帰って来た用心棒

1968-1969年 NET/東映京都テレビプロ


第1話「道を教えた娘」1968.7.29

 武芸者の若者・田島次郎は、はるばる京へ小太刀の名手を訪ね教えを乞おうとするが、当の「師匠」は老いさらばえているうえ酒浸り、挙句の果て会ったその夜に借金返済の算段に暗殺仕事を引き受けて頓死。この件に巻き込まれるかたちで、三人の男が出会う。

ロケ地

  • 芸妓に建仁寺への道を聞く田島、ねねの道・東山工芸前(田島の背後に「銅閣」が映り込む)
  • 町娘(のちに浅川の娘と知れる)に道を聞く田島、長楽寺門前(参道の物売り娘、大谷祖廟の石段や塀も映り込む)
  • 建仁寺へやって来る田島、渡る小橋は永観堂放生池の橋、これに先立って多宝塔を含む全景も映される。境内を掃く寺僧に浅川道場への道を尋ねるのは御影堂前。
  • 借金取りと揉めているふうな浅川のもとを辞し野宿しに寺へ行く田島、永観堂御影堂。ここで浅川と多勢の侍の斬り合いがはじまり、田島が介入し野良犬がうっそりと現れる。発作に苦しむ浅川のため医者を探しに門を走り出る田島は中門、足もとに斬殺死体を見る。以降、浅川に暗殺を依頼した侍がいる木屋町の旅籠(セット)とここを行ったり来たり。野良犬は律儀に再々御影堂へ戻ってきて柱に凭れている。
  • 寺僧により葬られた浅川の墓も永観堂の墓地、遠景に多宝塔が映り込んでいる。田島と浅川の娘が行き違うのは墓地北端の石段、田島の荷物を回収してきて早く立ち去ろうと言う万平ダンナは御影堂・阿弥陀堂間の石段。
  • 浅川の娘が入る尼寺、常寂光寺。仁王門をくぐった娘は尼に伴われ石段を登ってゆく。
  • 締めくくりのナレーション部分の野良犬がゆく町、血風録「海仙寺党全滅」のラストで斎藤一が隊士を率いて巡察する「塔と庫裏の見える石段上」と同所、次いで大谷祖廟参道

*浅川敬斉は永田靖、娘は尾崎奈々。借金取りは遠藤辰雄で娘を売り飛ばそうとしている。浅川が入り浸る酒肆の無愛想な親爺は小田部通麿、暗殺の依頼主は織本順吉。
*田島は島田順司、柔術家の品田万平は左右田一平、野良犬は栗塚旭。


第2話「赫い月の夜」1968.8.5

 田島の下宿先で起こる「ご時勢」の騒動は「しんどい仕掛け」になっていて、益体もない屍が積み重なるのみ。叔父を訪ねてきた白川女と田島が再び顔を合わせることもなく、一見平穏な京の日常が続いてゆく。

ロケ地

  • 冒頭の京イメージ、三条大橋渡月橋(嵐峡からのズームが引いてゆく)嵐峡右岸(大原女が通る)辰巳大明神(白川女が通る)〜白川女たちが出発する里(山裾に萱葺民家)金閣銀閣清水寺子安塔龍安寺石庭御所大路社家町はずれ明神川渡月橋(臨川寺前の左岸から)〜鐘楼(不明)〜田舎道(不明)藤木社越し明神川
  • 田島の下宿に叔父を訪ねてきた白川女が帰る道、社家町明神川畔。
  • 野良犬が公家の雑掌に啓蔵の香典を取りに行く公家屋敷、社家町はずれ・明神川畔民家(現在は建て替わっている。手前に映り込む塀は現存)
  • おたえがめかしこんでいると朋輩にからかわれる白川の里、不明(先に出たイメージと同所)
  • 仕事を終えて夜道をゆく野良犬、社家町・明神川畔。
  • 締めくくりの京イメージ、清水寺全景〜南禅寺三門金閣渡月橋藤木社越し明神川

*白川女のおたえは松山容子、叔父で田島の大家の啓蔵は永野龍雄(公家の使い走り)。啓蔵を斬った侍たちの一味のゴロツキは草野大悟で、啓蔵の警護を野良犬に頼んだ公家の雑掌は増田順司、二人は兄弟で「しんどい仕掛け」なるも詳細は語られず。*タイトルは不吉なイメージの赤い月、その下で野良犬が血刀を振るう。*白川女と大原女の違いで薀蓄開陳の万平ダンナ、袴をたくし上げて熱演。物売りでは梯子担いだ「畑の姥」も出る。


第3話「送り火が燃えるとき」1968.8.12

 盂蘭盆の夜、寡婦のもとへ義理筋から預けられた客は倒幕浪士。たちまち降りかかる災難、町方に追われ家にも戻れぬ母子を優しく頼もしく保護する三人だが、彼らにかかる難儀を心苦しく思った寡婦は、娘を連れていずこともなくそっと消える。

ロケ地

  • 五山送り火は大文字が遠景と燃える護摩木のアップで本物を。料亭から見える大文字は書割、妙の字は遠景の本物、船形と鳥居形は模型越しの書割。
  • 預かった客を残し使いに出る母子、円山公園か(塀際と林間、町へおりる石段)
  • 土佐藩京屋敷へ掛け合いに行く野良犬、東福寺一華院門。通される座敷は不明。出て来た野良犬に対応を聞き怒りを露わにする田島は門続きの塀際(北へ歩く)
  • 万平ダンナが掛け合いに行く寡婦の勤め先の清水の料亭「梅むら」、不明(料亭か)。これに先立って清水イメージに清水寺三重塔が挿まれる。
  • 町方をまいて塒に帰って来た野良犬と田島が歩む路地、祇園界隈か(石畳)

