恋染め浪人

加藤泰監督作品  1957.1.22東映


 松代藩のお家騒動で毒殺されかかる娘を助けたご浪人・鮎さん、いやいや関わってゆく先は退転した当の藩。きつい麻薬を盛られ童女に返ってしまった娘哀れさと、反発しつつも見捨てきれぬ「友」への情が彼を突き動かす。わるい奴はきっぱり悪く、相応の報いを受けて万事めでたしの展開だが、鮎さんにぞっこんで危険な旅につきあってくれた太夫の死が物悲しい。

ロケ地
・発つ江戸屋一座を見送る鮎さん、そこへ生田頼母がやって来て鮎さんと太夫に頼みごとをするくだり、仁和寺境内。彼らの動きを見張る今七らは、御影堂に入ったあと鐘楼の陰で待ち構え。頼母らの駕籠がやって来るのは観音堂方面から石段を上がり鐘楼前へ。
・お国入りの馬鹿殿・松代家邦がゆく街道、湖西の丘陵地の畦道か。美穂の替玉が通る道も同所、滄庵らが竹藪から見ている。
・江戸屋一座にまじって美穂とゆく鮎さん、不明(ロングは谷あいの道、近景は山道)。このあと襲撃され逃げ回る林は山腹や崖など各所。
・これより松代藩領で迎えの駕籠が出ている街道、琵琶湖岸か(水は近い/道の奥、山裾には庫裏らしき建物が望まれる)。御殿に連れ込まれ建物を倒壊させられる場面はセット、遠景の絵は飛雲閣にも似たシルエットで、鮎さんと美穂がいる懸崖造りの一件がおもちゃのようにくしゃっとコケる。
・滄庵に美穂自刃・頼母の面当てと吹き込まれかんかんに怒って江戸入りの家邦、入る江戸屋敷は仁和寺本坊表門
・事終り仕官を辞し一座と旅ゆく鮎さん、虚空から響く太夫の歌声と唱和する水辺は琵琶湖西岸松原(背後の山は雪嶺)

 鮎さんこと夏目鮎太郎は大友柳太朗、元奉公人だった久兵ヱ方で医者を開業。ずいずいずっころばしを口ずさむのが癖。彼の父は十年前ご落胤の押し付け婿の件を諫死、鮎さんは藩を退転。鮎さんの気っ風に惚れ込み協力する江戸屋の座頭は花柳小菊、男衆の亀さんは岸井明。美穂は長谷川裕見子、呆けたさまもきりりとした武家娘も可愛い。彼女の父の筆頭家老・頼母は薄田研二。先代の弟で鮎さんとは幼馴染の宗之助ぎみは渡島進、鮎さんと嫌味の応酬ののち褌一丁で取っ組み合いをして友情を確かめるくだりは笑える。国分屋久兵ヱは香川良介、美穂を連れて逃げる段で悪党に斬られ横死。山谷の今七は鮎さんと顔馴染みのチンピラ、はじめ悪党に加担するも御殿倒壊の際鮎さんたちを助け、最後は悪事の証人となる。悪役陣、馬鹿殿の家邦は立松晃、隠居の条件に美穂を要求。奥方は浦里はるみ、老中の娘で孕んだ不義の子を次期藩主にと目論む。奥方とつるむ次席家老は原健策、悪謀を一手に引き受ける腹心・滄庵は吉田義夫で怪人じみた振る舞いが不気味。滄庵に雇われる道場主は山口勇。
*原作は山手樹一郎の「恋染め笠」、脚本は結束信二。


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