1999年4〜9月 フジ
キャスト
伊三次/中村橋之助 回り髪結いのかたわら不破の旦那の御用をつとめる
文吉/涼風真世 伊三次の恋人で辰巳芸者
弥八/山田純大 伊三次の弟分、ともに御用をつとめる
留蔵/平泉成 不破のもとで御用をつとめる岡っ引
作蔵/笹野高史 不破家の従僕
いなみ/伊藤かずえ 不破の妻女
不破友之進/村上弘明 北町同心、粗暴なるも人情家
第1話 「盗っ人」
店を構え文吉と所帯を持つために、伊三次がこつこつ貯めた三十両が盗まれる。やったのは可愛がっていた弟分とすぐ知れ、後段はかんかんに怒った伊三次を宥めるのに費やされる。
ロケ地
・八丁堀の不破邸へ赴く伊三次が通る堀端、八幡掘。
・弥八が姉を隠してある寺、神光院(本堂脇、宝筐印塔)。
・弥八が金貸しの巳之吉一味に囲まれ凄まれる池畔、西方寺小谷墓地(マジ雪の斑雪あり)。
*若年に加え姉のためを思っての事と伊三次を説得の面々、不破の妻女は己の秘事をぶちまけた上で二つの命を救った金と泣き落としにかかる。その場に連れてこられた弥八と姉が土下座するのに振り返る橋之助の表情の変化が秀逸。*導入の捕物で追われる賊に佐藤蛾次郎なんか使ってあって贅沢な作り、取立て男の櫻木健一もよく決まっている。
第2話 「幻の声」
誘拐犯の幇間を庇い下手人は自分と訴えて出る芸者、彼女の筈はないのに進むお裁き。不破は伊三次を使い非常手段に打って出る。父の声に酷似した彦太郎の喉を「殺したくない」と泣く駒吉が哀切。
ロケ地
・成田屋夫婦が身代金と引き替えに孫娘を取り返す水辺、嵐峡か。
・豪遊して歩く幇間・彦太郎を追いかけ捕まえる不破たち、上賀茂神社(校倉、奈良社まわり)。
・八丁堀の不破宅へ赴く伊三次、八幡掘堀端。
・伊三次の回想、もぐりの髪結いとして留蔵に捕まる神社、伏見稲荷千本鳥居。
・駒吉の回想、父とゆく旅の途・夕照の汀、罧原堤下汀(愛宕のうしろに富士山合成)。
・誘拐の翌日、深川天神で駒吉に金を預ける彦太郎、北野天満宮参道石灯籠。
・彦太郎の引き回しを見た帰り、駒吉はやはり惚れていたと言う文吉と痴話喧嘩の伊三次、堅田浮御堂。
*ひたすらに彦太郎を追う目線、牢で彦太郎の歌う声を聞きながら父との暮らしを思い出し涙する顔、荻野目慶子がめちゃキレイ。*無実の駒吉が死罪になるのに苛立った不破に理不尽に殴られ、怒って帰りフテ寝の伊三次の回想というかたちで、不破や留蔵との出会いが語られる。不破の癇癪のおおもとは伊三次が昼間っから文吉姐さんとよろしくやっていたことだったり。
第3話 「裏切り」
進展しない仲に焦れているところへ降ってくる旦那を持つ話、文吉と伊三次のちょっと深刻な痴話喧嘩が描かれ、文吉が憧れていた朝吉姐さんの後味わるい哀話が被され、伊三次は傷心の文吉の肩を抱く。
ロケ地
・魚花の主・芳蔵が茶屋遊びの帰りの猪牙船で「遭難」、西の湖岸辺〜太鼓橋付近。
・芳蔵の死体が引き上げられる河岸、八幡掘明治橋下汀(後段、そのことを述懐する文吉は橋の上)。
・伊三次が八丁堀へ急ぐ道、八幡掘堀端。
・芳蔵殺しの実行犯をシメる不破ら、大覚寺御殿川河床(勅使門橋下手)。
・おすみの回想、ストーカー浪人に襲われる小川、上賀茂神社ならの小川。
・事後、水辺に佇む傷心の文吉、琵琶湖西岸(対岸に八幡の山なみと沖ノ島、右手に高島の岬、砂浜で手前に疎らな草原)。