*寡婦は鳳八千代、土佐脱藩浪士は菅貫太郎、預けに来る番頭は西山嘉孝で料亭の主は天王寺虎之助、倒幕浪士を探る目明しは山口幸生。


第4話「祇園小路に死す」1968.8.19

 病の父のため花街にいた女は、恋人の仕官のため客の公儀役人に身を任せるが、男が仰せつかった仕事も女の仕出かした不実もろくな結果を呼ばず、恋人たちは空しく石畳に骸を晒す。

ロケ地

  • 「道場破り」の田島が、さっき負かした師範代に声をかける道、東福寺同聚院脇路地一華院塀北東角。師範代をクビになった浦辺浪人が石を投げ込む小川、上賀茂神社ならの小川神事橋たもと。橋を渡って美代香がやって来て、二人はともに長屋へ帰る。
  • 祇園町の描写、出勤する芸妓たち、石塀小路
  • 祇園さんへお参りの美代香、八坂神社境内。
  • 影の所司代・内藤を狙って殺到する倒幕浪士たち、料亭の裏塀は石塀小路、浦辺と美代香が落命するのもここ。
  • 奉公に上がる美代香の妹、八坂神社境内本殿裏石段白川巽橋・白川新橋石塀小路(下河原通側入口)

*浦辺は早川保、美代香は長内美那子、内藤主膳は城所英夫。浦辺が命じられるのは、長州者の中に倒幕浪士として潜入する仕事。小田部・香月コンビが目明し千造と青山同心で登場し、下っ引は西田良。万平ダンナの言葉ひとつで野良を信用。*ダンナたちは野良犬の奢りで高い料亭に上がりこんでいて騒動に際会するが、食いつけぬ佳肴をもしゃもしゃ食らう田島がなかなか可愛い。


第5話「地蔵盆の灯り」1968.8.26

 地蔵盆の宵、万平ダンナが拾った迷子は野心を抱く倒幕浪士によって人質にされてしまう。子を送っていった手習いの師匠が巻き込まれ危機に遭遇するとき、夜の路地にうっそりと野良犬が現れる。

ロケ地

  • 浪士たちが子を送ってゆく師匠の前に立ちはだかる道、不明(両側塀、腰高な石垣)
  • 京都所司代、大覚寺大門
  • 師匠の家近くの地蔵堂へ駆けてゆく子ら、大覚寺五社明神
  • さらった子の父を呼び出し与力暗殺の手引きを迫る浪士たち、大覚寺護摩堂(前年にできたばかりの心経宝塔が映り込んでいる)

*手習いの師匠は高森和子、与力のお供をしている子の父は河上一夫、師匠に食ってかかり野良犬にたしなめられる女房は伊吹友木子。*万平ダンナ傑作、暇なのか子供好きなのか地蔵盆に集う子らに混じり歌を教えたりはいつもの通り。そんな万平ダンナを仄かに慕う師匠の気持ちには全く無頓着なのがらしいというかダメっつうか、とにかく笑える。


第6話「粟田口の迎撃」1968.9.2

 訳ありげな「志士の妻女」を助けて動くダンナたちは、京と大津を行ったり来たり。夫婦も庇護者もやられてしまうが、「密書」は不思議な男の手によりいずこかへ届く。

ロケ地

  • 大津の浜で立ち回りの野良犬、琵琶湖西岸。これに先立って映し出される船のシーンは流入河川の河口部か。葦原をナメて、野良犬のいる湖岸の草地へパン。立ち去る野良犬の足元に波が寄せている。陽が昇ったあと映る湖面は、琵琶湖大橋から南を望んで堅田あたり。
  • 万平ダンナと美和が近江へ向かう道、堤道か。野良犬が出てくる茶店は橋たもとにあしらい、橋は簡素な木橋で琵琶湖流入河川と思われる川に架かっている。流れはけっこう急。
  • 野良犬が美和の「夫」大内を保護してある屋敷、不明(「離れの座敷」のみ映る。民家か)
  • 夫の亡骸を寺に預け出てくる美和、随心院参道(中から山門と、外から山門越しと両方のアングルが使われる。設定は保護されていた大津の屋敷の近く)
  • 美和のお供をして京入りの万平ダンナと野良犬、三人が差しかかる「粟田口」の道標がある夜道は吉水大弁財天女社前。檀浪人が現れてこの先に20人いると注進するのは円山公園東縁の道、人数のうしろに大谷祖廟北通用門の石段が映り込む。大立ち回りを物陰から見ていた檀浪人が独り言を呟きながら去る坂は円山公園へおりる坂。田島を加え歩き出す四人、どこまで送るのか美和に問う万平ダンナのシーンは大谷祖廟北通用門の西の塀際。
  • 美和を夫とともに葬った墓から帰る万平ダンナと田島、随心院参道(外から門越し、設定は山科とナレーションが入る)。墓地そのものは不明。
  • ラスト京イメージ、東寺南側の歩道に露店あしらい、塔と南大門映り込み/嵐峡から見た渡月橋(ズームアウト)

*美和は伊藤栄子、京での庇護者(町家)は徳大寺伸、大月は長谷川哲夫。追っ手情報を知らせる乞食じみた謎のアイパッチ浪人・檀万三郎は舟橋元、得物は薪ざっぽ。*随心院の設定については、全く同じアングルで映るし設定もほぼ同じだが、先のは大津にいる美和が「近くの寺」と言い、後のはナレーションが山科と言うので、「ロケ地資料」にはいちおうその通りに併記。


第7話「六角の闇から闇に」1968.9.9

 六角の獄に囚われていた浪人は、あまりの苦しさに耐えかね密偵を引き受けてしまう。しかし町雀でさえ怪しむ早すぎる出獄を、長州が疑わぬはずもなかった。夫婦の危機に現れるは、謎の筋から寄越された用心棒・野良犬。

