1970年 4〜9月 NET/東映
キャスト
土方歳三/栗塚旭 近藤勇/舟橋元 沖田総司/島田順司 井上源三郎/北村英三
永倉新八/黒部進 原田左之助/西田良 斉藤一/玉生司郎 藤堂平助/平沢彰
島田魁/波多野博 松原忠司/小山田良樹 山崎烝/中野誠也 河合耆三郎/香月凉二
山南敬助/河上一夫 清河八郎/御木本伸介 芹沢鴨/名和宏 新見錦/飯沼慧
伊東甲子太郎/外山高士 篠原泰之進/高角宏暁
榎本武揚/横森久 大鳥圭介/長谷川明夫 松平太郎/中田博久
七里研之助/亀石征一郎 佐絵/赤座美代子
裏通り先生/左右田一平 伝蔵/小田部通麿 お雪/磯部玉枝
第1話「新選組前夜」1970.4.1
疫病の流行で二進も三進も行かなくなった町道場は、降って湧いた浪士隊結成話に乗り道場主以下全員大挙して京へ。金策に走る歳三の段で、彼の周囲と行く手に待つ因縁を語る。
ロケ地
・麻疹の猖獗で惨憺たるありさまの小石川伝通院周辺の描写、伝通院に随心院薬医門、門前を行き過ぎながらボヤく同心は今宮神社東門前から参道を行き、セットの天然理心流道場前へスイッチ。
・日野へ金策に赴く歳三が渡る橋、穴太橋(橋たもとに半鐘の櫓あしらい)。里へ向かう歳三は橋から続きの府道406号西条風の口線を西へ。日野の里イメージ、竜ヶ尾山から穴太の里見下ろしの遠景。姉の婚家・佐藤邸はこの付近の民家か。帰る歳三を呼びとめ、夜に会いたいと約束を取り付ける佐絵のくだりも穴太橋。
・約束の神社に赴く歳三、木島神社(舞殿前石畳、摂社)。
・たばかられたことを覚った歳三が佐絵を詰りに行く六社明神社家屋敷、毘沙門堂方丈西塀から侵入。佐絵を鐺でいたぶるのは方丈玄関。駆け戻ってくる七里は薬医門から。
・清河の檄に応じ続々伝通院に集まってくる浪士たち、随心院薬医門。
・江戸最後の夜、七里の呼び出しを受けた歳三が彼とやりあう堀端、彦根城佐和口多門櫓前堀端。
*佐絵に赤座美代子、七里研之助に亀石征一郎、之定を購める古道具屋の奇怪な親爺に加藤嘉。
第2話「春の月かげ」1970.4.8
清河八郎を「勘」で悪人とした歳三に近藤も同調、新党を樹てる方向で進み、会津への伝手のため嫌々芹沢を引き入れる。清河が去った京で近藤派は隊士徴募をはじめるが、刺激された芹沢派がまず着手するのは押し借りだったりして、齟齬は隠しきれない。
ロケ地
・京イメージ、嵐峡左岸から渡月橋を望む川面/清水寺全景/御所塀/黒谷墓地と塔/白川巽橋(白川女あしらい)/黒谷三門下石段(雲水あしらい)。
・壬生村イメージ、亀岡の里の民家や路地を多用。オープンセットと組み合わせて使ってある(写真は一例)。
・清河が入っている浪士隊本部の新徳寺イメージ、一様院山門。
・新見に飲食代の掛け取りに来た女が村の子と遊んでいる沖田に道を聞く小川、上賀茂神社ならの小川(神事橋下手の川へ入って沖田が魚とり)。
・会津本陣、金戒光明寺方丈玄関。
・芹沢・土方コンビが清河を襲撃する市中、中山邸参道をセットと組み合わせて。
・隊士徴募に各地へ散る近藤派、源さんらがゆく街道筋は東高瀬川堤・松本酒造酒蔵前。
・おもちゃにした掛け取り娘を性懲りもなく追い回す芹沢の下っ端、行き合わせるも手を出せぬ総司が娘に罵声を浴びせられる池端は大覚寺大沢池堤。
*清河と一同が去ったあと、八木家家宰・伝蔵の「ウチだけなんで」が笑える。
第3話「三条木屋町・紅屋」1970.4.15
続々と増える隊士、着々と整えられる体制。そして勇猛果敢な土方・沖田の活躍で会津中将からは褒賞金が下されるが、事件の裏に哀しい女がいることも気にかける、「男の中の男」たちなのだった。
ロケ地
・壬生の情景、梅宮大社東参道(水路端〜蔵の前、急ぎ走る大工とすれ違う白川女は神苑南通用門の方へ・花籠のアップのあと撮影所セットへスイッチして伝蔵がボヤくうどん屋へ。このシーンに先立って新入の浪士らが料理屋の下女に道を聞くくだりがあり、中ノ島橋〜後段意味を持って出てくる「紅屋」の「錦」が映るが、壬生近辺イメージか単なる洛中イメージか不明)。
