を窺っていたお染を追いかけ、軸を盗ってきてやるという近所に住む源太、大覚寺護摩堂裏手。軸を御番所へ運ぶ途中の平次らを襲う浪人たち、大覚寺大沢池堤(池端設定)
*父を気遣い過去の罪を消そうとする健気なお染に大谷直子、彼女に懸想し陰で動く元コソ泥の源太に川地民夫、元絵師で一度きりの贋作作りを恥じ筆を折ったお染の父に沢村宗之助(伊藤雄之助の兄上と知りびっくり)。浪人の一人に川谷拓三。


第231話「矢場へ来た用心棒」1970.10.7 20

 佐渡から送られる御用金を狙う一党の黒幕を探るべく、変装して潜入の親分はムシリ頭のご浪人。足場にする矢場の女は美空ひばりで、銭形の親分と知らず恋してしまう切ない物語が編まれる。

 ロケ地、お光が「一条左門」に夢の話をする小川、上賀茂神社ならの小川畔。「左門」姿の親分が橋たもとにいた八に指示を出す、中ノ島橋。若宮八幡のお祭り、松尾大社(楼門、右手の通用門や門前の灯籠、舞殿など各所を使用)。一味が御用金の列を襲うくらやみ坂、不明(林道か)
*平次の浪人姿はもちろんカッコいいが、ひばりゲストのせいかおちゃらけ顔も多し。不動一家の親分に川合伸旺。


第232話「足を洗った女」1970.10.14 31

 ヤクザに拾われ情婦となり壺振りをつとめた女は、抗争に嫌気がさしたところを平次に説得され更生。しかし島送りになったヤクザが帰還、運命は再び狂いだす。

 ロケ地、弁天の金次郎が殺されて見つかる池端、大覚寺大沢池(汀草深し)。金次郎殺しの犯人と目される常吉が隠れているとタレコミがあった柳原土手の慶昌寺(無住)へ赴く平次、神光院中興堂。常吉の回想、金次郎を刺そうと潜むお堂、大覚寺護摩堂(取っ組み合いは護摩堂前の池畔で)
*元壺振りの酒肆の女将・お若に野川由美子、運命に翻弄される女をあの眉根で好演、堅気の顔と元の蓮っ葉な態度との演じ分けも見事。弟・常吉を思う情と平次への思慕が泣かせる。彼女の元亭主のヤクザは名和宏、平次に皮肉をかます憎態が光るが、なんか結局島から帰って来ただけだったり。出てきてすぐ殺される弁天の親分は藤尾純。


第233話「恋文悲願」1970.10.21 32

 備前真鍋藩のちょっとしたお家騒動に関わる親分、悪企みの留守居役が煙たがって脅しにかかるが屈せず、陰謀に巻き込まれた恋人たちを救う。側室に望まれた腰元が恋人に宛て書いた文が鍵となる。

 ロケ地、真鍋藩下屋敷、随心院薬医門。屋敷を出てきた娘が殺され所持品を奪われるのは墓地脇の塀際、犯人の遊び人が逃げてくるのは長屋門(この男が逃げる際の鳥居は不明、仁和寺九所明神の石鳥居に似る)。寺子屋の先生の倉田浪人が仲間を待つ坂、金戒光明寺長安院下坂(追手殺到し三方へ逃げ散り)。三間堀に上がる真鍋藩塩蔵担ぎ人足の土左ヱ門、今宮神社東門内側・石橋たもとの溝端。恋文を運び殺された娘の墓、黒谷墓地。留守居役の駕籠を襲うも中はカラで覆面の藩士に斬りかかられる倉田浪人、今宮神社東門内石橋
*産品の塩を横流しし私腹を肥やす留守居役に神田隆、彼を糾弾すべく脱藩した正義の士に舟木一夫。仕官を餌に雇われるも道具にされる浪人を演じた尾上鯉之助もいい味。


