中川信夫監督作品/結束信二脚本 1962.8.12東映 39
時は田沼時代、政の腐敗を憂える若き与力・守屋周馬は巨悪に挑むが、孤剣空しく凶弾を肩に受けてしまう。追われ逃げ込んだ先で彼を匿ってくれた、八方破れの磊落な殿様・浅川喬之助は、周馬とそっくり同じ顔をしているのだった。
周馬が看取った女が吐く謎の言葉からはじまる事件、名前からして怪しい「闇の御前」はビジュアルも相当に奇ッ怪。殿様の屋敷に屯する陽気な人物像も楽しい、美女に惚れられ悪を懲らす痛快作。
ロケ地
- 田沼に取り入る一味が麻薬を隠匿している増上寺五重塔、仁和寺五重塔(遠景を使用、塔でのお芝居は内外含めてセットの模様)。
- 訪問者のお供がずらりと門外に控える田沼意次邸、仁和寺本坊表門。
- 闇の御前のもとから田沼の紋入り権門駕籠で運び出される麻薬を摘発する清吉親分、下鴨神社河合社脇。
*守屋周馬と浅川喬之助はもちろん大川橋蔵の二役、与力は真面目な白皙の美青年で、殿様は暗闇坂の天狗屋敷に無聊をかこつ磊落な大身旗本。周馬は早々と負傷しラス立ちに出てくるまで療養の身、闇の御前の正体に迫る役どころは喬之助が彼に代わって引き受ける次第。殿様の髷はムシリ頭。
*周馬に仕える岡っ引・明神の清吉は高田浩吉、殿様まわりは妹が三田佳子で屋敷に屯する「天狗一党」は千秋実はじめ河原崎長一郎など芸達者揃い。悪役陣は田沼に山形勲、闇の御前に月形龍之介のほか、自分もヤク中で果ては始末される嫌な岡っ引に多々良純、派手に斬られる怪しの刺客・闇の蝙蝠に汐路章、周馬への恋の恨みも重なる小悪党・きすぐれの仙吉に菅貫太郎、その恋の相手の矢場女・お艶姐さんは桜町弘子で内実は純情な可愛い女(抱きついたのが周馬でないと知り悪態をつくとこが最高)。
*闇の御前は椅子で平行移動、お付きはザンパノみたいな怪しの半裸男と唐人。冒頭の田沼さまおもてなしの出し物は半裸美女の騎馬戦で、演技中の一人が禁断症状に苦しみ外へ捨てられるのが発端。兄上さまにはお城からお呼びがかかり、弟は奉行に出世で、田沼失脚後清新の風を見せてエンド。
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