ロケ地

  • 牢を出てきた塚本浪人が家へ向かう道、仁和寺五重塔北側の小径〜金堂へ向かう坂〜鐘楼前〜東福寺一華院前。
  • 長州出入りの浪人が捕り方に追われる市中、仁和寺観音堂脇から石段を駆け上がり水掛不動参道口へ。チャンバラは鐘楼前。
  • 逃げた一人を追う捕り方、東福寺同聚院脇路地(突き当たり付近)からセットにスイッチ。塚本浪人が帰宅の際通る路地も同所。
  • 野良犬の示唆で刀を脱し京から去る夫婦がゆく道、大覚寺有栖川畔〜護摩堂前〜天神島朱橋。

*塚本浪人は川辺久造、妻女は桜町弘子。長州藩士は田畑猛雄。*千造が自身番で水飴を売っていて青木同心に叱られるが、製造元は万平ダンナで山ほど作っている模様。十吉もやっていたり。水飴というが箸の先にからめて食うアレではなく、割水した「冷やし飴」のことと思われる。


第8話「野分の中」1968.9.16

 京に遊学していた常陸の郷士は、才に溺れ志士気取りで動き虎の尾を踏む。田舎からやって来たその若者の老父のため動くダンナたちだが、青年と父が生きて会うことは遂に無く、また闇は深くフィクサーの実像も杳として知れない。

ロケ地

  • 大原女や田島に道を聞く奥田老人、ねねの道付近街路。
  • 老人の倅がいるはずの宏堂学塾、不明(脇に路地、門は檜皮で前に石橋←欄干に「) (」こんな感じのアールつき)

*老父は月形龍之介、倅は山根久幸、彼の子を身籠っている酒肆の女は馬淵晴子。大坂の富商と称するフィクサーは原健策、周作とお大尽を取り持つ男は玉生司郎。


第9話「無惨の巻」1968.9.23

 京の出店へやって来た大店の女将が襲われるが、野良犬のほか凄腕の浪人が関わって企みは頓挫、首謀者の「志士」は名を地に落し遺族は町衆の非難を浴びる。その男を斬った田島は、いきり立った遺児の怒りを受け止めてやるが、状況は変わらず残された者たちは京を去るしかなかった。

ロケ地

  • 話の過半は市中で進み、御幸町の道標などもセットにあしらい。
  • 大坂へ帰る女将と大番頭の前に立ちはだかる、志士の手先だった中番頭、伏見手前の街道筋、不明(堤道か、並木は松など)
  • 野良犬がゆく道、御所拾翠亭南塀際。
  • 京を去る「志士」大槻の遺児たち、相国寺大通院南塀際〜鐘楼前植込際(大通院の塀越しに鐘楼の屋根が見える)

*訳もわからず襲われる後家の女将に野際ひとみ、彼女を籠絡して軍資金を得るつもりだった中番頭は不破潤、出店を預かる大番頭は海老江寛。中番頭が師事する志士・大槻は月形哲之介。女将を最初に助けた流れ者の浪人・龍造寺平馬は中野誠也。


第10話「東の空が暗く」1968.9.30

 嵐山の山水を愛でにいった先で物騒な事件に遭遇する万平ダンナと田島は、殺された男のお供をしてきた娘を拾って帰る。娘が預かっていた秘密文書も、それを狙った侍を野良犬が斬った件も、しんどい仕掛けは全て済み、娘は万平ダンナが紹介した店で働き始め重宝がられ、そこの板前と何やらよい雰囲気。皆温かく彼女を気遣い、なんと野良犬ダンナまで娘に物を贈るが、悪い因縁が店にやって来てしまう。

ロケ地

  • 朝の素振りをする田島、木島神社舞殿脇。いいとこへ行こうと誘いにやって来る万平ダンナは参道石畳を来る。
  • 嵐山イメージに渡月橋を左岸下手から見て、二人が山水を愛でに赴く峡谷は保津峡落合河口。名を変える川の説明をする万平ダンナのくだりには、嵐峡から遠望した渡月橋も映る。殺されている旅の男を見つけるのは保津峡左岸巌上、その男のお供の娘・おせつが待っている人足小屋は清滝川左岸にあしらい・橋を渡してある。
  • 嵐山での仕儀を届け出る土地の名主宅、不明(長屋門、母屋は萱葺)
  • おせつが書付を来た者に渡すよう言われていた東山の料亭、不明。

*おせつは沢宏美、勤めた先の板前は近藤正臣で店主は江幡高志。嵐山でおせつを狙うも田島に阻まれ不覚をとり、藩重役に覚悟を迫られ出奔し、不逞浪士となって京の町で悪さをはたらく一団の首魁は田口計。*タイトルはおせつがそれを言った者に書付を渡せと聞いていた符丁「東の空が暗くなる」から、東も西も暗いと幕末の暗雲垂れ込める京を謂う表現にも。


第11話「弦月の下」1968.10.7

 勤勉なため激しく浪士の恨みを買った奉行所の役人が、上の方針で配置転換に。前例あることとて彼の移動には慎重に配慮がなされるが、情報ダダ漏れでワヤな事態が橋本宿を舞台に展開される。上つ方の遣わした用心棒である野良犬の働きもあり、当の本人は無事東帰を果たすも、病の亭主に人参を買うため命がけで使い走りをつとめた旅籠の女が、とんだ貧乏籤を引き当てる。