第234話「友切り左文字」1970.10.25 20

 名刀の盗難事件でお武家に頼み込まれる親分、盗賊の鞘当てと見えた殺しの裏には、そのお武家の内情にまつわる哀れな過去が隠れていた。

 ロケ地、笛吹き狂女が出没する根津権現、松尾大社境内(奉納蔵は楼門翼の通用口をうまく入口に見立て)。実は盗っ人の伯猿が刀の講釈を垂れる町角、相国寺湯屋前。チンピラに化けた平次が泥棒市の手入れから伯猿を連れ出し一息つく水場、松尾大社亀の水場(伯猿斬られる)。笛師・星川と狂女・三輪が会う屋形船(船頭は平次)、桂川か(ここでラス立ち)。笛師が語る過去の顛末、拝領刀がはじめから偽物だったことを証言してもらいに赴いた奥平(元老中)邸、相国寺林光院(用人が門前払い)
*用人が悪者で奥平の殿様は潔白、平次の手柄に士分取り立てを申し出るが当然断る親分、皆の前で妙な惚気をカマすご夫婦で幕。名刀フェチの盗っ人・伯猿に多々良純。刀にまつわる薀蓄がいっぱい。


第235話「河内念仏」1970.11.4 32

 明石屋の内情は陰惨、先代は謀殺され後家を娶った元三番番頭の主は冷酷非道、泣いて暮らす妻子を庇っていた大番頭がまず消され、次いで現当主も殺られる。哀れな妻子が犯人にされかかるが、平次の骨折りで事なきを得る。このお話のあちこちに登場し笑いをとる破戒僧がタイトルの所以で、吉本新喜劇の岡八郎が演じる。

 ロケ地、番頭の善助が主の甥を迎えに行ったと証言の六郷の渡し、罧原堤下河原(柵と小屋をあしらい川番所に)。事後、大番頭の墓に参る平次たち、金戒光明寺墓地。明石屋の母子が忠義者の忠七に手を引かれやってくるのを見るのは経蔵脇、帰りは参道石段を降りてゆく。


第236話「人情迷子石」1970.11.11 20

 乗っ取りを企んだワルに入り込まれた木曽屋、岳父殺害の疑いで主が捕まり、次いであととりの坊が狙われる。北の係りと二の足を踏む平次だが、お静をはじめ樋口さまのエールまで来ては放っておけないのだった。

 ロケ地、一人でほっつき歩く木曽屋の太郎吉坊、大覚寺五社明神。駕籠屋が太郎吉を突き飛ばし水に落とすのは放生池堤。五社明神でお不動参詣帰りのお静と八が為さんとばったり、騒ぎを聞きつけ為さんが飛び込んで救出。木曽屋の後妻が貼ったという迷子札を確認しに平次が赴く湯島天神、御香宮摂社前に迷子石セット(前に代書屋が出ている)。駕籠屋調査中の八が立小便しようとしてお熊婆に怒鳴られる道、大覚寺大沢池堤(婆の小屋が堤際にある)。犯人一味のもぐりの駕籠屋をとっちめる夜の日本堤、広沢池東岸(平次と八が駕籠屋に扮し、相馬屋殺害時の再現で観念させる。ねじ伏せた後遠くに絃声が聞こえ、吉原囃子の聞き納めだと平次の啖呵)
*北の月番なので樋口さまの根回しは友人の北町同心に口利き、磊落な性質のダンナは詮方ない事情でワルに付け込まれた実は優しい母の後妻を見逃してくれる。小林昭二が好演。


第237話「瓢かんざし」1970.11.18 32

 縊死した姉の「理由」を追及する妹、いい人と思い込み微かな思いを抱いていた姉の恋人の正体を知り泣くことに。

 ロケ地、汐路章のチンピラが殺される屋形船の河原、不明(罧原堤にしては高い。宇治の槇島堤あたりに似る)。東泉寺前で飴売りの音松、不明(神社っぽい)