・京における幕府の備えについて語るくだり(隠し城云々のエピソード)、二条城は濠と東大手門(内側)、知恩院は三門と男坂に北門、金戒光明寺は三門と本堂〜禅道場が映し出される。
・会津藩公用方の外島に苦言を食らった近藤土方がゆく帰り道、随心院長屋門前(気を利かせて影供を決め込んでいた山崎が拝観口前の木の陰から出てくる)。
・巡察に出た土方と沖田がゆく夜道、祇園・白川畔。公家侍が斬殺されるのは白川新橋たもと(今もある「掲示板」が高札代わりになっていて手配書など貼ってある)。犯人の長州者を追う土方らが渡る橋、中ノ島橋。犯人の浪士たちが気勢を上げていた三条木屋町の料亭・紅屋、嵐山公園料亭・錦。
・長州藩京屋敷、御所管理事務所東門。
・会津からお褒めを頂いて帰り道の土方と沖田に殺到する長州者、随心院参道。
・京の夕景イメージ、八坂の塔か。
*既存の組織に手本を見出せない土方は、松本良順門下の裏通り先生に西洋の話を聞き形を作ってゆく設定。
第4話「里御坊の女」1970.4.22
隊旗が出来上がり、粘り勝ちで大砲も貰い隊士も益々増えて順風満帆の日々。しかし浪士狩りを進めるうち引っ掛かってきた怪しのアジトに巣食っていたのは、多摩のしがらみだった。
ロケ地
・「鞅掌録」の記述を語るナレーションに被せ市中巡察の隊士たち、八坂神社西楼門〜絵馬舎越し境内〜本殿北の境内路地、金戒光明寺三門下石段、下鴨神社参道石橋〜河合社前。
・薬を勧める裏通り先生に怒って出てきた沖田がゆく道、下鴨神社境外路地・泉川畔。
・お薦さんで張り込みの山崎らが突き止める不逞浪士のアジト(設定は宝鏡寺門跡の里御坊、大仏裏)、法然院山門。立派な侍のなりに変えてアジト近くの茶店の主に里御坊の様子を聞き込む山崎、今宮神社東参道門前茶屋・一和。彼の前を通り過ぎた佐絵はかざりや西塀を南へ。
・佐絵が長州の大物と会う茶屋、下鴨神社境外・泉川畔の建物。後段、ここで自刃した佐絵と、土方に斬られた七里が運ばれてゆく橋は境内・泉川に架かる小橋〜泉川左岸。
*原作ではフェイドアウトする佐絵、十行余の記述を膨らませお話を作ってある。また原作ではけっこう後々まで祟る七里はここで佐絵とからめて決着、土方に片腕を落とされて以来人が変わり、無為の日々を送り佐絵に焦燥を抱かせる設定。*体をいとえと構う裏通り先生を煙たがる沖田、斬り合いのあと早や咳き込むさまが描かれる。
第5話「祇園・島原」1970.4.29
洛中の商家に白昼大砲を放つという挙に出る芹沢、遂に会津から粛清の内意。軍師の新見を失った芹沢は荒れるばかり、雷鳴凄まじい夜に消える。
ロケ地
・大砲を持ち出し大和屋へ向かう芹沢一派、梅宮大社東参道(止めに行き押し問答の島田魁は蔵と薬屋の前)。
・新見が密かに赤沢と会う料亭、祇園・白川左岸沿いの料亭。出てきた赤沢を尾行する山崎、白川畔(辰巳大明神付近で路地へ、このあとセットにスイッチ)。
・赤沢が斬られる千本松原、下鴨神社河合社裏手。
・近藤・土方が会津公用方の外島に呼ばれ芹沢の件で因果を含められる庭、不明(嵐亭か)。
・芹沢暗殺後、誇らしげに誠の旗をかざし市中をゆく巡察隊(藤堂と永倉)、撮影所セット〜梅宮大社東参道(主題歌が被る)。
・赤沢が死んだことを知らぬ馴染みの芸者が屯所を訪ねたと知り駆け出す山崎、梅宮大社東参道(走る山崎に声をかける沖田は神苑南通用門前・立ち止まる山崎は薬屋前)。二人駆け上がる坂は黒谷墓地石段、赤沢の墓前で死んでいる芸者は文殊塔脇の墓地。
*赤沢を山城浪人設定に変え、言い交わした芸者の件で新見に大和屋の情報を伝えた話を入れてある←隊規違反で新見に詰腹。
第6話「残陽奈良街道」1970.5.6
不逞浪士の的にされる新選組、後詰の隊士が斬られた事件の裏には内通者。卑劣な者たちにも相応の理由、それを沖田が病を自覚する経緯にからめてある。
ロケ地
