父子鷹
  1994日本テレビ/松竹

キャスト
勝小吉/松本幸四郎 勝麟太郎/市川染五郎 お信/山本陽子 お順/高橋かおり おたみ/畠田理恵
栄助/下川辰平 お六/石井トミ子 お糸/芦川よしみ 平太/不破万作 小林隼太/河原崎建三 小野兼吉/谷口高史 佐久間象山/磯部勉 島田虎之助/梨本謙次郎 都甲市郎左衛門/金子信雄 男谷精一郎/堤大二郎 男谷彦四郎/神山繁


第1話「春、子鷹飛び立つ」1994.1.11

 「暴れ旦那」と異名をとる無役の直参・勝小吉、肚を決めてお役に就こうとするものの、息子の喧嘩の流れを受けて大騒ぎを起こしおじゃん、隠居して家督を譲る経緯を描く。

ロケ地
・奉納額の日本地図と世界地図を引き比べ豆粒とか吹いている異人を覗き込む麟太郎、上御霊神社茶所
・花見の衆が出る堀端、大覚寺大沢池堤。内職の傘を干す浪人に無体を働く男どもを蹴散らす小吉、大覚寺大沢池北岸
・御番頭を接待する小吉、料亭イメージに錦水亭東屋(池越し)
・接待疲れで座り込む小吉、男谷家を憤然と飛び出してきたものの家に帰りあぐねる麟太郎、大覚寺放生池堤(小吉は堤中ほどの石橋たもと、麟太郎は護摩堂前の石橋たもと)
・芸者にからんだ与太侍どもと事を構える麟太郎、中ノ島橋(見事なドボンあり)。息子の喧嘩を受けて大立ち回りの小吉をやんやと囃す町衆も中ノ島橋(立ち回りはセット撮り)
・呼子を吹かれ逃げ出した父子が船でゆく堀、大覚寺天神島北辺水路(水鶏の声あしらい)
・小吉が呼び出される小普請支配邸、相国寺大光明寺門。
・裃着けて出かける息子を見送る「隠居」小吉、妙心寺大通院裏手路地
*小普請支配は真田健一郎、与太侍のヘッドに河原崎建三・仲間には上田峻。


第2話「親離れ子離れ」1994.1.18

 外の風に当てるという方針で、麟太郎は精一郎の弟子の道場へ。研鑽の日々がはじまり、蘭学を志す段まで。

ロケ地
・登城風景、彦根城天秤櫓〜石垣際〜太鼓門櫓。
・家督相続申し渡しに臨む勝家一同がゆく廊下、知恩院(阿弥陀堂か)
・浅草新堀の島田道場へ挨拶に赴いた帰りのお信を待っている小吉、西方寺裏手・小谷墓地(墓地下の石段→写真)。果し合いを挑まれ鮮やかに返り討ちにしてのける島田も同所(墓地下池端、墓地は傾斜地にあり段々)
・師匠の言いつけで王子権現に夜籠りする麟太郎を覗きにゆく小吉、鷺森神社(小吉が渡るのは曼殊院から続く道の一乗寺川支谷に架かる石橋、舞殿脇から本殿見上げ〜麟太郎が瞑想のあと三貫目はある棒を素振りは本殿前、小吉は玉垣外から覗く。翌朝、門前の茶店で倅に声をかける小吉、参道鳥居前に茶店あしらい)
・師匠が小吉に連れ出され帰って来ないので男谷道場へ行く途中の麟太郎、願掛けの君江とばったり出会う神社は上御霊神社(君江のお参りは本殿前、麟太郎と話すのは舞殿脇)
・箕作阮甫に入門を乞いにゆく麟太郎、建仁寺久昌院塀際〜久昌院玄関(箕作邸)
・父と叔父に勢いで蘭学を許されたあと、精一郎と麟太郎がゆく道、妙心寺玉鳳院前路地衡梅院前路地
*箕作阮甫に北村英三。


第3話「親ごころ子ごころ」1994.1.25

 永井青崖に師事する麟太郎、寝る間も惜しんで勉学にも鍛錬にも励み、学費捻出の算段もしてのける。それが嬉しくもあり寂しくもある小吉、その上女の話は余計擽ったくて妻女に投げたり。順風満帆に見える勝家の動静、しかし天保の改革やら小悪党の暗躍やら影はさしてくる。

