田村正和主演作品 1972-1973関西テレビ/東映 雷蔵はじめ数々の名優によって演じられてきた、シバレンが創出した孤高の剣士・眠狂四郎。本作はそのニヒルな剣客を田村正和が演じたテレビシリーズで、特有の台詞回しに渡辺岳夫のBGMがよく合い独特の雰囲気を醸しだす。母の墓をはじめとしたオドロ気味のセットもよく出来ていて、ムードを盛り上げる。毎回の豪華なゲストも見もの、レギュラー陣では運命の女・美保代に山本陽子(母と二役)、常磐津師匠の文字若に野川由美子、掏摸の金八に山城新伍、龍勝寺住持に加藤嘉が配される。 第1話「夕焼けに肌が散る」1972.10.3 将軍家斉の出戻り姫が、加賀さまへ輿入れする姉妹を妬んで起こす事件。手先となって毒を仕込もうとしていた侍女は、狂四郎の亡き母に酷似していた。 ロケ地、金八がたまには師匠のところへ顔を出せとやってくる路地、相国寺大通院南塀際。母そっくりの腰元を見る路地は大光明寺南路地にスイッチ。すたすた行ってしまう狂四郎を追いかけた金八が葬送の列に出くわすのは湯屋角。綾姫の駕籠傍に行く美保代を見る林は下鴨神社糺の森(怪しの忍者もどきが襲ってくる)。綾姫に取り入る富商・四国屋の寮、中山邸門。母の墓や護持院ヶ原はセット。 第2話「女怨に剣が哭いた」1972.10.10 次期将軍に定まった若君に伸びる魔手。その部屋のお女中と関わる狂四郎、大奥潜入という無茶をかまし悪いのをひととおり成敗してくる。 ロケ地、狂四郎がお犬様から助けたお女中の駕籠が忍者に襲われる道、不明(随心院裏手に似る)。馬を駆り御典医の薬箱をかっぱらう狂四郎、相国寺法堂前。典医・室矢邸、相国寺林光院(玄関前に今は無い大木)。円月殺法に挑んだ石州浪人とやり合う林、不明(林床に苔)。美保代を誘拐し狂四郎を呼び出す亀戸神社、鳥居本八幡宮。 第3話「刃は時雨に濡れた」1972.10.17 健気な勤労少年に肩入れする狂四郎、とられた道場まで取り返してやるが、そこにはとんだ秘密が隠されており、少年のまわりをうろつく者全てそれが目当てなのだった。 ロケ地、久太郎少年が尻押しのバイトに精出す愛宕権現、豊国廟石段(少年に嫌がらせ芝居を仕組む遠藤辰雄がいる茶店は太閤坦にセット)。道場傍で母らしい人影を見て駆け出す少年、不明(黒谷の路地か)。狂四郎が鎖鎌男を倒したのを見て駆け去る鳥追い女を脇差で縫い止める塀、金戒光明寺永運院下坂。時雨女の話を聞く蘭方医・中田耕介邸、不明(塔頭の門か)。その帰り道、女の消息について物思う狂四郎、金戒光明寺長安院下坂。江戸を去る少年と「母」を見送る狂四郎とお吉、不明(二人が行く道は水辺、狂四郎がお吉を斬る際に鳥居と建物のシルエット、五社明神か←根拠、鳥居の上の置き石)。 第4話「円月 殉愛を斬る」1972.10.24 お家存続のため、奥方に男を宛がい子を生させる家老。狂四郎は秘密を知ったことで大垣藩に狙われ、目付方には証言を迫られる。 ロケ地、目付と共にいるところを狙われる狂四郎、屋形船の着く川端、不明(流れは宇治川に似た瀞、河原は礫。火矢を射かけ爆弾を投げてくる大垣藩士たちは堤の上)。江戸屋の手下の遊び人が狂四郎に骰子の勝負を迫る神社、吉田神社竹中稲荷参道重ね鳥居。奥方と狂四郎を心中立てで殺そうと連れ込む寺或いは神社、不明(神護寺や日吉大社に似た立地)。 第5話「仇花に露が煌めく」1972.10.31 江戸入りの大塩平八郎が襲撃されているところへ通りかかって介入、場末の安女郎の身の上を聞きしっぽり。いずれも深く肩入れ、ケアも最後まで。むすっとした態度からは想像もつかぬマメな狂四郎なのだった。 ロケ地、船着きへ上がったところを襲われる大塩一行、琵琶湖岸(石積み護岸、燈籠つきの船着き)。米問屋・武蔵屋の寮、入口は大覚寺放生池堤の中ほどに跳ね上げフェンスあしらい。