1968 NET/東映京都テレビプロ
第1話「剣を抱いた十人の客」1968.1.29
とある城下町、策謀のためにスカウトされた浪人たちは旅籠に集まってくるが、指令の来る気配がないどころか、唯一名が知れていた藩士は上意討ちに遭い死亡。解散せよとの知らせは来るが、志士気取りで気炎を上げていた浪人どもは小グループごとにわるさをはじめ、悉く野良犬ダンナたちに打ち懲らされる。お話をひとことで言うと「旅籠の難儀」。
ロケ地
・城下へ向かう浪人たちが通る池端の道、不明(池の向こうに里)。天守は書割。
・旅籠を手配した藩士・小島の屋敷、東福寺一華院門(影の浪士と小島の妹のやり取りは式台玄関、門の内側が見えていてくぐり戸から旅籠の番頭が入ってくるが、一華院で撮られたものかどうかは不明)。
・二階の一間に屯する浪人たちを恐れた旅籠の主にせっつかれ、夜道を小島宅へ走る番頭、東福寺一華院北東塀際(カーブ部分を過ぎ同聚院との間の路地へ)。
・影の浪士と城下を脱出した小島の妹が翻心し戻ると言い出す町外れの街道、不明(丘の上の谷地田)。城下を出て来た野良犬と行き違うのは冒頭に出た池端。小物類から丹波と思われるものの見当つかず。
*旅籠の主は山村弘三、番頭は今野秀明で下女は柴田美保子。影の浪士は中野誠也で小島の妹は佐々木愛。浪人たちは河上一夫、伝法三千雄、月形哲之介、山本弘などよく見た顔が満載。
*野良犬は伊藤雄之助、捨て犬は島田順司、狂犬は高橋俊行。品田万平は骨接ぎの先生で投宿。
第2話「町の中の野火」1968.2.5
とある城下町、横車を押す二足の草鞋に苦しめられる男女の哀話。捨て犬の儲け話に乗り目明しを黙らせるための金を稼ぎに出る野良犬だが、駕籠に乗っていたのは目指す大物ではなく、身代りをつとめた狂犬だった。
ロケ地
・城下を通る大物の件が「有志」に伝えられるくだり、料亭は円山公園か。三々五々家を出てゆく侍たちの情景は民家長屋門付近の町なみや金剛禅寺付近の町なみ。天守を望む城下町はセットと書割。
・「清河八郎」の駕籠がゆく街道、落合トンネル手前〜保津峡左岸の道(地道)〜竹林際(北嵯峨農地か)。
・城下を去る野良犬に報復と立ちはだかる藩士たち、不明。
・捨て犬と狂犬がゆく城下の町角、民家長屋門付近。
・父の墓に別れを済ませてきた酒肆の男女が万平ダンナと行き会う境内、西教寺本堂前。万平ダンナが参る酒肆の主と目明し宅の下女の墓、西教寺墓地(大師堂の甍が映り込む)。
・捨て犬と狂犬がゆく江戸へ四十五里の街道、中山池堤か。
・野良犬がゆく街道、野道は不明、渡る橋は犬飼川下河原橋(旧の木橋)。
・タイトルロールの街道筋(清河の駕籠がゆく道)、切り通しは安行山か。渡る橋は若森廃橋、見上げの堤道も。
*野良犬が福笹をくれてやった目明し宅の下女は大川栄子。酒肆の女は磯村みどり、恋仲の無宿人は林浩久。二足の草鞋は福山象三。
第3話「吹きだまりの月」1968.2.12
武士を捨て市井に生きようとしていた男が、時勢に乗った企みの果て虫けらのように始末される。密談を隣の座敷で聞いていて黙過した野良犬だが、残された健気な娘の用心棒として彼女に降りかかる火の粉を払い去ってゆく。
ロケ地
・料亭に呼ばれ留守居役暗殺を断った帰り、佐山浪人が元同僚の藩士たちに斬られる道、疏水分線大豊神社御旅所付近(川端、橋、板塀際)〜宗諄女王墓前(川端、墓所際、橋)。
・万平ダンナの道場・玄妙館、不明(旧地裁官舎に似た長屋門)。
