夜桜お染

キャスト
お染/若村麻由美(菊川一座出身・踊りの師匠)
石室新十郎/内藤剛志(食い詰め浪人)
音次/片岡愛之助(屋根職人兼長崎会所密偵)
笹原弥平/山崎銀之丞(南町同心)
おたつ/平淑恵(菊川座主宰・笹原の愛人)
甚六/火野正平(菊川座裏方兼酒肆高砂屋経営)
おろく/南條瑞江(甚六の姉・高砂屋手伝い)
伊三郎/遠藤憲一(献残屋・佐野屋)
吉川帯刀/古谷一行(若年寄支配諸国探索方長官)

太神楽 鏡仙三郎・仙一・仙三(菊川座メンバー)


第1話 炎の記憶 2003.10.14  監督/井上昭

 捕物に協力するお染からはじまるお話、レギュラーメンバーを順次からめてドラマが進み、お染の身の上がぽつぽつ語られ、若年寄支配諸国探索方の吉川にスカウトされる段で締める第一話。幼時のおぼろげな記憶を鮮明にしたお染は、隠密だった父の仇を討つ決意を固める。

白沙村荘

ロケ地
・町方に協力し顔切り魔を誘い出し懲らしめるお染、吉田神社竹中稲荷(立ち回りは舞殿で、下で寝ていたお菰さんの石室浪人が現れる。遅れてスマンと駆けつける笹原は三高碑へ行く石段から降りてくる)
・苗木を携え町をゆくお染が蝦蟇の油売りをしている石室新十郎を見るくだり、大覚寺放生池堤護摩堂(聖天堂や心経宝塔前に屋台をセット)
・お染を呼び止め力ずくで同道を求める侍、仁和寺中門内側。立ち回りのすえ「さぁ殺せ」と居直るお染、仁和寺五重塔前。目隠しされ駕籠で連れていかれるお染、車折神社参道中ノ島橋法然院山門白沙村荘(問魚亭越しに倚翠亭、目隠しを解かれ吉川と会見の座敷はここの一室で池が見える)。このルートは、後段「音」の記憶をもとにお染が辿る。
・深川の料亭・今井屋から使いが来て赴くお染、白沙村荘夕佳門
・吉川がお染に指示するツナギの汐見橋たもとの地蔵、中ノ島橋たもとに仏をセット。
・お染が吉川に協力すれば父の仇を討てるか問う水辺、沢ノ池東岸汀。
*顔切り魔に尾美としのり、誘い出しにお染が町娘に扮して囮に。


第2話 金の仏像 2003.10.21  監督/井上昭

 座頭から二代目春太郎のお礼参り代参を頼まれるお染、吉川の指令もあり遠征するが始末は江戸で。抜け荷をはたらく一味を追い詰める、痛快な一話。

夕佳門

ロケ地
・掏摸を追っかけて新十郎が走り出てくる神社、松尾大社楼門(門前に屋台セット)
・吉川が探索方の配下と協議の一室、白沙村荘倚翠亭
・吉川がお染に越前行きを依頼する水辺、沢ノ池東岸汀。
・とりあえず信州へ向け旅するお染、保津峡落合崖道〜落下岩(新十郎が待っている)
・新十郎の元同輩がよれよれの追い剥ぎに成り果てているのに出くわす甲州の温泉、高山寺茶園前。
・浜辺をゆく新十郎とお染、琵琶湖西岸(新十郎が蟹を見せてホレホレ)
・諏訪大社へ代参のお染、イメージカットの諏訪大社秋宮(大注連縄が目を惹く)
・参拝後、新十郎の旦那とはここで別れ越前へ行くという菜畑、今浜の菜畑(守山・第一なぎさ公園)
・新十郎がお染を「愚妻」と称し仇討ち免状を見せて押し通る千国関所、高山寺参道に柵セット。関所をやり過ごし愚妻ってナニと噛み付くお染、保津峡落合河口。
・江戸に呼び戻されたお染が吉川に会う深川の料亭・今井屋、白沙村荘夕佳門
・黄金の菩薩像の落し主求むの張り紙が出される町角の一シーン、松尾大社楼門前。
・津田屋が抜け荷を白状したとお染に語る吉川、南禅寺三門
*追い剥ぎ浪人に益岡徹、抜け荷をはたらく悪徳商人に西田健、関所役人に渡辺哲。
*元同僚に会い仇を討ってももう帰参は適わぬと知った新三郎の旦那、阿賀山藩改易に隠密の影と聞かされ幕府こそ俺の仇と豪快にブチ上げるのが傑作。
*お染の変化は水夫の女房、亭主が乗った船はもしや難破と聞き回る。