・薬草を山ほど採ってきた裏通り先生が、土井の家族に新選組への道を聞かれる市中、下鴨神社境外・泉川畔。
・一人歩きの総司を襲う浪士たち、随心院。拝観口前をゆく総司を尾行する浪士が「隠れる」のにちょっとした建物をあしらってあり、襲撃は長屋門前。一旦駐車場へ通じる路地へ総司が駆け入り、再び戻り参道を西へ逃げ去る。以降おはまに助けられる井戸のセットへスイッチ。
・土井の仇を討ったあと遺族へ報告に奈良へ向かう永倉がゆく街道、一部中山池堤(先に映る道は谷地田脇のような風景)。里と墓はセット。
第7話「鬼の通る町」1970.5.13
気さくな源さんや穏やかな沖田を見て、新選組を鬼という町の噂は嘘と、夫の入隊を寿ぐ女。しかし峻烈な隊規を持つ集団は、やはり鬼でしかなかった。
ロケ地
・湯葉料理を食べに行く源さんと沖田が通る神社、今宮神社稲荷社脇〜舞殿前石畳〜石橋(遊ぶ子らを迎えに来た母親が「新選組の怖い鬼が来る」と帰宅を促す)。
・大原女が通る川端をゆく二人、上賀茂社家町・藤木社前。
・新入隊士・杉田が面会に来た女房と散歩する川べり、上賀茂神社ならの小川畔(杉田切腹後、仇を討ちに出てゆく源さんを裏通り先生が見るのも同所)。
・不逞浪士のアジトへ斬り込んだ源さんを助勢にやってきた幹部連が外で戦闘の川、上賀茂・明神川。
・杉田の女房に鬼と詰られた源さんが寂しそうに歩く道、桂川羽束師堤(里の道はこの付近の田畔か。ED背景は羽束師堤から見た西山の山なみ)。
*源さんの年寄り臭い好意が最悪の方向へ転がる悲劇、杉田が潔く腹を切るのもまた哀れ。源さんの危機に息せききって駆けつける幹部連が傑作。*湯葉料理の板前や不逞浪士に「め組」メンバーがいて楽しい。
第8話「月明無名小路」1970.5.20
プレ池田屋、枡屋に一話を割く。監察が目をつけ近藤土方が乗り出して、というメインの筋に、枡屋従業員の男女の哀話を挿入。布石としては、新選組の仕事にすると意気込む土方が目立つ。
*ロケなしセット撮り。古高拷問シーンは描かれず、結果のみナレーションで。
第9話「京三条 池田屋」1970.5.27
池田屋本編、当の旅籠へ潜入する山崎にウェイトが置かれ、気に掛けてやった女中の亭主が一味の浪士という悲話を入れてある。方針決定に際し、大博打だ俺の勘だとギョロ目をむく歳さんがなかなか。
ロケ地
・浪士たちの企みと情勢を語る段のイメージに御所大路と姫路城天守。
・試衛館メンバーは病気知らずと軽口を叩きながら歩く裏通り先生と伝蔵、八坂神社か。変装中の山崎が二人を無視して去る道、ねねの道か。三条大橋を渡り池田屋へ向かう山崎、渡月橋。
・池田屋の女中・おえんの家、溜池畔か。後段では狭い路地も。
・池田屋討ち込み当日、祇園会所へ集まる隊士たちの情景に挿まれるイメージ、清水寺全景、三条大橋見立ての嵐峡から見た渡月橋。池田屋でのチャンバラ、外での戦闘風景の一つに石塀小路に似た路地。
*おえんの亭主は播州浪人・大高忠兵ヱだが、「血風録」にある赤穂浪士がらみの因縁話はなく、おえんに親切にしてくれた薬屋さんに律儀にお礼をする穏和な侍。一人赤子を育て苦労してきたおえんが、やっと所帯を持てると山崎に幸せそうに話すのが討ち込み直前。おえんは御影京子、新選組引き上げ後池田屋に駆け込む彼女が止め画になる。*池田屋の立ち回り、咳き込む沖田にかかって行き返り討ちに遭う浪士に福ちゃんチラリ。
第10話「堀川の夜雨」1970.6.3
運命の女・お雪と出会う歳三。長州の進軍で情勢緊迫する戦いの前夜、堀川沿いの家で二人だけの静かな時を持つ。
ロケ地
・会津本陣を辞する土方、金戒光明寺禅道場前〜東坂を降り西へ(石垣の角を曲がるシーンでは背後に極楽橋が映り込んでいる)。
・浪士らが一人歩きの土方を襲う二条河原町、随心院長屋門前〜参道塀際〜薬医門(薬医門前には町なみを表現した壁があしらわれている)。
・人の出入り慌しい長州藩京屋敷、御所管理事務所東門(張り込みの山崎が宗像神社南の芝地に腰掛け)。