*佐山浪人は植村謙二郎、娘は河村有紀、父子と懇意の大工は武周暢。*大工と万平ダンナは馴染みで、江戸へ帰ってきたばかりのダンナと酒肆で旧交を温めているところへ佐山浪人の凶報が入る運び。捨て犬と狂犬は万平ダンナの道場を訪ねて来ていて、藩士らが手配した鳶たちが乱入してきたのをボコる←酒がなくてご機嫌斜め。狂犬などはやって来た同心に酒買って来いと毒づいたり。野良犬が披露するくどい理屈が例の口調で開陳され見もの。*酒肆の「ポスター」が「くだん」なのも凝っている。
第4話「暗殺」1968.2.19
イデオロギーを主張したため消される旗本、その暗殺をめぐり多数の人々が巻き込まれ運命を狂わされる。
ロケ地
・旗本・望月孫兵ヱ邸、東福寺一華院門。裏口の描写はセット。
・望月邸の侍女と裏口で会っていた大工の青年・栄吉が暗殺を目撃する帰りの夜道、宗忠神社玉垣下のいまパーキングになっている所、北鳥居と水場も映り込む。狂犬が出てくる長屋はあしらいもの。栄吉が話していたルートは「八幡さまから切り通しに出て近道」。
*狂犬は栄吉を助け、捨て犬は口入屋の用心棒から豹変、野良犬は当の望月の用心棒として本人に頼まれていて依頼主の死後も律儀に役目を果たす。万平ダンナは栄吉の親方の近所に道場がある設定、近所の評判は「化物屋敷」で、先代・先々代も有難くない異称を貰っていた模様。*栄吉は賀川浩、侍女のお雪は坂倉春江、実は暗殺を指揮していた目付は飯沼慧、玄妙館へナシをつけにくる口入屋は不破潤、望月家断絶後莫連女になって狂態を晒す意地悪な女中頭は伊吹友木子。
第5話「湯島裏の女」1968.2.26
苦界に身を落とした元同心の妻の代人として、かつ「仲間のようなもの」を助けるため、野良犬は南町与力のもとへ乗り込む。三様に弱い女に優しい名無し犬たちだが、女は身を隠し金を届けることもできない。
*ほぼセット撮り、野良犬が八丁堀同心に刃を突き付け女の夫の切腹の真相を聞きだす「材木置場」はロケと思われるが、夜なうえ木ばかりで特定困難(神社の玉垣のような目印も一切映らず)。*女の夫の御用を勤めていて連座し、今は女の情夫の要助は穂高稔、女は三原有美子。倒幕浪士と通じ捜査情報リークで私腹を肥やしていた与力は小柴幹治、配下の同心は山口幸生、目明しは出水憲司。浪士たちの説明のくだりに出る、町をゆく浪人集団の中に福ちゃん・小峰さんに平沢彰。*捨て犬は要助に暗殺を頼まれ、野良犬は上記の通りに関わってゆくが、狂犬は道場で酒食らって寝てるだけ・しかし女には気遣いを見せもする。万平ダンナは道場を賭場に貸した罪で投獄されていて、家主権限で捨て犬に便乗して出して貰う。*今回も玄妙館のひでー現状が出てきて、鼠は天井裏を激しく這いまわり土埃を盛大に落として女を脅えさせる。狂犬曰く奥にも部屋はあるが根太が腐っていて台所は鼠の巣、道場がいちばんマシらしい。
第6話「冷えた燗酒」1968.3.4
野良犬が危機を教え逃がしてやった若侍たちの件は後をひき、殺到した追っ手により元からボロい玄妙館はさんざんに破壊される。混乱の中に無辜の命も失われ、塒をなくしたダンナたちは江戸を去ってゆく。
ロケ地
・玄妙館、同じようなお長屋ふうの門が二つ、右手奥には神社らしき石段と鳥居。しかし前の道が妙に広くてセットくさい。
・大金を見せびらかしてならず者に殺された坂井の検分、琵琶湖岸。亡骸が運ばれていったあとに、野良犬が汀を歩み去る姿が来る。
*留守居役を抱き込んで勢力拡大をはかるも失敗し追われる「急進派」の若侍の一人・坂井に坂口祐三郎、手前勝手な屁理屈で志士を気取るほかとんだ色悪。彼の若党に宮土尚治(現・櫻木健一)、坂井らが江戸入りを阻止しようと板橋で見張っていた藩士は森章二。
第7話「志士になる日」1968.3.11