座敷(セット)から見やる庭は大沢池を借景に。女衒が旅の浪人夫婦にうまい話を持ちかける水辺のお堂、浮御堂(橋、お堂外観と湖岸)。兄の仇と狂四郎に挑む弟、不明(松林の際、湖岸か)。 第6話「夜陰に女を裂く」1972.11.7 狂四郎を激しく憎む姫は忍びを使い仕掛けてくる。彼らの手先となって狂四郎を騙す女郎、孕んだその女が死の間際狂四郎の言葉に救われ事切れるくだりは哀切。 ロケ地、龍勝寺、龍潭寺(和尚が「狂四郎」の乱行が噂になっていると話すのは鐘楼脇、倒れている八重を抱き起こすくだりは山門と参道脇の苔庭)。狂四郎の墓が立てられている竹林、不明。 第7話「峠路に赤い実を撃つ」1972.11.14 虚無の裡にある男がふと見せた優しさ、しかし「妹」に幸多かれと渡した思いの象徴は凶弾に散る。禍々しい運命に娘を引き入れぬため、狂四郎は踵を返す。 ロケ地、小堀が掏摸の半次郎に盗ったものを返せと迫る塀際、随心院か東映・広隆寺境か。故郷へ帰るお春を見送る渡し場、木津河原。お春の嫁入り行列が来る道、北嵯峨か(竹林)。 第8話「聖母は炎に消えた」1972.11.21 外道の企みは外道自身に返り己が血筋を絶やす。肉親の消息を求め赴いた先で狂四郎は似た境遇の男と戦い、狂信への逃避を痛烈に批判し斬り捨てる。 ロケ地、狂四郎に助けられた女が姉の消息を告げる龍勝寺境内、龍潭寺苔庭、本堂前(放生池越し)。忍び装束の男が狂四郎を襲い返り討ちに遭う神社、伏見稲荷千本鳥居。黄金のマリア像を運ぶ囮集団が黒指党に襲われる山道、谷山林道。下田指して海辺をゆく狂四郎、琵琶湖岸(砂浜、遠景に岬。ちさの荼毘も同所)。狂四郎の姉が病床にあるという話の下田の寺、イメージの土塀は随心院か。 第9話「異人の剣が吠える」1972.11.28 作法通りに割腹する女を見た狂四郎は、乞われ介錯をつとめたことで埋蔵金騒動に巻き込まれる。謎めいたフィクサーは狂四郎を利用しようとはかるが、碌な結果を呼ばない。 ロケ地、元勘定所勝手方・兵藤家累代の墓、不明(侍女が切腹するのは巨大五輪塔の前)。飯倉片町の雪翁邸、中山邸門。狂四郎を見て子らが逃げる寺、不明。 第10話「荒野に女郎花が咲く」1972.12.5 人を待つ狂四郎は、枕草紙の落書きにあった名を戯れに宿帳に記す。それは、女郎の恋人の浪人が七年も追っていた仇の名なのだった。 ロケ地、仇討ちだと走ってゆく民衆、本梅川若森廃橋(仇討ちは刈り入れが終わった田)。宿帳の記名から狂四郎を仇と思い込み斬りかかってくる浪人、下鴨神社池跡。浪人の死後自分が仇を討つという女郎を伴い約定の八幡へ向かう狂四郎、藪田神社(仇が切腹し前のめりに倒れるのは舞殿、萱葺き)。一人残り虚脱した女に労わりの言葉をかける狂四郎、不明(アワダチソウの極相)。 第11話「裸女に神を見た」1972.12.12 マリア像を彫った仏師に関わり、キリシタン摘発に引っ掛かってしまう狂四郎。彼はデウスを崇め聖母を慕う者たちの心底を見極めようとするが、信者たちに見られなかった強靭な意志は神に挑む女に見出される。 ロケ地、地下でヨハネスがミサを行う屋敷、不明(門扉の金具しか見えない)。狂四郎を襲う雲水、西寿寺か。水戸家の奥方が出家の尼寺はミサ屋敷と同所か。仏師の娘の火刑、砕石場か(荒地を重機で均した感じ、山の中)。 第12話「鮮血は愛を染めた」1972.12.19 将軍の姫を手ひどくはねつける狂四郎、愛欲は憎悪に変じ討手が差し向けられる。手強い狂四郎に対して取られた策は、一組の男女を死に追いやる。 ロケ地、刺客を返り討ちにする狂四郎、大覚寺大沢池畔(護摩堂前)。狂四郎に尼寺への道を聞く浪人・白鳥、石仏前。姫宮が軟禁されている尼寺・青松院、不明(短いステップ上がって門、中に方形のお堂)。青松院の尼僧が狂四郎を呼びに来る塀際、下鴨神社河合社脇。