天を斬る

キャスト
牟礼重蔵/栗塚旭 桜井四郎/島田順司 権田半兵ヱ/左右田一平 万五郎/小田部通麿 大沢孫兵ヱ/香月凉二 百太郎/西田良

 元講武所頭取・牟礼、京都西町奉行所与力・権田、京都東町奉行所与力・桜井の三人は、不逞不穏の輩取締の密命を受ける。「こと非常火急の場合に及ぶときは各自の判断にて処置すべし」と言い渡されるが、公儀の名を出してはならぬという条件つき。その日から身分を剥奪され「京都無宿」となった三人衆は、京に跋扈する悪を退治るがやがて地方にも出向くようになる。
三人のダンナ方にくっついて歩き、御用をつとめる裏方の三人がユニーク。万五郎は宮大工の棟梁、孫兵ヱは御番所同心(お役差し止め謹慎中)、百太郎は時に牢にぶち込まれたりもする町のあんちゃん(牟礼のダンナには浦島太郎とか亀の子とか好き勝手に呼ばれている)、彼ら「裏の三人衆」のボヤキ漫才は見どころのひとつ。


第1話「血の色の町」1969.10.6

 不逞浪士跋扈する京の町に、密命を帯びた三人の男たちが放たれる。手始めに西町で追っていた御用盗にかかるが、出向いた先では役人を恨む哀しい女も見る。

辰巳大明神

ロケ地
・サブタイトル背景の京イメージに三条大橋
・およしの店の前を通る雲水たち、そのあとゆく町角は白川巽橋白川畔(辰巳大明神裏手から)
・御用盗の浪人が目明しを斬ったあと逃げ込む料亭、白川左岸の料亭。見張る東町の面々は辰巳大明神際に。
・京の行政を語るナレーションのくだり、京都東町奉行所、青蓮院長屋門。西町奉行所、御所長屋門。所司代、不明(海鼠壁)御所、大路と御所塀。
・牟礼、権田、桜井の三人が呼び出され密命を受ける屋敷、勧修寺。参道から山門を映し、庭をナメて書院座敷へ(お芝居が行われる座敷はセットにスイッチ)。拝命のあと庭へ出る三人は池畔芝地、塔基部も映り込む。
・東町が見張っていた浪士たちを河原へ連れ出しぶった斬る牟礼、宇治公園・宇治川左岸河川敷
・浪士たちの間に立ち周旋の「虎狩りのお浜」が入る東山の公卿侍屋敷(洛東山荘と柱に大書)法然院山門
*目明しの亭主を亡くし悲嘆にくれるうどん屋の女将に桜町弘子、亭主は波多野博。公卿侍は藤尾純。*お浜の二ツ名は和藤内の「とらとら」から。


第2話「誰も知らない朝」1969.10.13

 名を上げたいチンピラ浪士が役人を襲う。共にいたまだ前髪の少年の首級もとる無惨、牟礼たちが踏み込んだ旅籠では奇縁による悲劇が一つ上乗せされる。

随心院長屋門

ロケ地
・おさち父娘が京へ向かう街道(京へ五里と道標)楊谷寺前柳谷道(府道79号線・伏見柳谷高槻線。山際にずらりと燈籠、反対側には家の軒先がのぞく。燃えよ剣25話「シノビリカ」で土方が五稜郭へ戻る道と同じ)。入洛イメージ、三条大橋。遠景に塔の風景は新選組血風録5話「海仙寺党全滅」ラストシーン・三番隊巡察の「甍」と同じか。
・三人が打ち合わせをする鴨川沿いの料亭、嵐山公園・中ノ島橋を望む中州端にバルコニーをあしらい(手すりに凭れる牟礼のみ水景入り・室内はセット)
・奉行所与力・井上父子が斬られた三条寺町はずれ・光明寺近くの道、随心院長屋門西角(この前に「光明寺」の薬医門も映る)。駆けつけてくる桜井たちは大乗院前。
・緊急配備で現場付近の三条・四条付近で張り込む町方、宇治公園か(橋は朝霧橋と思われるが今と全く異なるので不確定。宇治でない可能性も)
・井上家の葬儀が行われる光明寺、随心院薬医門。娘を亡くし一人帰る老父、冒頭と同じ。
*与力・井上は永井秀明、刀屋で桜井に「刀など使う機会が無い」と語る台詞や、元服を控えた倅が殊更折目正しいのも思いっきり悲劇の伏線。*権田が牟礼の金使いをボヤく一節あり。*井上暗殺を目撃していた男で百太郎登場、亀を大事にすると竜宮城へ行けると話しうどんの汁を所望。*不逞浪士が潜む旅籠、「池田屋」としてよく出る作りで階段での立ち回りも。