親戚宅でこき使われる兄妹、ある日会いにやって来た幼馴染は志士になりおおせていて、武士になれると誘う。しかし志士たちには既に手が回っており、青年が町方に売ったと誤解した幼馴染は彼を斬りにくる。割って入り、心ならずも斬ってしまった野良犬の表情が凄絶。
ロケ地
・タイトルロールの八王子在、土地の青年たちが撃剣の稽古に通う道、穴太橋〜走田神社(社務所前から鳥居前を過ぎ社叢脇へ)。
・近在の青年たちが稽古をする家、不明(瓦葺、低い塀からお百姓が覗き込んでいる)。
・八王子宿を出た野良犬たちがゆく道、具体的特定は難しいがこの山が見えているので穴太の里と思われる。
*旅籠の下働きの青年は大丸二郎、妹は山岸映子。幼馴染が「先生」と呼ぶ志士は西山辰夫。青年の稽古仲間に川谷拓三、旅籠へ出張ってきた役人に西田良。
第8話「雪あかり」1968.3.18
実家の父に無理を言い貰い受けてきた盆梅、雪道を難儀して運んできた妻女を待っていたのは、寄りかかっていた大樹が失脚しうろたえる無様な夫。そして不実な裏切りのすえ、無駄な屍が重なってゆく。
*ロケ地は雪の里、山が近い。旅籠の萱葺は見たような気もするが、雪に埋もれていて確認不能。*内儀は花園ひろみ、若党は宗近晴美、主人の侍は外山高士で連れ出した芸者は水上竜子。珍しく女連れの捨て犬だが芸者の用心棒、狂犬は失脚侍のお供でやって来る。
第9話「関所越え」1968.3.25
大黒柱は出稼ぎにゆく雪の寒村で起きる事件、百姓の女房を関所越えの小道具に使おうとした男も、袖の下を貰って通しかけた役人も野良犬たちの介在でおじゃん。難儀を強いられた嫁と、その安否を気遣い駆けてきた亭主、助かるはずの二人の前に暗黒がぱっくりと口を開けて待っていた。
*見ているだけで震えの来る雪の里は、いつも通り全く見当もつかず。*若夫婦は水木達夫と桂麻紀、老父は吉田義夫。嫁を言いくるめて家に入り込む、鬢擦れのある「行商人」は穂積隆信、町人にやつし「嫁」を連れて関所を通ろうとする侍は田口計。「福本清三」は万平ダンナが戻ってきた際の柵の傍の番人か・所作それっぽい。*酒原理主義の狂犬でも呑まぬのは「長虫入り」のマムシ酒。このほか万平ダンナの作る怪しの「生姜汁」は野良犬も食わぬ代物らしい。
第10話「天神さまの細道」1968.4.1
酒肆の女を娶る浪人だが、暮らしは立ち行かない。窮したうえ引き受けた汚れ仕事では道場剣法が通じず、せっかく得た金も逃す体たらくに女房は別の男のもとへ走り、惨劇となる。
ロケ地
・子らが遊ぶ境内を抜けて長屋へ帰る川島浪人、本法寺塔脇〜墓地(木をナメたあとセットへスイッチ、長屋が墓地に接している趣向)。
・中ノ島橋〜錦を映し松井田が川島浪人と会う「錦」の座敷へ(セット)。ここは後段も松井田と川島の妻女が会う「錦」として出てくるが、設定は鴨川べりの料亭・錦。
・野良犬が護衛をつとめる老武士が滞在する北野天満宮近くの茶屋、不明(料亭ふうの門構え、庭も使用か)。
・老武士を斬りに行くも野良犬に追い払われた川島浪人が、依頼主の松井田の手先に呼び止められ金の返却を迫られる夜の町角、本法寺境内摂社前。斬りつける川島を止めに出てくる捨て犬たちは塔脇から登場。
・老武士を斬りに行くも中から野良犬が出てきて「もう終った」と言われた狂犬が眺めやる北野天満宮、本物。林越しに楼門続きの塀を狂犬が横から眺める格好(人物吹き替えの可能性あり)で、子らが通りゃんせを歌い人が行き交う境内は楼門前参道石畳を中心に社殿など。ツヤツヤ黒光りのお牛さんも映る。
・川島浪人が無縁仏として葬られたという化野念仏寺、本物(石仏群)。
・OP京イメージ、渡月橋、清水寺全景、御所大路、銀閣、龍安寺石庭、三条大橋等。
