2007年 テレビ東京/松竹 *第1話はスペシャル
キャスト
六郷藩
松葉刑部(六郷藩脱藩)/村上弘明 ゆい(刑部妻女)/遠野凪子 葛又五郎(横目付頭)/永島敏行
助徳一派
徳松/柄本明 白首お六/小沢真珠 いかずち才助/斎藤歩 観音伊佐次/蟷螂襲
闇猫一派
闇猫のお吉/若村麻由美 お役者信次/西村和彦 だんびら重兵衛/四方堂亘 獄門の政五郎/真勝国之
長屋住人
お静/中山忍 喜兵衛/芝本正
ナレーター/遠藤憲一
第1話 「孤臣」 2007.7.20
松葉刑部が出羽・六郷藩を出奔した経緯が描かれ、舞台は二年後の江戸へ。深川の長屋に住み「叩かれ屋」を生業とする刑部に、藩からの刺客。鮮やかに返り討ちにするその腕を見た口入屋の徳松は、刑部に暗殺の依頼を持ちかける。彼の裏の顔は「助っ人屋」、人殺しを請負う闇の住人だった。
徳松の依頼を受ける刑部だが行った先では妙な経緯、殺すはずの姫を護衛する羽目になり、お家騒動に関わってゆく。姫を狙う別口の殺し屋も出るがからくも防ぎ、藩主との対面を経て正当な後継が決まり悪は滅び、刑部を心から頼みにしていた姫は涙ながらにお屋敷へ。
ロケ地
- 刑部出奔のくだり、泣く泣く殿の側室になりにゆく刑部の妻女が乗った駕籠、坂本街路(日吉大社参道・日吉の馬場、北側の里坊前付近)。妻の亡骸が返されてきたあと、謀反人として捕わるを拒み出奔した刑部を関所で待ち構える横目頭の葛、清滝川最下流部に柵等あしらい。斬り抜けた刑部が走るシルエットは落合トンネル、桜舞い散る巌頭は保津峡落合落下岩、腰を落ち着けて脇差で髭をあたる川べりは落合河口巌。陽炎立つ野をゆく刑部、不明。
- タイトルロール、御津町新舞子の干潟で刑部のチャンバラ(以降、落合トンネル、御津の干潟がオープニングとして使用される)。
- 叩かれ屋の営業に行く刑部、仁和寺中門をくぐり露店立ち並ぶ参道へ。店を広げるのは参道石段、ここへ雇われ刺客が出る。そのさまを眺める葛は茶店に。
- 徳松が刑部をスカウトするくだり、徳松配下の才助が導くのは八幡掘堀端、徳松と話すのは明治橋下。
- 六郷藩下屋敷、大覚寺大門。
- 闇猫のお吉のアジト、丹波国分寺門(イメージカット、室内はセット撮り)。
- 吉松藩邸、随心院薬医門。御小姓頭の大木が正室に江戸家老の所在を聞くのは書院。
- 菊姫のいる荒れ屋敷で徳松に身の上を語る刑部、冒頭にも出た妻女が側室として城に上がる道(駕籠)、坂本街路(冒頭の効果をかけたものと違い昼間の絵)。
- 町に出たいと言い出す菊姫のくだり、姫と呼ぶなと叱られる刑部は長岡天満宮八条ヶ池参道の橋、踊る芸人(中の人は闇猫)を見てはしゃぐ姫は八条ヶ池水上橋、お団子を食し感激の茶店は本殿前鳥居下の石段にあしらい。姫を乗せて船をやる刑部、八幡掘から錦水亭東屋前八条ヶ池にスイッチ。連れて行く縁日は仁和寺参道、闇猫が出てチャンバラ。
- 病篤い父藩主と対面するため藩邸に戻る菊姫、随心院参道〜薬医門〜大玄関(大木が随伴の刑部を止めるが姫が叱責し罷り通る)。対面の儀や祝宴は書院。
- 野望潰え逃げ出す大木にダブルブッキングの制裁を加えに来る闇猫一派、御津町新舞子の干潟。