第3話「待ち伏せ」1969.10.20

 奉行所同心の悲劇がふたつ。実直な好青年は牟礼の気遣い空しく凶刃に斃れ、内通者は桜井の判断で切腹は免れるものの武士を捨て京を去ることになる。

石村亭

ロケ地
・村越新八郎が張り込みを命じられる真葛ヶ原の料亭のくだり、下鴨神社境内と周辺。真葛ヶ原へやって来る村越は馬場を行き、林の中にあしらわれた茶店へ(ここで万五郎のツナギを受ける。茶店の親爺が祇園さんに参詣かと聞く場面では二の鳥居がズームされる。以降もこの茶店は頻出)。桜井と会うシーンは泉川畔、玉垣越しに見張る料亭を示す趣向、浪士が出入りの料亭は境外の石村亭で、見張る村越は泉川の橋続きの玉垣に潜む。出てきた浪士をつける村越は参道、すぐに気付かれてしまうが旅行者を装い「八坂の塔はどこですか」で切り抜け。このあとは馬場、茶店で甘酒を飲んでいた万五郎をピックアップして更に尾行、オープンセットにスイッチ。探り当てた怪しい店の始末がつき、牟礼の配慮で御役替えになった村越が万五郎たちのいる真葛ヶ原の茶店に出向き世話になったと礼を述べた直後、件の浪士と鉢合わせし斬られる林は糺の森
・妻子を連れ京を去った吉辺が休む道隈、不明(遺骨を抱いて通りかかる村越の父はこの道隈を過ぎ谷地田の道を去る)
*村越新八郎は宮川K夫、吉辺十次郎は森山周一郎、履物屋の女将で吉辺の情婦は原良子。*吉辺の始末に関する「判断」を桜井におっつける牟礼と権田が大笑い。百太郎は茶店で亀に甘酒。


第4話「紫の袱紗」1969.10.27

 相次ぐ商人の死、遺品には悉く紫の袱紗に包まれた天上人の短冊。集金システムの裏には、札付きの悪党が隠れていた。

神泉苑善女龍王社

ロケ地
・店の金を使い込んだ紙問屋の番頭が入水の池、大覚寺大沢池(大沢池堤からドボン、土砂降り気味の雨を演出)
・室町の旅籠へ向かうおゆう、桜井が追ってきて名所案内を呉れてやるのは神泉苑善女竜王社前、このあとおゆうは嬉しそうに草紙を眺めつつ法成橋を渡る。桜井の出入りでは境内の料亭・平八玄関前の橋も映る。
・歌人・山尾を尾行する万五郎たち、不明(狭い路地は撮影所内に演出か/脇に竹垣のある茶店は東山界隈か)
・短冊を書いた少将の屋敷に乗り込む牟礼、大沢が門前で案じつつ待つのは御所・拾翠亭入口。
・公家の輦車がゆく路地、仙洞御所塀際。
・若旦那と共に故郷へ帰るおゆう、御室から原谷へ抜ける道(林から塔がのぞく)。後から輦車もやって来る。
*国士のつもりで「献金」していた若旦那は大丸二郎、大旦那の命で迎えに来た女中・おゆうは松木豊。悪党に使われていた歌人は夏目俊二、旅籠の悪い女将は水上竜子、ごろつき同心は山岡徹也。


第5話「祝いの夜」1969.11.3

 商売で長く家を空けている亭主を迎えるため心を砕く女房、いじらしいその気遣いが惨劇を呼ぶ。高飛車で手前勝手な、体面のみ気にする愚か者どもに鉄槌が下る。

ロケ地
・「さる藩」の留守居役が牟礼たちに護衛を「命令」する庭、隣松園か。
・おたきが斬り合いの直後に出くわしてしまう空き屋敷、民家(南塀、内部と門内側)
*留守居役は舟橋元、おたきに偽証を強要する藩士は中田浩二。おたきは高森和子。*牟礼の金の出所、家屋敷を売り払って作ったものと本人が金使いを咎められ「告白」。この際神君を家康と呼び捨て。


第6話「桐の梢に」1969.11.10

 国事に奔走する兄、世人と交わらず荒野に苗木を植え続ける弟。兄の身に変事が起き、託された書付を巡り弟の身辺が怪しくなるが、牟礼たちは過激派・町方双方の手から彼を守り落としてやる。