第238話「佛像が見ていた」1970.11.25 32

 名岡っ引の三代目、売り出し中の若手・文吉が経験する苦い恋。美人の水茶屋女は、ともに江戸へ出てきた男に手ひどい扱いを受けていた。

 ロケ地、ならず者の銀次に詰め寄られるお新、上賀茂神社二の鳥居(以降殺されかかる石畳の坂や、平次たちと別れるお堂は不明)。銀次や殺された毛彫師に美人局で脅されていた大隅屋が経緯を告白する、宗忠神社拝殿玉垣前。江戸を逃げ出そうとした文吉とお新の前に出てくる銀次、上賀茂神社神事橋〜ならの小川畔(銀次を見過ごせず戦う)
*富坂の文吉に入川保則、水茶屋女で文吉と祝言予定のお新に葉山葉子。五寸釘で印地打ちを繰り出す銀次に八名信夫。物置の大掃除から逃げる親分のギャグ入り、相当に掃除がお嫌いの模様。


第239話「女の罠」1970.12.2 32

 手柄を焦る同心が責め殺したかに見えた事件、亭主の仇を討とうとする女房を支援する怪しの者どもは、己の悪事を隠そうとしていた。

 ロケ地、責め問い中死んだ弥造が埋葬された谷中・千福寺へ赴くも住職に阻まれる平次、西教寺大師堂北門。暴かれた弥造の墓は大師堂を見下ろす墓地(湖は映さず)。弥造の女房・お蔦が同心・田丸を呼び出す鎌倉河岸、上賀茂神社ならの小川畔。事後、気抜けて川辺に佇むお蔦、日吉大社境内・大宮川(お蔦の赤子を抱いたお静がやってくるのは走井橋)
*赤子を捨て我が身を犠牲にしても仇を報じようとするお蔦に中原早苗、田丸同心に北上弥太郎。今回田丸に清吉が従い、万七は「病欠」。清吉にふだんの汚名を雪ぐとか言われてる万七親分。


第240話「角兵衛獅子の唄」1970.12.9 32

 ともに角兵衛獅子だった若者たちの友情を描く一話、夜の町には身の軽い怪盗が跳梁していた。友に累及ばぬよう芝居を打つ青年の心を察する親分の情も泣かせる。

 ロケ地、正三の回想、角兵衛獅子時代雄ちゃんに怪我させてしまったいずこかの「営業」の境内、今宮神社東門北の蔵前。お京に別れを告げる正三、今宮神社若宮社(お京お御籤引き)稲荷社。お京を突き飛ばし駆け去る正三に声をかける雄次、高倉下。
*万七不在、ライバル岡っ引に天王寺虎之助演じる雷門の寅蔵を配してある。


第241話「夫婦ざんげ」1970.12.16 32

 大川端で殺されたいかにも悪そうな男は果たして脅迫者、過去ある女とその亭主は互いに庇いあい罪を着ようとするが、情ある親分の目はきっちりと別口の真犯人をお見通し。

 ロケ地、為さんが女を庇って向こう傷の男と悶着の大川端、瀬田橋竜宮玉垣傍川端、溝上の橋。他出中の亭主の無事を明神さまに祈る信濃屋の女将・おせき、今宮神社稲荷社。やしろを出たおせきが彼女の前身を知る旅の薬売りに呼びかけられる茶店、今宮神社東門前・一和。おせきに事情を聞いたあと平次が八に亭主は江戸にいるかもと話すのはかざりやの前(暖簾かざりやのまま)。起請文を渡すとの投げ文でおせきが呼び出される聖天橋、中ノ島橋(平次から逃げた仙太は河川敷で闇から出た男に刺される)。向島はずれの仙太のヤサ、罧原堤下河原にセット(中に信濃屋主人)
*万七・清吉ともに不在、前回に引き続き寅蔵親分がいつもの万七の役どころをつとめ、平次の立ち回り先をチェックして出し抜こうとする。万七と違ってホントに出し抜きそうで、エンタツの存在感を改めて実感。*お静におせきの妊娠を聞かされた親分、「コレか」の仕草お下品。*お静の談話に出てくる為さんちの事情、園佳也子登場は無いが236話の「やもめ」は言葉通り「俄か」だったようで女房はまだ「お民」。