ロケ地

  • 「石部のアレ」のあと恐慌を来す奉行所役人たちのくだり、塔の見える四阿は高台寺公園から八坂の塔か。路地やお宮さんは東山界隈か。所司代の長屋門もロケか。
  • 藤田と落ち合う予定だった茶屋の主・与五郎を追う千造たち、不明(蔵や土塀、穴太あたりの町なみに似る)。千造たちをやり過ごした浪士が築地の際で与五郎に「伏見のあそこ」と落ち合う場所を指示。
  • 危地を脱し、橋本宿に待たせてあった女を伴い大坂さして街道をゆく藤田、八幡・御幸橋下手の背割堤(右岸側、宇治の流れと桂との背割越しに天王山を望むアングル。並木は松)
  • 多額の謝礼を貰った旅籠の女が人参を求めて帰る道、お薦さんに化けた与五郎を見てしまい殺されるのは出雲大神宮玉垣際(反対側は池の地道)。女の悲鳴を聞く平馬は池堤の道、女を刺して逃げてきた与五郎を斬(平馬がゆく道の端に「是より橋本宿」の道標、設定は伏見でなく橋本か←橋本と伏見の端っこはずいぶん離れているので声は届かない→但しまだ巨椋池があった時分の話)

*橋本宿の旅籠で守銭奴と朋輩の誹りを受けつつ小金を稼ぐ女は根岸明美、彼女に使いを頼む「藤田の女」は国恵子、藤田は牧冬吉。浪士に通じる与五郎は土方弘、彼に伏見で落ち合う場所を指示する浪士は出水憲司。中野誠也の龍造寺平馬はたまたま橋本宿に居合わせ、路銀を稼ごうとして一丁噛むが、貰いは無いうえに哀れな女の死を見る羽目に。


第12話「あの竹薮をぬけて」1968.10.14

 老ノ坂の往還を分け入った竹藪に埋もれてある旧家、そこへ国事に奔走する志士が怪我人として運び込まれ、血腥い一陣の風が吹き荒れて去ってゆく。繰言を呟き続ける老爺と、黙って世話を続ける嫁は、志を抱き出て行った当主の帰趨を知らされない。

*ロケ地は山道と竹藪と旧家、ほぼ全て不明。山道は九十九折の狭い地道、竹林はよく手入れされた明るい林床で西山っぽい。旧家は入口に短いステップのある萱葺の門、また又三匹第4話などでも出て来たアレか。このほか近くの百姓家も萱葺。*用心棒に来た野良犬を追っ手と誤認し逃げて足を折る志士に坂口祐三郎、追っ手は穂高稔や高城淳一。押し込み浪人は平沢彰に林浩久。旧家の嫁は小山明子で因循な隠居は明石潮。


第13話「風の泣く里」1968.10.21

 木津川のほとりの鄙びた里に暮らす女たちのもとに、その家の倅の勤め先から女がやって来る。主人と称する奈良町奉行所与力は、国士を気取るもののただの追われ者で、女たちに不幸をもたらし消えてゆく。

*ロケ地は川と萱葺民家と鐘楼門を持つ寺と田畔、湖国やら丹波やら見当つかず。川は河床に粗い礫が顔を出す流れ、河畔林は竹で堤高はさほどでない。萱葺の前には大根干し用か稲架か不明な木組。*追われる与力は青木義朗、協力者の商人は高原駿雄。与力宅の女中は花園ひろみ、隆作は宗近晴見、母は荒木雅子。*行きがかり上追捕の役人を多数ぶった斬ってしまうダンナ方だが、女三人は無事。しかし彼女たちの大事な人は帰ってこない。


第14話「仕官の日」1968.10.28

 浪人と京在番の旗本の喧嘩が、更なる悲劇を出来する。物のわかった旗本の上司は辞を低くして事を穏便に済まそうとはかるが、斬られた浪人のほうの係累に軽率にして野心家のおっさんがいて、最高にマズいタイミングで交渉の場にやって来てしまう。

ロケ地

  • 岡村勘次郎と「二条城の侍」が斬りあう寺院境内、不明(花頭窓のお堂/田島が詩を吟じつつやって来る道には低い石垣)
  • 兄を斬った侍を求め祇園の料亭にやって来た弟に、仇討ちが困難なことを告げ償いは俺がとってやると言う野良犬、二人が話す夜道、不明。
  • 偉いさんの死は全て病死と繕われたことを語るナレーションが被るラストシーン、野良犬がゆく道は永観堂弁天社前〜放生池溢水口石橋。野良犬はこのあと二人分の骨箱を携え参道をゆく「弟の許婚者」を見るが、参道南側には現在ある塀が無かった様子が明瞭に映る。女は中門のほうへ、野良犬は総門のほうへ、塔頭・智福院前を二手に別れゆく。

*喧嘩沙汰で命を落とす浪人・岡村勘兵衛は唐沢民賢、弟の俊吉は里見浩太郎で許婚者は磯村みどり。勘兵衛を斬った二条城の侍二人は波多野博と戸板幸男、彼らの上司は宇佐美淳也。己の点数稼ぎのため俊吉に仇討ちを唆す帰参先の上司は中村錦司。*浪人宅へ出向き謝罪もするし身の振り方も考えるからと「仇討ち」を回避しようとする、温厚にしてものを弁えた偉いさん、偶発により死に臨んだ彼が発する言葉は皮肉にも「倅に仇の名を」だったという結束節炸裂のゆくたて。仇討ちの理不尽さを説き、怨恨の無限ループを止めようとする話はいくらでもあるが、いざ事が己の身に及ぶや出る身勝手をさらりと出す手法は秀逸。


第15話「暁に待つ」1968.11.4

 物慣れぬ新任の某藩留守居役は、出入りの商家に私的外出をするものの天誅浪士に狙われて足止め。会うはずだった女のもとへその家の手代を使いにやるが、危険が迫っているなかでは無謀極まりない行為なのであった。

ロケ地

  • お話の過半はセットで進行、事終ったのちの場面がロケ。
  • 商家の女中を「恋人の手代」が負傷して保護されている番所へ送り届けたあと、野良犬のダンナがゆく早暁の道、仁和寺五重塔下境内。
  • 元手代と女中が助け合いながら担ぎ行商の町角、仁和寺鐘楼前から水場脇石段を下り観音堂脇石畳へ。