- 吉松藩首席家老・多田織部の書状を携えた藩士がやって来る道、民家塀際。
- 刑部をスカウトしに来る闇猫一味のお役者信次、刑部が佇むのは八幡掘白雲橋たもとの燈籠際、信次と話すのは白雲橋下堀端、申し出を断った刑部の前を通過する船に妖艶な笑みをたたえたお吉。
*菊姫は小林涼子、お付きの「じい」の老剣客・大貫自斎は福ちゃん(徳松の談話時に立ち回りはあるものの、刑部が来た時点で死んでる飛ばした設定)。吉松の殿様は立川三貴(病人で悪人要素皆無)、正室は未來貴子、菊姫の味方の江戸家老は寺田農、御小姓頭の大木は有川博、陰謀の主の国家老は名が出るのみ。
第2話 「赤穂遺臣」 2007.7.27
また仕事に行った先で獲物を助けてしまう刑部、闇猫一派にも狙われていたその武士は、大石内蔵助と袂を分かち討ち入りに参加しなかった浅野の遺臣だった。徳松から来た新たな依頼に応ずる刑部だが、これにも浅野の遺臣たちが関わってくる。狙うは将軍の権威を笠に着た淫祀邪教のヌシ、希代の怪僧・隆光の弟。
ロケ地
- 闇猫のアジト、丹波国分寺(門のみイメージ)。
- 天人教総本山・成光院、南禅寺三門(導入は下層の軒越しに基壇を見下ろすクレーンショット・西側)。
- 玉庄の娘が土左ヱ門となって見つかる水辺、嵐峡汀。
- 奥野将監宅を辞した刑部を追ってくるゆき(将監娘)、大覚寺放生池堤。
- 隆海の件の始末を話す将監と刑部、南禅寺僧堂坂。
- 隆海は病死ではなかったと擦れ違いざまに刑部に声をかけるお吉、大覚寺護摩堂前大沢池畔(堂は映らず、石仏と池が背景に)。
*奥野将監は西岡徳馬、天人教の用心棒・河内は菅田俊。
*原作を大幅に端折ってあるが、高田郡兵衛・毛利小平太・小山田庄左衛門らはちゃんと登場、討ち入りよろしく天人教へ斬り込み、用心棒の「吉良方」と刀を交える。これを止めた将監の言葉に感応してか、隆海に尊厳を踏みつけにされてきた河内は主を見限り、刑部の刃により解放されて死んでゆく運び。隆海の扱いは原作と異なりすぱっと一発。
*お吉が刑部に接触してくるシーン、市中のひとこまには猫の爪シャキーンのシルエットが入ってて笑える。
第3話 「かけ落ち指南」 2007.8.3
刑部に残る「武士の尾」、またまた的を斬らぬ方向へ。思い合う恋人たちを護り人生の指針まで示す刑部、彼の指向を読んで動く徳松は一枚上手。
ロケ地
- 形屋の一人息子・市太郎と駿河の山持ち・山惣の娘とのお見合い、広沢池に屋形船。
- 駆け落ちの市太郎と初花を乗せた渡船、大覚寺大沢池。中心部から北辺水路へ漕ぎ入れ、天神島にあしらわれた苫屋に闇猫のお吉がいて船を見ている趣向。
- 形屋が二人の仲を許し決着したあと、刑部と徳松がゆく帰り道は金戒光明寺。永運院下坂〜東坂下石垣際〜参道石段(徳松がガメた金を出してみせる)。
*柳橋芸者・初花は雛形あきこ、市太郎は大柴隼人で父は平泉成。形屋のライバルが初花につけた用心棒で初花に惚れてしまう暗闇助四郎は小沢和義、闇に溶けて剣を繰り出す強敵だが、刑部に陽を入れられて形無し(原作では早い段階で闇猫に射殺され)。