穴太橋

ロケ地
・望月小平次が耕す荒野、不明(養生中の砕石場跡にも見える)
・小平次に書付を託した兄がゆく山科から京への道、橋は穴太橋(たもとに地蔵や半鐘あしらい)、街道筋は不明(3話ラストの谷地田も出る)
・山科の里の情景、ほぼ不明(花嫁行列を見るおようは神社入口か/小平次に栗飯を持っていくと約束するおよう、谷地田?/小平次が寄宿する屋敷、長屋門の民家/おようの勤める飯屋、切り通しの出口にあしらい、切り通しの裾は石積、飯屋右手は開けた農地)
*小平次は佐々木功、兄は柳生博、おようは鷲尾真知子。


第7話「金色の湖」1969.11.17

 店の主の理不尽に傷ついた青年は自棄となり、勤皇の志士という幼馴染の言に同調、悪しき世終われかしと協力を諾う。しかし友の一味は右左構わず伝手を頼る思想無き浮浪、青年と恋人の上に更なる理不尽が落ちてくる。

浮御堂

ロケ地
浮御堂を映し対岸にズーム、セットの草津宿の茶店(姥餅屋)のあと湖上交通の解説。矢橋の浦イメージに琵琶湖西岸(突堤と浜)。ここから横渡しに大津、と語られる場面では近江八幡の山なみにズーム。「瀬田の大橋」に本物の唐橋(通行人や駕籠あしらい)。このくだりは「東海道名所記」に拠ると語られる。
・道をやって来る平助、「右矢橋船着場」の道標がある湖岸、琵琶湖流入河川の河口(沖ノ島の見え方から西岸の川と思われる。河畔は草深い。ここで矢橋の舟運について語られるが、北湖を西から東へぐるっと見る図は琵琶湖大橋から北望のビュー)
・主の無体に店を飛び出した勇作がおすみと話す橋、不明(クリークに架かる木橋、船を通すため中央が嵩上げされている。背景には萱葺屋根なども)
・平助が勇作を呼び出した料亭・瓢亭、琵琶湖西岸の旅館ふう建物(牟礼たちがやって来るシーンで外塀が映り、路地越しに湖がのぞく。座敷からも湖が望まれ、庭の籬のすぐ外が浜。比良山の見え具合から和邇川左岸とも思われる)
・勇作を呼び出した平助の「供」を不審と見てつける万五郎たち、入った古寺は瀬田の雲住寺(西塀から門、中へ入って鐘楼脇へ出て本堂渡廊を行く「供」を見る。このあとはセット)
・牟礼たちの諭しによりやり直しを決めた勇作とおすみが店へ戻る湖岸、琵琶湖西岸。古寺を逃げてきた平助に斬られるのは突堤。
・勇作たちの死後金色に光った湖、今も秋の夜にと語られるくだりで映る湖は南湖・琵琶湖大橋から堅田方面を見た図。
*勇作は柴田p彦、おすみは御影京子。今回大沢孫兵ヱは出ず。


第8話「旅先の女」1969.11.24

 闇雲に京へやって来ては志挫け、良からぬ行為に走る郷士たち。牟礼と桜井は不逞と化した者を斬り、権田は未然に防ごうと地道な活動を続ける。救いの手届かずあたら命を散らす真面目な青年哀れ、弟の死を知らされず故郷へ帰る姉また哀れの、苦い一話。

京都御苑管理事務所東門

ロケ地
・御用商人の駕籠に天誅をかける浪士たち、随心院参道(駕籠の中は牟礼で返り討ち)
・郷士・津村啓介がやって来る京道、親切な「旅先の女」が金を用立ててくれる茶店は木津堤にあしらい(内部はセット撮り)
・津村が訪ねてゆくさる藩の京屋敷、御所管理事務所東門(門前払い)
・津村の姉が故郷へ帰る道、流れ橋
*津村啓介は加藤恒喜、子犬のような困り果てた目が印象的。先に京入りし落ちぶれ果てている友人は柴田昌宏。彼をたばかる女は三原有美子、彼女の情夫に玉生司郎、親切面の「父」は吉田義夫。津村の姉が権田に挨拶して帰る際に擦れ違う、京にやって来たばかりと思しき浪士の一人に福ちゃん。*郷士の定宿になっている旅籠の向いを見張り所にしている権田、「未然に防ぐ」お説教をする相手を呼びに行くのは万五郎なのだが、怖い顔を近づけて「怪しいモンやおへん」とやるのが大笑い。百太郎も、牟礼たちが護衛に入っている御用商人の妾宅へ気味のわるい入り方をして桜井の微苦笑を誘うのが笑える。


