黒土三男監督作品 2005.10.1東宝
まだ前髪の少年・牧文四郎は、世継をめぐる騒動で尊敬する父を亡くし辛酸を舐める。元服した彼は父を死に追いやった家老に呼ばれ禄を復され御役を頂くが、裏にはまたぞろ持ち上がったお家騒動の捨て駒に使う奸計、しかも的は彼がかつて淡い思いを寄せていた、今は殿の側室となった隣家の娘なのだった。
ロケ地
・里の風景はほぼ山形ロケ、赤川水系の流れや雪嶺、海浜はじめ父の遺骸を乗せた大八を牽く坂など、心に沁みる印象的な風景が続々。ことにおふくが蛇に噛まれる普請組組屋敷裏手の小川は、原作冒頭にある熱の入った描写をよく現出させた出色のロケーション(立谷沢川水系と思われるが確信無し)。
・道場の帰り道の城下の橋(原作の「行者橋」か)、彦根城大手橋。
・捕われた父が留め置かれている竜興寺へ赴く文四郎、出羽三山神社。
・寺の門や境内は湖東の西明寺(二天門、本堂前。塔も映り込む。また後段出てくる殿の別邸・欅御殿外観も同所で、表参道石段と庭園入口の門が使われている。ラスト、おふくの駕籠を見送るのも参道)。
・欅御殿の死闘のあと「おふく様」と赤子を連れて船で城下の警戒網をやり過ごす五間川の掘割、八幡掘新町浜、白雲橋(この橋上に悪家老一派の見張りが出ていて与之助の機転で切り抜ける)。
・駆け込み先の元家老屋敷に近い路地で思いを確かめ合う二人、随心院裏土塀。
・悪家老・里村邸の玄関を罷り通る文四郎、随心院大玄関。
*原作設定からはばっさり切られている部分もあるが、小説を読んで脳裏に浮かんだ情景を裏切らない絵づくりがいい。文四郎・逸平・与之助の三人組は少年時代のも青年期のもなかなかにハマったキャスティング。
参考文献 藤沢周平著「蝉しぐれ」文春文庫 |