*文吉の姉さん芸者で今は魚花の女将のおすみに土田早苗。黒羽織の芸者姿めちゃキレイだけど「あーれー」がカワイソ過ぎ。
第4話 「赤い闇」
放火魔の正体は同役の妻女、行く末は火刑の女を救おうと不破も妻のいなみも動くが、婚家で孤立し心を病んだ女は夫の刃を受け、自邸が燃え落ちる炎の中に夫婦して消えてゆく。
ロケ地
・不破宅へ急ぐ伊三次が物書同心の村雨と行き会う堀端、八幡掘堀端。
・村雨の妻女・ゆきを尾行する伊三次と弥八、今宮神社高倉前〜民家裏塀〜民家長屋門(ゆきの実家、染井村の医者・内田朴庵邸)。
・尾行を終えた伊三次が弥八にゆきの犯行と思うか問う堀端、八幡掘明治橋下堀端(伊三次は猪牙船にちょこんと座っている)。
・訪ねてきたゆきと外で話すいなみ、浮御堂(岸から見たアングルもあり)。
・文吉とデート中、鳴った半鐘に駆け去る伊三次、今宮神社石橋。
*ゆきは国生さゆり、村雨同心は蛍雪次朗、いなみの姉を見返った大藩留守居役に中山仁。*ゆきがいなみに淡々と語る、子供の頃見た火事場の記憶が圧巻。この際いなみが過去を語るくだりで、不破の向こう傷のいわれが出てくる。
第5話 「おっ母」
伊三次と姉が幼時住み暮らした下町、そこには畳表の名手の老婆、彼らを可愛がってくれた「おっ母」。亭主に愛想をつかした姉が逃げ込んだそこで、ひととき母と慕う「おっ母」と睦む姉弟だが、老婆の息子の喜八が人を殺したという騒動が持ち上がる。いつものメンバーの奔走で喜八への疑いは存外簡単に晴れ、伊三次の「孝行」計画に後段を割く。
ロケ地
・おっ母の家で姉を発見した伊三次が表でしみじみ話す水辺、橘寺前に水面を合成(背景に富士山も演出、水面は広沢池か…あんまり汚くなさそうなので琵琶湖かも)。
・逃亡中の喜八を見つけて追いかけボコったあと、ホントにやってないか確認する伊三次、仁和寺林間塀際(背後に塔)。
・真犯人の巳之吉を呼び出させ追い詰めるお堂、大覚寺護摩堂。
・一度自分の作った畳表が使われているお座敷を見たいというおっ母の願いを叶えるべく赴く酒井雅楽頭邸、姫路城好古園(導入に姫路城天守。大八を引いて御門内の道をゆくての字屋の職人たち(喜八におっ母と伊三次入り)、好古園流れの平庭前。酒井邸の門、松の庭長屋門。邸内の描写、活水軒渡り廊下〜御屋敷の庭池泉。畳替え作業のお庭は築山池泉の庭で、遠景に西の丸の櫓。喜八が母にあそこが御正室のお化粧の間と指す、流れの平庭の塀越しに茶の庭を見る。これで我慢という喜八の言葉をよそにおっ母を背負ってお化粧の間へ連れて入る伊三次、御屋敷の庭を通り茶の庭・双樹庵。おっ母を背負い出てくる伊三次が衛士と行き会う路地、夏木の庭前)。
*おっ母・おせいに杉山とく子、喜八に火野正平。彼を陥れ、ての字屋の娘も身代もゲットを企む悪党・巳之吉に遠藤憲一。年食っても母モノの似合う正ちゃんがキュート。*お話の前後を夫婦喧嘩で締める作り、怒気を発し伊三次の長屋に「お園をどこへ隠した」と乗り込んできた十兵衛の親方、最後は女房のいない生活に疲れ果て土下座して「帰ってきて下さい」が爆笑もの。
第6話 「敵討ち」
不倶戴天の敵・日向伝左衛門が江戸にいることを知るいなみ、すぐさま仇討ちを決心。様子がおかしいのを察した伊三次らは連携して阻止しようとするが、いなみは日向の駕籠を襲ってしまう。
ロケ地
・回り中の伊三次が作蔵に呼び止められる門前町、石清水八幡宮(内陣塀際、楼門前参道)。