第3話 姫君と浪人 2003.10.28  監督/斎藤光正

 危機一髪のお姫様を助けるが、悪者の狙いは姫ではなく着ている帯。どこか怪しいものの滅法強い浪人も転がりこんできて、お染が姫に化けたりの大活劇が展開される。

粟生光明寺方丈石庭

ロケ地
・百合姫一行が襲われる林、下鴨神社池跡
・家老が姫失踪を聞きワナワナの興津藩上屋敷、粟生光明寺方丈石庭を見下ろし。
・用心棒・鵜飼に正体を迫るお染の丁々発止、大覚寺護摩堂前。
*姫を守り動く実は興津藩隠し目付の用心棒に松平健、西海屋が二度目に差し向ける「もっと強い五両分」の用心棒に福ちゃん、西海屋は園田裕久。マツケンのなんかぎこちない浪人ぶりが、このお話にはぴったりハマっていて良し。


第4話 消えたおいらん 2003.11.4  監督/杉村六郎

 後継争いの大名家、吉川の指示で鍵を握る失踪した花魁に化けるお染。亡き倅が愛した女と花魁を身請けに来た大殿の、血筋を曲げても民を思う心に感応したお染は、吉川に真相を語らない。

安楽寺

ロケ地
・お染を呼び出す吉川、錦水亭東屋(水面に映る逆しまの影)
・和田倉藩邸に招じ入れられる「花魁・綾菊」に扮したお染、大覚寺大門。座敷は粟生光明寺方丈
・ひとまず行儀作法を習得と「綾菊」が入る大殿の住居、安楽寺山門
・後継を狙う大殿の甥・隼人正が御生母の「綾菊」をさらい監禁する家、酵素民家セット。
・事終わり晴れて榊原家に迎えられる本物の綾菊、大覚寺参道石橋大門
*大殿・榊原無名斎に石橋蓮司、隼人正に鷲生功。レンジかっこ良すぎのお話、狸親爺ぶりも優しい殿様ぶりもイイ。お染の花魁を犠牲にしても、という冷酷さはいつもどおりでまたイイ。決意を聞き負けたというお染が「見かけによらない」なんていう笑える問題発言もアリ。
*お染扮する花魁の楼に居残りの新十郎がいて、飯をくれたり借金を済してくれたりの綾菊に岡惚れ。「綾菊」の危機には猪突猛進、また「よく似ているがアイツとは月とすっぽん」と嘆じるのが大笑い。


第5話 間違えられた男 2003.11.11  監督/斎藤光正

 人望厚い香具師の元締の暗殺事件、居合わせて目撃者の夜鷹を庇った新十郎が疑われ追われる事態に。お染は新興勢力の親分のもとに、壺振りに化けて潜入する。

放生池堤

ロケ地
・音羽の仁五郎が暗殺される夜道、大覚寺大沢池北辺水路際並木道。
・犯人とされた新十郎と現場へ赴いた笹原のダンナと話す、大覚寺護摩堂前。その夜、出てきた夜鷹に金を与え聞き込みの浪人、五社明神
・次に的にされる根津の親方暗殺未遂、仁和寺九所明神拝殿脇。駆けつけた新十郎との立ち回りは五重塔前へ移動。
・夜鷹に化けて敵を誘うお染、大覚寺護摩堂前〜五社明神
・事後、事件について話す笹原と新十郎、大覚寺護摩堂屋根越しのショット〜「これっきりのダンナ」が死んだ場所で笛を吹くお染を見遣る二人は放生池堤
*忠弥に田中健、楠原浪人に本田博太郎、仁五郎殺しの糸を引くヤクザに内田勝正。田中健の役名は姓なしの「忠弥」のみで、仲間の楠原の表現から「これっきりの旦那」に。お染が「もしや兄さん」と忖度するのが泣かせる。
*秋葉の銀蔵一家に潜入のお染に壺の技を伝授は伊三郎、仁五郎親分に義理ありと動く。