白鳥と再会する姫宮、糺の森(回想の駆け落ちの林も同所)。龍勝寺、不明(萱葺きの本堂、右手に鐘楼。白鳥と対決の墓地はお堂を見下ろす高台)。姫宮と白鳥の亡骸を乗せた船を見送る狂四郎、広沢池東岸。 第13話「京の雨 紅の肌に咽ぶ」1972.12.26 高慢悪趣味女を辱める狂四郎、しかしその女は京都所司代の囲われ者。復讐の火の粉を払うかたわら人助けもするマメな狂四郎だが、関われば不幸の法則はきちんと働く。 ロケ地、所司代の妾を辱めた狂四郎に京へ入らぬよう忠告する男、広沢池東岸(妾の小判撒きも同所か。「京へ三里」の道標あしらい)。京イメージ、東寺五重塔シルエット。所司代妾宅、中山邸門。 第14話「円月 新年に舞う」1973.1.2 龍勝寺のお向かいには将軍息女を奥方に持つ変態殿様、フラストレーションが昂じ年始に来た商家の女将に手を出す。死体を運び出す長持とすれ違った狂四郎は血の匂いを嗅ぐ。 第15話「三度笠の女は燃えた」1973.1.9 行きずりの渡世人を一目で女と見破る狂四郎、危なっかしいところを助け事情を知るが、八代郡14ヶ村の百姓の命運を担った義民の筈の彼女の兄は、悪代官と通じていた。 ロケ地、石和代官の弟が馬を暴走させる街道(茶店に狂四郎と女渡世人が居合わせる)、不明(まわりはススキ原の地道、茶店裏には池、背景の山に松多し)。女渡世人が昼を使うお堂下、御室霊場(山腹のお堂)。女渡世人の兄の唐丸が「救出」される山道、湖南アルプスか。救出後兄妹が投宿する温泉宿はずれ、兄が代官一味とツナギをとる渓流は柊野堰堤。御用金を奪ったあと代官らに始末されかかる「兄」、広沢池東岸(六地蔵あしらい)、水抜き後の池底も。 第16話「お洒落狂女が歌う」1973.1.16 対立する忍者集団、長の娘と息子の恋は凄惨な不幸を呼ぶ。惨劇を見て気触れになった姫のお相手に見込まれてしまう狂四郎、恋人たちを結びつける動きに出るが忍びの掟はそれを許さなかった。 ロケ地、姫が遊ぶ林、下鴨神社糺の森、泉川畔。姫を連れて船遊びの狂四郎、大覚寺大沢池。紅組の気配に船をつけさせるのは放生池堤、姫が逃れるのは天神島。 第17話「岡っ引どぶが来た」1973.1.23 シバレンのもうひとつの人気キャラクター「岡っ引どぶ」がゲスト、どぶの追う事件に狂四郎が関わるかたちで進み、出てきた公金横領のワルどもを懲らしめたあと隠匿されていた五千両は資金繰りに難儀している大坂の大塩のもとへ。 ロケ地、釣りの狂四郎に声をかけるどぶ、大覚寺大沢池水門脇。「島抜け」でどぶが追う政吉と失踪した芸者を見かけるどぶ、今宮神社境内(二人を見過ごしたと狂四郎に突っかかるのは石橋)。 第18話「悲しみは闇に消えた」1973.1.30 己の編み出した剣をもって世に出ることを夢見る男、その夢が二人の女を不幸に陥れる。そして「剣」は円月殺法の前に散る。 ロケ地、藩勘定方が城代の手下と取引の神社、不明(檜皮葺の舞殿、傍に低い塀)。斬られ瀕死の勘定方に介錯を乞われる狂四郎、糺の森か(落ち葉みっしりの林床、カメラ真上から)。筧浪人が大道芸を披露する橋たもと、中ノ島橋。 第19話「魔性の女に男が哭く」1973.2.6 軽輩から取り立てられた男は、妻を寝取られ家中に侮られながらも忠実に人斬りを続けるが、情勢が変わるや切り捨てられ「御家大事」のお題目が私欲と覚る。 ロケ地、城代の使いが暗殺される鎌倉古街道、大堰川堤と河原か。幼馴染の鉄砲使い(江波多寛児)と釣りの甚内、大覚寺大沢池畔。甚内と、一人残った一座の娘を見送った狂四郎が歩む汀、広沢池か。 第20話「紅い唇に狂四郎は死んだ」1973.2.13 高崎への道、盗っ人の臨終に立ち会った狂四郎は勘定奉行の横領を知り狙われる羽目に。襲い来るは忍者、しかし彼らの事情を知った狂四郎はわざと罠に落ちてやるのだった。 