よろずや平四郎活人剣

キャスト
神名平四郎/中村俊介 神名監物(平四郎の長兄)/内藤剛志 里尾(監物の妻)/田中好子 嘉助(神名家従僕)/河原さぶ 北見十蔵(平四郎の友人)/山田純大 明石半太夫(平四郎の友人)/益岡徹 与之平(家主)/木下ほうか 早苗(平四郎の元婚約者)/北川弘美 菱沼惣兵衛(早苗の夫)/石丸謙二郎 樫村喜左衛門(監物配下の御小人目付)/伊藤洋三郎 水野忠邦/西田健 堀田正篤/中原丈雄 鳥居耀蔵/本田博太郎 奥田伝之丞(鳥居配下御小人目付)/福本清三

2007年 TX/松竹 初回と最終話はスペシャル


第1話 2007.4.20

 水野忠邦の改革の嵐吹き荒れる時勢。
兄の家を出て剣術仲間と道場を開く夢が一瞬にして破れる平四郎、以後よろず揉め事仲裁の看板を出して町屋暮らしが始まるが、目付である兄の仕事にも強引に引っ張りこまれるのだった。

妙心寺隣華院

ロケ地
・平四郎の兄・神名監物邸、妙心寺隣華院
・嫂が平四郎の元婚約者・早苗を見かけた茶店(長慶寺墓参の帰途)上賀茂神社ならの小川畔に茶店あしらい(早苗がいたのは祠脇)
・平四郎の友人・神尾が泣くおとわを拾うくだり、北野天満宮本殿裏手地主神社(この陰でおとわがめそめそ)
・兄に伴われ赴く老中・堀田正篤邸、大覚寺大門(福ちゃんが見ている/ゴイサギ効果音入り)
・江戸城イメージ、姫路城天守。御廊下で監物に詰め寄る鳥居耀蔵、金戒光明寺方丈廊下(勅使門越しのクレーンショットが迫力)
・「茶店」へ通い続け遂に早苗と会う平四郎、場面は上賀茂から大覚寺へスイッチ。あれから八年と話すのは放生池堤、住まいを聞くも答えぬ早苗は梅林、もう昔の自分でないと去る早苗は遣水跡芝地
・おとわの亭主・粟屋格左衛門から去り状をとるくだり、お芝居をしてくれた女郎と駈けてくる平四郎、八幡掘明治橋。女郎に礼金を渡すのは橋下の堀端。
・水野忠邦邸、随心院薬医門。高野長英が老中堀田が目付の監物がと水野に迫る鳥居耀蔵は書院

*粟野屋格左衛門は渡辺哲、おとわは床嶋佳子、芝居をしてくれるお女郎さんに大路恵美。
*何かするとの期待を裏切らない益岡徹、金数えてる手つきからして胡散臭くてもうアレ。ひたすらコワい兄上は弟に見えないところでにっこりが憎い。刺客の福ちゃんは今後も期待大。やっぱりキレた系が一番似合うかもの本田博太郎、言い争いのあと「神名監物!神名監物!うぅ゛ー神名監物!…という男、あくまでわしに楯突くとしたら」の緩急つけすぎの台詞回し迫力ありすぎ。後で似たのがも一回出る。


第2話「逃げる浪人」 2007.4.27

 仇持ちの浪人から、逃避の日々を終らせるべく談合に持ち込んでくれとの依頼。うまい手を思いつき上機嫌の平四郎だが、別の思惑が働いているのを関知できず、依頼者を出奔させ女を泣かす仕儀となる。

八幡掘

ロケ地
・友人の伊部に早苗の近況調査を依頼する平四郎、八幡掘堀端(明治橋・白雲橋間の左岸)
・神名邸、妙心寺隣華院
・依頼者を仇と狙う古沢に話をつけにゆく平四郎、古沢が寄宿している小普請組・岸本邸は妙心寺海福院、古沢に談合の件を持ちかけるのは大覚寺大沢池北西畔
・北見の紹介で小細工を頼みにゆく玉宗寺、妙心寺福寿院
・早苗の嫁いだ相手・菱沼が帰宅する道、上賀茂神社ならの小川(平四郎は河畔の茶店で彼を見てつけてゆく)

*依頼者の戸田勘十郎は平田満、仇討ちを挑まれ返り討ちの段、はじめ抜かず身に創を受けての立ち回りが見もの。早苗の夫・菱沼惣兵衛は石丸謙二郎。、古沢に知恵をつける旗本の家来に谷口高史。*見張り所は継続、平四郎も顔を出す。また、月代を放置でムシリ頭に。*平四郎の日常を描くED、寝転がる彼に寄り添う巨猫がラブリー。*NHKの「腕におぼえあり」にも採用されたエピソード、タッチの違いが面白い。