*手代は富川K夫、女中は青柳美枝子、呉服商の主は楠義孝。さる藩の留守居役は金内吉男。店は潰れ留守居は失脚と語られる。*留守居役のガードを野良犬に頼んだのは千造たち、ダンナ方は己の身勝手で情婦のもとに危険な使いに人を出した留守居役にムカつき動く。自身番の留守を頼まれた万平ダンナは食べすぎ←うどん二杯に餅。


第16話「夜に消えた」1968.11.11

 発作に苦しむ侍の爺さまを助けた田島は、そのまま荷物を持って送ってやり事件に巻き込まれる。事は野良犬のダンナが出張るほどの血腥い一件で、思いきり時間をとられた田島はお目当ての書物を買いそこねる。

ロケ地

  • さる藩の帳簿を持って京へ向かう内山老人、木津河原流れ橋。そのあと通る道は不明(この部分タイトルロール)
  • 勘定方の侍が無実の罪で詰腹を切らされた「さる藩」の城、遠景は書割で天守イメージに高知城天守。許しなく公金で外国船を購入した者もいると語るナレーションの背景の城は富山城天守。「詰腹侍」の奥方と従僕に帳簿を持ってゆく万平ダンナ、不明(背後に里の見える坂道、登るとお地蔵さまがあり道隈になっている)。奥方たちが歩み出す道、不明(奥に池の見える谷地田、伊藤雄之助がけったいな城代を演じた徳川おんな絵巻の話で近衛十四郎の官軍がやって来るアレと酷似)

*発作を起こし田島に助けられた爺さまは柳川清、夫の潔白を証明するため帳簿を求める妻女は田島和子で従僕は永田光男。帳簿を取り返しにやって来る藩士は山岡徹郎に千葉敏郎。


第17話「川の流れに」1968.11.18

 青臭い気炎を吐く者どもに巻き込まれ、難儀を蒙る「市民」を描く。捕まえる側にも余裕のない堅物がいて、獄につながれる者や京の町を出てゆかざるを得ぬ者も出る。

ロケ地

  • 新吉が友禅を洗う川、大堰川と河原(広い礫河原、浅いが早い流れ)
  • 京を去るおえんと行き会う野良犬、不明(堀端の町家前、路地、アーチ石橋と掘割。設定は堀川の模様)

*新吉は寺田農、彼に危ない使いを頼む同郷の青年は中田浩二。「志に殉じた憂国の士」の未亡人である、家を溜まり場にされる手習い師匠は富士真奈美、彼女に言い寄る「志士」は穂高稔。


第18話「逃げて来た女」1968.11.25

 風邪に罹った千造を気遣って一人で夜回りに出た十吉は、たちまち襲われ御用提灯と十手を奪われてしまう。このアクシデントをフレームに、曰くありげな男女とそれを追うさる藩の侍たち、十手を奪い悪事に使うゴロツキどもの話を収めてある。

ロケ地

  • 一人で夜回りに出る十吉のゆく夜道、相国寺大光明寺門前から南路地。困り顔で落し物を捜す態の悪者にボコられるくだりはセットにスイッチ。
  • 酔客を御用提灯と十手で騙し金を強奪する悪党ども、「材木置場」。
  • 強殺をしてのけたあと悪党どもが引き上げる夜道、相国寺法堂前。追っ手から逃げる旅の女が御用提灯を見て縋る夜道は相国寺大光明寺南路地、追っ手の侍たちを凝視する一味の浪人は湯屋角に。追っ手の手に落ちた女が連行されてゆく道も大光明寺南路地。
  • 女を国へ連れ帰る途中の侍たちが、女の駆け落ち相手を伴ってきた野良犬ダンナに追いつかれる街道筋、若森廃橋本梅川堤。侍たちは橋たもとにあしらわれた茶店にいて朝を迎え、通し駕籠でやって来る野良犬たちは左岸堤を来て橋を渡る。
  • 京で田島が千造の女房の秋波に辟易し逃げ出す頃、野良犬ダンナがほっつき歩いている道、民家塀際

*十吉から十手を盗る一味の首魁の浪人は藤岡重慶、追っ手の侍に取り引きを持ちかけたりなかなか強かなワルだが、野良犬ダンナにあっさり斬られる。千造の長男は「青影さん」金子吉延、女房は沢淑子。


第19話「半鐘は二度鳴る」1968.12.2

 一晩に二件続けて起こる放火騒ぎは、幕末の京にも似合わぬヤクザの抗争がらみ。用心棒に来ていた野良犬は、奇妙なゆくたてにも動じず護衛相手のヤクザを守り抜く。

ロケ地

  • 大人数に囲まれるヤクザの親分を助けて斬り結ぶ野良犬、梅宮大社東参道蔵脇。
  • 番所へ顔を出さず「女房」たちを待つ親分、相国寺鐘楼基壇。
  • スカウトの女たちにまとわりつかれる野良犬、御所拾翠亭脇〜相国寺林光院前路地。

*筋の通った親分は月形龍之介、火付け騒ぎを起こす外道は国一太郎、騒がしい番頭は武周暢。


第20話「白い目じるしの宿」1968.12.9

 脱藩し追われている浪士は、先行した妻女が宿につけているはずの布切れを目当てにやって来る。行き違い会えぬ夫婦、殺到する追っ手、しかしその宿には野良犬ダンナが居合わせ、逃げるため用意した小船には万平ダンナがのんびり釣りをしていて、竿を損じた追っ手に大いに怒る。

ロケ地

  • 大津の宿場、琵琶湖西岸。町なみや、河口州である釣りの浜辺の様態および対岸の見え方から、おそらく和邇南浜と思われる。遠景のイメージ映像ほかには堅田等他所も含まれるかも。

*追われる脱藩者は細川俊之、妻女は柴田美保子。追っ手は波多野博ほか、宿の夫婦は河上一夫と三原有美子。*今回はダンナたちにやられる追っ手以外に犠牲者は出ず、ラストは三人の掛け合い漫才でほのぼの。