第9話「しぐれの町」1969.12.1

 己の人生を犠牲にして女手一つで姉が育てた弟は、まだ一人前にもならぬ身で「国事」や「志士」にかぶれ、中途半端なまま死んでゆく。視野狭窄に陥った弟を掻きくどく姉の姿が哀しい。

疏水分線

ロケ地
・暗殺が行われた堀川、疏水分線・大豊神社御旅所前。釣りを装い獲物を待つ「志士」佐伯は右岸岸辺に、万五郎がひやかすが何も答えず。ムッとした万五郎がボヤきながら腰掛けるのは御旅所の東にある橋、百太郎もやって来て寒いので内から温めようという話になりお役目を放棄して酒肆へ。暗殺現場は御旅所前の辻。
*姉・おしのは森光子、弟・要吉は小川真司。佐伯は穂高稔、暗殺された男の妾は伊吹友木子。


第10話「間者の来る朝」1969.12.8

 二重スパイだった商家の大番頭、行為が露見し斬られるが、彼を手伝っていた手代も裏切者として狙われる。牟礼たちは彼を保護するが、気遣い空しく青年は我から闇に落ちてしまう。

石塀小路

ロケ地
・大番頭の家へ赴く已之吉、八坂神社境内〜石塀小路
・保護されていた旅籠を抜け出して「清水坂の屋敷」へ走る已之吉、石塀小路清水寺子安塔脇〜子安塔前の植え込み越しに清水寺の堂塔を遠景にして走り抜け。このあと法然院総門に駆け入り参道を走り山門へ。
・屋敷内、不明(萱葺き瓦葺と建物数多し、池泉と大刈込。阪口に似る)
・隠居を絞殺してしまった已之吉が繋がれる六角の獄、青蓮院長屋門
*純愛を踏み躙られて逆上する已之吉に石橋蓮司、隠居の情婦だったおりょうは志乃原良子、已之吉を慕う丹波屋の下女は中千鳥。大番頭のもとへ押しかける侍たちは幸田宗丸をはじめ川谷拓三や小峰隆司など。


第11話「倅は武士」1969.12.15

 京で強盗をはたらいた自称「国士」が丹波へ逃走。追ってゆく牟礼たちだが、藩領ゆえ立会いを求めた目付方の若者を殺伐に引き込んでしまう。

ロケ地
・寒そうに丹波路をゆく孫兵ヱ、切り通しのロングは谷山林道か。松並木の道は安行山、茶店に入ってきた行商人は侍と桜井が語るのは中山池畔。
・綾部藩領遠望は穴太の里を竜ヶ尾山から見下ろし。
・綾部城下はずれの郷士屋敷、民家長屋門
・目付方を斬って逃走した「国士」を殲滅する神社、不明。
・綾部を去る牟礼たちに倅の死に様を聞く父、不明(6話で出た里と同じ)
*酔った舅を介抱していて斬られる目付方は住吉正博、父は月形龍之介で舅は明石潮、浪士との関わりを渋る上司は永田光男。*夫の亡骸が運ばれてくる直前、懐妊を知ったばかりの妻女が取り出していた梅干の赤が鮮烈。


第12話「襲撃札の辻」1969.12.22

 国士気取りの侍が馬鹿な経緯で破滅に至るいつもの流れに、百姓あがりの若党の、遭わずに済んだかも知れぬ悲劇を上乗せ。無惨を見るメンバーの顔は常に増して暗い。

ロケ地
・吉田彦太郎の藩の情景、登城風景は彦根城(佐和口多聞櫓や内濠端、外濠端から天守遠望など)。吉田邸は民家長屋門。別の武家屋敷に民家長屋門。武家屋敷に奉公叶った若者が衣装や刀を見せに来ている畑、先の民家前畑と蔵。このくだりでは武家屋敷の内情が語られる。
・京の都イメージ、友禅流しの川(不明)三条大橋
・吉田家の若党・三平が訪ねてゆく藩の京屋敷、京都御所管理事務所東門
・主君の仇を討って国へ帰る三平が「仇」の藩の討手殺される札の辻、舞子浜(三平がゆく街道は松原、死体発見現場は汀)
*吉田の属する藩については大藩という話も出るが、具体的には語られず。「札の辻」もいずこと明確には出てこないが、メンバーがすぐ駆けつけているところからすると大津か。*塚本三平は山根久孝、吉田家下男の孫市は小栗一也、三平にお役目を振ったうえこそこそ逃げ出す用人は楠義孝、吉田彦太郎は不破潤、彦太郎を妾とともに斬り捨てる「志士」は森山周一郎。