第6話 お時殺し 2003.12.2  監督/原田眞治

 病の父を抱え健気に暮らす姉弟、弟がコソ泥を仕出かしたりするが父のためだったり。ある日姉が女郎屋に連れて行かれてしまうが、家をおん出た実母が情夫のため仕組んだという悲惨、支度金を掠めるそのヒモにお染の鉄槌が下る。どうしようもない母は殺されるのだが、犯人も動機も判っていて口にしないお染と笹原だった。

松尾橋下手水制

ロケ地
・雨のなか行われる酌婦・お時殺害の検分、中ノ島橋下手汀(見物衆は橋の上)
・賭場を出てくるお時のヒモ・助三郎、神光院本堂裏手。これを誰何しシメる笹原、不明(短い石段)
・姉がと駆け込んできた坊、話を聞いて妓楼へ走るお染、金戒光明寺長安院下坂〜参道石段前(三門から、門では新十郎のダンナが蝦蟇の油売り中)
・妓楼で談判の帰り、お染が佇み物思う水辺、松尾橋下手右岸水制上。
*お時に岡まゆみ、助三郎に上杉新三。
*助三郎をハメるためお染は芸者で宴の席に。じたばた逃げるのには鞠を投げつけ足止め。


第7話 黒い渦 2003.12.9  監督/小笠原佳文

 甲州街道で追い剥ぎをしていた新十郎の元同輩が、江戸にやって来る。前回同様食い詰めている彼は行き倒れるが、親切な回り髪結いの女が拾ってくれる。その後も親身に彼を世話してくれる女、微かにだが確かに心通いあうも、女の背負った運命は遂に二人を結びつけない。

五社明神裏手

ロケ地
・半田彦四郎に蝦蟇の油売りをさせてみる新十郎、大覚寺護摩堂脇。
・お仲を尾行したお染が侍に襲われる道、随心院土塀際。
・お仲の墓、大覚寺五社明神裏手に墓石あしらい。
*半田彦四郎に益岡徹、お仲に山本みどり、抜け荷をはたらく海産物問屋に小沢象。
*「面目ないのダンナ」の淡い恋は不器用だが真摯、お仲の下駄を聞き分けるなどふだんは考えられぬ能力を発揮←傘張りダメ・蝦蟇油は口上覚えられず・薪割りもしくじり、落ち着いたのは粗朶集め。口癖の「面目ない」から「面目ないの旦那」呼称発生。
*お染の危機に現れる伊三郎、高砂で二人して呑むくだりがあり「兄さん」について聞くが撥ねつけられる。
*抜け荷摘発をしくじり謹慎食らっちゃう吉川さま、仇が討てなくなると積極的に協力するお染は中岩屋に潜入、ちょっと太った山出しの下女に化ける。


第8話 幼なじみ 2004.1.13  監督/三村晴彦

 甚六の幼馴染のお侍が現れ、三十年ぶりの再会に男たちは子供のようにはしゃぐ。しかし平ちゃんはとんでもない陰謀の片棒を、知らずに担がされていた。

保津峡下り

ロケ地
・さる藩の屋敷に入る「宝刀」を乗せた駕籠、大覚寺式台玄関
・音次がお染を呼び出し平ちゃんの置かれている状況を告げる亀ヶ池弁天社、大覚寺天神島(ぼんぼりあしらい)
・平ちゃんが赴く父の墓、普済寺墓地
・刀を取替えるためさる藩の屋敷に忍び込むお染、セットの屋根に大覚寺明智陣屋のショットを挿み込み。
・江戸を発った平ちゃんが乗る渡船、嵐峡保津峡(刃渡りの芸を乗り合わせた客に披露)
*赤星平助に国村隼、叔父の賄い方に三谷昇、悪企み破れる留守居役に津村鷹志、家老に真田健一郎。
*見ものはお染の藩邸侵入、大屋根にのぼるが危なっかしい←高いとこ怖い・一回目は失敗して神頼みしてたり。なりは女鼠小僧ふう。
*火野正平ハマりパターンは「おっ母」「女と涙の別れ」などがいい味だが、新仕置の死神との交流に見られるように男友達も捨て難い。子犬のように懐きけっして裏切らない正ちゃん、今回は涙を見ずに笑って見送るハッピーエンド、でもちょっと物悲しいへんが妙味。