第3話「道楽息子」2007.5.4

 家から叩き出したものの、正式には勘当していない倅をどうにかしたい橘屋の依頼は女の始末。岡場所上がりと女を蔑む橘屋が気に入らない平四郎だが、女の人柄で話はいい方へ転がってゆく。田島と書付の一件にはとんだしくじりが出来するが、北見の手助けも得てこれも解決、飯にありつく平四郎なのだった。

東福寺通天橋

ロケ地
・夫の阿漕に沈む早苗がやって来るいつもの茶店、上賀茂神社ならの小川(川に友禅流しあしらい)
・江戸城イメージ、姫路城天守。城の御廊下で鳥居耀蔵に奉行就任の祝いを嫌味まじりに述べる神名監物、東福寺通天橋(東面遠望の絵には姫路城を合成)
・鳥居邸、大覚寺明智門。邸内縁先、部下に田島の見張りを増やすよう命じる鳥居、東福寺方丈縁先(石庭映り込み)。出てきた部下を尾行する監物の配下、大覚寺御殿川沿いと河床(直接の尾行者のほか堀掃除を装った者が河床に)
・鳥居が田島を隠してある伊勢屋の寮(原作では亀戸)酵素民家セット(竹林越しのアングル)
・救出した田島を妻子と会わせる寺、粟生光明寺(甍は本堂屋根、座敷は阿弥陀堂か)

*橘屋のどら息子の「嫁」に星野真理、芯の強い薄幸の女を好演。どら息子は蟹江一平、父は田山涼成。*飯櫃の底が見えて情けない平四郎、食いものに執着するのが傑作。しかし自炊してお行儀よく食する横顔はお坊ちゃんでなかなか。部屋が小汚いのもイイがまだ鼻毛を抜いたりはしない。*福本先生の殺陣たっぷり。


第4話「亡霊」2007.5.18

 久々に舞い込んだ仕事はけっこう難物、大昔に起因する盗っ人の揉め事。裏の世界のトラブルを仲裁する古狸と渡り合ったり、依頼者宅を強襲する大人数と死闘を繰り広げたりで明石と北見の手も借りる。

妙心寺隣華院式台玄関

ロケ地
・嘉助に伴われ実家へ行く道、金戒光明寺東坂下石垣(困ったことがあれば「安くしてやる」発言で嘉助を泣かせる)。神名邸、妙心寺隣華院(義姉に呼び出され)。神名邸を窺う奥田伝之丞がゆく道、妙心寺東海庵前路地隣華院(門内側から・門前に福ちゃんチラリ)。神名邸を出てくる平四郎、隣華院式台玄関脇東海庵前路地。「古狸」桝六宅はセット。

*依頼者の臼杵屋は金田明夫、桝六は石橋蓮司、ともに持ち味を発揮。*仲間三人と襲撃を迎えうつ大立ち回りには尺をとり「見せる」。*福ちゃん存在感たっぷり、遠目にも姿勢の良さで一発で判る。*義姉上の援助を痩せ我慢で断る平四郎が大笑いなほか、客来て慌てて押入れに布団突っ込み・後で頭から降ってくるのもあり、臼杵屋がボロ畳見て閉口なんかもあり小汚さもちゃんと出ている。


第5話「一匹狼」2007.5.25

 料理屋の美人女将の依頼は「説得」、危ない仕事をしている幼馴染を口説き商売替えをさせてくれと言う女将は、昔その男を好いていた。プライドの高い男の説得には手間どるが、男の雇い主が口封じにかかり事態は変わる。

大覚寺天神島朱橋

ロケ地
・神名邸、妙心寺隣華院
・吉次の娘・おはるをあずま屋へ連れてゆく平四郎、行き道の竪川河岸は大覚寺護摩堂(おはるを泣かす)天神島朱橋
・吉次一家が急に越してしまい落ち込む平四郎、大覚寺放生池堤(原作では東両国へ向かう竪川河岸)

*あずま屋女将・おこまは有森也実、吉次は遠藤憲一、阿漕な金貸しは中田浩二、おはるは野村美緒。エンケンの巧さは今更言うに及ばず、原作のイメージにもぴったり。女将もなかなかハマっているが子役も出色。*嫂や北見の意見を聞くのは付加部分だがよい肉付け。また、兄上が語る情勢に金貸し・山幸の事情を重ねる設定も良し。逆に、一張羅を着込んであずま屋へ赴く吉次のくだりは平四郎が見届けるシーンを省いてあるがこれも良し。*福本先生登場はほんの一瞬だが、早苗の亭主が連行されるくだりの緊張感を高めなかなか。*原作表記は「あづま屋」。