*川島浪人は片山明彦、妻女は稲垣美穂子。野良犬を雇うも襲撃者を斬る斬らぬで対立し解雇する老武士は原健策。老武士に刺客を送る長州侍・松井田は山岡徹也、手下をつとめる町人は高津住男。
第11話「襲撃七条河原」1968.4.8
役人狩りの現場に居合わせ、浪士たちに狙われる老いた元目明し。老人は難を逃れるが、彼の家で刺客を待ち構えたお町のダンナは凶刃に斃れ、その死はもうひとつの棺を追加する。
ロケ地
・妾宅を出てくる与力、上賀茂社家町屋敷門。源吉に声を掛けられ連れ立ってゆくのは上賀茂神社校倉脇。このあと野道を経て河原へ(この部分はタイトルロールだが話に関わってくる)。
・与力が斬られる七条あたりの鴨河原、堤高と川相から当の鴨川下流部と思われる。但し七条界隈ではなく、少なくとも十条から下。右岸堤の向こうには僅かに人家の屋根が見え木も生えているが、左岸堤には何も見えず。両堤ともぱっきりと直線的。川相は出水後か、少し荒れている。撮影のため拵えたか、或いは臨時に架橋されたか、水面に近い危なっかしい木橋が架かっている。
*七条河原に万年青の土を採りに行く老人は北竜二、娘は葉山葉子で老人が昔仕えていた同心は長谷川明男、若い二人はほのかに思い合う設定。「不逞浪士」の手先・源吉は西山嘉孝、浪士の首魁は国一太郎。老人の弟で五条の酒肆の主の作次郎は小田部通麿、万平ダンナが入り込んでいる。野良犬は河原で寝ていて浪士たちの企みを知り、捨ちゃんと狂犬は飯と酒を求めて万平ダンナのもとへ寄ってくる運び。
第12話「西から来た侍」1968.4.15
地下活動の密書を運ばされた野良犬と小料理屋の小女は、役人に追われる羽目に。きっと大事なものと心を痛める健気な娘だが、頼んだ侍も親切ごかしの夫婦も、彼女の好意に値せぬ下衆だった。
ロケ地
・主な場面はほぼセット撮り。
・大捕物が終った朝、捨て犬と狂犬がゆく市中、ねねの道。天狗の面を求め狂犬に被せるのは東山工芸。
・野良犬が捕り方と擦れ違う町角、梅宮大社東参道。
・捨て犬と狂犬が捕り方と擦れ違う道、今宮神社東参道。捕り方は東門に駆け入り、捨て犬たちはかざりや西塀際をゆく。
*小女は伊藤栄子、彼女を使いに出した志士気取りは楠年明。野良犬と小女が一時逃げ込んだ先のチクリ夫婦は新屋英子と楠義孝。野良犬と「取り引き」の男は波田久夫。*怒り心頭でチクリ夫婦のもとへ乗り込む野良犬の悲しみの表現はもちろん凄味が利いて見ものだが、黙々と大根を大量に刻み続ける万平ダンナもコワい。
第13話「祇園に斬る」1968.4.22
祇園に遊ぶ富商を、長州の使嗾を受けた浪士たちが狙う。ダンナたちがガードする相手は斬られたり卒中で頓死したり、痴情のもつれで心中などいつもの事だが、言われるままお使いをしていただけのおちょぼさんが失職してしまうのが、どうにも哀れなのだった。
ロケ地
・祇園町が舞台、おちょぼのお咲や浪士たちが白川新橋や巽橋、辰巳大明神周辺を行ったり来たり。白川新橋の真ん中に「窓」をしつらえての撮影も。
・野良犬が町をゆくラストシーン、今宮神社。かざりや西塀際から東参道、かざりや側の灯籠に暇を出されて途方に暮れるお咲が腰掛けている。
・OPロケ地、八坂神社楼門と境内、辰巳大明神と白川新橋・巽橋。
*お咲は小谷悦子、寿々花姐さんは国景子。野良犬の雇い主の富商は天王寺虎之助、功を焦る浪士二人は田中直行と平沢彰。*捨て犬が予言した祇園町の女難は本人に降りかかり、用心棒に来ているところを女の旦那に誤解され悲惨な結果に。
第14話「仇の名は」1968.4.29
万平ダンナがミクロコスモスを感じた庭のある静かな寺で、俗塵にまみれた馬鹿者が仕出かす殺人。許せぬ悪を斬る狂犬だが、仇が誰であるか知らぬほうがよい者に酷い真実を覚らせてしまうことになり、卒塔婆がひとつ追加される。