*凶刃から自分を庇い市太郎を叱咤する初花にほだされる父、王道の情話に仕立ててあるが原作では父子の和解はナシ。
第4話 「武士と人間の間」 2007.8.10
用心棒を頼まれる刑部、赴いた旗本屋敷には奇妙なカップル。愛し合う「仮面夫婦」は、預かりものの妻女の男児出産により清算される。
ロケ地
- 気配を察し営業を終えた刑部の帰途を襲う刺客、大覚寺大沢池北辺並木。刺客を操る藩士・田宮は遣水跡の芝地側に。
- 六郷藩下屋敷、大覚寺大門。
- 闇猫のアジト、丹波国分寺門。
- 闇猫のお吉におこのが男児出産とツナギをとるお役者信次、広沢池東岸(依頼者と会っているお吉の屋形船に小船で接触)。
- 刑部の前に討手として現れる横目頭・葛又五郎、上賀茂神社ならの小川畔(刑部は左岸を傘さしてやって来て、葛は対岸から声をかける。葛の存在に気付かずお静が神事橋を渡って刑部に駆け寄り水入り)。
*依頼者の旗本・渋江武左衛門は布施博、「妻女」のおこのは大河内奈々子。この二人には原作にないニュアンスが加味されていて、抗えぬ運命を共に明るく生きようと誓った「設定」が絵的に説得力を持たせなかなか利いている。おこのに通ってくる男が大身とのみ聞かされていた刑部は葵紋を見て衝撃を受けるが、原作と違い将軍とは明らかにされず。
第5話 「死神の町」 2007.8.17
臥煙が跋扈する新開地、名主に頼まれ用心棒として入る刑部だが、彼らを刺激し状況を悪化させたとしてすぐにお払い箱。捨て置いては敵の思う壺と居座る刑部、加えて赤穂残党の助っ人がやって来て、ならず者を使った「黒幕」の思惑は潰えてしまう。また、騒動の最中には闇猫のお吉が現れ刑部に助け舟を出しスカウトする一幕も。
ロケ地
*死神の首領・吉蔵は海東健、名主は鶴田忍で娘のお蝶は木内晶子。
*お蝶が住民に立ち上がるよう働きかけていることや、刑部に乗り込まれてしまった一味が両国橋に晒される件等、原作と微妙に違う場面もある。死神メンバーのなりは傾き者というより路上パフォーマーみたいな感じ。吉蔵の武器はランボーナイフばりの匕首。
第6話 「嫉妬の果て」 2007.8.31
的は留守居役奥方殺しの腰元、しかし依頼者の言い分は嘘。腰元を守る側に立つ刑部だが、代わって仕事を受けた闇猫に手を焼き、依頼そのものを消しにかかる。
ロケ地
- 新名藩邸イメージの甍(煙とり付きの屋根あり)、粟生光明寺か。
- 狙われ続ける腰元を隠した刑部、そこへ向う道で尾行されるが徳松の手下が耳打ちする通り、今宮神社東参道。
- 留守居役と藩主の正室が密会する池之端の出会茶屋、宝厳院通用門。
*腰元は星野真理、兄の浪人は山崎銀之丞。正室は筒井真理子、留守居役は隆大介。
*胸を病んだ兄が吉良の付け人だった設定は出ず、刑部に妹を守らせるため壮絶な自刃というのもナシ。
*女性心理について忖度する件はうまく場面ごとに挿んであり良い味わい。
*留守居役の髷切りは原作と少し経緯が違うが、アタマの「その後の処置」は大幅に異なり、いたずら心を出して山岡頭巾を剥いだ闇猫さんの爆笑を誘う趣向。
第7話 「密命 刑部抹殺」 2007.9.7