第21話「月夜の湯けむり」1968.12.16

 湯も涸れかけている山深い湯治場に、時ならぬ多数の客。野良犬ダンナが保護し連れて来てやった「無実」の青年は、待っていた娘に会い己を陥れた者を打擲したあと、ダンナに厚意を謝し役人に連れられて去る。

ロケ地

  • 修造が奥沢の湯へ向かう街道、不明(棚田や山道)
  • 奥沢の湯、「温泉」は日吉大社境内の大宮川本流に懸かる飛竜の滝で、湯が湧いた情景にはスモーク焚き・滝壺には柵などあしらい。湯宿は日吉山荘、二軒ある設定で奥のが娘の勤める「巴屋」、下手の川沿いの建物が「秋葉屋」で修造の雇った渡世人たちが泊る。万平ダンナたちや文吉を追って来た役人たちは巴屋に宿泊、趣味で来たのは万平ダンナだけみたい。
  • タイトルロールに出る山峡の渓流は保津峡遠景、大宮川の流れにつなげる。

*店の金をガメた「主犯」の番頭・修造は不破潤、ハメられた手代の文吉は片山晴信、金を預かって湯宿に勤めていた文吉の恋人は長内美那子。


第22話「地獄極楽わかれ道」1968.12.23

 迷惑極まりない珍客に、大勢が難儀を蒙る話。アブないごっさんがヤバい連中の手に渡る事態は避けられるが、哀れな病人の死期を早めてしまう。

ロケ地

  • 青木同心が千造らを率いて山科の里へ向かう道、不明。一部、道隈の向こうに溜池が見える地道あり、16話で出たアレか。十吉の台詞に「山科も四宮も過ぎて」とあるが、あしらわれた道標には「渋谷道」と見える。
  • お公家さんに居座られてしまう山科の家、10話や「待っていた」20話に出たアレ、長屋門の左手の道に目隠しがしてある。
  • お人形を持って里を再訪したダンナたちが野辺送りを見る街道、不明(丘陵地)

*高小路通麿は菅貫太郎、「宮を奉じて」「早う老中に」「天の啓示神の声」などと蚊の鳴くような声でぼそぼそ呟く呆けぶりが傑作。家の内儀は高森和子、おじゃるの雑掌は岩田直二で妹ぎみは三浦徳子。おじゃるを利用しようとするイカの親玉は山口幸生で、イカ仲間に小峰さん。*おじゃる言葉を使ってみる万平ダンナや、御所人形に気に入られて居心地のわるそうな田島も大笑いだが、女たちの感情が軋みだす気配にちゃっと逃げる野良犬ダンナも笑える。今回は劇伴に五番の動機や、天国と地獄のギャロップが鳴って妙なコミカル風味。千造さんが食い損ねた、鯛蕪のよう炊いたんが旨そう。


第23話「おことうさん」1968.12.30

 晦日の京、掛け取り先でとんだ難儀を押し付けられた手代は、足を痛めた妹を世話してくれた親切なご浪士との奇縁により凶刃から救われたほか、望外のギフトを贈られる。

ロケ地

  • タイトルロール、辰巳大明神に参る芸妓たち〜白川畔料亭白川新橋・巽橋
  • 河内屋の手代・清七が掛け取りにゆく清水のご隠居宅、不明(細竹編みの塀)
  • 待ち合わせた兄が来ず奉公先へ帰る「おちょぼ」のおきよ、巽橋辰巳大明神脇を過ぎ元吉町の路地へ→セットにスイッチ。
  • 店に戻るもまたすぐ用事を言い付かり出てきたおきよが田島とぶつかり足を痛める路地、辰巳大明神玉垣脇。
  • 田島と行き先が同じでおぶって貰い辿り着く料亭「花むら」、白川畔の料亭。ここに野良犬ダンナが上がっていて寝ているほか、兄が浪士たちに強要されて使いにやって来るのもここで、様子を窺う浪士が白川を隔てて向かいに詰めている。浪士たちが仲間と合流するくだりに巽橋あたりも映る。

*難儀に遭う兄妹は河原崎長一郎と小谷悦子。兄に無理難題を押し付ける浪士たちは山岡徹也、月形哲之介、平沢彰ら。*西鶴の商人描写にはじまり、おことうはんの福玉に守ってやった商人から毟った金を詰めて失意の兄妹のもとへ届けて寄越すダンナ方という運びが憎い仕立て。


第24話「春のともしび」1969.1.6

 年寄に無体をはたらく浪士を見た菓子職人の青年は、朋輩が止めるのも聞かず介入。これが手前勝手な憂国の志士の目にとまり、青年の運命を狂わせてしまう。

ロケ地

  • 青年が「かたち」の意匠を練りに朝晩やって来る神社、および朝の寒稽古に万平ダンナと田島がやって来る神社、走田神社。主に本殿前を使い、参道や鳥居見返りのアングルも使われ、タイトルロールでは社務所も真っ暗がりの中に映り込む。
  • 京の町へ野菜を売りに来る百姓父子のゆく野道は不明。

*血の気の多い菓子職人の青年は近藤正臣、強い義侠心と向ッ気が災いする設定だが、職人としては繊細な面を持ち、心の中にある抽象を具象に高めようと呻吟するさまが描かれる。彼を優しく気遣う店の女将は鳳八千代、彼を鉄砲玉に利用しようとはかる「志士」は坂口祐三郎。*青年が勤める菓子屋は「西陣船橋の鶴屋吉信」、「柚餅の看板」が架かっていて紋も同じ。


第25話「月下の顔」1969.1.13

 暗殺現場に入り込んだ前髪の少年は足止めを食い、さらに出自を知られ「的」を誘い出す人質に。脅迫状を見た少年の姉はすげない夫を見て自ら乗り込もうとするが、時勢は女子供の甘さを容れぬほど切迫しているのだった。