第9話 親の仇 2004.1.20  監督/田中幹人

 探索方に二十年も巣食っていた大鼠の口から、お染の二親が殺された経緯は全て明らかとなる。

随心院大玄関から薬医門

ロケ地
・江戸城イメージ、姫路城天守。老中・松平康任登城イメージ、南禅寺僧堂坂
・浜田藩江戸屋敷、随心院薬医門。家老の駕籠が出てくるのは拝観口から。
・吉川がお染を呼び大鼠が吐いた事実を告げる今井屋、白沙村荘夕佳門
・吉川とお染が大鼠を始末に来た刺客を引き連れ談判に赴く浜田藩邸、随心院大玄関(導入はクレーンショット)
・松平康任に呼ばれ家老は「急死」、老中職辞任と聞かされる吉川、相国寺大光明寺方丈(導入は座敷から石庭を見るアングル)
・下城の松平康任の行列、南禅寺僧堂坂。伊三郎と音次が三門下にいて、音次が参道から行列を凝視するお染を指さす。
・吉川に別れを告げるお染、沢ノ池東岸(このあとお染が「気の病は大川に捨ててきた」と発言、大川設定らしい)
・蝦蟇の油売りをしている新十郎がお染を呼ぶ、仁和寺水場(御影堂前や水場まわりに屋台あしらい)
*浜田藩主で現老中の松平康任に林与一。
*仇を討てず歯噛みするお染を大喝する新十郎、「まだ俺たちの出番じゃないの」と彼を抑える甚六がいい味。


第10話 迷子石 2004.1.27  監督/井上昭

 ある者は転機を迎え、ある者は去り、終劇に向かう。
ひとつ残った懸案の、生き別れた兄さんの件にもカタがつく。

中ノ島橋

ロケ地
・ならず者に因縁をつけられる呉服屋の娘を助ける新十郎と彦四郎、上賀茂神社ならの小川
・橋の上で荷車を修理している彦四郎に声をかけるお染、中ノ島橋(導入、人が小さく見えるほど極端なクレーンショットで真上から)
・笹原のダンナが「冷戦」の理由を告白する堀端、八幡堀堀端(明治橋上手)
・伊三郎に阿賀山藩潰しに加担したか問い詰めるお染、大覚寺遣水跡芝地(木の根方に安曇野の道祖神に似た双体仏あしらい)
・音次が耳打ちしていった迷子石を見に根津権現に走り入るお染と新十郎、今宮神社東門(内側から)。迷子石は稲荷社脇に。
・「兄さん」と呼ぶお染の声を虚空に聞く旅空の伊三郎、山室堤道(堤外地から北望、堤内地の畑には稔りの麦)
・旅ゆく菊川座に声をかける音次、琵琶湖西岸松原(舞子浜)
・ラストシーン、お染に飯をたかる新十郎、中ノ島橋
*圧巻は元の稼業を告白に来て新十郎にタコ殴りされる伊三郎、途中から雨降り出し泥濘のなかぐちゃぐちゃボコボコの「男の戦い」。
*お染が一座に拾われた当時の話をする甚六、根津権現に兄さんを探しに行かされたけどダメだった・迷子石に書付を貼ってくればよかったとの発言がラストにつながる。


2006/8 時代劇専門ch放映時若村麻由美インタビュー 覚書

・七変化は若村氏自身の提案(トータルで17変化)。
・お染が献残屋でくるくる回す染付の大皿、井上昭監督の私物の骨董品でヒヤヒヤ。
・凝った衣装に結髪/衣装は必ずどこかに桜をあしらい、髷は新工夫の下がり端をそいだ「お染」髷。
・愛之助と演じた曽我兄弟(第9話)、若村氏の歌舞伎メイクは愛之助手ずから。
・若村氏一番お気に入りのシーン・山出し下女化けは下にタオル重ねて表現。水撒きでの腰振りリズムは「マロニーちゃん」の中村玉緒写し。
・お染の太神楽は実際にやっていて特撮や合成はなし、難技「花駕籠」の釣鐘フィニッシュは一発OKだったこと。
・第1話「道成寺」の舞台に曲者乱入後やっつけて復帰のくだり、大向こうからかかる「いよぉっ夜桜お染!」の声は能村庸一氏。


*放送日はフジテレビ公式ページを参照させていただきました。

・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧 ・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