ロケ地
・蘭語をさらいながら通学の塾生たちが剣術道場の輩にからかわれる道、勝持寺参道(永井青崖に入門しにやって来た麟太郎を見て散る)
・宴席で火消しと事を構える君江、料亭イメージに錦水亭東屋(池越し)
・火消しに追われる君江を見る麟太郎、中ノ島橋(一行は麟太郎を追い抜いてゆく)
・火消しをぶちのめした麟太郎を追ってきて、もう芸者をやめると告げる君江、上御霊神社境内。
・津軽の家老・桜庭に目利きした刀を持ってゆく小吉のくだり、相国寺大光明寺(導入は南塀越しに方丈甍を望む絵、藁束を斬ってみせる小吉は石庭。桜庭は方丈縁先にいて、座敷にいる小林らに密かごとを呟く)
・永井塾へ向かう麟太郎を呼び止め観相する都甲、建仁寺三門前。永井塾、建仁寺久昌院(青崖が麟太郎に酔った都甲を送っていくよう頼む→垢離場の酒肆へ)
・狸穴の都甲邸、勝持寺東門(やって来た麟太郎は南門前路地のラウンド塀際)
・小吉に言われ「君江」を見にゆく母娘、帰り道は上御霊神社境内、麟太郎に思いを告げる「おたみ」は舞殿脇。
*桜庭図書に原田力、永井青崖に楠年明。*覚書:永井青崖の住まいは赤坂溜池の黒田藩屋敷内。


第4話「甘い酒苦い酒」1994.2.1

 優れた人々の薫陶を受け蘭学に邁進する麟太郎だが、当の蘭学で謹慎を食らう羽目に。家に戻ってきた息子に、この大難を乗り越えて大きくなれと母は盃を勧める。

ロケ地
・師匠が麟太郎を烏山候の若様に引き合わせるくだり、屋敷イメージに粟生光明寺勅使門と石庭を見下ろす絵を置き、若様と麟太郎が竹刀を交える庭は彦根城玄宮園池端。
・帰り道、他の大名屋敷への出稽古も譲ると話す師匠、建仁寺両足院前路地
・高島秋帆の洋式調練のくだり、倅に心尽くしの紋服を届けようと徳丸ヶ原(現・板橋区高島平)を探し回る小吉、大覚寺天神島(都甲とともに遠眼鏡で調練を見る麟太郎も同所の楠の根方)。調練の野原は例の砕石場?の崖際、小滝も見える。帰り道、麟太郎に感想を聞く都甲、大覚寺大沢池北岸に茶店あしらい(倅を誉める都甲に、居合わせた小吉思わず顔出し)
・巾着切りと事を構え近藤道場の者に蘭学の本を見られてしまう麟太郎、大覚寺大沢池堤(掏摸を池に叩き込み・助けに行って本をお六婆さんに預けたことが仇に)
・蘭学者弾圧のくだり、お城イメージは彦根城佐和口多聞櫓を濠越しに。それぞれの登城風景、麟太郎は中ノ島橋(土埃舞う演出)、精一郎は建仁寺両足院前、彦四郎叔父は妙心寺玉鳳院前。
・謹慎を食らったあと、夜ひそかに都甲邸へ向かう麟太郎を見咎める御家人仲間の青年たち、中ノ島橋上。
*高野長英は山内としお。小吉にも麟太郎にもからむ巾着切りに下元年世。


第5話「春は名のみの…」1994.2.8

 火事で切り放しになった高野長英に頼られる麟太郎、しかし若輩の身では何もできず、小吉には諌められる。勝家の苦衷を察した町衆が危険を冒して動くのが泣かせる「相身互いでござんすよ」。垢離場の一件を鮮やかに切り抜ける小吉が痛快。