第13話「魔性の鐘」1969.12.29

 頻発する銃撃事件、得物は新式銃、出所を追って一同は兵庫へ。取引をしていた浪士に化け怪しの回船問屋へ乗り込む牟礼だが、当の浪士の女がやって来てしまう。

東福寺日下門

ロケ地
・兵庫へ向かう前に権田が遥拝する寺院、東福寺日下門から仏殿。このあと西塀沿いを歩き出す。
・三人のダンナを追ってきた万五郎たちが休む茶店、不明(河畔林が柳の川堤、簡素な木橋がかかるたもとに建物あしらい、道標に「湊川」)
・兵庫港イメージ、琵琶湖(琵琶湖大橋あたりから南湖西岸を見たものか)。万五郎たちが権田と出会う海岸、琵琶湖岸(石積護岸)
・回船問屋・西田屋が訪ねる玄雲の寺、東福寺一華院(直前の桜井尾行シーンの塀は映画村内広隆寺塀か)
*銃売り捌きの生臭坊主・玄雲は金井大、西田屋は永野達雄、情夫が斬られたと思い込み兵庫へやって来る女は河村有紀。*「主義主張ではない」浪士が仕出かす武器商売が、女を死に追いやり男を独りにし、ささやかな幸せを破壊する経緯が如何にも「らしい」一話。


第14話「暗殺者の指示」1970.1.5

 飛脚が運ぶ状箱には物騒な指令の文、金に困ったゴロツキがこれを盗んだことで事態は変わり、牟礼たちが保護していたターゲットは命拾い。暗殺団とヤクザは殲滅されるが、飛脚は失職するものの身は損なわず大団円の珍しい展開。

摩気

ロケ地
・京の飛脚・周太が走る橋、流れ橋(端に霜)。堤外地の堤法面に「穴太宿すぐ」の道標、周太は堤の登り道を走ってゆく。
・穴太宿はずれの橋、穴太橋。橋たもとに火の番の小屋と物見櫓あしらい、櫓に引っ掛かった凧をとってやる間に状箱を盗まれる。盗った島次郎を追う周太は走田神社社叢裏の田畔民家前(宿場)路地(里人に行き会う)、このあとの宿場風景はセットにスイッチ。
・暗殺団の的・大森作左ヱ門が逗留している庄屋屋敷、摩気民家(裏手から・イメージのみで内部はセット)
・当地を去る六人、不明(谷地田脇、溜池や小屋が見える)
*飛脚は近藤正臣、困り果てた表情がナイス嵌り。状箱を盗るゴロツキは佐藤蛾次郎、当地の貸元のもとに兄貴分二人と草鞋を脱いでいて五両の不義理をしている設定。*状箱を盗られたことをボロクソに罵る万五郎たちだが、凧に託して生い立ちを語る周太にホロリ、百太郎は自分も同じだったとしんみり、万五郎は「ワシこんなんアカンねん」と涙し「取り戻してきたる」と息まいたり。*穴太宿の設定だが、近江にも河内にも類似地名あり特定困難。しかし一連のシリーズでたびたびロケに使われている曽我部町の里を念頭に置いて書かれたシナリオと考えれば口丹波でOKなのかも。この際流れ橋の設定が問題、京→丹波で普通に道を辿れば老ノ坂越え、大堰川は渡らない…或いはそれ以前の道程で桂の西大橋とかかも。*この回から桜井氏ムシリ頭、何の説明もナシ。


第15話「旅の終りの女」1970.1.12

 公儀の使者がよく「消える」ポイント、そこには殺し屋を差し向ける政商。手先に使われていた浪士はこれを限りと刀を捨てるつもりでいたが、待たせていた女と見えることはなかった。

鵜川河口

ロケ地
・城下町、天守とオープンセットを合成の絵、天守は浜松城に似る。
・暗殺が行われる芦浦の湊、琵琶湖西岸の浜と流入河川河口。浜には灯台をあしらい。砂浜と葦原が印象的。
・「待つ女」が赴く約束の茶店、琵琶湖流入河川の河原にあしらい・河畔林は竹。「茶店」手前には欄干のない簡素な木橋。「旧街道筋」の地道は川堤か。
*殺し屋の浪士は前田吟で「待つ女」は亀井光代、政商・山城屋は野口元夫で手下に波多野博、つるむ役人は玉生司郎。*浪士に喧嘩を吹っかけたり、家老に会わせろと嘯いたりしてわざと「入牢」のダンナ方を案じる百太郎がメルヘンしてて可愛いのがちょっとした見もの。


第16話「氷雨の宿」1970.1.19

 藩から追っ手をかけられる武士、成り行きで彼を守る立場になる三人衆。彼の口からは法に触れる目的が語られるが、それ以上の手助けはしない代わり追及もしない判断がなされ「勝手に行きなさい」。

