仕掛人梅安

降旗康男監督作品 1981.4.11東映


 池波正太郎の原作「闇の大川橋」に題材をとる。「生かしておいては人のためにならぬ」悪逆の旗本父子が的で、梅安シリーズのエッセンスを凝縮した作り。詰め込み過ぎのエピソードをうまくひとつの話にまとめ、いかにも東映らしい派手な画面で見せる。

 はじまりはオーソドックス、音羽の元締から来た依頼を淡々とこなす梅安が描かれる。続けて持ち込まれた依頼の的は非道の限りを尽くす旗本の若様で、現場の料亭で梅安が下女に殺しを見られてしまうのが最初のヤマ。梅安がなぜか殺せなかったその下女との経緯で、仕掛人としての立場と人間としての情が描かれ、小杉さんがその下女を憎からず思っている設定を出して話をつなぐ。そして原作通りの、馬鹿息子殺しの依頼者は当の父親というのが出て、彼らの周囲の複雑な人間模様がからんでくる。依頼が遂行されて一安心なお殿様は、仕掛人の掟が信じきれず秘密を知る音羽の元締を消しにかかるが失敗、ここから殿様の異母弟という設定の、裏稼業の大物が前面に出てドラマはクライマックスへ。江戸進出をはかる浪花の元締が荒事を仕掛けたことにより深手を負う梅安、彼を助け保護した女はその元締の妹で、これを機会に兄との爛れた関係を清算しようとするが、叶わぬ儚い願いであった。

ロケ地

  • 品川台町の梅安邸、酵素河川敷にセットを組んでの撮影。屋根は萱葺きふうで裾に軒瓦を出し、小柴垣で周囲を覆う。ここでの撮影は後段の炎上シーンのためと思われる。襲撃を受けた梅安を保護するお園のシーンは竹林。
  • 仇討ちの若様を稚児にして弄ぶ浪人・井坂権八郎に仕掛けるくだり、梅安が傘をさしてゆく夜の坂は金戒光明寺永雲院下坂。途中に岡持ちを持った彦さんが待っている。
  • 身持ちの悪い旗本の馬鹿息子・安部主税助に仕掛ける段、的を見張る梅安と彦次郎は八幡掘堀端で、主税助が入り浸る料亭・松葉が近くにある設定。上下二段の堀端を使い、梅安は下段汀で「釣り」/ここへ小杉がやって来て声を掛ける。
  • 梅安の主税助殺害現場を見た松葉の下女を殺すべく尾行する彦次郎、出かけてゆく下女・お咲を尾行するルートは御香宮本殿脇〜舞殿脇、お咲は駐車場のほうへ歩み去り待ちあわせていた小杉浪人と会う。
  • 主税助の葬儀が営まれる寺、粟生光明寺。葬儀は本堂、依頼者の殿様からの格別の報奨を拒否し立ち去る音羽の元締は本堂前石畳、弔いにやって来た近江屋と行き会い丁々発止のやり取りは石段上部。
  • 梅安と彦次郎に仕掛人になりたいと願う小杉、三人が甘酒を喫す茶店は今宮神社門前茶屋・一和
  • 瀕死の重傷を負った身を保護してくれたお園の家を立ち去り、とぼとぼと道をゆく梅安は木津堤。彦次郎らと落ち合い事情を聞く梅安、西の湖畔。
  • 大川へ船遊びに出る安部長門守と近江屋、乗り込む堀端は嵐山公園料亭・渡月亭西側の中州南岸。船は西の湖へ出て、仕掛けるべく橋の上で待ち構える梅安は流れ橋(梅安が凭れる欄干をあしらい/足もとにワイヤー、飛び降りる際には橋脚がはっきり見える)。船に仕掛けるシーンは罧原堤下の桂川を併用。

*梅安は萬屋錦之介、死地を脱してきたあとおもんをわしっと抱きしめる仕草がちょっと拝一刀。彦さんは中村賀葎雄、渋くてよく役にハマっているがヨロキンと似すぎてて困る場面も。小杉さんは五代高之、音羽の元締は藤岡進、おもんは宮下順子。梅安の殺しを目撃するものの黙す下女は真行寺君枝、その弟は島英津夫。安部長門守は中村勘五郎で馬鹿息子の主税之助は中尾彬(濡れ紙をはずした後のあんぐり口が見もの)、近江屋佐兵衛は伊丹十三(白子屋イメージと思われる/変態風味を付加)で妹のお園は小川真由美(運命に翻弄される哀れな女を熱演、最後を締める言葉は彼女の口から)。長門守の用人は御木本伸介、近江屋に取り入り立ち働く山城屋伊八は柴田p彦、彼が追い使う雇われ浪人の一人に福ちゃん。梅安の最初の的のヤラしい浪人は岩尾正隆。


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