・元の家にいられなくなったお雪のため借りた堀川沿いの家、堀川は疏水分線・大豊神社御旅所付近を使って表現(友禅流しの川面を先に映し、疏水河床に作業中の職人をあしらい)、河畔林にカメラがパンし暗転→セットのお雪の家の縁側にスイッチという趣向。
・長州藩兵来るを大坂から京へ知らせに走る早馬、木津堤。
・嵯峨・天竜寺に集結する長州軍、大覚寺参道コーナー部分からクレーンで宸殿白州を映し出す(参道には篝火あしらい、宸殿白州には幔幕めぐらせ人数を入れてある)。砲が持ち出されるシーンでは参道石橋も。
・禁門の変前夜、沖田に焚きつけられお雪を訪ねた歳三が帰る夜道、疏水分線・哲学の道(現在板塀はなくなっている)。
*ドラマではもう七里いないので襲撃は単に浪士たち、お雪との出会いの時点も大幅に変更されている。お雪とのやりとりはほぼ原作通り、長州と通じている番所を避ける心遣いでお雪の人となりをうまく表現。
第11話「真葛ヶ原の朝霧」1970.6.10
谷三十郎の話、禁門ノ変で戦いの場に出られず苛つく土方のくだりからもう、谷のイヤげな振る舞いが描かれている。大恥をかくところだった谷を助けて重傷を負った若き隊士は、非難めいたことを一切口にしないが、他ならぬ祇園の芸妓の口から漏れる、京らしい逸話。
ロケ地
・伏見に駐屯する新選組のイメージに宇治川派流と酒蔵。京から状況を知らせる早馬が疾駆するのは東高瀬川堤・松本酒造酒蔵前。
・祇園町をゆく谷、白川畔石畳。上がる料亭は白川左岸沿い。配下の三谷を祇園見物に連れてきた藤堂が欄干に腰掛けて話す橋、白川新橋。谷が芸妓のことでさる藩士に突っかかるも人数が出てきて形勢逆転、居合わせた三谷が谷に嘘をつかれて刃傷におよぶのは辰巳大明神脇。
・谷への刺客となる藤堂と原田、真葛ヶ原の谷の休息所と周辺は下鴨神社泉川畔と境外を使って。斬られ息絶える谷のシーンは泉川汀を使いスモーク焚いて「朝霧」を表現。
・丹波へ帰る三谷がゆく山道、谷山林道(切り通しのほか、高所より遠望のカットも)。
*三谷は住吉正博、九分九厘ダメの彼を助ける裏通り先生がカッコいい。これでまた、早々と焼香の用意なんか申し付ける谷が強調されて思いきりイヤげな感じに。
第12話「策士」1970.6.17
入隊前から乗っ取り策を講じていた伊東甲子太郎だが、嗅ぎつけられたと知るや尽くしてくれた門下生夫婦に刺客を送る。腹を読んだ土方の視線が伊東に突き刺さる。
ロケ地
・伊東甲子太郎一行がゆく街道、流れ橋。
・伊東に会いに近藤の興正寺下屋敷へ赴く山南と藤堂、随心院山門〜参道。屋敷は塔頭。
・亭主が斬られたあと、伊東に会いに来たおけいが、商人のはずの山崎の隊服姿を見て屯所を走り出て泣きながらゆくのを見る裏通り先生、上賀茂・社家町、藤木社付近。巡察中の沖田が放心して足袋はだしで彷徨うおけいを見る川端、上賀茂神社ならの小川畔。おけいがふらふらと渡る橋、流れ橋。
*見せ場のひとつは、なかなか尻尾をつかませない伊東の策が、裏通り先生と伝蔵の与太話から露見する段。山崎監察鋭すぎ。
第13話「近江の宿」1970.6.24
山南脱走・切腹の話。沖田と土方の会話で「嫌われ者を引き受ける副長」が語られ、その役割のまま「蛇蝎」は皆の嘆願をはねつけて軍規を守る。
ロケ地
・山南が過激浪士の襲撃を受ける島原帰りの道、梅宮大社門前水路端〜東参道(楼門前〜神苑前、浪士は神苑から殺到・開口部には「塀」をあしらい。駆けつけた島田と松原が浪士を追い散らすのは薬屋と蔵の前)。
・嵐山に遊ぶ山南と沖田、嵐山イメージは桂川左岸・臨川寺前の堰堤から渡月橋越しの嵐山にカメラをパン。嵐峡右岸から対岸を望む画が出て、建物が尽きるあたり・亀山公園の裾の汀に張り出した「床」で山南と沖田が談笑。
・脱走した山南が滞在している大津の宿、琵琶湖畔(室内のシーンは屋内セット、遠景に三上山を表現とおぼしきシルエット)。
・山南切腹後、まだ事実を知らぬ明里がゆく壬生界隈、梅宮大社東参道(夕景)。