木島神社

ロケ地
・吉村と若党が追われる街道筋、不明(田畔や水路、農地の小屋など)
・吉村の御新造を迎えに行った牟礼たちが追っ手にさらわれた主従を助ける神社、木島神社(舞殿まわりと本殿)
・異国へ向けて旅立つ吉村たちがゆく浜辺、間人海岸
*吉村は中野誠也、同志の商人は中村敦夫。主人を追っ手から逃すため体を張る若党は森章二で父の老僕は山田禅一、御新造を泊めた旅籠の女中は岩村百合子。*御新造が連れ出されたことで己を責める宿の女中や、倅を失い主とも別れる老爺、宿場を徘徊するお薦さん等の群像も活写されいい味。


第17話「通夜の酒」1970.1.26

 代官所が襲われ、サボりの二人以外皆殺しに。検棹に不正をはたらく代官を斬った渡世人たちを見つける三人衆だが、はじめから見逃す気満々。詰め寄る土地の目明しらを威嚇し、病没した渡世人の片割れのため酒を酌み交わす。

ロケ地
・代官が殺されたと知らせが入る在所、不明(6、11話で出た里と同じ。桜井が背にした石垣には龕があり地蔵がおさまる)。土地の目明しの見張りが出る道隈も同所、見逃された渡世人がゆく切り通しも同じ。
・代官所、民家長屋門
・渡世人たちが潜む神社、不明(道から一段嵩上げされた高みにあり境内はごく狭い。潜むのは社務所か参集殿のような建物)


第18話「暁の脱出」1970.2.2

 公儀の使者が消える理由を知るため、ヤクザの用心棒になる牟礼たち。果たして勘は当り、「倒幕ヤクザ」は会津藩士を消そうとしていた。

流れ橋

ロケ地
・おきよが女衒に連れられてゆく道、谷山林道か(切り通し)
・会津藩士一行がやって来る道、流れ橋〜堤。宿場手前の街道、不明(6、11、17話で出たものと同じ。里はずれの風景には家居も)。一人落とされた若党が走る里の路地、不明。
・牟礼らのはからいで宿場を逃れた若党が京へ向けて走る道、河原林町あたりの農地か。
*おきよは鷲尾真知子、彼女と同郷の若党は小川真司。ヤクザの親分は福山象三、代貸は宗近晴見。*だるま宿に「勤める」権田、とんでもないメニュー説明が大笑い。


第19話「幽鬼」1970.2.9

 倒幕思想を説く「言うだけ先生」に踊らされる若者たち、或る者は天誅を企て打ち懲らされ、或る者は師に付き従っての旅に斃死。そして口舌の徒も厄介者に成り果てたイヌも共倒れ、風雲急を告げる時勢に呑み込まれてゆく。

鳥居本八幡宮

ロケ地
・目付役が通るのを宿場口で待つ浪士たち、不明(橋たもと川沿いに民家)
・牟礼と桜井が用心棒をつとめる目付役が隠れている祠、鳥居本八幡宮(舞殿に扉あしらい、石段ほか小柴垣道も映り込む)
・金が無くて宿を断られた関口が病を発した弟子・吉村を置いて塒を探しにゆく道、広沢池西岸沿いの道。吉村夫妻が休むのは養魚場流れ込みの際、船をあしらい。
・目付役を狙う浪士たちが師・関口を見て駆け寄る道、北嵯峨か。
・吉村の妻女に罵倒された後、目付役に斬りかかってゆく関口、広沢池西岸湿地
・関口の亡骸が無縁墓地へ運ばれてゆく道、北嵯峨農地竹林際。
*青年たちの指導者・関口は成瀬昌彦、過激分子を摘発し追放した目付役は横森久。天誅浪士の一人に川谷拓三。病没した青年の妻女は金井由美。*口舌の徒を罵る役割は吉村の妻女、内実はケダモノと知る哀れな役回り。血塗れで旅籠へ戻り絶命する「師」の執着も怖し。*目付役の護衛はするが、初手の襲撃を防いだあと放り出すダンナたち。スタンスは変わらぬものの、どういった筋のアレで動いているのかもはや不明。


第20話「雪割人形」1970.2.16

 世を憂え諫言を企てる若侍たち、友人面でそれを裏切る狡猾な男。裏切者の伝言を若様に取り次いだことを責められ嘆く女中に手を貸す牟礼、しかし仇を討ってやっても、若様の家も女中の人生も元には戻らず、潰れたお店が復することもない。

