黒木和雄監督作品 1974ATG
先進的に過ぎる思想と行動から勤皇佐幕双方から狙われ、地縁で結ばれた同志からも疎まれる竜馬。次期政権奪取に余念無い薩摩からは刺客も放たれる。親友・中岡慎太郎にすら殺されかかる現状を奇矯な振舞で泳ぎ渡ってゆく。中岡と共に暗殺されるという史実に向かってエピソードを並列しながらドラマは収斂、血塗れの暗殺現場のシーンのあと魔性の女・幡がええじゃないかの群集の中に消え終劇。
竜馬に原田芳雄、中岡慎太郎に石橋蓮司、刺客の右太に松田優作(最初は岡田以蔵かと思った)。モノクロ画面にストレスドラマが展開される。台詞には青臭い主義者的要素がふんだんに盛り込まれる。
ロケ地、竜馬の隠れる醤油蔵、伏見(取り壊し寸前の建物を使ったという)。中岡の女・妙が苛立たしげに歩く、上賀茂・社家町。墓地は鳥辺野か。低予算を感じさせるつくり、移動等あまり無い模様。
蓬髪で半ケツ出して歩く下品な竜馬。刺客逃れにええじゃないかの輪に入るのに白塗りになる竜馬・右太・慎太郎。竜馬と争って野壷にはまる石橋蓮司。「田園に死す」などと通じるビジュアル、時代劇としては当時斬新だったはず。
途中に入るナリタリ形で締められるテロップ、内ゲバ相次ぎ自滅に追い込まれた学生運動の香り、いずれも時代を感じさせる。質屋の息子と庄屋の息子が新時代期待したのに結局侍の権力抗争に巻き込まれただけと歎ずる一言が強烈。
どうでもいいことだが、幡の持ってくる酒桶に「神聖」の字が。鳥せいの「神聖」?