*明里は出るが駆けつけての愁嘆場はなし、切腹も生々しい表現はなく介錯を終えた沖田の憔悴ぶりで表現。
第14話「壬生・星あかり」1970.7.1
壬生からお西さんへ引越し、この際発覚する間者。彼が隊士になりおおせるために消された男の消息は知りようもなく、深い喪失感が残される。
ロケ地
・引越しの荷駄が慌しく通る壬生村の情景は2話で出た里と同じ。
・引越し先の西本願寺、塀越し外観や太鼓楼。屯所の看板が掛けられる門は大覚寺明智門。事務に忙殺される河合、井戸はどこ厠はどこと質問攻めにあう屯所内部の情景は大覚寺宸殿廊下や回廊。台所が間に合わず外で煮炊きの隊士たち、鶏モモなんか焼いて寺僧の顰蹙を買う門は随心院薬医門。
・巡察に出る八番隊がゆく道、西本願寺山科別院・四宮川沿い塀際。
・八番隊伍長・山口の妻と義弟が訪ねてくるくだり、西本願寺大玄関門を映し大覚寺明智門にスイッチ。巡察から戻ってすぐ山口が外出したため待たされる二人、手持ち無沙汰な弟が沖田と鯉に餌をやる池は随心院か。
・「山口」と称する偽者が斬られたあと、夜道を悄然とゆく妻女、西本願寺山科別院・四宮川沿い川端。
*哀れな妻女は扇町景子、若い隊士から情報をとっていた怪しの按摩は汐路章。*裏通り先生が移転についてきちゃうのは近藤の要請。隊士が去った翌朝、つい習慣で百人分のご飯を炊いてしまう八木家の逸話もおかしい…伝蔵も帰番する面々を迎えるつもりで早起きしてるし。
第15話「わかれ雲」1970.7.8
伊東甲子太郎分派の流れを、藤堂平助を芯に据えて描く。狡猾な伊東の計略に加え、山南の言葉ともう一つ、図らずも斬ってしまった哀しい縁が彼の背を押す。
ロケ地
・山南の墓に参る藤堂、佛光寺本廟総門内側・茶所と周辺。山南の墓標は墓地にあしらい、隣の良恩寺の甍を背に。帰り道の坂は粟田神社参道。
・屯所イメージ、西本願寺太鼓楼。
・伊東が公然と入ってゆく長州藩京屋敷、京都御所管理事務所東門。
・三浦の刀を購めたあと、たまたま刀屋にやって来た三浦の妹と歩く藤堂、京都御所・拾翠亭北塀際。彼女と別れて藤堂が渡る橋は高倉橋。
・伊東分派宣言・藤堂離脱後、沖田を誘って町をゆく土方が旅装の三浦の妹と行き会う道、嵐山公園料亭・錦前。土方が雲を指し一句捻る橋、中ノ島橋(川は増水、堰堤も背割も越流)。
*三浦兄妹と藤堂は墓参で何度か出会って互いに顔を見知る間柄、交流はないが互いにほのかな好意を持つ。この妹は鷲尾真知子。彼らの家へやって来る同志の一人は志賀勝、三浦は過激派の「先生」に師事。藤堂は三浦を斬ってしまったことを墓参の際聞く。*藤堂の離脱を聞いて肩を落し涙する近藤、片や土方は静かに怒張・即座に兼定を研ぎに出し凄味を見せる。*沖田の与太話で出る豊玉宗匠の発句、ラストにも出て橋上で詠む一句がタイトルの雲、季違いの五月雲を詠み込む土方の、外面と内面のギャップが見えて興味深い。
第16話「残月油小路」1970.7.15
かつて腹心に評された通り、才子は才に溺れ横死する。来なければいいのにと皆案じていた男はきっちり油小路に駆けつけてきて、節義に殉じると誓った男の刃にかかる。
ロケ地
・不動堂村屯所、門はセット、中の建物は不明(大きな破風のお堂、戸は蔀戸か)。
・高台寺月真院の御陵衛士屯所、看板を掲げた入口は大谷祖廟通用門。メンバーが降りてくる坂は高台寺参道の坂。
・大政奉還を語るナレーションのイメージに二条城本丸櫓門。後段出てくる同じくイメージでは空撮の二条城全景も。
・伊東が放った刺客に襲われる、堀川通をゆく土方、大覚寺参道(まず御殿川の流れを映し、大門前をゆく土方にスイッチ。堀端には今ある手すりが一部無い。駆けつけて斬り結んだあと咳き込む沖田は参道石橋)。
・近藤に招かれやって来る伊東、門のイメージに安楽寺参道石段越しに山門(原作設定は近藤の私邸、ドラマではいずことも語られず)。