ロケ地

  • 夜になって京入りし道に迷っていた少年が悲鳴を聞く道、禅昌院町の小川通(小川跡の「川端」)。声を頼りに入ってみると野良犬が出てくる門、本法寺仁王門。無住の寺のここが暗殺団のアジトになっている設定で、門のほか境内、本堂、庫裏も出てくる。後段では万平ダンナが悪い酒にあたって門前にへたりこんでいたり。
  • 少年の姉の嫁ぎ先の山倉屋岡崎寮、不明(別荘ふうの構え、塀は細竹編み)

*少年を監禁する和尚は玉生伺郎、稚児趣味とか言われている。仲間の浪人は下元年世に田中弘史。山倉屋は成瀬昌彦、大物の政商。妻女は稲垣美穂子で千造さんデレデレ。


第26話「狂気の夜」1969.1.20

 様々な人々に毒を仕込み、デモンストレーションを行う抜け荷商人。青木さまたち町方トリオもやられてしまうが、万平ダンナの働きでからくも助かり、一味も毒を贖おうとしていた大名筋もダンナ方の鉄槌を浴びる。この間、町方トリオの女房たちのお下品な宴会が張られている運び。

*ロケなしセット撮り。抜け荷商人の親玉は穂積隆信、手下に八名信夫など。青木さまの妻女は武田禎子、十吉の嫁は水上富美で千造のかみさんは以前と同キャスト。三者ともご亭主に似通った性格づけが笑える。


第27話「都に来た娘」1969.1.27

 兄を訪ね京へやって来た、身寄りのない娘。田島も町方のダンナ方も彼女に優しく、世話された奉公先も暖かいが、兄は千造が憤慨していた外道どもの中に身を投じていた。娘が悲惨な事実を知ることはなく田島の胸に収められ、彼は飲めぬ酒を欲する。

ロケ地

  • 「一旗組」の源吉が役人を斬った夜道、相国寺弁天社前。この路地をいろんなアングルで使い、鐘楼や大通院門も映り込む。セットと併用。

*おうめは弥永和子、兄・源吉は蔵一彦。一旗組には川谷拓三も。素性も怪しい彼らを飼い使嗾する黒幕は青木義朗。浪士に狙われる、おうめの奉公先の主は永野達雄、番頭は西山嘉孝。*田島を気遣うほか、万平ダンナと漫才もして今回の野良犬はけっこう饒舌。


第28話「福と鬼との巷」1969.2.3

 節分の夜、京にやって来た訳あり女は、危ないところをダンナ方に救われ、また同じ経緯で消え、「女はお化け」の観念を残してゆく。

ロケ地

  • 田島が旅人に教えてやった今は空き家の医師宅、社家町。教えたものの空き家と知った田島が旅人の姿を求め走るのは東端のどん突きあたりの明神川沿い、彼の表現は「小川の流れる静かな通り」、医師宅は川に面した一件

*ヤクザの若親分に目をつけられていた駆け落ち女は御影京子、彼女を連れ出した「腰抜け」のチンピラは高津住男。*今回野良犬ダンナはヤクザたちを懲らすものの斬らず、血は見ない。空き巣と貼り紙で会話する万平ダンナが大笑い。


第29話「水ぬるむ頃」1969.2.10

 鮒釣りで生計を助ける健気な少年とダンナ方の心温まる交流にも、ご時勢の翳。保身のため一家を消そうとしていた侍どもは野良犬ダンナが斬り捨てるが、侍の顔を見た病人は衝撃に命を縮めてしまう。

ロケ地

  • 寒鮒釣りの池、愛宕林道・谷山の池か(上から幾つかに分かれた溜池)。「裏街道」は谷地田や溜池脇の地道(道隈に一本松の風景は1962年の「血煙り笠」にカラーの絵あり)
  • 少年の家、不明(萱葺で庇に瓦、ここに似るもまわりの風景が一致せず)

*少年は加賀爪清和、姉は沢宏美。少年が鮒を売りに行く店の親爺は藤岡重慶、吝いものの悪人に非ず。


第30話「上意討ち」1969.2.17

 「君側の奸」を斬って退転した若侍は、傷を手当てし追っ手を蹴散らしてくれたダンナ方により甘い考えを完膚なきまでに叩きのめされ、武士を捨て好いた女と逃げるのだが、ビバークした峠の小屋の外には不気味な雪崩の音が響いているのだった。

*ロケ地ほぼ不明。谷地田脇の道や里居は一連の「結束シリーズ」でよく見た風景、若夫婦の酒肆の外にある設定のお地蔵さまは「天を斬る」でも出てくる、切り通しの石垣に嵌め込まれた一件。*追われる若侍は亀石征一郎、付き従う侍女は牧紀子。若侍を利用した上司は今井健二、タレコミもする牢帰りのゴロツキは松山照夫。


第31話「路地裏の宿」1969.2.24

 浪人への詮議が厳しい城下、旅籠を悉く断られたダンナたちはもぐりの宿に。とんだ讒訴で宿は摘発を受け悲惨な結末を迎え、珍しく感情を露わにした野良犬ダンナが積極介入。お話はたつきのため恥を忍んで商売をする内儀と、彼女を支える奉公人との機微を描く。

ロケ地

  • もぐり宿の泊まり客の若侍がお歴々を暗殺する夜の町角、民家長屋門前。
  • 内儀のその後を伝え合流する万平ダンナ、不明(田畔の道)
  • 仙吉の塚、不明(小丘)