ロケ地
・弱き民にタカる騙りどもを懲らしめるくだり、富ヶ岡八幡宮での富突き風景は妙顕寺三菩薩堂
・頼ってきた高野長英と外で話す麟太郎、大覚寺五社明神本殿前(おたみたちが長英と会うのも同所)。栄助が棹を使い長英を隠した船をやる中川、大覚寺天神島北辺水路。長英を捜し水辺に出てくる小吉は放生池堤、番所は天神島朱橋に衛士あしらい。
・小吉が垢離場のことを掛け合いにゆく北町奉行所、大覚寺明智門
*遠山の金さん登場、小吉の剣友設定で背負ってるのは桜ではなく女の生首。垢離場の女たちを助けてやる小粋な役回りで、演じるは大出俊。*女の拝み屋に蜷川有紀。


第6話「身を捨ててこそ」1994.2.15

 勝家の家主の大身旗本は親子揃って道楽者、大層な借財を作り破産寸前。小吉は幼馴染のその家の隠居のため、領地の摂津まで金策に赴く。代官とグルになって年貢を納めぬ庄屋を脅したりすかしたりの小吉、切腹騒ぎまで起こし命懸け。麟太郎も江戸で父のフォローに忙しい。

ロケ地
・大根を洗うお信に摂津行きを告げる小吉、上賀茂神社ならの小川(階のある水場/設定は横川か南割下水か)
・小吉に供を願い出た東間が、岡野家に貸し込んでいる悪党と会い金策を失敗させる話をする屋形船、罧原堤下汀(大胆に山も映し込む)
・御願塚村(摂津・伊丹)入りの小吉一行、不明(丘陵?)。御願塚村庄屋屋敷、民家門。百姓らが野博打をする小屋、鳥居本八幡宮広場にあしらい。東間を懲らしめた帰り道、栄助に明日江戸へ帰る・皆を集めておけと命じる小吉、大覚寺五社明神(祠に祈る)
・帰り道、海辺をゆく一行、琵琶湖(小吉は駕籠、西岸か)
*岡野の隠居に北村総一朗、前話で出た拝み屋といい仲。*小吉の脚気の話がちらっと出る。*摂津には栄助も侍に化けてお供。


第7話「日暮て野辺の送り」1994.2.22

 小吉が帰る前にも大喧嘩をやらかしていた岡野親子、どら息子が小吉への礼と称し木綿一反を寄越した件で隠居はブチ切れ、卒中で倒れる。その後は枯れるように死んでゆく隠居、それでも態度改まらぬお坊ちゃんには小吉の鉄拳が見舞われる。

ロケ地
・帰り道を急ぐ小吉一行、琵琶湖畔。
・小吉が礼金をどうのとからんだ大川が麟太郎に叩き込まれる堀(?)大覚寺大沢池。これを見てやんやと囃す町衆は五社明神(中に彦四郎がいて麟太郎に大目玉)
・小吉が隠居を柳島(妾宅)へ送ってゆく道、不明(植林杉の林の前に田んぼ)


第8話「ちぎれ雲、涙雨」1994.3.1

 彦四郎叔父の奔走で麟太郎の他出禁止は解けるが、疲れが出て叔父は倒れてしまう。ここからが涙モノ、兄の回復を祈願して喧嘩断ちをする小吉なのに、垢離場で騒動が持ち上がってしまう。縋る女たちに応えて暴れる倅を放っておけず刀の封印を解く小吉、悪党どもを蹴散らしたその時、兄の大事が伝えられる。小吉の号泣が哀切。

ロケ地
・おたみと会う麟太郎、上賀茂神社ならの小川(お篠が二人を凝視/後段、お篠がおたみを呼び出すのは河畔の祠脇)
・江戸を去る都甲のくだり、師匠宅へ走る麟太郎が駆け上がる石は勝持寺参道石段、都甲邸は東門。師匠を送って駕籠に従う麟太郎にここから帰れと都甲が別れを告げる海辺、琵琶湖東岸(長命寺山の眺めから佐波江と思われる)
*麟太郎の動向/ズーフ・ハルマ書き上げ60両ゲット・高野長英自刃を聞く・都甲から蔵書と屋敷を贈られる