・油小路はセット、建て込んだ市中で襲う設定で、待ち伏せる新選組がセットならではの演出で描かれる。いい気分で吟じながら歩く伊藤のくだりの塀は映画村内・広隆寺の塀か。
*藤堂を逃がすため斬りかかるも顔を背ける幹部たちの演出は「血風録」を踏襲、このほか「生まれ変わったらおまえのような」と沖田に言う土方も同じで、結束節が冴える。*裏通り先生特製・薬効もある酒の肴は大根とゲンノショウコとセンブリに梅干を加えた煮物…げろげろ。
第17話「落日の町」1970.7.22
大政奉還に続き王政復古の大号令、新選組が活動を自粛するや跋扈する天誅浪士たち。憂色濃く皆頭を垂れるなか、「逆境に強い」男は一人気炎を吐く。
ロケ地
・大坂へ引き上げる幕臣たち、二条城堀端(北大手門や隅櫓映り込み)。
・お雪の家を訪ねる土方、堀川は疏水分線・大豊神社御旅所付近(10話のバンクか)。
・天誅浪士たちが大暴れのあと町に会津を腐し長州を持ち上げる落首が出て新選組も終わりと噂する町衆を見るお雪、疏水分線端(民家映り込み、竹垣はあしらい?)。
・王政復古の大号令を語るナレーションのイメージ、二条城本丸櫓門、隅櫓、濠、全景。藩士の出入り慌しい会津本陣、金戒光明寺本堂前〜禅道場前。
・天誅浪士らが薩摩屋敷を出て伏見へ向かう道、松本酒造酒蔵前・東高瀬川堤(導入は対岸からロング、浪士たちの表情が映る場面は堤を見上げて・酒蔵は煙突もちらっと映り込む)。
・監察の調べを受けて伏見へ向かう土方らのくだり、伏見イメージに宇治川派流と酒蔵を映しカメラ左にパン・竹垣をナメて嵐山公園の錦にスイッチ(錦は浪士らが集う伏見の船宿設定、竹垣は錦の前にあしらわれている)。浪士たちを殲滅して引き上げる土方以下の新選組がゆく夕陽の帰り道、松本酒造酒蔵前〜中ノ島橋〜木津堤(堤をゆく人物のシルエット、堤下から見上げの遠景)。
*松原忠司情死のほか沖田が喀血して倒れ、隊士一同落ち込みまくり。あの人だけはと言われている土方は剣を抜きギョロ目、これがお雪さんの前に出るとデレデレで落差が笑いを誘うほか、何やら進展のご様子のくだりは思いきり微妙な表現がなされていて、やっと布団が映ったと思うと沖田の病床。*伏見斬り込みは山崎一人を伴う土方、気配に気付いてついてくる原田永倉も加わり、ほとんど多摩のバラガキの喧嘩。
第18話「京の町の夜」1970.7.29
新選組は伏見に布陣と決まり明日は出発の夜、隊士たちに朝までの暇が出される。青春を埋めた町に思い思いに散ってゆく男たち、新選組最後の「京の町の夜」。
ロケ地
・タイトルの落日イメージに夕照の渡月橋。
・王政復古の大号令の説明に被り二条城、本丸櫓門・濠・全景。
・屯所を抜け出して壬生へ向かう沖田がゆく道、上賀茂社家町川端〜石塀小路(咳き込んでいるところへ山崎が走ってくる)。
・壬生村へ着き子らに約束のおもちゃを与える沖田、上賀茂社家町藤木社付近の橋上。
・原田や永倉がいそいそと目当ての店へ急ぐ道、石塀小路と周辺の路地。河合が「妻」に見送られ屯所に帰るのも同所。
・八木家を辞し屯所に戻る沖田以下七人、上賀茂社家町〜ならの小川畔。
*子らとの約束を果たしにゆく沖田をメインに、原田永倉斎藤の面々が馬鹿を見る話や、監察部の手荒い総括など描かれ、古巣の八木家に集まる心優しきバンカラ男たちが明るく笑う分だけ、この先を思い物悲しい。
第19話「砲声」1970.8.5
伏見奉行所に陣を構える新選組、憂色益々濃く垂れ込めるなか、狙撃された近藤が離脱。戦国武将のような会津の爺さまが兵を率いて合流、年明けてまもなく戦端は開かれる。
ロケ地
・伏見へ向け行進する隊士たち、東高瀬川堤・松本酒造酒蔵前(対岸からの画もあり、北端の背の高い蔵がまだ無い)。
・二条城へ掛け合いに赴いた近藤が狙撃される竹林の道、北嵯峨か。一人馬で伏見へ駆け戻る道は東高瀬川堤。
・原田に約束した「お餅の札」を貰いに初参りにゆくおぎん、御香宮本殿(餅を包んだ紙に厳島大神の神名)。原田に届けにゆく道、東高瀬川堤。
