山口哲平監督作品 1928.7.12嵐寛寿郎プロ(神戸菊水館上映/弁士・松田春翠)
キャスト
鞍馬天狗/嵐寛寿郎(嵐長三郎改メと断り書き) 桂小五郎/中村竹三郎 黒姫吉兵衛/嵐橘右ヱ門 隼長七/尾上松緑 お露/生駒栄子 杉作/嵐佳一 佐々木唯三郎/秋吉薫 近藤勇/山本礼三郎 暗闇のお兼/五味国枝 西郷吉之助/市川小文治
アラカン独立第一作の無声映画、危機に陥った天狗のおじちゃんを杉作少年が助ける、涙の情話。
文久二年夏、新選組隊士に化けて大坂城に潜入した倉田天膳は捕われの身、その身柄をめぐり勤皇佐幕相乱れての大活劇が展開される。後段は京での物語。
ロケ地
・角兵衛獅子の杉作らがやんやの喝采を浴びる大坂・天満天神境内、仁和寺九所明神。杉作が見かけたお兼が頭巾の侍とツナギをとるのは経蔵、それを窺う杉作は九所明神脇の小祠に隠れている。頭巾の侍がお兼に用意した早駕籠は経蔵裏手の疎林に。
・お兼に撃たれた芝居の杉作を追う岡っ引・隼の長七と捕り方が走る市中、妙心寺涅槃堂前(カメラ激しく衡梅院前へパン)〜大庫裏脇路地〜隣華院前(捕まりかかるが捕り方が抑えたのは通りすがりの小僧さん)。
・なお追われる杉作が黒姫の吉兵衛とばったり会い二人で逃げ込む材木置場、微妙に斎宮神社に似る。
・天狗の危機を知った吉兵衛が勤皇党に助けを求めるべく早駕籠で京へ向かうくだり、イメージに桂川大堰(杭がランダム)。街道の淀堤は両に松並木の堤、木橋も映る。
・京へ向かう駕籠が三丁に増えている淀堤、羽束師の桂川堤か(農地越しに堤側面を見上げる図、堤外地に鬱蒼とした竹の河畔林)。お兼が駕籠を降りあとから来る駕籠を撃つ分岐道は竹林沿うものの堤か普通の地道か不明(撃たれたのは吉兵衛でなく隼の長七・死んでナイ)。
・大坂城内に潜入した杉作とお露が天狗も明朝までの命と噂する侍たちを隠れて見る塀、妙心寺玉鳳院塀際(松の生えた角地)。侍たちが歩いてくるのは東海庵東側路地から角を曲り西へ去る。
・お露と別れ侍たちを追う杉作、妙心寺小方丈塀際(海鼠壁)。侍たちが入る塔頭は不明(桂春院付近か)。
・杉作がしょげて佇む堀端(水門を発見)、彦根城いろは松の堀端。
・お露が心配げに待つやしろ、御室霊場一番札所・霊山寺。
・吉兵衛が天狗の危機を注進する京の薩摩屋敷、青蓮院長屋門(高下駄の浪士が徘徊)。
・桂小五郎の指示で勤皇浪士が近藤勇を阻止に向かう千両松(淀堤)、桂川羽束師付近の堤か(遠景の山が叡山に似る/河畔林は疎らな立木と鬱蒼とした竹林と二態)。
・勤皇党を斬り伏せ大坂へ向かう近藤勇を杉作が止める橋、血風録17話の銭取橋に酷似(淀堤に馬をやるシーン、対岸から川越しに堤を見るアングルもあり・堤の向こうに家並み)。
・牢から逃げてくる天狗、杉作と会い彼を横抱えにして追っ手と斬り結ぶ堀端、彦根城いろは松の堀端。城を出るくだりで天秤櫓も映る。
■ ■ ■ ■ ■
・見廻組・佐々木唯三郎の家、不明(塔頭ふう)。
・佐々木が天狗に差し向けた偽使者が帰ってくる路地、大徳寺境内か。
・偽回状にたばかられ暁国庵へ向かう天狗が登る石段、豊国廟石段。
・暁国庵へ入った天狗が小坊主に方丈へ案内される廊下、不明(大広間で見廻組と大立ち回り)。
・見廻組の企みを知った長七が駆け込む新選組、南禅寺天授庵。近藤が何事と出てくる玄関は南禅寺方丈式台玄関。
・天狗と佐々木との殺陣がセットの大広間から移動してくる暁国庵方丈の「外」、天龍寺方丈。
・新選組、桂小五郎率いる勤皇党、杉作が集めた子ら、三者が暁国庵さして殺到する道、南禅寺境内のほか不明な門や道多数。
*前段は捕われた天狗救出、後段は見廻組にたばかられ危機に陥る話。前段の見どころは近藤勇を止める杉作、天狗のおじちゃんを殺したら映画が終っちゃうよの台詞(弁士)が大笑い。後段の見せ場は佐々木唯三郎との大立ち回り、双方疲弊してへたりこむ段で終る憎い構成。桂と近藤の睨み合いもそのまま、「?」マークが出ておしまい。
*上映日時参照元 日本映画データベース様
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