ロケ地
・万平ダンナが庭を拝見にゆく京郊外の寺、毘沙門堂。庭は宸殿裏手の晩翠園、水石や観音堂が印象的に映し出される。出入りには勅使門が使われ、門下の石段も映る。宸殿前の枝垂桜は開花中。宸殿座敷のほか、住職が勤行するシーンには霊殿が使われていて、天井龍が映り込んでいる。塀越しに安祥寺山を望む絵もある。塚は境内と思われる←同じ絵を別作品で見た覚えあり。
*何かマズいことを仕出かし京屋敷の連中に狙われている若侍は石浜朗、親のコネを駆使し逃げ回るくせに嫌味な若様を好演。住職は山村弘三、若い僧の妹は沢宏美。*庭に甚く感服した万平ダンナは「三匹」にも勧めるが、三者三様の反応がおかしい。狂犬が行った先を察知した野良犬の「はー、ぶつばちだ」も傑作。
第15話「糺の森 七ツ半」1968.5.6
己を大物と自負する長州侍は、世話をしてくれた者にかかる迷惑を斟酌しない。元よりカチンときていた捨て犬をはじめ、ダンナ方は庇いあう家族のほうに肩入れ。
ロケ地
・賀茂御祖神社(下鴨神社)解説のくだり、下鴨神社参道から二の鳥居を望む絵、二の鳥居アップのほか剣先の先端(釣り人あしらい)。
・森山圭四郎を迎えに糺の森へ朝参りの態で赴く釣具屋の嫁・おせつ、泉川の橋を渡って境内へ。二の鳥居前で神官に挨拶し林間へ、乞食に身をやつした森山と会うのは祭祀場跡付近。
・森山が迎えられる釣具屋(おせつの家、隠居が元長州屋敷出入り)、川堤法面。堤下には立派な蔵を備えた家も見える。後段、役人と捨て犬が大立ち回りを演じる河原は11話で出たものと同じ、仮設のような木橋も見える。
・森山が連絡を取ろうとした芸妓のいる丸太町三本木の料亭・飛鳥のくだり、中ノ島橋を渡り錦前へ、以降はセットにスイッチ。錦の向かいには通りを演出するため「塀」をあしらい。この料亭には、骨休めにと作次郎が万平ダンナと野良犬を招いて芸者も呼んでいる運び。
・糺の森に出張る町方のくだり、泉川の橋を渡って目明しの十吉が来るほか、青木に釣具屋のことを報告するのは三井社前。
・捨て犬を囮にして釣具屋から脱出する森山のくだり、下鴨神社紅葉橋を渡り河合社前で捕り方に囲まれ。河合社の中から狂犬が現れ役人と立ち合い、池跡で森山を足止め。
・長州に襲われた釣具屋から野良犬が助け出した若夫婦を護って道をゆく捨て犬と狂犬、下鴨神社参道。
*森山は不破潤、釣具屋の隠居は高橋錦之助で若夫婦は波多野博と林昌子。青木さまは香月凉二で十吉は西田良だが、小田部さんは花ふじの亭主のまま。
第16話「刺客の条件」1968.5.13
命知らずの無鉄砲さは確かに刺客の必要条件、しかし生き残るためにはまた別の要諦。功名心や使命感からの無茶は、確実に命取りなのだった。
ロケ地
・捨て犬と狂犬が頼まれ、功名に逸る若き郷士たちが狙う「大物」が通るルート、はじめ捨て犬たちが待ち受けるもやり過ごす町角は南禅寺僧堂坂(導入は清涼殿と僧堂東塀の間、坂を西に下りてくる。坂の下手南側に「塀」をしつらえ、捨て犬たちはそこに潜む)。次に待ち受けるポイントは御所にスイッチ、堺町御門付近の林間から行列を見た捨て犬たちはガードの固さに諦めるが、郷士たちは拾翠亭脇に潜み斬り込みを敢行。刺客を谷青年と認めた捨て犬が飛び出し、一当り介入してさっと引き上げる際は丸太町通りの「土手」に駆け上がり。
*はじめ野良犬と組んで初めての刺客稼業に挑む谷青年は高峰圭二、連れ戻しにやって来た姉は亀井光代。野良犬に狙われ、次いで護衛される風流人は永田光男で妾は春丘典子。野良犬に風流人の護衛を仲立ちするのは妾に頼み込まれた青木と十吉、作次郎を介する。
第17話「淀の川風」1968.5.20