・弟・崎十郎に日向のことを告げるいなみ、大覚寺護摩堂脇・石仏前。
・崎十郎が仕える藤井市郎兵衛邸、大門。茶会(野点)は随心院本堂前庭。
・日向が仕える皆川藩上屋敷、大覚寺明智門。
・伊三次に呼び出された幸助がくぐる鳥居、嵯峨鳥居本・愛宕参道鳥居。入ってゆく集合場所の茶店?は平野屋。
・伊三次に「固く」髪を結い上げさせたいなみがゆく道、妙心寺大庫裏脇路地。伊三次になぜ尾けると向き直るのは蟠桃院通用門前。
・吉原でまかれた伊三次がいなみを探して駆ける日本堤、木津堤。
・日向の駕籠を襲ういなみ、木津河原。
・縁日で文吉にやる品を見ている伊三次に声を掛け「今回の礼」を言う不破、石清水八幡宮参道。
*いなみを気遣う「不破以外」のメンバーの働きが見もので、けっこうコミカル。でも結局決行されてしまい、させないと立ちはだかる伊三次のマジは泣かせる。それにしてもいなみさん強すぎ。*アタシ以外の女の髪を結ったとブチ切れ文吉が大笑い、「和解」のシーンで邪魔な猫を足で開けた障子から外へ出すのが色っぽいのかお間抜けなのか微妙なのも妙味。
第7話 「初恋」
不本意な境涯に倦んだ大名が引き起こす誘拐事件、帰されたあとには周囲の好奇の目が娘たちに襲いかかる。軸はおみつを案じる弥八の話、理非を鳴らしに大名屋敷へ乗り込んで啖呵切ってくる不破の旦那がかっこイイ。
ロケ地
・当りをつけた植草藩邸へ向う不破と留蔵、随心院参道〜薬医門。おみつを案じ駆けつける弥八のくだりでは、薬医門のほか裏塀が使われ、木に登って中を窺うシーンには本堂前庭が映される。不破の藩邸乗り込みのくだりでは薬医門のあと、内部には粟生光明寺方丈が使われている。
・不破宅へ赴く伊三次、八幡掘堀端。
・おみつが預けられる小梅村は酵素民家セット。
第8話 「二代目」
文吉を狙っていた伊勢屋の旦那がとうとう出てくる。当然伊三次と喧嘩になるが、そのパートは縁取りで、伊勢屋の過去の悪行が明るみに出る話が主体。伊勢屋は石橋蓮司、彼にハメられた島帰りの復讐者に本田博太郎、顔を寄せて対決のシーンは迫力。
ロケ地
・伊勢屋の寮「勢庵」、中山邸通用門。
・増次が身代金を持ってくるよう指定の深川八幡門前、上賀茂神社奈良社鳥居下。張り込む不破はならの小川を挟んで対岸に茶店。
*不破のダンナはメンドくさいことが大きらい、調書をひもとけと頼む伊三次に「そんな古いモンめっかるモンけぇ」→書類を家にお持ち帰りするがすぐに大いびき→仕方なく家人が引き継ぎ・徹夜。それなのに一人だけ飯食ってて弥八が来ても応対にも出ないんだよね。
第9話 「約束」
伊三次が人殺しの濡れ衣を着せられ投獄、不破チームの働きで疑いは晴れるが、牢から出た彼が真っ先に向うのはご隠居の心残りだった「約束の地」、そこで文吉と先途を誓いお話は締めくくられる。
ロケ地
・糸惣の隠居が辰巳芸者と駆け落ち(未遂)の待ち合わせ場所にした本所五ッ目・竪川渡しの菜の花畑、琵琶湖東岸・守山今浜町菜畑。
・糸惣から帰る伊三次や、牢から出た伊三次を迎える堀端は八幡掘。
*伊三次にしみじみと昔を語るご隠居に織本順吉、伊三次を捕えて責め問いする南町の旦那に秋野太作。伊三次と文吉を竪川に送る船頭に中村勘九郎(現・勘三郎)。
参考文献 文春文庫刊・宇江佐真理著「髪結い伊三次捕物余話」シリーズ
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