第32話「失踪」1969.3.3

 受けた仕事をあくまで遂行しようとする飛脚、しかし依頼主はその誠意に値せぬ卑劣漢で、早々と頓死。爆弾の如き「荷物」を託されてしまった飛脚は、果てしない迷路へ。

ロケ地

  • 飛脚がゆく山中越の道、不明(山道、棚田が見える場面も)
  • 浪士の手配書を持って消えた与力の足跡を辿る青木さまたち、与力が駕籠をおりた白川口、不明(丘陵地の地道)
  • 与力が隠れていた寺を探し当てるも自暴自棄の与力が刀を抜き暴れるくだり、走田神社社務所前〜鳥居前。ダンナ方がやってくる道は社叢脇。与力の女がいるのは鳥居前灯籠脇。設定は山中越を過ぎたあたり、南志賀付近か。
  • 次の届け先へ向かう飛脚のくだり、湖畔の旅籠イメージに琵琶湖岸が出て、逃げ回る道は田畔や山道。

*飛脚は近藤正臣、彼を案じる店の娘は武原英子。与力は早川研吉で「乱心」のところを野良犬ダンナにばっさり(青木の嘆息に不機嫌な声を返すダンナが笑える)。


第33話「陰の女」1969.3.10

 倅の悲報を受け京へやって来た老父は、その死が不名誉な横死と聞かされる。どうしても真実を知りたい父を助けて動くダンナ方だが、勤め先が密偵の巣ときては当然、ろくでもない結果が待っている。

ロケ地

  • 綾部真介の墓がある無住の寺、永観堂墓地(石垣の上)
  • 墓守から聞いた手がかりを求め町を彷徨う老父のくだり、清水の舞台全景が挿まれ、千造らに尋ねる塀際は石垣の上に竹垣の塀で向かいは板塀。その後万平ダンナに拾われる道、不明(万平が持っていた手拭に手がかりの「名」)
  • 待合で「よし富」のことを尋ねたあと、ゴロツキに連れ出され襲われる道、永観堂池畔
  • よし富に案内されてゆく清水界隈、イメージに清水寺三重塔遠景(鐘の音演出)。途中の坂は不明(脇は盛り土で段々の塀が続く)。長州の仕事をしている密偵の巣の「清水の山荘」、中山邸通用門
  • とぼとぼと街道をゆく老父、広沢池東岸
  • よし富が葬られた無縁塚、不明(土手の上に五輪塔や無縫塔)

*老父は松本克平、芸者・よし富は二本柳敏恵。


第34話「京屋敷丁半」1969.3.17

 京屋敷の動静を調べていた間者は斬られるが、見ていた少年は気の毒がって文を届けようとする。もちろんすんなり行かないが、文は万平ダンナに拾われ、追者は田島に阻まれ、届け先には野良犬ダンナが入っていた。

ロケ地

  • 間者が斬られる橋、不明(河畔林は竹、橋は簡素な欄干なしの木橋、河原は砂河原で堤はそう高くなく橋に続いている)。文を託すも大人たちは身ぐるみ剥いで去り、橋下にいた同じくお薦さんの少年が文を持って走り出す。
  • 京の町へやって来た少年が焙り餅を横目で見て通るのは今宮神社東参道、茶店は一和。万平ダンナが子らと遊んでいて少年に声をかけるのは境内、後段間者の仲間に文のことを聞かれるのは東門。
  • 文のことで万平を襲う刺客が出る寺近くの道、不明。
  • 間者の到着を待っていた若侍が「梅の間」の「半」に連れ出され囲まれる夜道、梅宮大社東参道。律儀な野良犬がうっそりと登場。

*父の目付の命で京屋敷の動静を調べに来ている若侍は大丸二郎、姉は渋沢詩子。間者の仲間は高城淳一、旅籠の主は北見唯一。*本筋には直接関係ないエピソードも面白い回、子を集めて構うのがどうやら日課みたいな万平ダンナのほか、番所トリオのスケベ談義「見てたらこっちが何やら」など。


第35話「密会」1969.3.24

 他藩の内情を探るため、女を利用した男。女の奉公するお屋敷の知るところとなり、討手が殺到するが、助けてくれという男の申し出を断った野良犬は言い放つ「ただの恋なら助けた」。

ロケ地

  • 何やら事件が起きたらしい空き家から出た怪しい侍をつけた千造が斬られかかる夜道、上賀茂神社社家町明神川沿い(東端付近)。行きがかりで助けた娘に乞われ、その空き家へやって来る田島も同所。
  • 田島が助けた娘とその父が京を去る道、仁和寺塔を望む山道(原谷へ通じる道か)
  • 娘が助けようとした、利用されていた腰元の墓、住吉山墓地か(塔からカメラがパン、木々の間から町なみが覗く)

*腰元から情報を取っていた侍は住吉正博、腰元を助けようとしたお屋敷の下女は高野直子。腰元を刺したお屋敷出入りのヤクザは田村保。


第36話「京洛慕情」1969.3.31

 重大な使命を帯びて京入りの侍たちは、群がる追っ手から逃れ得ず空しく果てる。死んだ侍は会津者、守護職が置かれ大嵐が吹きそうな情勢を後目に、ダンナ方は京を去る。

ロケ地

  • 竹細工師・芳造の隠居所裏手の水辺(留守番の下女と職人がデート)広沢池(建物へは石垣を登って入る。竹垣は既存かあしらいものか不明。表側はセット)
  • 会津者を狙う浪人たちが集まり繰り出してゆく町角、御所拾翠亭南塀際。
  • 野良犬ダンナに用心棒を頼んだ侍が殺されて見つかる橋、34話のお薦さんの橋と同所。
  • 会津藩士が京の町を行き交うイメージ、御所大路のほか黒谷に見立てた大谷祖廟北通用門御所門(高麗門)
  • ダンナ方がゆく雪道、清滝河畔か(護岸石積)
  • オープニング京イメージ/渡月橋金閣銀閣金戒光明寺三門清水寺全景東寺五重塔南塀外から見上げ

*隠居所にいた下女と職人は岡崎友紀と林浩久、行商人に化けて隠居所へやって来る会津者は夏目俊二、追ってきた妻女は伊藤栄子。


・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧 ・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