過激派に染まった倅の藩主を叱りにやって来る「御隠居」だが、京屋敷の藩士らは当然京入りを阻止の構え。御隠居の手引きをした商人の定宿では、何も知らず使いをつとめた女中がむごい目をみる。
ロケ地
・伏見イメージ、宇治川派流と酒蔵、松本酒造と東高瀬川堤(行き交う旅人をあしらい)。このほか濠に架かる橋、掘割なども映る(旧高瀬川や疏水の溜りか)。
・佐野屋が定宿にしている伏見の船宿、嵐山公園中州料亭。周囲の情景に中ノ島橋や錦なども出てくる。
・陸路大坂へ下る野良犬が歩く堤、宇治・木津の背割堤(並木は松)。隠居と佐野屋が密かに落ち合う川べりの小屋も付近か。イメージに御幸橋から見た宇治川を挿んである。
・OP、背割堤を木津から宇治にパン、宇治川御幸橋から下流を見た図も。
*隠居の「西の丸さま」は北原将光で佐野屋は河上一夫、彼らを狙う過激派に田畑猛男。巻き込まれる女中は加賀ちかこ。西の丸さま傑作、カッコはまんま水戸黄門で杖もご丁寧に亀甲竹のアレ。
第18話「潮騒の彼方から」1968.5.27
大坂へ来ても相変わらずのダンナたちだが、旅籠を襲われた娘の線から野良犬ダンナの前歴が出てきて、彼は友のため白刃をふるったあと姿を消す。
ロケ地
・旅籠を襲われたさる藩の家老・天野が引き移る寺院・長安院、金戒光明寺長安院(長安院下の坂や瑞泉院前も映り込む)。
・野良犬が沖へ漕ぎ出してゆく浪花の海浜、琵琶湖岸(松原が沿う。ランドマークが映らないので湖東やら湖西やら知れず)。船出イメージに渦潮や船尾の水脈、巌を噛む波濤など映るがバンクフィルム。
*野良犬ダンナの竹馬の友であった家老は徳大寺伸、「娘」は金井由美、元は野良犬ダンナの郎党だった爺さまは海老名宣。鋼鉄船を買うよう若き蔵奉行を籠絡する「志士」は富田浩太郎、船を斡旋する商人は西山辰夫。
第19話「同志たちの夜」1968.6.3
藩を追われた「志士」たちの逃避行は、夜明けを待たずして終る。高邁な言説の裏が獣の男、手前勝手な群れる者たち、そして純粋な若者は現実に耐えられない。
ロケ地
・城下を追われる志士たち、大覚寺聖天堂前(捕り方)〜御殿川・有栖川河床(追っ手とチャンバラ、勅使門橋や参道石橋も映る。この部分はタイトルロール)。
・当地を去る夏山浪人が渡る橋、穴太橋(ズームアウト、撮影は竜ヶ尾山から)。
*斬り死にするというのをダンナたちが代金分助ける若き「志士」は山根久幸、共に脱出してきた盲目の姉は日野麻子、郎党は玉生司郎。姉の雨宿り先に寝ていて助け手を買って出る浪人・夏山大吉郎は若山富三郎、面に派手な傷をつけた「市」といった格好で、シャープな逆手斬りを披露。
第20話「遠い国からの客」1968.6.10
幕末の喧噪も届かぬ静かな里に、物騒なよそ者。旧家に上がりこんだそやつらははじめ国士の何のとほざき、真面目な当主を悪し様に罵るのだった。
ロケ地
・「大和路」とテロップ入るビュー、当尾の高台から加茂の町付近を遠望。まだ南加茂台のニュータウンは無い。
・大内家へやって来る、常陸の郷士と称する赤堀と木村がゆく道、陵を遥拝する地道は亀岡か(道のまわりは田んぼ、遠景に河畔林)。池畔を通り里の女に道を聞くくだり、出雲大神宮池堤〜「民家」前は門前の蕎麦屋か。
・大内家、不明(長屋門で母屋は萱葺、門前に大きな松が聳える。「帰って来た用心棒」10話でも出る)。
・大内周助が掛け取りから帰る奈良市街、猿沢池畔〜イメージに奈良公園で芝を食む鹿を映してセットにスイッチ。
・奈良町奉行所の同心たちが赤堀の仲間のゴロツキに斬られる里の夜道、不明。
・事後、野の仏たちを見て回る万平ダンナ、当尾石仏群(笑い仏〜カラスの壺磨崖仏〜籔の中地蔵〜石塔群〜大門の仏谷磨崖仏)。
