2006/9-10月 NHK木曜時代劇
第1話 大工魂 2006.9.7
お話は、広範囲を焼き尽くした大火からはじまる。双親を亡くし大留を再建する重責を荷うことになった若棟梁・茂次は、近視眼的な態度で周囲に眉を顰めさせるものの前向き。そんななか下働きのりつが被災児を九人も抱え込み、子らの起こすトラブルに町役が捻じ込んでくる。
ロケ地
・大火で大留も焼けたことを川越で普請中の若棟梁に知らせに走る九郎助、流れ橋〜酵素崖からダート〜桂川松尾橋上手右岸汀。
・両親の死を聞くも川越の仕事を終え茂次らが帰途につく一月後のルート、嵐山自転車道〜酵素ダート(河川敷から見上げ)〜流れ橋(このあと一面の焼け野原のセット)。
*疲れて寝てるのに騒いでうるさいし、孤児の面倒はお上が見るべき・そのために税金払ってんだからというスタンスの茂次だが、役人を連れて捻じ込んできた町役の何事もお上のお指図通りにの一言にカチンと来て深間に入る。
第2話 大吉 2006.9.14
逃げた三人を捜し回るうち、子らの生きてきた過酷な環境が明らかとなる。茂次とおりつの会話は積み重なり、二人の仲は幼い頃のようにほぐれてゆく。
ロケ地
・水遊びの子らの中に家出組を捜す大六、上賀茂神社ならの小川。
・菊二が元いた長屋で聞く、養親のニセ坊主と「営業」の菊二、伏見稲荷千本鳥居。
・その長屋からの帰り道、養親の坊主を見殺しにしたなんて嘘だと主張するおりつ、大覚寺大沢池北辺並木。
・茂次もきっと子供たちと仲良くなれると話すおりつ、中ノ島橋〜堀端(左岸堰堤脇、石仏あしらい)。
・施主に親戚筋から横槍が入ったと聞かされる普請場、大覚寺護摩堂脇。そこからの帰り道、放生池堤。
・家出組がねぐらにする船は松竹京都撮影所セットの太鼓橋下。
*家出組が戻ってこない間も、残ったお子たちはかっぱらいをやってのけまたぞろ捻じ込まれるのだが、「泥棒」のひとことにまた茂次が噛み付き。喧嘩腰の「説得」に折れる八百屋の木下ほうかがおかしい。西田健の町役は苦虫噛み潰しを崩さない。*おりつとおゆう、双方の「現在」のスタンスが描かれる段で、「少子部」のタームとサブタイトルの「大吉」の石の挿話が出る。
第3話 願い事 2006.9.21
叔父貴筋に頼みごとをしに行って噛み付き、酒肆では腹をすかせた子を見て父親の浪人と口論、その子を押し付けられて協議の席で啖呵、茂次の癖はやまない。そんな暮らしのなか、茂次に対するおりつとおゆうの温度差が見え始める。
ロケ地
・夜中に無縁塚に参り手を合わせる茂次を見るおりつ、化野念仏寺(石仏群に灯あしらい)。
・大留の普請場の火を見て大火のトラウマが出た菊二が佇む水辺、桂川松尾橋下手右岸水制上(染物干し場あしらい)。
・養父を見捨てたようにとられたことを思い出し発作的に水に入る菊二、広沢池東岸。
*子を置き捨ててゆく浪人に火野正平、澤茂へ子を連れてくるも自分ばかり呑んでいて空腹の子に頓着しない態に茂次がつっかかる設定。沖石主殿は同じ山周の、ぶらり信兵衛の原作となった「人情裏長屋」に出てくる、やはり子を置き捨てる浪人。原作では赤子の鶴之助、ここでは八歳。金に詰まると道場破りっていうのは信兵衛さんのほうだけど、妻を亡くし仕官に懸命な設定は原作の沖石浪人と同じ。
第4話 絆 2006.9.28
お話のヤマは二つ、茂次が仏壇をそのままにしている本当のわけを知るおりつと、捨てた子を貰い受けに来る浪人。近付き寄り添ってゆくおりつと茂次の心、その反面おゆうは悉く外部から経緯を見ることになる。
ロケ地
・鶴の住んでいた長屋に赴く途中の子ら、桂川松尾橋下手右岸水制(干し場)。
・亡くなった大留の大工二人の法事が行われる源心寺、神光院中興堂(内部も使用)。
・法事のあとおりつが茂次を険しい目で見てつんけんした態度をとる墓地、化野念仏寺石仏群(灯入る)。
・子らが近所のガキどもと喧嘩の野原、大覚寺遣水跡芝地。負けたあともっと早く加勢していたらと呟く鶴、大沢池北辺水路汀(船あしらい)。
・鶴が父に仕官の祝いを述べる墓地、化野念仏寺。
・見送られ父と旅立つ鶴之助、大覚寺遣水跡芝地(焼けぼっくいあしらい)。父子が行ったあと脇から見送りに飛び出してきて泣き声で強がる茂次、大沢池北辺並木道。
*大留の看板をカタに福田屋から金を借りるくだり、「利息が付く」の段で平泉成が娘に目くばせしその後おりつを凝視するさまが映像化されている。*鶴坊を返すに当っては「人情裏長屋」を踏襲するが、信兵衛さんでなく茂次風味にするためやりとりを少し膨らませてあり、ここで澤茂女将の江波杏子が利いてくる。茂次を納得させる設定にしてある沖石主殿の火野正平、正八や辰三郎を演じていた若い頃はもちろん、本作での「坊や哲」風味の寡黙な男もなかなかの味。
第5話 明日への夢 2006.10.5
飯櫃の底が見え、気をつかった子らはお貰い詐欺をやらかす。この件でおゆうは疎外感を強め、次いで菊二の視線を誤解していたおりつは絶望する。おゆうは自ら縁談をご破算に持ってゆき、茂次は戻ったおりつに不器用に求婚するのだった。
ロケ地
・雨宿りのおりつ、上賀茂神社奈良社。菊二が傘を持って迎えに来ておりつの胸元を嗅ぐ、ならの小川畔。
・大留を飛び出したおりつが再び勤める茶屋、宝厳院通用門。
・おゆうが茂次とお参りに行き別れ話をする神社、北野天満宮(お参りは地主社、別れ話は本殿裏手)。
・子らが茂次を父と呼び駆け寄るラストシーンの野原、不明。
*長門裕之、商家の旦那で登場。詐欺ガキに大目玉食らわせたあとお小遣い呉れる。
キャスト覚書
若棟梁は小澤征悦、おりつに上原多香子、おゆうに奥菜恵、父母に蟹江敬三と平淑恵、大留の古株大工に益岡徹、許婚者の父親の質屋に平泉成、町役に西田健、酒肆・澤茂の女将に江波杏子、親戚筋に本田博太郎。
美術監修は西岡善信。
参考文献 山本周五郎著「ちいさこべ」 新潮文庫
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