・薩摩軍が布陣する御香宮、御香宮境内か。薩摩の砲兵が布陣する龍雲寺山、吉田神社大元宮鳥居前。伏見奉行所に向けて発砲のシーンは吉田山からのビューか。
・滝川播磨守が進軍する鳥羽街道、不明(堤道か、両に松林)。
*大まかには「血風録」を踏襲、ロケやセットも同じ場所が多数見受けられるが、原田が訪ねてゆく先や目的が違うほか、血風録では鳥羽伏見にて戦死した島田魁が誰もいなくなった醒ヶ井の屯所を守り斬り死に。
第20話「炎の戦陣」1970.8.12
白兵の突撃に降る砲弾の雨嵐、次々と斃れゆく隊士たち。劣勢目を蔽うばかりの戦況のなか、か弱き者を捨て置けぬ侍がいた。
ロケ地
・薩摩軍砲撃陣地、吉田神社大元宮前。御香宮吶喊シーンは当の御香宮境内か。砲弾の煙上がる市街戦はほぼセット、昔の映画か何かを重ねた効果も。
・退却の淀堤、馬を走らせる土方は東高瀬川堤・松本酒造酒蔵前。敗走の隊士たちが集合する河原、木津堤〜流れ橋と下の河原。戦死者を荼毘に付すのもこの河原。
*源さん、味方の砲が逃げ遅れた親子に向くのを止めようとして飛び出し戦死。裏通り先生は敵味方区別なく毅然として治療を続け、伝蔵さんの髭はますます濃くなる。ステレオタイプに描かれた薩摩兵を斬ったあと、舞妓呼んでのお座敷を夢想する新八っあんは豪気なのか呑気なのか。
第21話「波の入り日」1970.8.19
潰走のさなか一人またひとり斃れゆく隊士たち、やっと辿り着いた大坂城には将軍の姿無く、再戦の機会は失われる。その大坂でお雪を見た歳三は、照れながらも悪びれず、女がいると皆に打ち明ける。
ロケ地
・落武者狩りで討たれる隊士、伏見・宇治川派流酒蔵前堀端。船着き場へ急ぐ隊士たち、川堤か(高い堤、際に民家)。
・大坂城、極楽橋から天守。近藤が療養中の大坂城代屋敷、大覚寺明智門。大坂城内の描写は一部姫路城はの門下坂なども使う。
・城下の堀端でお雪を見かける土方、彦根城濠端・埋木舎前。「夕陽ヶ丘の一室」はセット、崖際まで海が寄せているように見える。
*新選組の旗のもとで死にたいと願う山崎の臨終に、戦場で拾った誠の旗を持ってくるのは伝蔵で泣かせる。皆を逃がすため命を張った河合の亡骸に敬意を示す薩摩の将校も泣かせる。
第22話「流離の日」1970.8.26
甲陽鎮撫隊壊滅後、原田・永倉と袂を分かち流山に布陣する近藤たち。官軍に包囲され戦が迫るが、近藤は狩り集めた若者たちの家族の嘆きを聞いてしまう。
ロケ地
・甲陽鎮撫隊の戦闘シーン、幼松の植わった荒地、不明。
・下総流山の「大久保大和」宿館となる酒造家の屋敷、芦浦観音寺(門のほか内部も使用)。
・伝蔵が流山にやって来るも官軍が封鎖している街道、不明。
・近藤が官軍に出頭する野道、追った土方が近藤の名を叫ぶ丘、饗庭か。
*近藤の別れの言葉はほぼ原作通り。「ついに、泣いた」とある土方、栗塚氏の涙は身も世もあらぬ風情の「泣き」。近藤が去ったあとを追い名を呼ばわるのは「血風録」と同じ。
第23話「沖田総司」1970.9.2
病いよいよ篤い沖田が暮らす離れを、懐かしい人が訪れ、去ってゆく。官軍は遂に江戸入り、彰義隊は破れ、土方は脱走軍に身を寄せ北関東に勇名を馳せる。
ロケ地
・沖田が療養の日を過ごす千駄ヶ谷の植木屋、走田神社社叢裏手にのぞく社務所の萱葺き屋根を見立てる。ここを訪れ帰る姉・おみつや土方が往来する橋は穴太橋、406号西条風の口線の橋前後も使われる。橋は木橋、道は地道。官軍の巡察隊も通る。
・江戸郊外・市川宿に集結した脱走軍の本営が置かれる寺院、随心院薬医門(イメージ)。軍議を終え出てくる土方、民家長屋門。新選組の生き残り達と宇都宮城を奪ると気勢を上げる本営際の塀、民家塀際。宇都宮城に吶喊する土方のくだりは、集団戦闘イメージと重ねた手法で、砲撃を受ける天守は大坂城に似る。
・京を思い出す沖田の回想、大原女がゆく町は上賀茂・社家町。お宮さんへ参詣に来る室町の商家の娘と話す茶店は八坂神社西門前の二軒茶屋(暖簾そのまま)、舞妓はんや遊ぶ子らの情景は祇園さんの拝殿や西楼門。