ロケ地、高崎へ向かう狂四郎が盗っ人の最期を見る野原、不明。勘定奉行の手下に用心棒は地獄へ送ってやったと告げる高崎へ15丁の道、北嵯峨農地竹林際。爆死した子の母が狂四郎を家へ誘う城下、大覚寺五社明神。忍者・黒丸とゆく碓氷峠、谷山林道。 第21話「女の蕾は二度ひらく」1973.2.20 米の流通を一手に握ろうとするワルは邪魔者を次々と暗殺、雇われた殺し屋はご丁寧にも死体に「狂」の字を刻んでゆく。殺し屋を追う老岡っ引に頼られたりする狂四郎、文字若が狂犬にさらわれるときちんと助けにやって来るのだった。 ロケ地、和泉屋が殺し屋に暗殺する相手の顔を見せる料亭のイメージに錦水亭。 第22話「尼寺に臙脂が匂う」1973.2.27 関白の娘に己と同じ孤独を見た狂四郎は姫を保護、送り込む東慶寺には美保代がいるが二人がまみえることはなかった。 ロケ地、父の仇と狂四郎を襲う剣客の娘、広沢池西岸湿地。鎌倉・東慶寺、宇治・興聖寺(琴坂、山門、境内)。押上・龍勝寺、龍潭寺(山門、鐘楼、本堂、苔庭ほか)。姫を連れ鎌倉道をゆく狂四郎(駕籠)、広沢池北岸。興聖寺も龍潭寺も、内部がたっぷり映る。姫が去る際の龍潭寺山門見返りには、参道脇にあった萱葺が映り込んでいる。 第23話「謎の女は闇を恨んだ」1973.3.6 盲目の巡礼娘を助けたことで田舎大名の若様に恨まれる狂四郎、刺客が放たれる。女房を使い狂四郎に毒を盛り視力を奪う手に出てくるが、ピンチを救ったのは巡礼娘が語った言葉だった。 ロケ地、巡礼娘をいたぶる大名の馬鹿息子を懲らしめる水辺、大覚寺大沢池畔(背景に心経宝塔映り込み)。若様の馬に少女を乗せ道をゆく狂四郎、大沢池北辺水路脇か。追っ手の気配を感じ少女に同道できなくなったと告げる狂四郎、北嵯峨農地竹林際(馬鹿息子の手下が来て果し合いの場所を告げる段では農地映り込み)。雇われ浪人たちが待つ神社、鳥居本八幡宮。ちょっとまともな刺客の一人(和崎俊哉)との斬り合いは罧原堤下か或いは琵琶湖流入河川か。奸計をもって狂四郎に仕掛けた浪人(渡辺文雄)とやり合う海辺、琵琶湖岸(背景に雪嶺)。 第24話「禁じられた肌に泣く」1973.3.13 祝言の真っ最中に告げられた新妻の出自、血の禁忌ゆえ夫婦になれぬまま過ごす長い時間は、女の心を狂わせていった。 ロケ地、お堂の縁先で寝ている男に「仕事」を持ちかける女、大覚寺護摩堂(稲荷大明神の幟あしらい、石仏も映る)。下総・江戸往還の船、不明。妻に手を触れなかった訳を狂四郎に告白する弟分、罧原堤下か。ラスト、河原をゆく狂四郎(ロング、コマ落しでぱぱっと移動)、松尾橋上手桂川か。 第25話「黒髪が殺しを呼んだ」1973.3.20 悪者から救い出した娘は斬られ、結ばれるべき男女は破滅。大元のワルは斬って捨てるものの、狂四郎の心が晴れることはない。 ロケ地、海賊・相模屋の唐丸が運び込まれる近江屋別宅、中山邸門。大目付の手下が狂四郎に殺到する竜勝寺境内、永観堂御影堂前。相模屋の娘が落命したことを確認し場を去る狂四郎、永観堂境内か(池畔の緩い坂)。 第26話「狂四郎に明日はない」1973.3.27 酒肆で見た大トラの元深川芸者、彼女が荒れる訳は赤毛の子を産んだことで、伴天連を転ばせる道具に使われたのだった。不幸なその子を保護する美保代、しかし坊は狂四郎が知る秘密(第9話の埋蔵金)を求める一味に拉致されてしまう。 ロケ地、墓地をゆく狂四郎、化野念仏寺石仏群越しに陣の外をゆく姿を望む(坊を人買いから庇う美保代のシーンでも出る)。寺へやって来た美保代の駕籠と出かける狂四郎が行き違いになるくだり、狂四郎は高山寺裏参道塀際、美保代の駕籠は茶園前を石水院のほうへ向かう。坊の身柄は金と引き替えと迫る山伏、下鴨神社河合社脇。指定の御嶽坊へ出向く狂四郎、高山寺石水院脇石段。狂四郎が渡した刀を折る山伏、開山堂。 |