古知谷阿弥陀寺

ロケ地
・寺田家付近および川口の家等の城下、上賀茂社家町。寺田家はここに設定され、藤木社から明神川を見たアングルや宮自身も使われる。川口家も川沿い。
・寺田家の若様・敬太郎と同志が川口を待つ神社、木島神社(舞殿、元糺の池鳥居、本殿前、参道)
・敬太郎らが藩の追っ手に襲われる葦原、広沢池北東岸(水抜き後の池底も使用。逃げ込む茶店は東岸の建物を転用、ここに御一行がいて「匿う」)
・組頭に働きを誉められ江戸へ行くよう指示された川口、ヤクザの辰蔵一家を誘いどんちゃん騒ぎの温泉は日吉山荘飛龍の滝にスモークを焚いて演出。川口を懲らしめにやって来ている一行は大宮川左岸の林間、同行した女中が川口を詰ってやりたいと言い出す。建物内部も使われているが立ち回り等はセットで。
・登城風景、彦根城天守を映したあと堀端や大手橋に藩士を配置(12話と同じ映像)。続けて閉門となった寺田家が映し出される。
・当地を去る一行がゆく道、北嵯峨農地竹林際(権田があの女中の里と見遣る)
・出家した女中が勤行の合間に若様に貰った雪割人形を作り続ける山里の寺、古知谷阿弥陀寺(雪の山門を映したあと参道の坂、尼が起居するのは本堂)
*寺田家下女の加代は新井麻夕美、下男は北見浩一、川口は柴田p彦。


第21話「遠い足音」1970.2.23

 様々な人々が行き交う「要所」の宿場町、牟礼たちが出会った新米の酌婦は不吉な文を運ばされる。公金を掠めた悪党たちは欲をかいて滅び、空しさだけが残る。

相国寺湯屋角

ロケ地
・桜井が百太郎にこの宿場は要所と説く辻、相国寺方丈南西角・湯屋の「辻」(元勘定方の瀬川から身を隠す元両替商番頭の彦兵ヱを見かける)
・瀬川らが斬られる法然寺裏の通り、不明(低い石垣の上に建物・裾は海鼠壁)
・瀬川らが葬られた町外れの寺、不明(墓地)
・城下の瀬川邸、東福寺一華院(ラストに出てくる際は門前を通り過ぎる侍の行く手に大機院の石段が映り込む)
・仲間の浪人・日下部を呼び出し殺す彦兵ヱたち、御香宮本殿裏手〜猿田社前。
*彦兵ヱの仕込みで柄のわるい酒肆に勤めさせられる元両替商の奥女中は菊容子、彦兵ヱは春日章良。*タイトルは瀬川を待つ妻女や、彦兵ヱからの吉報を待つ欠所になった両替商父子が待ちわびる「足音」、通過するだけのそれを空しく聞き溜息の描写がやるせない。


第22話「春の祈り」1970.3.2

 山里の小藩で起こる悲劇、許婚者を寝取られた青年が斬った相手は殿様のお血筋。青年の周囲のほか、若様の守役たちも死ぬよりほか道はなく、仄かな恋を喪った大工の若者も悲しみの地を去る。

ロケ地
・山里の小藩イメージに雪嶺と雪の里。陣屋のことが語られるくだりに出るのは民家長屋門
・事件の起こる里、萱葺民家多数残る里。美山に似るも一面の雪で特定困難。
・逃げた村尾が牟礼たちに追いつかれる道、不明(小川に橋、まわりは田んぼ)
*村尾新八郎は石橋蓮司、じたばた悪あがきをした後、お屋形さまへ呪詛を喚き散らすのも凄絶。村尾の妹にして「目撃者の大工のマドンナ」は松木路子。大工の若者は加賀爪清和、怠け者の兄貴分は井上茂。守役は和田文夫、配下の藩士に福ちゃん(クレジットは「福本清二」。台詞回しはいつもとちょっと違うトーン)。*大工の若者が完成させずにいった祠は「京の宮大工」の万五郎が作り上げてちょっといい話←これが里に春を告げる運び。


第23話「石に咲く花」1970.3.9

 京へ行く武士が斬られるポイントでの裏話は悲話、待っても還らぬ者を待ち続ける哀れな主従を支えていたのは、その因を作った若者。己の行為に心苛まれていた男は再度の殺戮を拒否し落命、宿場口で売れもせぬ造花を並べて来ぬ人を待ち続ける二人に事実は知らされず、その姿は伝説となる。

