三隅研次監督作品 1965.1.13大映
仇討ち真っ最中の女に助けを求められた狂四郎は、望みのものを与えるという女の言葉を聞き介入。しかし夫の恨みを晴らし家名を復す天晴れ貞女と見えた女は、実はとんだ使命を帯びた冷血の女。大藩の家老が仕出かす悪事も豪商の都合も知ったことではない狂四郎だが、か弱き者に魔手が伸びるのを放置できる男ではなかった。
ロケ地
・仇討ち現場に行き合わせる冬ざれの田地、亀岡か(田には霜がおりている)。
・仇を討った檜垣ぬいと共に赴く藤堂藩江戸屋敷、仁和寺本坊表門、大玄関。
・吉原裏の浄閑寺、不明(墓地)。
・札差の鳴海屋が置いていった女・小笹を藤堂藩江戸家老のもとへ駕籠で連れてゆく路地、不明(大寺境内の路地ふう石畳、角地に腰板塀の蔵)。
・鳥羽水軍の末裔が隠れ棲む品川の漁村、琵琶湖畔(遠景の砂州と汀の植生から判断。湖西か湖東かは不明。漁帰りのおりょうとやり合う水辺には、葦のほかヤナギが群生)。
・鳥羽水軍末裔の最後の一人である下働きの健気な娘・かよを狙った檜垣ぬいを阻止したあと、彼女の夫の法要が行われる寺へ乗り込む狂四郎、永観堂。ぬいや藤堂藩江戸家老に藩士らが僧侶に続き進む廊下は御影堂裏手廊下、ぬいの悪行を指弾する狂四郎が回廊から現れる。家老の命ではじまる立ち回り、臥龍廊を駆け上がり開山堂へ通じる高みでチャンバラ。さまざまなアングルで撮られていて、上手に塔がのぞき、諸堂の甍が映し出され、ピントは合っていないが市街地遠景も入っている。死屍累々の剣戟は御影堂正面へ移動、ここで家老を討ち果たす。
この間に狩場で鳴海屋の通報を聞いた藩主が馬を走らせ駆けつける道が挿まれていて、下鴨神社の馬場。家老の助勢に駆けつける一隊は阿弥陀堂への石段を駆け上がり、やって来た藩主に制されるのは御影堂前(家老個人の悪行で切腹を命じた・他の死者は病死と宣言する藩主は狂四郎の嘲笑を買う)。
・ラストシーンは冒頭の田地と同じ、ぬいが声を掛けるや狂四郎の刀が一閃。
*家老の手先で鳥羽水軍の末裔を探るスパイの檜垣ぬいに中村玉緒、かよを殺しに来る際の目つきは血も凍る怖さ。冒頭「仇討ち」でぬいに殺される、実は鳥羽水軍関係者の浪人に伊達三郎、尺は短いが存在感たっぷり。妙にぬいを庇い立てする、色香に迷った男の一人の藤堂藩家中の腕利きに上野山功一。鳥羽水軍から取り上げた財宝を私し、末裔を全て始末にかかる悪家老は安倍徹。家老とつるんでいては危ないと踏み狂四郎に接触する札差・鳴海屋は西村晃、藩主にチクったタイミングを自慢・かよに会って上機嫌なのを怒らせたり、直後役人に捕まってたり。偶然鳴海屋の下働きをしていた末裔の一人・かよは姿美千子、再びやって来た狂四郎を見て「お侍さんまたお腹空いたの?」が可愛い。鳴海屋が狂四郎に仕込んでくれとか言って差し出す「身分の高い女」で実は妾の小笹(あとで気の毒な結末)の入墨、乞胸お雪の「まさぐり金太郎」にそっくり。
|