第9話「気掛りな娘の縁談」1994.3.8

 お順に求婚する佐久間象山、山師と嫌う小吉。やいのと揉めるうち、小吉を狙う悪党がお順を拉致する騒ぎが出来、鬱憤を晴らすかのように悪党退治の次第。

ロケ地
・娘に来た縁談で気もそぞろの小吉がゆく道、金戒光明寺鐘楼脇〜永運院下坂(小吉を狙う悪党が出るが馬鹿な具合に自滅)
・象山書院へ出向く小吉、相国寺林光院(象山とお順がサングラスをネタにいちゃついているのは式台玄関、青いグラス越しに腕まくりの小吉が見える間抜けな構図)
・おたみに会いお順の縁談のことを話す麟太郎、流れ橋(橋脚と汀のみ映る)
・垢離場に出資するという前奉行・矢部駿河守の甥と称する男の件を北町奉行所へ確かめにゆく小吉、大覚寺明智門
・北町へ呼び出され質された帰り、矢部と女たちのところへ出てくる近藤道場のワルども、仁和寺中門(内側から二王門を望むアングル)
・水野失脚、門前へ詰めかけ投石の町衆、不明(門前に太鼓橋、中に庫裏が覗く)
*お順の憎まれ口から麟太郎の相手へ波及、砥目へ出向くも蕎麦を手繰って帰ってくる小吉が大笑い。北町の白州へ矢部を呼び出すくだり、岡場所の女たちがあーら金ちゃんも爆笑もの。女子供に手をかける矢部に嫌気がさした小林が寝返るくだりは滑稽ながら涙もの。


第10話「親父を越えていけ」1994.3.15

 麟太郎に大仕事が舞い込んでくる。偏屈だが腕のいい鍛冶職人と出会い、母の祈り父の援護に加え、すっかり改心した隼太の助けも受けて、試作品の鉄砲が完成する。偏屈親爺に諭されたり倅を誉められたりの小吉、変調も目立ってくる。

ロケ地
・唐津藩外桜田屋敷へ迎えられる麟太郎、随心院薬医門(駕籠で入る)
・藩邸からの帰り、家にも寄らず舞い込んだ仕事のことをおたみに話す麟太郎、粟生光明寺石段(山門越しのアングルから導入)
・麟太郎に来た鉄砲製作の話を象山に危ぶまれ怒って帰るお順、デートスポットは梅宮大社神苑・中島へ渡る石橋。
・お信が麟太郎の成功を祈りお百度を踏む妙見さん、わら天神六勝大神
・老中・久世大和守邸、大覚寺大門(小野兼吉に鉄砲の図面を奪取するよう依頼する「廊下」は不明)
・制作途中で行き詰った鍛冶職人の鉄五郎が考え事をしに行くお堂、仁和寺観音堂(階に腰掛け・遠景に塔)
・鉄五郎がドロンのところへ訪ねてきたおたみ、外へ出て話しこの仕事が片付いたらと求婚する麟太郎、流れ橋下。
・試し撃ちに赴く麟太郎を襲う企みの小野らを懲らしめる小吉、酵素ダート(立ち回りは林間、全て倒したあと麟太郎の駕籠がダートを通過・小吉、肩で息)。試し撃ちは酵素河川敷、射手は隼太。
*鉄五郎は草薙幸二郎、久世大和守(唐津藩の後ろ盾である土浦候の政敵)は西山辰夫、唐津の家老に玉生司朗。*試射の直前、的に犬接近、かまわず撃つ隼太・鉄砲の音にビビって逃げ去る柴が可愛い。


第11話「薄れいく光の中で」1994.3.22

 黒船来航、急速に動く時勢に寂寥感しきりの小吉、脚気も悪化の一途。お国の大事をタテにとり津軽が表立って垢離場へ手出しするのに痛む体をおしての大喧嘩、遂に倒れる。

ロケ地
・お順とデートの象山のところへ今日小吉と会うのは無理と告げにくる麟太郎、梅宮大社神苑・中島へ渡る石橋。
・垢離場でチンピラを懲らしめて帰る小吉、大覚寺放生池堤(痛む足をさすり座り込むのは護摩堂側の石橋たもと)
・象山書院を訪ねるお信、相国寺林光院門、式台玄関。
*倒れた父のあとを受け津軽藩邸へ乗り込む麟太郎、陪臣頭が高いと大喝が小気味良い。


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