横行する辻斬りを的の依頼が、刑部を名指しで来る。依頼主は六郷藩、仕了せた後の刺客の始末には刑部の剣友が選ばれ、彼には任務完遂後の自裁が命じられていた。
ロケ地
- 六郷藩下屋敷、大覚寺大門。
- 闇猫のアジト、丹波国分寺門、石仏群(前に彼岸花あしらい)、本堂。
- おみつの名を呼ばわるお六、大覚寺護摩堂前(裏側からの撮り)。駆けてくるおみつ、放生池堤。刑部とお六はおみつにその先にあるものを見せまいとする、視点の先は松竹オープンセットの橋たもとに切り替わり、おみつの母の夜鷹の死体がある(辻斬り被害者)。
- 葛又五郎が語る事の経緯、本家筋から話が来た養子の正体を知り評定の国家老たち、六郷藩城イメージに大阪城千貫櫓。
- 刑部が徳松にはかり噂を流させ、辻斬りを誘き寄せる清水山(柳原土手近くの小丘)、大覚寺天神島。現れた辻斬りとの立ち回りは有栖川河床へ移動、かねて用意の仕掛けに誘い込むくだりはセットにスイッチ。
- 辻斬りたちの始末後に又五郎と立ち会った刑部、友の亡骸を運んでゆき出てきた藩士たちを恫喝する上屋敷の門、仁和寺本坊表門。
*刑部の旧主家が辻斬りの若様を始末すべく依頼を掛けてくるのは原作と同じ、元々刑部追捕を命じられていた剣友との決着をつける話を入れてあるので、生け捕った辻斬りのその後が異なる。また、若様の身分やお供の剣客の流派も変えてある。
*刑部の状況を聞いた闇猫のお吉が、己の前身を匂わせる場面を入れてある。
*六郷藩国家老に西田健、養子候補の若様始末を刑部にと提案する組目付は勝部演之。刑部がアドバイスを受けにゆく、辻斬りと立ち会って辛くも生き残った浪人はベンガル。若様付きの剣客の一人に峰蘭太郎、ドラマでは小野派一刀流の遣い手で、柳生ではない。
第8話 「死闘 最後の刺客」 2007.9.14
六郷藩江戸表と国元には温度差、元より刑部の預かり知らぬことだが、江戸家老と刑部に結ばれては困る筋から闇猫のお吉に刑部の暗殺依頼が。そして助徳をも巻き込み、闇猫との死闘が繰り広げられる。
ロケ地
- 六郷藩上屋敷、仁和寺本坊表門。
- 江戸家老が刑部を呼び出す屋形船、松本酒造前東高瀬川堤に広い川面を合成(大手筋から向こうは消してある/川は桂川か)。
- 江戸家老が差し向けた藩士が囲まれる六郷藩城下、大覚寺参道石橋。
- 徳松たちが襲われたあと、信次を尾行するお六、八幡掘白雲橋〜堀端(左岸側の町なみも「路地」として使われる)。
- お静を拉致し刑部を呼び出す闇猫、下谷坂本町の得円寺跡、丹波国分寺(門、本堂、石仏群。本堂裏手には塀をしつらえ、お堂内部はもちろんセット撮り。門と本堂の壁が「紅殻」に演出されているのがはっきり判る)。
- 六郷藩城、大阪城千貫櫓。
*江戸家老・阿部頼母は小野寺昭、藩主・義隆は上杉祥三。組目付の意を受ける出入商人の丸屋は伊藤達広。
*闇猫のお吉の身の上が詳細に語られる。武家の出で、浪人した父は辻斬りに身を落し斃死、母は病で逝き、妹は嬲り者にされ狂死、弟は復讐に行き頓死という悲惨極まりない境遇。妹が死んでいた寺がアジト設定の得円寺で、7話に出た彼岸花の逸話は妹の死処。
参考文献 森村誠一著「刺客請負人」シリーズ 中公文庫
→ 刺客請負人 第二シリーズ
|