ロケ地
・老僕が主の娘の作った造花を売る宿場口、不明(6話はじめ各話で使われた切り通し)
・宿場町、見たことのあるような家並みが映るが特定できず。
・娘と老僕を残し先に行った武士、二人が残された宿場手前の茶店は中山池畔にあしらい。武士が斬られた竹林は不明。
*造花を作る娘は赤座美代子、狂態も示すが基本はきりっとした武家娘。老僕は岩田直二、娘と別れた直後殺されてしまった武士は永田光男。造花を買い上げ主従を助ける郷士の若者は長谷川哲夫。老僕にショバ代を要求しダンナ方に散々にやられるヤクザは山岡徹也、田口計、志賀勝等々。


第24話「使命は間者」1970.3.16

 長州の動きを探ろうと武芸に秀でた者を選抜したさる藩だが、この人選が大ハズレ。武門の誉れ高き家に生まれた堅物は、母親が危ぶんだとおりガチガチに緊張し、敵の偵察部隊に易々と正体を覚られてしまう。

彦根城濠と佐和口多聞櫓

ロケ地
・さる西国の藩の城、彦根城天守。密命を受けた五人が下城の道は観音台への橋。一人家へ向かう寺内、朋輩に話しかけられるも上の空の堀端は玄宮園前堀端、石垣に残雪。寺内邸、民家長屋門。登城風景は佐和口多聞櫓付近の堀端や大手橋、20話同様12話の使い回し。
・寺内らの正体を知り旅籠を夜発ちした「鼠」を追った百太郎が彼を見失う道、19話の宿場口と同じ橋たもと。
・寺内以外の四人が殺される追分、6話はじめ何度も出ている「道隈」。
・思い詰めた寺内が切腹しかける茶店、流れ橋脇に建物をあしらい、階段や手すりを付けて橋上には床机もあしらい。やって来た長州勢と牟礼・桜井がチャンバラは橋の上と下で。
・長州へ向かう寺内夫婦、琵琶湖(沖ノ島の見え方からすると東岸、松原沿いの陸側の道から浜辺へスイッチ・残雪あり)
*寺内は亀石征一郎、緊張しすぎて仲間から狂人の目とか言われてるし、命が下される場で既にわなわな震えてるのを上役が訝しんでいる…止めろよ上司。妻女は北林早苗、長州の密偵は玉生司郎。*ダンナたちは、町人に身をやつすものの旅籠中に聞こえるような大声で「間者」とか話している寺内たちをたしなめ忠告することで関わってゆく。


第25話「春雷の中の女」1970.3.23

 人っ子一人おらぬゴーストタウンの宿場町、世話役父子はそれぞれの理由で居残り。牟礼たちの力押しで悪代官は家老に引き渡され大団円、しかし自棄になった男の一言が事態を最悪の方向へ持ってゆく。

ロケ地
・宿場町イメージに穴太の里遠景、町なみはここなどをオープンセットと組み合わせて。一行が上がりこむ酒肆は萱葺きの広壮な一件、もう無いかも。
・郡代屋敷、民家長屋門
・当地を去る一行が休む茶店、不明(池端、ここへお京が入水)
*世話役父子は永井柳太郎と高角宏暁、郡代屋敷の女中・お京は加賀ちか子、郡代は中村孝雄。


第26話「血斗暁七ツ」1970.3.30

 続々と京へ向う長州勢、怪しまれ捕まった見知りの密偵を救うため人質をとるなど無茶をするダンナ方、しかし助けた男の口から知れるのは三人に下されていた公儀の冷酷な処置。殺到する長州勢を斬り伏せた後、三人はそれぞれの道へ散ってゆく。

中山池

ロケ地
・長州勢をつけて山道をゆく孫兵ヱ、不明(途中に茶店あしらい)
・密偵を助け出したあと一行が集まる宿はずれのお堂、不明(堂は室内セット、参道は神社か/入口の外は二又道、脇に小川と橋。これまでも何度か出ている)
・ダンナ方を追って駆けてくる万五郎たち、安行山。別れゆく三人、中山池池尻(南西端)、権田は池端を西へ、桜井は安行山方面へ堤を、牟礼は今の縦貫道の方へ(今は無い池端の小丘等も映り込む貴重な映像)
*牟礼たちの人質にされ、不覚をとった原因を郎党と情婦になすろうとして目付役に斬られる長州藩士は片山晴彦、情婦は田村奈巳、郎党は大丸二郎。*京へ帰れと言われたにも関わらず襲い来る敵に立ち向かおうと薪ざっぽなど構える万五郎と百太郎、しかし「亀の子」の「義を見てせざるは福来る」に膝が抜けたり・西田良可愛すぎ。


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