*裏通りと伝蔵は沖田を診て気遣うほか、情勢を語る役割を振られている。予感があったのか早暁植木屋の離れにやって来て「事実」を見たあと、沈痛な面持ちで肩を落とす裏通りの止め絵でお話が締めくくられる。「その前夜」沖田に会いにやって来た土方、泣き入らず淡々とした二人が視る者の袖をしぼらせるが、敵うようよの江戸に派手な陣羽織着て馬を駆るのはアブない歳さん。
第24話「北へ」1970.9.9
脱走軍の拠点となりつつあった仙台だが、執政が代わった途端旧幕府勢は追われる。蝦夷に独立国をと夢を語る榎本武揚に従い、土方は軍艦で北へ。
ロケ地
・江戸城イメージ、姫路城天守(東京と改まった町を語るくだり)。
・仙台・青葉城、彦根城。外濠越しの天守、大手橋、天秤櫓下(土方が談笑しながら行く)、いろは松と濠越しに佐和口多門櫓などが使われている。土方の「本陣」は楽々園玄関(原作設定は城下・国分町の「外人屋」)。
・斎藤一が試衛館時代の土方の逸話を隊士らに語るくだり、八王子宿で甲源一刀流とやりあった宿場はずれの浅川の橋、導入の高所からのイメージは曽我谷川の穴太橋・土方の地図にあった「明神の森」は走田神社社叢。橋下に斎藤、橋たもとの竹藪に原田らを忍ばせて、橋の上に屯する甲源一刀流の人数に土方が斬り込む橋は犬飼川の下河原橋。両橋とも架け替え以前の木橋。
・宿の女将を使って遠藤文七郎が刺客を差し向ける夜の神社、北野天満宮参道脇。
*新執政・遠藤は藤岡重慶、あのとき斬っておくべきだったと、つらっと物騒な口をきく土方の顔を眺める榎本以下がおかしい。*八王子の喧嘩、原作の「分倍河原」を翻案か。劇中はっきり「浅川の橋」と言っているので、ドラマの設定は分倍橋ではない模様。
第25話「シノビリカ」1970.9.16
鮮やかに松前城を陥し、戦場にいた藩主の正室には紳士的な態度を示し、兵士たちのみならず榎本にも大いに感心される土方だが、京を去ってのちの彼には「余分」な日々。そして官軍の攻撃が迫る日、追憶の彼方から愛しいひとがやって来る。
ロケ地
・五稜郭俯瞰は書割か(海と近すぎ)。五稜郭イメージ、入口の橋に大坂城極楽橋、櫓越しの外観に園部城址(中に洋館があった設定か、門越しに通常は避けて使われる園部高校校舎の屋根が映し込まれている。旧校舎か)。
・松前城、攻略する大手門は大坂城青屋門で、門内から天守を望む画も。残兵と戦闘の「裏山の林」は不明。
・斎藤一に離脱を命じたあと、本営を出て月を眺め「シノビリカ」の句を詠む土方、不明。
・お雪と会う鴻池函館築島支店の新館、太秦の旧徳力彦之助邸(外観イメージで、内部はセット)。本営へ戻る土方が馬を駆る道、柳谷道(山道に灯籠が並ぶ)。
*斎藤一とのやりとりは「血風録」とほぼ同じで、鉄拳や誠の旗もアリ。*新選組の記録を残すという裏通り、箱館へ行くという伝蔵、土方の噂をする二人はパラソルを弄んでいたり葉巻を吸っていたり。*お雪さんと会うくだり、装飾物がメロドラマ。
第26話「新選組副長 土方歳三」1970.9.23
「軍神」は勝ち続けるものの他は総崩れ、益体もない軍議が開かれるが、最早無意味と列席しても黙す土方。総攻撃前夜、懐かしい仲間が夢に現れ、土方は伝蔵が守り抜いてくれた誠の旗を身に着けて単騎官軍の陣地へ。
ロケ地
・五稜郭イメージ、園部城址(書割と組み合わせ)と大阪城極楽橋。本営は不明。
・二俣陣地、饗庭か(荒れた丘陵に幼松。22話の甲陽鎮撫隊の戦いも同所と思われる。単騎吶喊の土方が馬を駆る道や、伝蔵が戦場を振り返るシーンが湖西っぽい)。
*ほとんど「戦死」の伝蔵が思いきり泣かせるほか、亡霊のくだりがちょっとメルヘン調なのもなかなか。*栄国橋で土方を誰何する将校は汐路章だったり、町に唐突にアイヌの人歩いてたり。
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