*実は国士などではなかった人斬りどもは菅原文太、和田一壮、滝恵一、下元年世、大城泰の五人。…文太兄ィ悪すぎ。大内家の当主・周助は長谷川明男、哀れな妻女は加藤勢津子。陵を遥拝する「志士」を見て感心する野良のお百姓に小峰さん。*万平ダンナは野仏を見に里へ、彼を追ってきた捨て犬と狂犬は里人に頼まれて「営業」の模様。今回は捨狂万平の三人のみ。*大内家の老いて病んだ隠居がかつて藤田東湖と交流のあった「国士」で、往時は家に十津川郷士が屯していたこともあるという設定。
第21話「宿場の夜露」1968.6.17
功に逸り好きな娘の危機に焦り、若い目明しは蛮勇を奮う。なんとか局面を切り抜け、陣屋へ報告に向かう夜道にぽっかり口を開けていた危険、凶報に誰も語る言葉を持たない。
*ロケ地は飯屋の弟が病に苦しむ旅の侍を見る野辺とその付近、および目明しが死んでいた溜池、いずれも不明。野辺は山裾に里のある棚田、山は南丹市あたりの山なみに似る。*飯屋の弟は宮土尚治、姉は葉山葉子、目明しは中田博久で悪人要素皆無の張り切り好青年、事件と無関係と判ったあとはダンナたちにも礼儀正しい。何やら倒幕浪士と思しき怪しげな「旅人」は小林勝彦や森章二など。*行き倒れた侍が消えて、飯屋では客が増えたり減ったり、捨て犬が井戸で血刀を洗ったりと、導入部はサスペンス調。
第22話「紅殻格子」1968.6.24
倒幕浪士が捕まり際、屋台の親爺に預けた金は一人の女を苦界から救う。金を届ける気のいい親爺やダンナ方の働きで解放された女は、犠牲の大きさにさめざめと泣くのだった。
ロケ地
・岡場所から解放された女を伴い道をゆく屋台の親爺、梅宮大社東参道蔵脇。二人を倒幕浪士が窺っている。見返りのシーンには楼門の屋根が映り込む。
・前後に出る京イメージの「塔のある風景」は書割か。
*女は桜町弘子、身請けの金を託した浪士は萩清二、軍資金を流用したと怒って押しかける「同志」は国富論。屋台の親爺は田中春男で、倒幕浪士に食ってかかるなど気骨も見せる。御番所がらみなので青木同心や十吉が登場、ダンナ方とは和気藹々。
第23話「花嫁御寮の夢」1968.7.1
悪どい女衒によって約束と違う家に奉公させられた娘を、兄の丁稚に代わり取り戻してやる万平ダンナ。奉公先の雑掌の妾宅では、物騒な客による殺伐も。
ロケ地
・タイトルロール、田舎娘たちが女衒に連れられて京へ向かう道、谷山林道〜谷筋と土手不明〜中山池堰堤〜若森廃橋。
・朝靄の竹林を女衒に追い立てられて行く少女たち、不明(明るい林床)。
・京イメージ、東寺南堀端に露店しつらえ〜三条大橋(通行人あしらい)。
・丁稚の公助がゆく京の町、社家町東端付近明神川畔(白川女あしらい)〜八坂神社境内→セットにスイッチ。
・おななが女衒を待っている石畳の路地(うどん屋前)、祇園町か。
・公助がおななの奉公先を口入屋の鉄造(女衒)宅へ来て問うがごまかされ、うなだれて帰る途中掏摸に懐中をやられ追うも見失う路地、石塀小路。万平ダンナに出会ううどん屋前は不明。
・雑掌の平沼が妾宅へ向かう道、仙洞御所東塀際〜石畳の路地(祇園か)、妾宅は社家町の屋敷(ここはこの後役人が詰めかける段や万平ダンナが訪ねてくる段でも出る)。
・狂犬を呼びに来る「当夜の仕事」の仲間たち、社家町東端付近明神川沿い塀際(押しかけ先は雑掌の妾宅)。
・良くしてくれたおじちゃんたちを追いかけてくる公助とおなな、セットの町から八坂神社境内を走り抜け東寺南堀端へ(ここで追いつき「話があるんだ」でエンド)。
