くノ一忠臣蔵

時代劇スペシャル 1983.12.8CX/東映

キャスト
無明綱太郎/中村敦夫 織江・おゆう/山本みどり 万軍記/小沢象 千坂兵部/中村竹弥 大石内蔵助/丹波哲郎

 忠臣蔵ものとしても時代劇としてもトンデモ度星五つの怪作、ただしテレビドラマなので原作のハードな部分は省かれ、Vシネほどぶっ飛んだ設定はなされていない。9時台放送にしては、すっぽんぽんの姉ちゃんたちが思い切りよく登場してピンク系のキャプションを裏切らないが、丹古母鬼馬二など男どもの裸もいっぱい拝まされる。
昔に撮られた映画では主役を張った丹哲がこのドラマでは大石を演じ、顔の長さもよく似た中村敦夫が拗ね者の伊賀忍を演じている。


 将軍に見初められたことを無上の喜びという恋人に怒ったお庭番・無明綱太郎は、綱吉の寝所に侵入し不敵な言葉を吐いて退転。その後奥州路で助けた、恋人と酷似した女は上杉の家老・千坂兵部の娘で、無明は赤穂事件に関わってゆくこととなる。千坂は、殿様が赤穂浪士に向けて放った刺客を阻止し、かつ義士の仇討ち心を萎えさせるという任務を無明に与え、妖艶なくノ一たちをつけるのだった。

大覚寺

ロケ地
・無明が自分への追っ手と勘違いして六部を斬り捨てる奥州路、谷山林道頂上付近。虚無僧に身をやつしていた千坂兵部の娘・織江が礼を述べ、助力を要請する。
・米沢藩城イメージ、岡山城(旭川越し)
・米沢藩江戸屋敷(上杉綱憲出府中)大覚寺明智門
・城代家老・千坂兵部邸、妙心寺隣華院(門、庫裏前庭)
・京イメージ、八坂神社楼門。大石の乱行を諌めよと大野九郎兵衛に詰め寄る江戸組の浪士たち、神光院蓮月庵前。町をゆく大野に襲いかかる雲水、神光院中興堂前。阻止に出て大野を逃がしたくノ一が能登忍者と斬り結んだあと逃げ込むお堂、大覚寺五社明神舞殿(扉をセット)、追っ手が入ると爆破で中の仏さんがパカっと割れて哄笑とともに無明登場。
・くノ一に籠絡され狂態となった進藤源四郎が迷い出てくる町角、神光院蓬月庵前。本堂前の石橋上で同志がその姿を見て驚愕、刃を振り回すのにやむなく斬って捨てる神崎は本堂脇。その様子を見ていたくノ一が能登忍者の束ね・万軍記に斬られるのは蔵の前。
・大石の東下り、琵琶湖西岸松原
・大石父子が入る赤穂藩御用だった商人・前川忠太夫の寮、大覚寺望雲亭を放生池堤から望む図。
・大石の吉原遊びを見た帰りの田中貞四郎が身投げ女を見つけ助けるくだり、中ノ島橋上から女を見て橋下の川中にじゃばじゃば駆け入り。
・山科の大石閑居、民家門(前畑越し)
・大石を訪ねる途中の神崎与五郎が含み針を受ける林、その後笛の音に惹きつけられよろばい行く墓地や尼のいるお堂、不明(墓地は二尊院に似るが、花頭窓のある古びた方形のお堂が不明)
・同志の妻が身売りと聞き金策に走る高田郡兵衛、夜鷹に声を掛けられるが見ると同志の内儀の川端、中ノ島橋たもと。
・東下りの大石の前に高田郡兵衛が「遊女」入りの大八を引いて現れる箱根山中、谷山林道切り通し。

*お庭番を退転するくだりは、綱吉の寝所が舞台。よく将軍の座所の床の間にしつらえられている巨大三つ葉葵をスクリーンにして現れる中村敦夫、おゆうと同衾している綱吉に、自分とおゆうのラブシーンを見せつける趣向。スクリーンは鷹峰の源光庵の「悟りの窓」みたいな感じ。忍法で二人を布団巻きにして投げ飛ばし、退転を告げ「忠義か馬鹿馬鹿しい」と哄笑して去るのみで血は見ず。これに先立って怪しの蝶がひらひらと舞うが、後に大奥もので使われる華麗なものではなく、でっかいモルフォ蝶じみた一件。
*千坂兵部の「テスト」は、無明をくノ一部屋へ監禁して朝を待つ次第。誘惑に勝ったのか「征服」したのかよくわかんねー「見え方」で、朝部屋を開けに来た千坂の目に飛び込むのは、すやすや寝ている無明と、部屋の隅っこに折り重なって伸びている女たち。
*くノ一の毒牙にかかり脱盟の運びとなる義士は、大野九郎兵衛を筆頭に進藤源四郎、田中貞四郎、毛利小平太、高田郡兵衛ら。大野の織本順吉はぱっさぱさに精気を抜かれ爺さまに変形して夢うつつで「極楽極楽」と呟く、典型的なアレで笑わずにいられない。田中貞四郎の丹古母鬼馬二も女色に溺れる次第だが、気がつくと首だけ出して土に埋められてるへんは、なんか狐に化かされた落語の長屋衆みたいでもある。
*大石はもちろん「その手にかからない」のだが、丹哲だけにマジか冗談かよくわからない運びで、とにかく東下りの最中に襲ってきたガチでマジの男忍者の小沢象から、薄墨太夫をやっていたくノ一が救ってくれたのに大仰に感動していて、傍にいる無明はシラケ気味。このほか神崎与五郎も無事で済むが、一旦は籠絡されあろうことか女に変身してしまうなかなか気色悪いシーンもあって大笑い。
*忠臣蔵部分はほんのちょっと、刃傷沙汰が静止画で出てくるほか、討ち入りは吉良邸の門に殺到する義士を何人かちらりと見せて終り。結局全滅したくノ一たちの塚を後に去る無明の耳に陣太鼓が響く。


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