第6話「暁の決闘」2007.6.1

 北見の過去の碌でもないしがらみが湧いて出る。彼が養家と縁を切り主家を退転せざるを得なかった公金紛失事件、その張本人は卑劣にも彼の妻に言い寄り、困り果てた妻女は家も捨てる覚悟で江戸にいる夫のもとへ転がり込んでいた。卑劣漢に果し合いを申し込む北見、手助けする平四郎は依頼された「仕事」と併行。

仁和寺九所明神

ロケ地
・仙台藩上屋敷イメージの甍、粟生光明寺庫裏方面を方丈から望む図。
・神名邸、妙心寺隣華院(今回は北見の妻子を預けるので門以外に式台玄関や前庭も使用。老僕の嘉助が北見の息子とやっとうの稽古をしたりする池端のお庭は不明)
・北見が野瀬と立ち会う青山梅窓院裏は仁和寺九所明神、大胆なクレーンショットがあり昨年修復された本殿の朱が眩しく映える。

*北見の妻女に高橋かおり、仙台藩留守居役は津村鷹志で姑息、はじめ悪役に見える目付は栗塚旭で実は正義の人という美味しい役まわり。*神名家に北見の妻子を預けるのは原作にない設定、武士は相身互いと優しく受け入れる義姉上に加え、事情を立ち聞きしてきっちりフォローに回る兄上が堪えられない。*平四郎の「仕事」のほうでまたまた登場の「桝六」レンジ、平四郎に手打ち金を値切られるやり取りが傑作。


第7話「浮草の女」2007.6.8

 依頼の筋は、父が女に貢いで困ると娘からの相談。女は悪女で貰った金を若いヒモに渡しており、平四郎はその男を懲らしめたあと「父」を説得にかかるが、思いもかけぬ悪女の正体を知らされる。

大覚寺遣水跡

ロケ地
・町で早苗を見かけた平四郎が彼女の前に立つ池端、大覚寺放生池堤。菱沼の妻になった経緯を話す早苗、大覚寺遣水跡
・神名邸、妙心寺隣華院

*筑波屋の主は火野正平、娘は水橋貴己、逃げた女房は芦川よしみでヒモは浜田学。正ちゃん、元女房に再会しにこぉと笑み/落ちぶれようを見て泣くあたり、若い頃とやってることは一緒だからよい比較になって面白い。泣き顔も淡々と話す口調も渋い。*早苗との濡れ場を邪魔されて半泣きの平四郎が大笑い、カメラにケツ向けて寝てたり慌てて布団しまったりするけど、役者さんゆえかお上品。鼻毛抜かないし。


第8話「燃える落日」2007.6.15

 上知令への反発から政情は動き、鳥居の裏切りが水野失脚を決定づける。そういうのが今ひとつ呑み込めない平四郎だが、彼のもとには失った愛が還ってきて、道場開きも間近となる。

上賀茂神社ならの小川

ロケ地
・神名邸、妙心寺隣華院
・茶店傍の小川のほとりに佇む早苗、上賀茂神社ならの小川(平四郎が物思う段でも出る)
・桔梗屋の主の実家(小田原在)酵素民家セット(回想シーン)
・江戸城イメージ、姫路城天守。廊下をゆく水野老中、金戒光明寺方丈。堀田らと談判の座敷も同所か。
・老中・堀田正篤邸、大覚寺大門。神名と話す邸内は鹿王院回廊〜客殿前。
・平四郎に頼まれ小田原へ赴く仙吉、琵琶湖岸松原
・脅迫者の勘七に金を持ってゆく桔梗屋の女将、小屋は桂川畔か。
・鳥居耀蔵邸、去りゆく家来の言葉に不敵な呟きを漏らす座敷は智積院書院
・菱沼が仕向けた刺客が平四郎を襲う橋、上賀茂神社神事橋(川中での立ち回り)
・長屋を出て道場に向かう平四郎と早苗、大八を引いてゆく道は八幡掘。水野失脚と騒ぎ走ってゆく町衆と行き会うのは明治橋、このあと堀端、新町浜と通り夕陽。

*原作最終二話を使う。揉め事解決も入っていて、脅迫者の元小田原の岡っ引は高橋長英、脅される元足抜き女郎は南野陽子で亭主は神保悟志。*早苗の件の世慣れた解決ぶりや奥平との決着が見もの。どっと仰向けに倒れるセンセイが凄い。


参考文献 藤沢周平著「よろずや平四郎活人剣」文春文庫


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