*おななは血風録「あかね雲」の「しいちゃん」岩村百合子、公助は加賀爪清和。雑掌は穂高稔、妾は中原早苗。妾宅に天誅をかける浪士の一人は波田久夫、女衒は汐路章。*タイトルは、雑掌が無造作に妾に与えた白絹(所司代役人の貢物)を当ててみるおななの見る夢。幼い兄と妹には「しいちゃん」への贖罪じみた大甘の筋立てなるも、時流によってたまたま得た空虚な地位を振りかざす男や、無闇矢鱈な天誅浪士には思いきり冷たい扱い。ついでに、博打で大金を得たものの全部吐き出す羽目になった捨て犬にも存外冷たかったり。
第24話「狙撃者たち」1968.7.8
一徹な老職人が「志士」に煽られて仕上げてしまった新式銃は、家族のみならず里人に多大な難儀をもたらす。騒ぎはダンナ方が居合わせたことで収束するが、あたら楽隠居を決め込んでいた老人の暮らしは一変してしまう。
ロケ地
・某藩城下の元鉄砲奉行・鏑木邸(閉門中)、民家長屋門。付近の路地も映る。
・釣りで一緒になる万平ダンナと老職人の隠居、清滝河原。娘が弁当を持ってやって来る段で護岸上の道も映る。
・弟子が呼びに来て家へ戻る隠居、山道不明。
・捨て犬が来ている待ち合わせ場所の茶店、犬飼川下河原橋右岸たもとにあしらい。
・隠居の家、不明(シリーズで何度か出た場所)。
・鏑木が隠居の娘を人質にとって逃げ回る大騒ぎのくだり、発砲された村人が算を乱し逃げてくる橋は下河原橋、打ち鳴らされる半鐘が設置されているのは曽我谷川穴太橋たもと、西条風の口線も映り、鏑木が道に出てくる際には走田神社社叢際の田んぼも使われる。
・鏑木が立て籠もる鎮守の森、勝持寺仁王門と下の石段。
*下河原橋も穴太橋も、架け替え前の木橋。*隠居は月形龍之介、娘は長谷川澄子で婚約者の弟子は河原崎長一郎、鏑木は山岡徹也。
第25話「ただ一人の女」1968.7.15
有為の士が因循家老を斬るが、家中の者が犯人では困る目付役は流れ者の仕業として片付けようとはかる。そのために出る犠牲者を慮ってダンナ方が出張るが、事は既に進められていた。
ロケ地
・目付邸、不明(長屋門を内外から。中から見る畑越しに萱葺、周囲にも風情豊かな町なみ)。
・城下を立ち退かねばならなくなった「天誅」の若侍が「目撃者」の仲居を待っている橋、その後連れ立ってゆく山道、不明。ダンナ方がゆく道も不明(山道、渓流に架かる欄干の無い土橋)。
*若山富三郎登場回、捨て狂コンビもあきれる大立ち回りを披露。天誅侍は坂口祐三郎、目撃者の仲居は花園ひろみ。目付は外山高士、固陋な重臣を押しのけての「執政」就任が決まっている設定、その職名からひとかどの人物と思いきやけっこうステレオタイプの悪役。
第26話「山なみの彼方へ」1968.7.22
追われる女を中心に、誰が悪者か判然とせぬ騒動が巻き起こる。商売で関わったダンナ方は結局ロハで女を守ってやることになり、一同の道はひとまず別れゆく。
ロケ地
・修兵ヱを追う侍たちのくだり、谷地田脇の道や小丘の切り通し、山裾の里など後年の「天を斬る」でも出る里。坂道脇の神社などもあり、手前には木橋。田畑は棚田。
・修兵ヱが落ち合う場所に指定した湯治場の湯宿、日吉山荘。二階の窓から大宮川を見下ろす図もあり、飛竜の滝付近での立ち回りもあり。
・万平ダンナが当地を去ってゆく際の渓流、大宮川か。「姫」が去っていった山のイメージは比良の雪嶺か。
*修兵ヱは藤岡重慶、しょっぱなに夏山のダンナを雇い、次いで捨て狂コンビに女の連れ出しを依頼。夏山の斬った侍の始末を頼まれる屑拾いは市村昌治。鳥追い女に身をやつしている「姫」は一の木真弓、守人の老爺は高橋正夫。*万平ダンナと夏山の台詞に「俺たちは待っていた用心棒」発言が出る。
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