第242話「縛られ地蔵」1970.12.23 32

 番頭と後妻が組んで大店乗っ取りを画策、娘が窮地に陥るがすんでのところで恋人が島から帰還し平次も乗り出し、悪党の野望は潰え去る。

 ロケ地、縛られ地蔵に願掛けがなされる小石川茗荷谷の林泉寺、相国寺境内か。父の位牌を抱き寺を出てくるお千代、相国寺林光院。下女と二人絶望して身投げしかける水辺、大覚寺大沢池船着(小)。止めにやって来た親分と新八は観月台下に。
*今回も寅蔵親分登場で万七お休み。


第243話「黒い迷路」1970.12.30 20

 女の土左ヱ門から伽羅の香り、のっけから不吉な予感の難事件は、政界のフィクサーと大奥までからんだ生臭もの。駕籠屋の無辜の死に、平次は命を賭し寺社奉行に駕籠訴を敢行、寺に巣食うごろつき浪人どもは怒りの十手を食らう。

 ロケ地、女の死体が見つかる橋下の河原、場所は不明なるも橋標が犬飼川(川相と河畔の竹林から見て、穴太付近か。いずれにしてももう無い)。番太をたばかり女の死体を持ち出した大槻浪人が駕籠屋を斬り捨てる山王(永田町の日枝神社か)境内の林、上賀茂神社奈良社・北神饌所付近林間。探索に出た平次に駕籠屋の死体を見たと案内する加島屋、下鴨神社河合社前。将軍家側室の叔父が従事する山王の往生院、永観堂(門は中門、法要の行われるお堂は阿弥陀堂でフライング潜入の八が露見し囲まれるのは南側の廊下。お静が信徒を装って潜入し土盛りに女の衣が覗くのを見つける墓地は納骨堂前墓地、浪人に誰何されピンチのお静を助けて連れ去る加島屋のシーンでは上の墓地にある鐘楼越しのショットも)。怪我をおして聞き込みに回る八の一場面、雨宿りの祠は上賀茂神社奈良社。大槻浪人の回想、中揩ノ内定のお浪を始末した大川の屋形船、罧原堤下か。寺社奉行の下城を待って駕籠訴の平次、随心院薬医門。屋敷の庭で脇坂淡路守を説く平次、御室御所南庭か。フィクサー・大野岳翁に念押しの帰り襲われる脇坂淡路守の駕籠、下鴨神社河合社脇。往生院住職の駕籠に付き従い向島の岳翁のもとへ向かう大槻浪人と仲間、上賀茂神社ならの小川畔。住職の駕籠がダッシュで逃げたあと平次や捕り方が出て一味を逮捕の大立ち回り、奈良社鳥居(逃げた浪人を追う捕り方が神事橋をくぐる珍しい一幕も)
*年の終わりの作品なのでキャストもロケも贅沢な一話。大槻伝十郎は宮口二朗、狂気を孕んだ怖さはさすがの名悪役。幕閣も遠慮する向島のフィクサー・岳翁には香川良介、縮れた鬢が典型的黒幕の爺さま。脇坂淡路守には高田浩吉、平次の訴えに怒気を発し刀に手をかけるも真情に打たれという見せ場のほか、襲撃の折には殿様のくせに滅法強い殺陣も見せ、大捕物をお忍びで見に来て平次に大奥や向島の妖雲を払うと約す「決め」もある。お馴染み神田隆は加島屋役、往生院の檀家総代。お静姐さんの危機に活躍するも、宮口二朗には迫力負けでばっさり始末されてしまうのがちょっと哀れ。*知り合いの駕籠屋の死に責任を感じ動く八や、亭主の難儀を察し心を痛めるお静も活写される。お静お寺に潜入の際、浪人に囲まれ簪を抜いて戦う気概を見せる一幕もある。犬もあっさり手懐けるし。*万七引き続き欠場、清吉が出て八がらみでちょっといい人。


→銭形平次 大川橋蔵版 表紙


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